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石川 柊太(創価大)投手 183/75 右/右 
 






                     「意外に良い投手だった」





新東京リーグの優勝を決める東京国際大戦、その第一戦の先発を任されたのが、4年生まで殆ど無名だった 石川 柊太 。創価大に、140キロ台のボールを投げる4年生がいるとの情報が入り、密かに登板しないか期待しての観戦だった。しかしそれは、あくまでも試合を決した時のリリーフでの登板ではないかと。まさか、先発での登板は期待していなかった。しかしその投球は、非常に実戦的で安定していたのに更に驚かされた。



(投球内容)

 足を引き上げて体を捻った時は、あの 野茂 英雄 を彷彿させる体の動き。その後は、地面に着きそうなところから、グ~と前に足の伸ばすフォームは、西武のリリーフで活躍した 森 慎ニ 投手に良く似ている。

ストレート 常時135~91マイル(145.6キロ)

 大学選手権では、常時135~139キロ止まりでした。これは球速表示が厳しい東京ドームだったというのも大きかったと思います。東京ドームと並ぶ、球速表示が厳しい球場で知られる太田Sでも145キロを何度か計測し、私のガンでもMAX91マイ(145.6キロ)を記録しました。

 この選手普段はそれほど球速を出さないのですが、要所では140キロ台中盤を連発できる能力を秘めています。そういった投球が、大学選手権で見られなかったのは残念。またこの選手、ボールが ホールトン(巨人)のように、ストライクゾーンの最も高い位置に集まります。高めの球はダメだと言われますが、彼の球はストライクゾーン一杯一杯の球筋なので、どうしても打者がボールの下を叩いて打ち上げてしまったり、きっちり捉えきれない強味があります。また普段のボールに見栄えはしませんが、力を入れた時のボールには見るべきものがあります。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ・フォークなど

 115キロ前後の変化球が、カーブのような軌道を辿ります。しかしもう一つ、更に10キロぐらい遅い緩い球が存在します。2つのカーブを使い分けているのか、速い方はスライダーで遅い方はカーブなのかもしれません。ここでは、速い方はスライダーだと表記します。リーグ戦では、左打者相手に結構チェンジアップのような球で、カウント稼いでいました。それに殆ど投げませんが、縦に鋭く落ちるフォークもあるようです。将来的には、この球をもっと投球に織り交ぜて来るのではないのでしょうか。

その他

 牽制は殆ど見られませんし、フィールディングも平均的。クィックは、1.05~1.30秒前後と結構バラつきを感じます。投球以外の部分は、まだまだ改善の余地がありそう。

(投球のまとめ)

 素材型のような荒々しさはなく、投球も両サイドにボールを散らせつつ、高めのストレートと変化球とのコンビネーションで打ち損じを誘います。普段は130キロ台後半程度ですが、要所ではイメージを払拭するような球を投げ込み、投球にメリハリをつけます。





(投球フォーム)

独特のフォームをしていますが、一体どんな意味があるのか考えてみましょう。

<広がる可能性> ☆☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側には落とせません。そのため見分けの難しいカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球は構造上は向いておりません。それでもカーブを、結構多く織り交ぜてます。

 地面に着きそうなところまで足を伸ばし、そこからグィッと足を伸ばし「着地」を遅らせます。これにより体を捻り出す時間は確保できているので、カーブやフォークといった球種以外ならば、充分ものに出来るのではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあるので、両サイドへのコントロールはしやすいはず。足の甲でも地面をしっかり捉えているのですが、「球持ち」が浅いのでボールが上吊りやすいのだと思います。

<故障のリスク> ☆☆☆

 お尻が落とせない割に、カーブを多投するので肘への負担は少なくありません。また将来的にフォークなどを武器にするようだと、更に肘の故障が心配になります。

 振り下ろす腕の角度には無理はないので、肩への負担は比較的少なそう。いずれにしても、故障には充分注意して欲しいと思います。

<実戦的な術> ☆☆☆

 「着地」までの粘りは悪くないので、体の「開き」も平均的。その辺を更に隠そうと、体に大きな捻りを加えます。

 振り下ろした腕はあまり体に絡んで来ないので、速球と変化球の見極めをされてしまうかもしれません。ただしボールには適度に体重は乗せられているので、もう少しウエートを増やし球威をつけたいところ。

(投球フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、いずれも平均的で突出するものはありません。その変わり、大きな欠点もないと言えるでしょう。

 制球を司る動作も悪くないので、ボールをもっと押し込めるようになると良さそう。気になるのは、体に負担のかかるフォームをしているので、故障には注意したい。


(最後に)

 まだウエートや筋力が足りないせいか、ボールに力強さが欠けます。4年生まで公式戦に登場しなかったように、細かい部分で未熟なところが見え隠れします。素材としての凄みはありませんが、筋は悪くありません。まずは社会人などで、更なるパワーアップや技術のレベルアップを図り、経験不足を補って欲しいところ。今後は、2年後のプロ入りを目指すそういうことになるのではないのでしょうか。


(2013年 大学選手権)