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横山 貴明(早稲田大)投手 180/79 右/右 |
「ビックリするぐらい伸びなかった」 聖光学院時代には、☆☆ をつけて、高校から直接プロに行った方が良かったのではないかと思っていた 横山 貴明 。これだけの能力をすでに持ってすれば、順調に大学で伸びれば卒業時には上位指名で消えるだけの投手に育っているのが常である。しかし終わってみれば6位指名、これも地元出身の選手だからという地元枠での指名であり、実際のところは育成枠に近い評価だと考えて好いだろう。そんな 横山 貴明 の大学での投球を考察してみた。 この春までに積み上げた成績は、通算 20試合 1勝3敗 防御率 3.02 。この秋に1勝を加えているが、その大半はリリーフでの登板だった。実績的には、大学からプロに指名される投手の成績ではない。 (投球内容) ワインドアップから、振りかぶって投げる本格派。 ストレート 常時130キロ台後半~140キロ台中盤 ボールが動いているわけではないと思いますが、この選手のストレートは球速表示ほど手元まで伸びて来る感じが致しません。それでも三振の多くは、ズバッとコースに決まったストレートであることが多いはず。 細かいコントロールはありませんが、大雑把に両サイドにボールを散らせます。この秋も10回2/3イニングで4四死球ですから、特にアバウトな制球が改善されたようには見えません。 変化球 スライダー・フォーク・ツーシーム・カーブ 結構球種をいろいろ投げているように見えますが、カウントを整えるのも相手を仕留めるのもストレートが大半を占めます。変化球の精度・キレに乏しく、打者の空振りを誘えるような絶対的な球種もなければ、確実にカウントが取れるという信頼できる変化球は見当たりません。この辺は、10回2/3イニングで、奪三振が5個しかないことからも伺えます。 その他 元々牽制もまずまず鋭いですし、クィックも1.2秒前後と基準レベルで、フィールディングも悪くありませんでした。特に投球以外に、何か大きな欠点があるようには見えません。 マウンド捌きも、特に「間」を意識するとか微妙な出し入れがするとか、そういった細やかさはありません。淡々とストライクゾーンにボールを投げ込んできます。 (投球のまとめ) すでに高3の時点で、このぐらいの球は投げていましたし、球質などは高校時代の方が勝っていたとさえ思います。変化球レベル・コントロールも改善されていませんし、大学では完全に伸び悩んでいたのは間違いありません。元々プロ級の素材だったので、環境が変われば再び輝きを取り戻すことを期待しての指名でしょうか? (投球フォーム) そういった意味では、投球フォームに可能性が残されていれば、それも期待できるかもしれません。 <広がる可能性> ☆☆☆ 引き上げた足は比較的高い位置にあるのですが、ピンとしっかり伸ばしきれないでいるので、お尻の落としに甘さが残ります。そのため身体を捻り出すのに十分なスペースが、確保出来ているとは言い切れません。 また「着地」までの粘りも平均的で、身体を捻り出す時間も並。いろいろな球種は投げられますが、どれも中途半端なのはこの辺の動作がすべて中途半端だからではないのでしょうか。 <ボールの支配> ☆☆☆ グラブを最後まで胸元に抱えられ、両サイドの投げ分けはまずまず。足の甲の地面への押し付けが一瞬で、充分に押し付けられているとは言えません。そのためボールも、真ん中~高めに集まりやすいのでしょう。「球持ち」は悪くは見えませんが、指先の感覚はもうひとつ。このへんが、アバウトなコントロールの要因ではないのでしょうか。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻の落としに甘さが残りますが、ある程度は落とせているので、カーブやフォークといった球種を投げても大きな負担にはなりません。そういった意味では、肘への負担は悲観するほどではないはず。 腕の角度はありますが、送り出しに無理は感じないので、肩への負担も大きくはないように思います。そういった意味では、肩・肘への負担は少ないのではないのでしょうか。ただ血行障害や股関節痛などの大きな故障をしており、別の部分に負荷がかかっていたようです。股関節に関しては、一塁側に大きく流れる動作に問題があったのではないのでしょうか。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りは悪くなく、体の開き抑えられています。そういった意味では、コースに投げればそうは打たれないのでしょう。その辺が秋の、10回2/3イニングで被安打3本という少なさにつながっているのではないのでしょうか。 腕も強く振れて身体に絡んできて、速球と変化球の見極めはつき難いはず。その割に変化球が見極められてしまうのは、変化球のキレや生かし方に問題があるのでは。投げるときに一塁側に体が大きく流れてしまっており、ボールに体重が乗せられていません。この辺が、球速の割に球質が伴わない要因だと考えられます。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では「体重移動」に課題があり、それ以外は平均的だと考えられます。特筆すべきポイントはありませんが、思ったほど大きな欠点はありませんでした。 肩・肘への故障のリスクは少ないのですが、血行障害や股関節痛みなどの故障の経験があり、制球にも課題も残りリスキーな素材型であることは否めません。 (最後に) 大きな故障なども経験し、この4年間では満足の行く実績を残せませんでした。あくまでも高校時代の実績と素材としての魅力を評価されての指名であり、今の実力が認められたわけではないでしょう。 今後大学時代不完全燃焼で終わった悔しさを、いかにプロの世界でぶつけて行けるのか、改めて期待して見守りたいと思います。そのため高校時代は ☆☆ をつけましたが、今回は指名リストには名前を残せませんでした。プロでの立て直しに、期待しています。 (2013年 春季リーグ戦) |
横山 貴明(早稲田大)投手 180/79 右/右(聖光学院出身) |
(どんな選手?) 福島の聖光学院時代から、プロ注目の本格派でした。もし高校時代に、プロ志望届けを出していたら、指名されたのではないかと思えるほどの選手でした。今春からリーグ戦二日目の先発を任され、1シーズンを乗り越えました。5試合に登板し、1勝2敗 防御率 5.47と、高校時代の彼の力を考えると、まだまだ物足りない内容。 (投球内容) 均整の取れた体格、投球フォームから、常時130キロ台後半~MAX144キロを記録していました。ただ残念なのは、球速はソコソコも、実際には球速ほど球が手元まで来ていない感じで、球質がイマイチな点。変化球も、カーブ・スライダー・チェンジアップ・フォークなどもあるのでしょうか?曲がりがドロンとして、鋭くキレないのが気になります。 実際には、縦の変化が多いのでイニング以上の奪三振は奪えておりますが、上のレベルでは厳しい球のキレです。細かく見てみると、右打者には外角中心にボールを集めて、投球を組たることができております。しかし左打者への制球はアバウトで、被安打も左打者に打たれるケースが目立ちます。左打者への投球が、今後の大きな課題になるのではないのでしょうか。 牽制は鋭いのですが、クィックは1.25~1.30秒台と、やや遅い気がします。投球をまとめるセンスなどは並で、格別そういったマウンド捌きに光るものは感じませんでした。 投球フォームも、やや前にツッコミがちで、お尻の落としと着地までの粘りが、甘くなっています。そのため縦の変化の落ちも鈍いですし、投球フォームにも嫌らしさが足りません。 グラブを内に抱えられているので、両サイドへの制球は安定しやすいです。足の甲の押し付けもできているのですが、その時間が極めて短い。そのため後の動作に、しっかりネネルギーが伝わっていません。ですから体重移動がイマイチで、ボールの手元までの伸びに欠けます。 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点いえば、「着地」までの粘りは平均的、しかし「球持ち」「開き」「体重移動」イマイチで、まだまだ発展途上の投手であることが伺えます。せっかくの高い資質を、まだ活かせていないなと言うのが率直な感想。 (今後は) 現状の防御率 5.47 が示すとおり、それが彼の力です。これからは、肉体的な資質を伸ばすこと以上に、理にかなった投球フォームや技術を身につけることによって、パフォーマンスの質の向上に務めて欲しいと思います。 かなり志を高く持って努力して行かないと、殻は破って行けないでしょうし、大学からのプロ入りは厳しいかもしれません。高校時代から期待している投手だけに、あえて苦言を呈したいと思います。 (2011年 春季リーグ戦) |
横山 貴明(福島・聖光学院)投手 180/78 右/右 |
「東北で、最もその成長を楽しみにしていた右腕。」 下記の寸評にもあるように、昨年の夏の大会までの模様を見て、北海道・東北筑で最もその成長を期待していたのが、この 横山 貴明 である。その成長ぶりを見に、春季東北大会まで足を運ぶ、私の観戦する試合では残念ながら登板がなかった。それだけに、この夏に彼の勇姿を見られることが、私にとって大変な楽しみであった。 (投球内容) 昨年までは、恵まれた体格をダイナミックに生かした力投派だったが、今年は岩隈(楽天)テイストのバランスを重視したフォームに変わっている。そのため春先までの評判は、実戦力は増したが迫力はなくなったとの評価も少なくなかった。 ストレート 常時140キロ前後~MAX143キロ 体幹や下半身の成長があるのか、無理に上体を振らなくても昨夏よりも速い球を、コンスタントに投げ込めるようになってきた。体重がグッと前に乗って来る勢いのある球には、手元までの伸びだけでなく、ある程度の球威も兼ね備えたボリューム感のある球質になっている。まさに、プロを意識出来る球質だと評価出来るであろう。 カーブ 105キロ前後 この投手の好いところは、一辺倒に押すだけでなく、カーブやチェンジアップを混ぜて引く投球が出来ることだ。こういった緩急を使ってカウントを取ることで、投球の幅を大きく広げることが出来ている。 スライダー 125キロ前後 カーブがある分、それほどスライダーの役割が大きくない。また、このスライダーが、高めの甘いゾーンに浮くことが多いだけに、その辺が気になる。速い球・遅い球をより生かすためには、中間球であるスライダーに磨きをかけることが、これからの重要な課題になる。 チェンジアップ 110キロ台後半 左打者の外角に、チェンジアップを使うことが多いのだが、この球が高めに浮いてしまうケースが多いのが残念だ。速球は高めでも勢いがあれば好いが、変化球を真ん中~低めに集めるのは、投球の基本。それだけに、彼のスライダーやチェンジアップが浮くのが、今後の大いなる課題の一つだと言えよう。 その他 牽制はまずまず鋭く上手く、クィックは1.1~1.3秒ぐらいと基準レベル。フィールディングは、並~それ以上だろうか。元々は、素材型の力投派といった感じだったのが、この一年でだいぶ実戦型の投手へと成長し始めてきた。ただ、元々マウンド捌き・野球センスに秀でたタイプと云うよりは、ポテンシャルで圧倒するタイプだったので、それほど器用と云うほどではない。こういったタイプでは、近年では涌井 秀章(横浜高-西武)などがいる。 <右打者に対して> ☆☆☆ アウトコースに、速球・カーブ・スライダーなどを集めて来る。インコースの胸元も意識的に突ける制球力はあるので、両サイドへの投げ別けは悪くない。 ただ開きが早いのか?それほど甘くないコースの球でも、痛打を浴びることが少なくない。特に速球は打たれることがないのだが、変化球を打たれるケースが目立つ。何か癖やら腕の振りで、相手が変化球が来るのがわかってしまっているのかもしれない。 また現状は、右打者に対し落ちる系の球はないようで、これも将来的には身につけたいところだろう。ただ昨年は三振も取れるが、その分被安打も多かった。しかし今年は、大幅に被安打も減り、課題は確実に克服しつつある。 <左打者に対して> ☆☆☆ 左打者に対しては、アウトコースに速球とチェンジアップ、インコースに速球を見せつけて投球を組み立てているようだ。ただ右打者同様に、チェンジアップが高めに浮く傾向があるのと、それほど甘くないコースの球を痛打されるところは変わらない。 現状は、速球で空振りが取れる威力はあるのだが、変化球で仕留められるものがないところが、今後に向けての課題の一つとしてあげられる。 (投球のまとめ) けして変化球レベルが低いとは思わないが、現状は速球の威力が図抜けている。また変化球の曲がり・キレ以上に、高めに浮く傾向が強く、その球を痛打されることが多い。昨夏までは、球の威力に頼った力投派であったが、今年に入り両サイドに投げ別けられるようになり、だいぶ投手らしくなってきた。 ダイナミックな迫力は薄れたものの、それでも安定して球速を大幅にUPさせるなど、確かな成長が感じられた。課題はまだまだ多いが、順調に来た一年ではなかったのだろうか。 楽天 (投球フォーム) 上記の動画と下記にある下記にある寸評を参考にしながら、昨年から如何にフォームが変わったか考えてみたい。 <踏みだし> ☆☆ 昨年とあまり変わらないのは、ノーワインドアップで構えた時に、足の横幅も狭く、それでいて足も引いて立っていないので、構えた時のバランスがヨロシクない点だ。 そこから足をゆっくりと引き上げるようになり、昨年のようにフォームの序盤から勢いを付けるような躍動感はなくなり、如何に先発を意識したスタイルに変わってきた。また足の引き上げも低く、この点でも昨年よりも好いのと云われると微妙だろう。 昨年は、最初から全力で投げ込むスタイルだったが、今年は静かにゆっくりと入るスタイルに大きく変わっている。 <軸足への乗せとバランス> ☆☆☆ 昨年に比べると、軸足一本で立った時に膝から上がピンと伸びきることなく、余裕を持って立てているのは好い。膝から上がピンと伸びきって余裕がないと 1,フォームに余計な力が入り力みにつながる 2,身体のバランスが前屈みになりやすく、突っ込んだフォームになりやすい 3,軸足(写真右足)の股関節にしっかり体重を乗せ難い などの問題が生じる。昨年までは、膝に余裕がない割に、バランスは上手く保って立っていたのだが、今年のフォームは膝に余裕が出来た反面、背中が直立しているのに、足の上げは低いと云うバランスの悪い立ち方になっている。 <お尻の落としと着地> ☆☆☆ 昨年ほど足を二塁側に落とすことはなくなったが、お尻の一塁側への落としは悪くない。お尻をしっかり落とせない投手は、ブレーキの好いカーブや縦に腕を振るフォークの修得に苦労しやすいことにつながるからだ。現在は、フォークなど縦の変化に乏しいものの、フォーム構造上、今後縦の変化を修得出来る可能性は充分あるだろう。 また上体が前に突っ込みなのは気になるが、着地までの前への一伸びは出来ており、着地のタイミングが早すぎることはない。着地を遅らせる意味としては 1,打者が「イチ・ニ~の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ~の」の粘りこそが、投球動作の核となる。 2,軸足(写真後ろ足)~踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。 3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放れる下地になる。 通常フォームと言うのは、上半身の回転と下半身の回転が一致し、最大限のエネルギーが発揮出来る箇所がある(ボクシングのストーレートを打つとイメージしやすい)。野球の場合、その回転の一致を見つけることが、最も理想的なフォームであるように思える。 ステップが広すぎず、狭すぎず。すなわち重心が立ち投げにならない程度で、それでいて深く沈みすぎない箇所と言うのが必ず存在する。そのため日本古来の指導だと、膝小僧に土が着く程の重心の沈み込みが良いとされたが、それに関しては私は沈み込み過ぎだと考える。どうしてもステップが広過ぎると、踏み込んだ足と軸足の間にお尻が沈んでしまい、前に体重が乗って行かないからだ。その辺は、フィニッシュの動作を見ていると、何処が適正だか見えて来る。ただ間違っても重心の沈み込み過ぎを回避するために、お尻を一塁側に落とさないで良いと言う、浅はかな指導だけは避けてもらいたい。お尻の一塁側への落としとは、その深さではなく、むしろ横のポジションニングを指しているからだ。 <グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆☆ グラブは最後まで身体の近くに抱えられている。グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになるのだ。 ただ足の甲は、昨夏まではつま先が地面を捉えていたが、今年は完全に地面から浮いて回転してしまっている。足の甲で地面を押しつける意味としては、 1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ 2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える などの働きがある。彼の球が高めに浮く要因の一つに、この足の甲の押しつけが出来ていないことも要因としてあげられるだろう。 <球の行方> ☆☆☆ 前の肩と後ろの肩が、真っ直ぐ打者に伸びてしまっており、打者からはボールが見えてしまっている。また着地の時点でも、ボールを持っている腕は打者から見えており、球の出所が早いフォームになってしまっている。 腕の角度には無理がなく、身体への負担は小さいので、本格派としては評価出来るポイント。またボールをしっかり前で放せる球持ちの良さがあり、しっかりバックスピンをかけて手元まで伸びのある球質を実現している。そのためストレートでも、しっかり空振りが誘えるのだ。 ボールを長く持つ意味としては 1,打者からタイミングが計りにくい 2,指先まで力を伝えることでボールにバックスピンをかけ、打者の手元まで伸びのある球を投げられる 3,指先まで力を伝えることで、微妙な制球力がつきやすい などがあげられる。 <フィニッシュ> ☆☆ 振り下ろした腕は、しっかり身体に絡んで来ている。ただ足の甲の押しつけがないので、充分に下半身のエネルギーを伝えることが出来ていない。そのため上体が突っ込んで浮いてしまい、球が上吊りやすい。またそのため、投げ終わった後のバランスも、一塁側に流れてイマイチだ。 (投球フォームのまとめ) 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点で見ると、「球持ち」は素晴らしいが、「開き」と「体重移動」に課題が抱えていることがわかる。まだまだ、投球フォームの観点からすると、制球力の向上は見られる動作になっているが、発展途上の選手だと言えよう。 (今後は) 昨年に比べると、ダイナミックさは薄れたものの、着実に実戦的な投球が出来るようになり、かつ球速なども上げることに成功。 開きの早いフォーム・変化球が高めに浮くなど、実戦力に関して、まだまだ発展途上の印象は受けるが、この一年間の確かな成長と、まさにドラフト級のストレートは、高卒からプロに入るべき素材だろう。 すぐに一軍と云う総合力の高さはまだないが、自らの資質に奢ることなく伸ばせてきた点も評価したいし、土台となるフォームからも、縦の変化を覚えて、投球スタイルを更に広げることも可能だと判断して、指名リストに名前を載せてみたいと思う。指名されても中位~下位指名にはなると思うが、個人的には非常に将来楽しみな高校生の一人として、期待して今後も見守って行きたい。 蔵の評価:☆☆ この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2009年・夏) |
横山 貴明(福島・聖光学院)投手 180/75 右/右 |
「ダイナミックだね。」 2009年度の福島には、非常にスケールの大きな楽しみな投手がいる。その男の名前は、横山 貴明 。180センチ台の恵まれた体格をダイナミックに使って来るその姿に、高い将来性を感じさせる。 (投球スタイル) 甲子園での映像は、少々スピードガン表示がおかしいのかな?と云う疑問になる。現在のMAXは、141キロ。その数字に見合うだけの球を、この男は投げ込んで来る。 ストレート 甲子園での映像では、MAX137キロ。しかし全身をダイナミックに使い、しっかり体重の乗った時のストレートは、非常に手元まで伸びてくる。球速表示云々と云う問題よりも、その球質に、非常に期待出来るものがある。 カーブ 100キロ前後 首脳陣も大きく育てようと云うことなのだろうか?主な変化球は、緩急・カウントを稼ぐ意味での、カーブとのコンビネーションで構成されている。 チェンジアップ? このカーブのような球速でもう一つ、何かチェンジアップのような少しシュート回転して落ちて行く球が存在する。チェンジアップにしては遅すぎるのだが、明らかに抜いたような球を左打者に投げる。この球が、中々効果的なのだ。 その他 クィックは、1.1秒台と基準以上で、中々素早い。更にフィールディングも中々上手い。試合を組み立てる先発型と云うよりは、現状エネルギーを集中してぶつけるリリーフタイプと云う気がするが、投球以外のレベルも中々高い。 甲子園では、僅か1イニングのみの登板。正直細かい制球力・配球に関してはよくわからなかった。ただ左打者に関しては、両サイドにしっかり投げ別けることが出来ていた。また夏の予選でも、8回1/3イニングで1四死球と云うことで、四球で自滅ようなタイプではないようだ。 またイニング数を超える奪三振があるように、球の威力は図抜けたものがある。ただ同時に、イニング数を上回る被安打も打たれており、フォームや配球に課題を抱えている可能性も高い。 (投球フォーム) いつものように「野球兼」の2008年12月30日更新分に、彼の投球フォーム連続写真が掲載されているので、そちらを参照して頂きたい。 <踏みだし> ☆☆☆ 写真1を見ると、足の横幅は狭く、それでいて足も引いていないので、あまり投球の意図がよくわからない。それでも写真2までの足の引き上げを見ると、足を引き上げる高さ・その勢いはまずまずで、それなりにワインドアップからエネルギー捻出がなされている。 <軸足への乗せとバランス> ☆☆☆☆ 再度、写真2の軸足の膝から上に注目して欲しい。膝自体には、それほど余裕がある感じはしないが、背中を上手く傾けバランス好く立てている。膝から上がピンと伸びきって余裕がないと 1,フォームに余計な力が入り力みにつながる 2,身体のバランスが前屈みになりやすく、突っ込んだフォームになりやすい 3,軸足(写真右足)の股関節にしっかり体重を乗せ難い などの問題が生じる。彼の場合、背中を後ろに傾けることで、バランスと軸足の股関節にしっかり体重を乗せることが出来ている。 通常フォームと言うのは、上半身の回転と下半身の回転が一致し、最大限のエネルギーが発揮出来る箇所がある(ボクシングのストーレートを打つとイメージしやすい)。野球の場合、その回転の一致を見つけることが、最も理想的なフォームであるように思える。 ステップが広すぎず、狭すぎず。すなわち重心が立ち投げにならない程度で、それでいて深く沈みすぎない箇所と言うのが必ず存在する。そのため日本古来の指導だと、膝小僧に土が着く程の重心の沈み込みが良いとされたが、それに関しては私は沈み込み過ぎだと考える。どうしてもステップが広過ぎると、踏み込んだ足と軸足の間にお尻が沈んでしまい、前に体重が乗って行かないからだ。その辺は、フィニッシュの動作を見ていると、何処が適正だか見えて来る。ただ間違っても重心の沈み込み過ぎを回避するために、お尻を一塁側に落とさないで良いと言う、浅はかな指導だけは避けてもらいたい。お尻の一塁側への落としとは、その深さではなく、むしろ横のポジションニングを指しているからだ。 <お尻の落としと着地> ☆☆☆ 写真3を見ると、やや引き上げた足を二塁側(見ている我々の方角)に送り込むことで、お尻の一塁側への落としは少し甘くなっている。しかしお尻の落としとしては、けして悪くない。お尻をしっかり落とせない投手は、ブレーキの好いカーブや縦に腕を振るフォークの修得に苦労しやすいことにつながるからだ。 また写真4の着地までには、足を前にステップして着地のタイミングを遅らせることは出来ている。ただ気になるのは、着地の時につま先から着地する。すべての動作の基本は、野球に関わらずカカトから、これは、素人でも超一流のアスリートでも共通の原理である。特に下半身の安定が求められる野球の動作では、これは基本中の基本だ。こういった基本が出来ない選手は、プロの世界では一流になりきれない。また着地を遅らせる意味としては 1,打者が「イチ・ニ~の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ~の」の粘りこそが、投球動作の核となる。 2,軸足(写真後ろ足)~踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。 3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放れる下地になる。 <グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆☆ 写真6のグラブに注目してみると、グラブは最後まで身体の近くに抱えられている。グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになるのだ。 ただ気になるのは、写真5の右足スパイクに注目してみると、足のつま先のみが地面を着いて回転しており、足の甲で地面を押しつけることが出来ていない。足の甲で地面を押しつける意味としては、 1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ 2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える などの働きがある。ただ彼の場合、この欠点を次の動作である、リリースを我慢することで、補っている。 <球の行方> ☆☆☆ 写真3を見ると、前の肩と後ろの肩を結ぶラインが、適度に角度がついているように見える。しかし実際は、かなり真っ直ぐ打者に伸びてしまい、球を隠すことは出来てない。また写真4の着地の段階でも、ボールを持った腕は、打者から見え始めている。すなわち、身体の開きは早く、球の出所が見やすいことを意味している。 ただ写真5の腕の振りを見ると、腕の角度には無理がなく適正なのがわかる。また非常にボールを前で放すことが出来ており、球持ちが良いこともわかるのだ。 ボールを長く持つ意味としては 1,打者からタイミングが計りにくい 2,指先まで力を伝えることでボールにバックスピンをかけ、打者の手元まで伸びのある球を投げられる 3,指先まで力を伝えることで、微妙な制球力がつきやすい などがあげられる。彼の制球が良いのと、非常に球質に優れているのは、この非凡な球持ちの良さによるところが大きいのだろう。 <フィニッシュ> ☆☆☆☆ 写真6を見ると、腕がしっかり振られる身体に絡んでいるのがわかる。腕の角度が適正で、球持ちが良かったことの証だ。また前への体重乗りも良く、踏み出した足の上に、上体がしっかり乗ることが出来ている。投げ終わったあとも、なんとかバランスを崩すさず踏ん張ることが出来ている。フォームの最後まで、しっかりした動作が出来ており、理にかなったフォームであることを証明している。 (投球フォームのまとめ) フォーム全体に破綻がなく、理にかなったフォームでまとめられている。投球動作の4大動作である、着地・球持ち・開き・体重移動の観点で見ると、球持ち・体重移動などには、非凡なものを感じさせる。ただし、大きな欠点として開きが早い点が、今後の大きな課題としてあげられる。 (最後に) 身体をダイナミックに使える筋力の強さ・大舞台でも動じることなく自分の能力を発揮出来る精神的な強さなど「強さ」に特徴のある投手。また動作の一連の流れ、腕の振りの柔らかさなど素材の持つ「柔らかさ」にも魅力を感じる。 あとは、相手に対する投球の「イヤらしさ」や自分に対しての「厳しさ」などを磨きつつ、更なる球威・球速UPを目指して「速さ」を追求して欲しいと思います。 素材としては「一級品」であり、一冬超えた成長が非常に楽しみな素材だろう。私の知る限り、北海道・東北地区では、最も期待したい選手。ぜひ春季大会にでも、その勇姿を見てみたい。 この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2008年・夏) |