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大瀬良 大地(九州共立大)投手 187/89 右/右 |
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大瀬良 大地(九州共立大3年)投手 186/90 右/右 (長崎日大出身) |
「やっぱりエンジンが違う」 12月に行われたアジア選手権へ向けた壮行試合で、学生ながら全日本に招集された 大瀬良 大地 。社会人中心のこのメンバーに入っても、明らかにキャッチャーミットに収まるズバーンという乾いた音が他の投手とは違う。この日の最速は91マイル(145.6キロ)程度であったが、ボールの勢い・球威が他を圧倒。2013年度の大学・社会人の中では、頭ひとつ抜けた存在であるのは間違いない。 (ただこの日は・・・) この日は、リーグ戦が終わって久しかったせいか、コントロールはイマイチ。気温も低く、彼のベストまフォーマンスからはほと遠い内容だった。実際リーグ戦を見に行っても、この投手はかなり抜いて投げているので、そういった意味では、大学選手権あたりの全国大会でじゃないと、彼の本当の力を垣間見ることはできない。そこで今回は、この日の投球と共に、大学選手権・創価大戦の投球も参考にしながら、レポートを行なって行きたい。 (投球内容) マウンドに仁王立ちし、ゆったりとした投球モーションから投げ込んできます。この独特の空気を持った選手、そんな大物感があります。 ストレート 常時145キロ前後~150キロ強 大瀬良のストレートは、ズバーンという勢いは感じますが、けして当てられない球ではありません。むしろ、空振りが取れない球と言えるでしょう。彼の場合、コースや低めをこの勢いのある球で押して詰まらせる投球が身上であり、時々ズバッと手のでないようなところに決めて見逃しを奪います。 ただこの壮行試合では、とりあえずストライクゾーンの枠の中にというアバウトなもので、ボールも殆ど真ん中~高めに集まっていました。しかし大学選手権などをみると、ボール全体が低く、コースに適度に散っているなど球筋が違っていることがわかります。このボールの勢いでコンスタントに、低めやコースを突かれては打者としては厳しいでしょう。 変化球 カットボール・スライダー・チェンジアップ・カーブ・ツーシームなど 球種はひと通りありますが、縦に鋭く落ちる球種はありません。ただ的を絞らせないように、145~150キロ級のストレート、130キロ台後半のカットボール、130キロ前後のスライダー、110キロ前後のカーブ、それに120キロ台後半のチェンジアップと、各球種の球速帯が明らかに違うので、的を絞りにくい特徴があります。変化球も、好調時には上手くコースに散らすことができます。 ただ変化球も、現状絶対的なボールはなく、ストレート中心の配球の中に、上手く織り交ぜることで効果的に使ってゆくというパターンです。 その他 大型なので、それほどフィールディングは目立ちません。牽制自体は非常に鋭く、油断すると刺されてしまうでしょう。クィックも1.1秒弱で投げ込めるので、特に投球以外の部分にも大きな欠点は感じません。 ゆったりした投球モーションが、彼の独特の投球リズムを作り出します。それほど「間」を意識したりとか、微妙なコントロールを操るという、細かい投球をするタイプではないのですが。 (投球のまとめ) 普段は中々本当の力を魅せてくれない投手なのだが、本気モードに入った時のボールの勢い・制球力などは、やはりモノが違うといった印象を受けます。しかしリーグ戦などでは、その力を出し惜しんでも抑えられてしまうせいか、大学入学時から大きく成長した印象はありません。 そういった問題意識を持って、自分を伸ばして行こうという意欲や日頃からの意識に関しては、正直疑問を持っています。特に彼レベルであれば、リーグ戦の成績ではなく、全国で勝つためには、将来プロで活躍してゆくためにはという、もう一段階高いところに目標を設定して欲しいのですが、どうもその辺が感じられないところに、2013年度の目玉に相応しい選手かどうかは、まだ半信半疑な部分があります。ポテンシャルは間違いなく抜けた存在ですが、その辺が最終学年でどのぐらい意識が変わってくるのか、ここがプロで1年目から活躍できるのかの大きな別れ目ではないかと思います。 (リーグ戦での成績) 正直あまりに抜けたポテンシャルの選手なので、リーグ戦の成績が参考になるかは疑問です。しかしいつものように、残した実績から考えてみたいと思います。彼は、1年春から 5勝0敗 防御率 0.63 でリーグ1位。ハッキリいって、高校からプロに入るべき選手ではなかったのでしょうか。 通算37試合 29勝1敗 256回1/3 174安打 57四死球 243奪三振 防御率 0.91 1,被安打はイニングの60%以下 △ 被安打率は、67.9% 。プロの二軍投手が1軍を目指すなら、被安打率は80%以下。中央の大学生ならば、70%以下。地方リーグならば、60%以下ぐらいの高いファクターを要求したい。そういった意味では、67.9%が高い数字ではないものの、彼の能力からすれば物足りない。実際リーグ戦ではかなり力を抜いて投げており、ランナーを背負ったりしない限り、本気モードの投球が見られないのも影響しているのだろう。またストレート自体が、比較的合わせやすいフォームをしているのにも原因がありそうだ。 2,四死球は、イニングの1/3以下 ◎ 四死球率は、22.2%とかなり低い。実際細かいコントロールはなさそうに見えるが、ボール全体が低めやコースに散っていることが多く、四死球を出すケースは少ない。好調時には集中力をあげて、コントロールの精度もそれなりのもの。適度に試合をまとめられるのは、安定した制球力が背景にあるからだろう。 3,奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ◎ けしてストレートで空振りを誘える球質ではないし、絶対的な変化球があるようには見えないのだが、奪三振率は1イニングあたり 0.95個 と相当高い。先発で起用される投手としては、リリーフの基準である0.9個を超えているところは、ボールの威力がリーグではモノが違うことがわかる。ただプロ相手だと、中々思い通りには三振は奪えないのではないのだろうか。 4,防御率は1点台以内 ◎ この3年間の通算成績で、防御率は0.91。プロを目指すのならば、リーグ戦で0点台の絶対的な数字を期待したいのだが、それを3年間の通算で達成している。1年秋のリーグ5位の防御率だったシーズンを除けば、他の5シーズンはすべて1,2位のいずれかの成績を残しているのは素直に凄い。 (成績からわかること) 被安打が絶対的な数字じゃないことを除けば、あとは圧倒的な成績を残してきている。数々の投手をプロに送り込んできた福岡六大学の歴史の中でも、屈指の実績の持ち主と言えるのではないのだろうか。 (投球フォーム) 今度は、投球フォームの観点から、今後の問題点を考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆ 引き上げた足を、地面に向けてピンと伸ばすので、お尻の一塁側への落としは甘くなる。お尻をしっかり落とせない投手は、ブレーキの好いカーブや縦に腕を振るフォークの修得に苦労しやすいことにつながるからだ。 ただ彼の良さは、前への足の逃がし方が上手く、着地のタイミングを遅らせることが出来ている。 着地を遅らせる意味としては 1,打者が「イチ・ニ~の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ~の」の粘りこそが、投球動作の核となる。 2,軸足(写真後ろ足)~踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。 3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放れる下地になる。 などがあり、絶対的な変化球はなくても、ある程度多彩な変化球を操られる下地があることはわかる。 <ボールの支配> ☆☆☆ 高校時代は、グラブをあまりシッカリ抱えられていなかったが、その辺は大学入学後良くなっている。これにより、両サイドへの投げ分けは安定するようになった。足の甲の地面への押しつけは短いのだが、最後の瞬間に深く沈み込むことで、ある程度ボールを低めに集めることができている。 足の甲で地面を押しつける意味としては、 1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ 2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える などの働きがある。また「球持ち」自体は平均的で、指先の感覚はそれほど優れているタイプには見えない。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ お尻を一塁側に落とせないタイプではあるが、カーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦の変化も投げないので、身体への負担も少ないはず。 また腕の角度をつけている割に、ボールを持っていない方の肩も下がらず、腕の振りに無理がないのも肩への負担を小さくしているはず。過去3シーズン、安定したパフォーマンスを見せているのは、この負担の小さなフォームが大きく影響しているのではないのだろうか。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りは悪いように見えないが、テイクバックした時点で、前の肩と後ろの肩を結ぶラインが、打者に真っ直ぐ伸びてしまいボールを隠せていない。また着地した時点で、ボールは打者から見えており、開きの早いので、自分のストレートでも空振りが取れない。実は彼が2年生頃に、この「開き」を修正できたフォームで投げていたのだが、その後それを元に戻してしまったフシがある。やや前肩は窮屈そうには見えたので、本人自身が違和感を感じたので、止めたのかのかもしれない。 腕は適度に身体には絡んでおり、速球と変化球の見分けは難しい。またボールに体重を乗せるのは悪くなく、「体重移動」は適度にできており、投げた後地面を跳ね上げることが出来ている。ボールに勢いを感じるのは、この辺の動作が大きく影響している。 (投球フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」はまずまず。「着地」「球持ち」は平均的。「開き」に大きな課題があることがわかっていきた。この「開き」を改善しようとすると、腕が振れなくなる恐れもあるので、中々どちらを取るかは悩ましい。まぁコントロールミスが少ない自信があるのならば、今の「開き」でもいいのかなと思える部分はある。 (最後に) 普通に、今まで同様のパフォーマンスを示せれば3球団前後の競合は期待できるでしょう。ただ2013年度の真の目玉という評価を得るためには、現状打破して行こうという意識と姿勢を持ち、全国大会で勝つためのピッチング・プロで即戦力として活躍してゆくためには、何を追求してゆけばよいか、工夫の跡が見られるはず。それを実戦の舞台で示すことができれば、まさに5球団以上の競合をも期待できる素材です。持っているポテンシャルは頭ひとつ抜けているので、それを生かすプレーを今年は期待しています。 (2012年 アジア大会壮行試合) |
大瀬良 大地(九州共立大)投手 186/82 右/右 (長崎日大出身) |
(どんな選手?) もしプロ志望届けを出していれば、中位から上の順位でドラフト指名されていたほどの逸材です。1年時からリーグ戦で活躍しておりますが、更に今春は大きく成長した姿を魅せてくれました。今春のリーグ戦では、5勝1敗 防御率 0.96 。全日本メンバーにも選ばれ、まさに充実時を迎えつつあります。 (投球内容) 長身から投げ降ろしてくるストレートは、常時140~後半を記録。球速だけでなく、球威も兼ね備えたボリューム感溢れる球を投げ込んできます。ボール全体が、真ん中~高めに集まる傾向があるのですが、ボールに勢いと球威があり、大学生レベルでは中々芯で捉えることができません。 変化球は、小さく沈むスライダーと落差のあるフォークとのコンビネーション。特に縦の変化をストレートと併用するのが大きな特徴。両サイドに大まかに投げられるコントロールを有します。 それほど鋭い牽制は魅せませんが、ランナーをしっかり目で威嚇。クィックも1.2~1.3秒ぐらいと、それほど鋭さは感じられません。ただ足をジワ~と引き上げるような「間」を強く意識したり、ピンチでパッとマウンドをハズして魅せたりと、その見た目以上に、マウンド捌きは悪くありません。 (投球フォーム) 最大の成長は、少し無理に抑え込んでいるようには見えるものの、前の肩の開きをギリギリまで我慢できるようになったこと。そのため球速ほど苦にならなかった球が、かなり打者には厄介な代物になりました。結構甘い球も多いのだが、打者がなかなか芯で捉えることができなくなっている。これは、球速が上がったとか球質が上がったと言うよりは、この球の出所によるところが大きいと言えるのだろう。 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、見分けの難しいカーブの修得や縦の鋭い変化を望み難いフォーム。しかしその割には縦の変化を多く織り交ぜて来るので、体への負担は大きなフォーム。アフターケアには、充分注意して欲しい。この投球を可能にしているのは、着地しそうなところから、上手く前に足を逃がし、「着地」のタイミングを遅らせることができるようになったこと。目に見えて球威・球速は増していないのだが、技術的には大きく進歩している。 グラブを内にしっかり抱えており、指先の感覚がさほど優れていなくても、ある程度ボールを両サイドに散らすことができている。ただ足の甲での地面の押しつけが浅く、上体が高いためにボールが上吊る傾向が強い。この欠点を、今後何処まで改善できるのか注目したい。 「着地」までの時間を稼げるようになり「開き」も我慢できるようになってきた。腕も振れているし、見た目以上に前への「体重移動」も悪くない。もう少し下が更に使えるようになると、本当に手出しが不可能なぐらいの領域に届くかもしれない。 (今後は) すでに現役の大学生では、1,2を争うような球を投げ込んで来る。更にまだ発展途上の選手であり、持っているエンジンは桁外れだと言う気がして来る。更に昨年~今年にかけて、大きく技術的に改善。そういった意識も高さも感じられ、志しの高さを伺うことができた。 かなりポテンシャルに頼った素材型の印象が強かった高校時代に比べると、上のレベルを想定した実戦力を備えつつある。この探求心を失わず、努力を続けて行ければ、プロ野球界を代表する投手にまで昇り詰められる器の持ち主。久々に、ドキドキさせられる大物に出会った。そんな気にさせてくれる大器だ! (2011年 大学選手権) (どんな選手?) 長崎日大時代にも、☆☆を付けたほどの選手で、もし進学を希望しなければ、確実にプロから指名されたほどの選手でした。入学早々頭角を現し、春のシーズンでは防御率0.63とリーグ1位で、ベストナインにも輝きました。 (投球内容) 大学選手権の中央学院大戦では、ほとんどストレートで押す内容でした。球速は、140キロ台後半~151キロぐらい出ており、更にボールの勢いと言う意味では、高校時代よりもパワーアップしているように思えます。 変化球は、1球だけスライダーを投げました。高校時代は、カーブ・フォークなども上手く織り交ぜたピッチングスタイルでしたし、リーグ戦での成績をみると、元来はもっとまとまったピッチングができるはずです。 大学選手権では、力で押そうと言う意識が強すぎて、制球のバラツキが目立ちました。クィックは、1.15~1.25秒ぐらいでまとめるなど基準レベル。ただ牽制は、投げるように見せかけるだけで、実際には鋭い送球は見られませんでした。この辺は、高校時代から同様の課題であるように思えます。 (今後に向けて) 改めてこの春の活躍、大学選手権での投球で、その存在を示すことができたのは確かです。しかし高校時代の勇姿を知るものからすれば、少し雑になったかなあと言う印象も受けました。 パワーアップしたのは確認できましたが、今後リーグを背負って立つ存在になるのでしょうから、実戦力も伴ったピッチングを期待したいです。年々尻つぼみになることなく、スケールアップして行ける向上心に期待したいですね。 (2010年 大学選手権) |
大瀬良 大地(長崎・長崎日大)投手 186/76 右/右 |
「この夏、一気に急浮上!」 この夏の長崎県大会で、評価急浮上の投手がいた。その男の投球を初めて確認出来たのは、スカイAで放送されている「全国の決勝戦」と云う番組だった。ワインドアップでゆっくり振りかぶり、投げ込んで来る。長身から投げ降ろす角度のある球は、まさにプロを意識出来る素材だった。 (投球内容) ストレート 常時140~MAX147キロ 球の勢い・手元までの伸びも悪くない。またその球筋は、低めに決まることも少なくない。また肉体の成長に伴い、もっと空振りの取れる更なる進化も期待出来るだろう。彼の速球は、投球を組み立てる球としての役割だけでなく、勝負球としての役割も果たしている。 カーブ 110キロ強ぐらい 配球において、滅多に織り交ぜて来ることはない。ただ打者に、こういった球があると意識させる働きがある。そういった投球のアクセントとしての役割を果たす。 スライダー 115~125キロぐらい ブレーキは結構あり、速球の球速差・カウントを稼ぐと云う意味では、充分その役割を果たしている。ただ、この球で空振りをバシバシ奪うような、フィニッシュボールとしての役割は薄い。 フォーク(チェンジアップ) 125~135キロぐらい フォークなのか、チェンジアップなのかよくわからないが、沈む球を持っている。ただ現状は、それほど精度は高くなく、あくまでもそういった球があるといった程度。この球をモノに出来るようだと、投球スタイルも、かなり変わって来るだろう。現状まだまだだが、今後の質の向上に期待したい。 その他 クィックは、1.1秒台と中々高速。ただ鋭い牽制・フィールディングなどには、それほど際だつものはない。マウンド捌き・間の取り方なども平凡で、速球の威力はA級だが、変化球の生かし方・投球の組み立てなどは、まだまだ高校生と云う印象は強い。それでも、制球で自滅することはなく、投球に大きな破綻をきたすタイプではないだろうし、勝負どころで好いところに力ある球を投げ込める強弱のメリハリは、現時点でつけられている <右打者に対して> ☆☆☆ 速球が、真ん中~外角低めに角度よく決まることが多い珍しいタイプ。スライダーを低めのボールゾーンに集めるが、意外にこの球の曲がり早いのか?打者の空振りを誘えないのは残念。 インハイを充分突けきれなかったり、緩急を効かせたり、勝負どころで空振りを誘う変化球がないなど、まだまだ投球は発展途上の印象を受ける。時々高めに浮く速球を、痛打されるケースが目立つ。 <左打者に対して> ☆☆☆ 内外角の投げ別けは、4:6程度と、両サイドに球を散らす傾向が強い。左打者には、アウトコースで、速球・スライダー・フォークを投げつつ、インコースに速球とスライダーで内を突いて来る。 多くの右投手は左打者を苦にすることが多いのだが、この投手には特にそういった傾向は見られない。緩急・決め球の問題はあるが、投球の土台が出来ているので大きな問題はない。 (投球のまとめ) 現状速球を魅せつつ、変化球を交えながらカウントを整え、勝負どころで145キロ級の速球で仕留めると云うピッチングスタイル。ピンポイントの制球力や、抜群のマウンド捌きで相手を翻弄するような細かさはないが、型としては破綻無く、適度にまとまっている印象が強い。 まだまだ発展途上の投手ではあるが、今後の成長・肉付けが素直に期待出来るタイプではないのだろうか。スカウトとしては、指名しやすいタイプの投手だろ (投球フォーム) <踏みだし> ☆☆ ワインドアップで振りかぶった時に、背中に反りがなく、構えに緊張感がない。恐らく背筋は、それほど鍛えていないのではないのだろうか。ただ走り込みは相当やってきたのか、身体に対しお尻の大きさは尋常ではない。 足をゆったり引き上げる独特の「間」がある投手。ただ足を引き上げる勢いは静かなだけではなく、その高さも低い。フォーム序盤での、エネルギー捻出は低い選手だと言えよう。 <軸足への乗せとバランス> ☆☆ 軸足の膝から上が、足を引き上げた時にピントと真上に伸びきっていないか注意したい。膝から上がピンと伸びきって余裕がないと 1,フォームに余計な力が入り力みにつながる 2,身体のバランスが前屈みになりやすく、突っ込んだフォームになりやすい 3,軸足(写真右足)の股関節にしっかり体重を乗せ難い などの問題が生じる。ただ彼の場合、それほど真っ直ぐにはピンとは伸びきっていないものの、全体的に突っ立ち気味で、バランス・軸足への乗せも好くないように見える。また膝にも、あまり余裕は感じられない。 また軸足の後ろから背中のラインが、直線になってしまい直立しているのがわかる。理想の立ち方とは、軸足を中心にYの字になるような形であり、このような立ち方は、身体が突っ込みやすくバランスも取りにくい。 <お尻の落としと着地> ☆☆☆ 引き上げた足を、地面に向けてピンと伸ばすので、お尻の一塁側への落としは甘くなる。お尻をしっかり落とせない投手は、ブレーキの好いカーブや縦に腕を振るフォークの修得に苦労しやすいことにつながるからだ。 ただ彼の良さは、前への足の逃がし方が上手く、着地のタイミングを遅らせることが出来ている。 着地を遅らせる意味としては 1,打者が「イチ・ニ~の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ~の」の粘りこそが、投球動作の核となる。 2,軸足(写真後ろ足)~踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。 3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放れる下地になる。 ステップが広すぎず、狭すぎず。すなわち重心が立ち投げにならない程度で、それでいて深く沈みすぎない箇所と言うのが必ず存在する。そのため日本古来の指導だと、膝小僧に土が着く程の重心の沈み込みが良いとされたが、それに関しては私は沈み込み過ぎだと考える。どうしてもステップが広過ぎると、踏み込んだ足と軸足の間にお尻が沈んでしまい、前に体重が乗って行かないからだ。その辺は、フィニッシュの動作を見ていると、何処が適正だか見えて来る。ただ間違っても重心の沈み込み過ぎを回避するために、お尻を一塁側に落とさないで良いと言う、浅はかな指導だけは避けてもらいたい。お尻の一塁側への落としとは、その深さではなく、むしろ横のポジションニングを指しているからだ。 <グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆☆ グラブを投げ終わった後に、しっかり内に抱えきれていない。グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになるのだ。 ただ足の甲での押しつけに関しては、その時間こそまだ短いが、深く足の甲で押しつけることが出来ている。足の甲で地面を押しつける意味としては、 1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ 2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える などの働きがある。彼の球が、比較的低めに集まる一つの要因だと言えよう。 <球の行方> ☆☆ テイクバックした時点で、前の肩と後ろの肩を結ぶラインが、打者に真っ直ぐ伸びてしまいボールを隠せていない。また着地した時点で、ボールは打者から見えており、開きの早いフォームだと言えるであろう。 ただ腕の角度がある割に、左肩が極端に下がることなく腕を振り抜くことが出来ており、身体への負担は小さいと考えられる。ただ球持ちに関しては、まだまだ浅く充分に押し込めていないのが現状だ。ボールを長く持つ意味としては 1,打者からタイミングが計りにくい 2,指先まで力を伝えることでボールにバックスピンをかけ、打者の手元まで伸びのある球を投げられる 3,指先まで力を伝えることで、微妙な制球力がつきやすい などがあげられる。 <フィニッシュ> ☆☆☆☆ 投げ終わった後に、振り下ろした腕は身体にしっかり絡んでいる。また地面の蹴り上げも強く蹴り上げられており、前へもしっかり体重が乗っている。またそれでも投げ終わった後に、バランスを崩すようなことはない。 (投球フォームのまとめ) フォーム序盤は大人しい始動なのだが、フィニッシュの時点では実に躍動感のあるフォームに変わっている。投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点では、「着地」「体重移動」に優れる反面「球持ち」「開き」に課題を抱えるなど、まだまだ実戦的だとは言い難い。またお尻が一塁側に落とせないフォームだけに、カーブで緩急・フォークなどの縦の変化で空振りが期待しずらい面があり、伸び悩む要素を秘めている。 楽天 (最後に) 現状、まだまだ実戦力に欠け、素材型であることは否めない。ただ素材型にありがちな、球は速いが制球力に不安があると云うタイプではないので、素直に資質を伸ばして行ける可能性は高い。 ただその一方で、緩急でアクセント・縦の変化で空振りをと云う期待が抱き難いフォーム故に、現状のスタイルから、何処まで進化を遂げられるかは微妙だと云わざるえない。そのため、伸び悩む要素も充分秘めているし、それほど細かい制球力やマウンド捌きにも秀でたタイプではないだけに、少し時間がかかる可能性は否定出来ない。 また腰などの故障歴などもあった選手のようなので、スカウトとしては少々二の足を踏む球団も出てくるかもしれない。ただ純粋に素材と見た時は、高卒でプロに行けるだけの資質はある選手だろう。極めて高い評価は出来ないが、高卒でぜひプロに来て欲しい大器だった。 蔵の評価:☆☆ この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2009年・夏) |