13dp-25


 
amanatu.com




高梨 裕稔(山梨学院大)投手 187/82 右/右 
 






                  「1年ぐらい漬け込めば」





昨年までは、綺麗なフォームから投げ込む正当派右腕といった感じだったが、何か綺麗なだけで物足りない印象を受けていた。しかし今年に入り、テイクバックを大きく取り、腕をダイナミックに振れるまでに成長。投球フォームに躍動感と力感が加わってきた。イメージ的には、岸 孝之(西武)を彷彿とさせる。

(投球内容)

ノーワインドアップから、足を勢い良く高い位置まで引き上げてきます。

ストレート 常時140キロ台~140キロ台中盤

 独特の糸を引くような球筋が、打者の低めやコーナーに決まります。好調時のボールは序盤戦は手がつけられないのですが、それを長く持続するスタミナがありません。試合ならば中盤ぐらいには勢いが鈍りますし、シーズンも終盤になるとガクッとパフォーマンスが下がります。元々投球術や細かいコントロールまではないので、ボールの勢いが鈍ると誤魔化しが効きません。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ?

 腕の抜けは好いので、ブレーキの好いカーブが投げれます。体の近くで鋭く曲がるスライダー、それにチェンジアップのような軽く沈む球もあります。ストレートを軸に、キレの好い変化球を織り交ぜてコンビネーション打ちとるタイプ。ただここぞという時に、狙って三振を奪えるほどの変化球はありません。

その他

 牽制やフィールディングは平均的で、クィックも1.1秒台と基準レベル。特に大きな欠点はありませんが、それほど身体能力は優れていません。

 序盤戦は、ズバッと低めやコーナーに決まる爽快感があります。しかし「間」を上手く使ったり、微妙な出し入れや投球術で相手を抑えるピッチングセンスも感じません。

(投球のまとめ)

 序盤戦の投球を見ていると、上位24名に入るだけのボールを投げています。しかしそれが中盤ぐらいから陰りが見えますので、一試合トータルで観ると見劣りします。まして観戦する時期によって、投球内容は大きく変わるようです。

 まだビシッとしていない部分もあるので、プロで一年ぐらい基礎体力作りに励む必要性を感じます。しかし体が出来た時に、どんな球を投げるようになっているのか、大いに期待を抱かせる素材としての魅力があります。





(投球フォーム)

今度は、投球フォームの観点から、彼の将来像を考えてみます。

<広がる可能性> ☆☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側に落ちないように見えます。しかしその後お尻はしっかり落ちてゆくので、カーブで緩急をつけたり、フォークなどの縦の球種を投げるにも無理がないように見えます。

 「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間はそれなり。いろいろな変化球を投げられる下地はありますが、まだ粘りが並なので、鋭さ・曲りの大きさも平凡なのではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲での地面への押し付けも出来ているように見え、ボールも低めに集まります。ただ「球持ち」も悪くないように見えますが、イニングが進むにつれボールがバラつきます。それでも春のシーズンは、61回2/3イニングで四死球は17。四死球率は 27.6% と基準であるイニングの1/3以下に抑えられており、コントロールミスで自滅するタイプではないことがわかります。

<故障のリスク> ☆☆☆

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークを投げても肘への負担は少ないはず。腕の振り下ろしを見ると、ボールを持っている腕は上がり、グラブを抱えている腕は下がっており、腕の送り出しに負担は感じなくはありません。大きなテイクバックを取って投げる投手でもあり、故障には充分注意して取り組んで欲しいと思います。

<実戦的な術> ☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的で、体の「開き」も抑えられており、打者としては特に合わせやすいフォームではないはず。

 ただ腕の振りが柔らかい割には、振り下ろした腕が体に絡んできません。もう少し「強く」「鋭く」腕を振れるようになると好いですね。更にボールへの体重の乗せも発展途上であり、まだ打者の手元までの球威が持続しません。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、すべてが平均的で、特に際立って優れている点も劣っている点もありません。

 制球を司る動作には優れ、故障のリスクはそれほど高くないのは評価できるポイントでしょうか。この投手の場合、むしろ滑らかな体重移動と柔らかい腕の振りを評価すべきフォームだと考えます。



(最後に)

 肉体的にも技術的にも発展途上ですが、柔らかい腕の振りと上積みを期待させる素材は素晴らしいです。一年ぐらいプロで鍛えたら、見違えるようになるのではないか そんな予感が漂います。

 恐らくドラフトでも、3位ぐらいの中位指名が期待できる素材ではないのでしょうか。現状は絶対的な凄みは持続できませんが、それを短期間でも実現できる能力を考えると、それなりに高く評価すべき選手なのではないのでしょうか。2年目ぐらいからは、ローテーション投手としての活躍が期待できます。


蔵の評価:☆☆☆


(2013年 平塚合宿)










高梨 裕稔(山梨学院大)投手 185/75 右/右 (土気出身) 

昨年のこの大会で始めてみて、140キロ台を連発していたので、それから気にしている投手です。ただ今日は、135~140キロ台前半でしたが、ボールの走り、コントロール・テンポ等悪く、昨年見た時に比べると劣る内容でした。変化球も、カーブ・スライダー・フォークなどひと通りあるのですが、何かこれは!という図抜けた球がないのが残念です。

 この投手、まだフォームがピタッとハマっていないので、この上半身と下半身のバランスが上手く連動するようになると、素晴らしい投手になると思います。来年までに、そのフォームを見つけることができるのかが、一つプロ入りへの条件ではないのでしょうか。いかにも、正統派の投手といった感じの投手です。

(2012年 横浜市長杯)