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 岩崎 優(国士舘大)投手 184/77 左/左
 






                   「ストレートに磨きがかかれば」





瞬間風速的に140キロ台を超えることもあるが、投球全体の球威・球速はドラフト候補として物足りない。投球を適度にまとめられるマウンド捌き、変化球レベルなどを考えると、ストレートに磨きがかかってくれば、指名されされそうな惜しい投手だと言えよう。

(投球内容)

左スリークオーターから、低め目に集めて打たせて取るのが身上。

ストレート 135~MAX89マイル(142.4キロ)

 指先までボールに力を伝えられるリリースなので、ボールは球速以上には感じます。立ち上がりにボールが上吊ったり、ストレートの球筋が安定しない部分があります。しかしイニングが進むにつれ、徐々に安定してきます。また内角を強気に突くこともでき、左腕ですが空振りよりも内角・低めに集めて打たせて取ります。

変化球 スライダー・スクリュー

 ストレートは結構暴れてアバウトな部分があるのですが、スライダーが低めに集まり、ここでしっかりカウントを整えます。この選手は、ストレートよりもスライダーの方が安心してカウントを取れる球。打者の空振りを誘うような鋭いキレはありませんが、この球が最大の武器。

 この他に、右打者外角にスクリュー系のボールを織り交ぜてきます。この球にも絶対的な威力はないものの、ピッチングを広げたりカウントを整えたりする働きがあります。

その他

 あまり牽制を織り交ぜて来ないようですが、クィックは1.05秒前後と左投手としては早い。それだけに一塁ランナーとしては、中々スタートが切り難いのではないのでしょうか。

(投球のまとめ)

 立ち上がりの不安定さを乗り越えると、徐々に調子を上げてくるタイプ。ストレートの球筋は多少アバウトですが、スライダーやスクリューなどの変化球が安定しているので、試合を適度にまとめてきます。元々マウンド捌きがよく、投球ができるタイプ。あとは、ボールに強さ・速さ・球威などが備わって来ることが求められます。





(成績から考える)

 シーズンが終了したので、今春のリーグ戦の成績から可能性を模索してみたいと思います。ちなみに今春の東都二部での成績は

11試合 4勝2敗 56回1/3 32安打 19四死球 60三振 防御率 1.60(3位)

1,被安打は、イニングの70%以下 ◎

 大学リーグ、それも二部リーグであることを考えると、被安打は70%以下には抑えたい。彼の被安打は、56.8% と申し分ない数字であり、相手に的を絞らせない投球ができている。

2,四死球は、イニングの1/3以下 △

 四死球率は、33.7%と、僅かに基準である1/3以下を満たすことが出来なかった。悲観するほどではないが、この辺は意外に好投手タイプに見えて、アバウトな部分があることを数字の上からも証明している。

3,奪三振は、イニングの0.8個以上 ◎

 奪三振は、1イニングあたり 1.07個 を記録し、イニングを上回っている。東農大戦では低めに打たせて取る印象が強かったが、他の試合ではキレ型の左腕らしく、三振を多く奪っていたことがわかる。

4,防御率は、1点台以内 ◯

 大学リーグならば、防御率は1点台ぐらいに抑えたい。仮に上位指名を目指すような選手ならば、0点台を記録することも期待される。防御率 1.60 は基準を満たすだけのものがあるし、リーグ3位の成績だけに合格点。ただし数字の上からも、絶対的な存在ではないことがわかる。

(成績からわかること)

 奪三振・被安打の少なさなどは、私の想像以上の数字だった。その半面、立ち上がりの悪さ・ストレートのアバウトさが、要所での失点や四球に現れていたかもしれない。大学からプロを意識するのには、もうワンランク上のコントロール・踏ん張りが必要ではないのか。



(投球フォーム)

<広がる可能性> ☆☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は三塁側(左投手の場合は)には落とせません。したがってカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適しません。

 しかし着地までの粘りはあるので、体を捻り出す時間は確保できます。カーブやフォークといった以外の球種ならば、十分に修得できる下地があります。実際にスライダーやスクリューのキレもよく、ストレートよりも信頼のおける球だと言えるでしょう。

<ボールの支配> ☆☆☆☆

 グラブを最後まで内に抱えられ、両サイドへの投げ分けはそれなり。足の甲でも深く地面を捉えており、ボールを低めに集めます。一見「球持ち」もよく、指先の感覚に優れているように見えますが、ストレートの制御には課題を残します。

<故障のリスク> ☆☆☆

 お尻を落とせるフォームではないのですが、カーブやフォークなどの球種を投げないので、悲観することはないでしょう。腕の振り下ろしもスリークオーターで、肩への負担を感じません。特に力投派ではないので、故障の可能性は低いのではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆☆

 「着地」までの時間が稼げるので、打者も合わせ難いフォーム。更に「開き」が遅く、中々球の出どころが見えてきません。被安打が少ないのも、こういった理由が大きいのではないかと。

 残念なのは、もう少し体に絡んで来るような腕の振りが見られればと。これにより、速球のキレ・変化球との見極めなどにも大きく影響して来るでしょう。ストレートが物足りない投手だけに、腕や上体を鋭く振れるようにしたいところ。ボールへの体重の乗せも悪くなく、体重移動も悪くありません。

(投球フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」ですが、いずれにも優れ、非常に実戦的なフォームであることがわかります。あとは、もう少し腕や上体を鋭く振り体に絡んでくるようになると、ストレートの質も変わり投球のイメージもグッと変わってくるかもしれません。



(最後に)

 左腕でピッチングができて、変化球レベルが低くないだけに、あとはストレートがなぁという惜しい気持ちになります。これが秋までに改善できるポイントかはわかりませんが、あえて秋に確認しにゆきたい投手。現時点では指名リストに載せることはできませんが、追跡するだけの価値はありそうです。


蔵の評価:追跡級(結局確認できず)


(2013年 春季リーグ戦)