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 山川 穂高(富士大)三塁 175/95 右/右
 





                 「こういう選手は、プロでこそ生きる」





ちまちましたアマチュア球界では、中々強打者が育たない。早くから全日本大学代表の4番を務めてきた 山川 穂高 は、まさにプロの環境でこそ、より輝くプレーヤーではないのだろうか。

(守備・走塁面)

 下級生の頃は、外野を守っていた。外野手としての打球判断の悪さ・守備範囲の狭さなどから、プロの外野手としては厳しだろうと考えていました。また昨年は一塁を守っていましたが、これも経験不足から連携プレーのミスが目立ったり、体が硬いのか?体を伸ばして捕るなどの動作ができないことがわかりました。

 ただし思ったほど身のこなしや打球への反応は悪くなく、その辺は今年三塁を担うようになっても変わりません。地肩自体弱くないので、最低限のプレーは魅せてくれます。ただしちょっと難しい体勢からの捕球になると、体の硬さも出て送球が乱れたり上手く捌けません。プロで徹底的に鍛えても、三塁手として厳しいのではないのでしょうか。現状は、一塁手かDH要員で好いのならといった評価でしょうか。

 一塁までの塁間は、4.45秒前後。左打者換算で、4.2秒前後とプロの基準レベル。全く動けない選手ではありませんが、足を生かすようなプレースタイルではありません。

 こう考えると、極めて守備・走力でのアピールは低く、そのことを承知の上で指名すべき選手なのがわかります。あくまでも、右の強打者としての評価となります。

(打撃内容)

 1年生の頃から、全日本の4番打者として抜擢されてきました。しかしその割には、リーグ戦で図抜けた成績を残したことがないという選手でもありました。しかし今春のリーグ戦では

10試合 3本 8打点 1盗塁 .351厘(9位) 

という好成績を残します。シーズン3ホームランは、彼にとって自己最多の本数。打率.351厘は、自己2番目の高打率でした。そういった意味で今春は、4年間で一番のシーズンだったと言えるでしょう。特に前回の日米大学代表の時は結果が残せなかったのが、今年のアジア大会では打率.357厘と結果を残した点は高く評価できます。

(打撃フォーム)

<構え> ☆☆☆

 前足を軽く引いて構えるのは昨年までと同じですが、高く上げていたグリップを下げて、打席でリラックスすることを心がけています。腰は据わらず全体のバランスとしても並ですが、両目でしっかり前は見据えられています。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下がり始める時に始動するように、長距離打者ではなくアベレージ打者が採用する仕掛けを行っています。本質的にこの選手がスラッガーなのかは別にしても、打球が上がり難いタイミングで打っているのは間違いありません。

<足の運び> ☆☆☆☆

 早めに足をあげて回しこむので、速球でも変化球でも合わせやすい「間」は取れています。ベースに離れた方向に踏み出すアウトステップを採用しているように、内角を強く意識し引っ張りたいタイプ。

 それでも踏み込んだ足元はブレないように踏ん張り、外角でも真ん中~高めの球ならば「開き」を我慢して、右方向にはじき返せます。少しポイントを後ろにして、右中間に長打を飛ばすことも少なくありません。そういった打球の幅があるのも、この選手の特徴。

<リストワーク> ☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」を作るのは平均的で、特に光るものはありません。バットを振り出す際には、腰の逃げが早く遠回りにバットが出てきます。それでもバットの先端であるヘッドを下げずに、大きな孤を描きながら振り切ります。これにより、ドアスイングになるのを防ぎます。

 元々腕っ節の強さと肉体のパワーは日本人離れしており、更に大きな孤を描きつつフォロースルーも使えることで打球が上がる確率が増しました。ボールを打ち損じる甘さは残りますが、けしてプロレベルの投手でも力負けすることはないでしょう。

<軸> ☆☆☆

 中村紀洋(ベイスターズ)のように、早めに動き出し流れの中でボールを捉えようという打撃になってきました。そういう打者は、結構頭が動くので目線が大きくブレないことを心がけたいところ。更に、体の開きも抑えられています。それでも軸足は、地面から真っ直ぐ伸びているわけではないので、調子の並は大きな方かもしれません。あまり軸を起点に、綺麗に回転できているわけではありませんでした。

(打撃のまとめ)

 何か今までに比べ、画期的に何か変わったのか?という印象はありません。最終学年になっての自覚と集中力を高めたことで、結果が伴ってきたのかもしれません。

 技術的には癖があったりするので、独特の脆さを感じることも少なくありません。しかしボールを強く叩くということができる貴重な存在であり、そういうスイングができるという意味ではアマでは屈指の存在でしょう。

(最後に)

 天性の長距離砲だとは思いませんが、体に強さがありますので20本ぐらいは長打できるパワーはあるのではないのでしょうか。ただしその時に、どのぐらいの打率が残せるのか、守備はどうなのか? などの総合力が求められた時はどうでしょうか。

 またあくまでも、一塁かDHあたりが望ましい選手であり、そういったポジションでも構わないという理解のある球団に進むことが重要だと考えます。ただこういった和製大砲候補は貴重なことからも、プロ志望届けを提出すれば、順位にこだわらなければ指名されるのは間違いないでしょう。

 少し時間はかかるかもしれませんが、打撃にも感性がないわけではないので、プロの指導や環境次第で、その才能を掘り起してくれることを期待します。3位以降の指名になるとは思いますが、強打者不足のチームで、DHのあるパ・リーグ向きだと思います。特にセリーグよりも、力勝負して来る傾向が強いパ・リーグの方が持ち味を発揮できそう。また個性的なキャラなので、それを尊重してくれる球団が望ましいと思います。上手く活かせばチームの貴重な存在になるでしょうし、人気者になれる選手です。


蔵の評価:☆☆


(2013年・大学選手権)









山川 穂高(富士大3年)一塁 175/95 右/右 (中部商出身) 





                    「打球が上がらない」





全日本の4番を早くから任されるなど、そのパワフルな打撃は学生球界随一の存在。しかしリーグ戦では、1シーズン1,2本の本塁打しか放っていないシーズンが殆どで、意外に打球が上がらないタイプではないかと思うようになってきた。その印象は本当なのかを中心に、今回は考えてみたい。

(デイフェンス)

 神宮大会では、一塁手として出場。昨年までは外野手だったものの、正直プロの外野手としては厳しい動きだった。一塁手としては、身のこなし、打球への反応などは悪くない。ただ経験不足なのか、ポジションニングや連携プレーなどにミスが多く、また一塁手に必要な身体を伸ばしてボールを拾うような動作ができないのが気になる。この選手は、相当身体が固いのではないのだろうか? 一塁に関しては、経験を積むことである程度のレベルには達すると考えられるが。

(走塁面) 走塁偏差値 40.1

 一塁までの塁間は、4.55秒前後ぐらい。これを左打者に換算すると、4.3秒前後。このタイムは、2012年度のドラフト指名された右打者のタイムで偏差値に当てはまると、走塁偏差値は、40.1。偏差値40とは、全体のみて下位約15%ぐらいなので、相当走力は平均から劣ることはわかって頂けるだろうか。

 こうやって考えると、守備は左翼だけでなく一塁でも微妙なレベル。走力もプロではかなり遅い部類だと考えて良いだろう。一年春からリーグ戦に出場し、6シーズンで2盗塁しか記録していないことからも、盗塁はあまり期待できないことは間違いない。

(打撃内容)

 打撃でも意外に打球が上がらないという疑問だけでなく、全日本の4番という実績の割に、リーグ戦でも打率が低いのが気になる。この秋に限っては、打率.176厘と極度の不振に陥っていた。地方リーグで図抜けた成績を残していないところに、正直物足りなさを感じる。

(打撃フォーム)

<構え> 
☆☆☆☆

 前足を少しだけ引いて、グリップは高く添えています。腰の座り具合・全体のバランスは並も、両目で前を見据える姿勢は悪くありません。打席での雰囲気があり、リラックスして構えられているのは良いのではないのでしょうか。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 昨年までは「遅すぎる仕掛け」でしたが、今年は「早めの仕掛け」に切り替えてきました。春は3割台をマークしたのですが、秋は1割台に落ち込みます。今の始動で率が上がればよかったのですが、率も下がり打球も上がり難くなって悪循環にハマっています。

<足の運び> 
☆☆☆

 足を引き上げてから降ろすまでの「間」は取れているので、速球でも変化球でも合わしやすい打ち方。アウトステップするので、内角を強く意識したスイング。しかし踏み込んだ足元はブレないことからも、アウトステップでも真ん中~高めの球に対応することはできるはず。課題は外に逃げて行くスライダーと低めの球への対応だと考えられます。実際この選手は、強引に引っ張り込むよりも、少々ポイントを後らせて右中間に飛ばす打撃の方が得意だと考えられます。昨年からの成長は、踏み込んだ足元がブレなくなった点でしょうか。

<リストワーク> 
☆☆

 この選手で一番気になるのは、上半身の使い方。打撃の準備である「トップ」の形を作るのが遅れているので、意外に速球に振り遅れる場面が目立ちます。更にバットの振り出しも身体から離れて出てくるので、ボールを捉えるまでにロスを感じます。スイングにロスがあるので、打ち損じが少なくありません。

 スイングの弧は大きく、フォロースルーも以前よりも意識してスイングできるようになっています。打球も強烈なので、その辺は非凡だと思います。ただボールを捉える技術には、まだまだ課題を感じます。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げが小さいので、目線は大きくは動きません。身体の開きも我慢出来ています。ただ豪快なフォロースルーのためか、上半身の力に振り回されてしまって、軸は最後崩れているように思います。

(打撃のまとめ)

 どのタイミングで始動するのが、自分に合っているのか模索中といった感じです。始動を早めても対応力が上がらないのならば、やはり始動を遅くしてボールを引きつけて振り出すのが彼には合っているようだし、その方がボールは遠くに運べます。

 ただ下級生の時のように、始動が遅すぎないようには気をつけたいところ。あとは、バットの振り出しが悪い
スイング軌道の改善が求められます。

(最後に)

 全日本の実績は抜群なのに、リーグ戦での内容はが思いの他悪いのは気になります。更に守備・走力でのアピール度が低く、打撃で文句なしの成績を残せないと評価しようがありません。

 きっとドラフトでは、貴重な右の大砲候補として注目されるでしょうが、その期待通りにホームランンを放ち、粗さを改善できるのかは微妙でしょう。私は少し慎重になって、この選手の本質を見極めて行きたいと思っています。アマ球界屈指の強打者は、その実力を遺憾なく発揮して、プロ入りへとこぎつけることが出来るでしょうか。

(2012年 神宮大会)

 







山川 穂高(富士大)左翼 175/98 右/右 (中部商出身) 

(どんな選手?)

 中部商時代は、沖縄屈指の強打者としてパワフルな打撃を披露。更に日米大学野球の代表メンバーに選出され、全日本の中軸を任されました。今春のリーグ戦では、2本塁打 8打点 打率.375厘をマークするなど、この春大きく飛躍した選手です。

(守備・走塁面)

 打球への反応、ボールの追い方などを観ていると、かなり危なっかしく安心して観ていられると言うレベルではありません。プロでも左翼手としては、正直かなり厳しいかなと言う印象を持っています。また地肩自体やスローイングの形は悪くないので、右翼手を務めたりすることもあります。

 正確なタイムは計測できておりませんが、足を売りにするプレースタイルではありません。完全にオフェンス型の選手であり、走力・守備力には目をつむってでも打撃に期待したいタイプです。

(打撃内容)

 平塚で行われた全日本合宿で観ていても、そのパワフルなスイングは、学生球界屈指の力強さを感じます。しかしその一方で、まだまだ脆いなと言う印象は受けました。それでも右方向への打撃も観られるようになり、打撃の幅は随分と広がってきています。日米野球のメンバーに選出されたのは、米国人投手の力強い速球にも、力負けしないであろうスイングが高く買われたからだと思われます。日米野球では、その期待に応えるだけの打撃を魅せてくれました。

(打撃フォーム)

 スクエアスタンスで、グリップを高く添えた強打者スタイル。足を早めにベース側につま先立ちしますが、実際に始動するのはリリーフ直前と言う「遅すぎる仕掛け」を採用。これだと一定レベル以上の球速・キレのある投手の球には、差し込まれる可能性は高いと言えます。

 足を少しだけ浮かし、アウトステップして踏み込みます。すなわち懐を空けて叩く内角を強く意識したスタイル。そのため上手く巻き込めた時は、そのままスタンドインの長打力はあるのでしょう。しかし踏み込んだ足下は、インパクトの際にブレてしまっており、真ん中から低めのゾーン、特に外に逃げて行くスライダーへの対処が大きなポイントになります。またタイミングも点のポイントで捉えるだけに、狙い球を逃さないで叩く「鋭さ」が求められます。そういった意味では、足下が我慢できず開きが抑えられないのは、致命的だと言えそうです。

 打撃の準備段階である「トップ」を作るのも少し遅れ気味ですし、バットも振り出しも少し体から遠回りです。それでもドアスイングにならないように、バットの先端まで下がらないのは救い。強打者らしくスイングの弧が大きいのはいいのですが、フォロースルーを上手く使えないので、体の腕力で飛ばすと言う無理のあるスイングです。

 目線のブレは平均的ですが、体の開きが我慢できず、軸足の形も崩れ気味です。安定した打撃を望むのならば、まず軸の安定を決められるようにならないと厳しいでしょう。あくまでも、まだまだ腕力に頼ったスイングであり、技術的には粗さが目立ちます。

(今後は)

 やはり抑えるポイントは押さえてスイングしないと、長く安定した成績は望めません。これから上のレベルで野球を続けることを考えた時に、同じ相手と何度も対戦するわけです。その場合に大きな欠点を持っていれば、そこを徹底的に攻められます。その対処、見極めを今から意識してやって行かないと、必ず大きな壁にぶちあたります。全日本に選ばれた自信も大事ですが、その先を見据えた取り組みが、更に求められて行くことになるのではないのでしょうか。

(2011年 大学選手権)