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杉浦 稔大(国学院大学)投手 188/82 右/右 |
「成長が止まった・・・」 年々着実に成長が目に見えていた 杉浦 稔大 が、この秋は足踏みをしている。春のリーグ戦~日米大学野球と出場した疲れなのか、どうも春の勢いがないのが気になる。その疲れのせいか? 腕もかなり下がって出てきていた。 (投球内容) 元々重心を深く沈め、スリークオーターで投げて来る投球フォーム。力みなく波風を立てないように、よどみなくイニングを刻んでゆく。 ストレート 常時135~MAX140キロ程度 昨秋までは、常時135~140キロ程度でした。しかし要所では140キロ台中盤の球を投げ込むなど、意外なスピード能力を秘めているのに驚かされました。しかし今春は、常時140~140キロ台中盤を刻めるようになり、大幅にパワーアップして評価を高めます。 ボールは手元までしっかり伸びて来る球質の良さがありますし、コース一杯を突くたけの高い制球力がありました。 変化球 カーブ・スライダー・フォークなど 今シーズンは、緩いカーブで緩急をつけたりして、カウントを整えています。元々スライダーを多く投げていたのですが、早く大きく曲がり過ぎてしまい、思い通り制御できませんでした。その辺も考えてなのか、スライダーを活かす場面が少なくなっています。 またフォークなど、縦の変化も多く織り交ぜてきます。昨秋などは、追い込んでから、この球で面白いように三振を奪っていました。しかし、まだまだ精度の高い球ではないので、いつも決まるとは限りません。更に秋は肘が下がっていたので、ボールの切れ・落差もイマイチなのでしょう。この球が要所で決まる時は、楽にピッチングを組み立てられます。 その他 牽制もまずまず鋭いですし、走者への意識を高めても投球が乱れるわけではありません。クィックも1.05秒前後で高速で、フィールディングの動きもまずまず。そういった投球以外の部分まで神経が行き届く選手ですし、そういったことを器用にこなせるセンスもあります。 (投球のまとめ) フォームやボールにさほど威圧感はありませんが、コースで微妙に出し入れできるコントロールもありますし、試合をまとめる投球センスも兼ね備えます。 ただ実戦派という割には、相手を仕留めきれる程のボールを持てていないのが気になります。特に変化球の精度・決め手は、思ったほどではないということ。この辺が、あと一歩決め手に欠けるところになります。 (投球フォーム) 投球フォームのサンプルは、日米野球のものを参考にしました。秋は調子がイマイチなので、この時よりもフォームを崩している可能性があります。 <広がる可能性> ☆☆☆ 引き上げた足を地面に向けt伸ばすので、体を捻り出すスペースが確保されていません。その割にカーブやフォークを多く使うピッチングスタイルなのは気になります。 元々「着地」までの粘りに欠ける部分があったのですが、春は少し前に足を逃がすことができ、体を捻り出す時間を確保できるようになりました。これにより、カーブやフォークといった球種以外ならば、ピッチングの幅を広げてゆくことが期待できます。スライダーの曲がりが大きい過ぎるので、カットボールあたりを覚えると、投球をもっと楽に組み立てられそう。特に器用そうな選手なので、球種を増やしてゆくことについては心配しておりません。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドへの投げ分けは安定。足の甲での地面への押し付けも、膝小僧に土が着くほどでボールも低めで伸びる特徴があります。「球持ち」もよく指先の感覚に優れるなど、制球力の高さは高く評価できます。 <故障のリスク> ☆☆ お尻を落とせないフォームの割に、捻り出しが求められるカーブやフォークを多く投げるので肘への負担が心配。振り下ろす腕の角度には無理がないので、肩への負担は少なそう。ただ春のシーズンも、優勝を賭けた大事な場面で故障し離脱したように、プロで年間を戦うにしては、頑強さ、基礎体力の部分で不安は残ります。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りがさほどでないので、打者としては苦になく合わせやすいフォームではあります。体の「開き」は早いようには見えませんが、日米野球などを見ていると、コースを突いた低めの球でも簡単にはじき返されていたのは気になる材料。 腕はよく振れていて、体に巻き付くような柔らかさはあります。重心が深く沈み込み過ぎて、前に体重が乗り切れない部分があり、この辺が打者の手元まで球威の落ちないボールを投げられない要因ではないかと思います。 ボールに上手くバックスピンをかけて伸びを作り出すことはできますが、ウエートが乗らない分球威まで加わらない感じで、実際に試合を見ていてもボールに何か訴えかけて来るものがありません。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」こそ特筆すべきものがあるものの、あとの部分はそれほどでもありません。そういった威圧感がないだけでなく、苦になく合わせられる要素があるのは、プロの打者相手だと気になります。 コントロールを司る動作が素晴らしいので、プロでも試合を作ることはできるでしょう。ただ故障しやすい体質や体力面で、何処まで一年目から活躍できるのかは微妙かと。 (最後に) 春先の勢いならば、競合を嫌う球団が単独1位指名を狙ってきそうなほどの充実ぷりでした。しかしこの秋の投球を見ると、いの一番で指名したいと思わせるほどのものはありません。 プロ並の出し入れができるコントロール・投球術があるので、開幕ローテーション候補として期待できます。ただその割に、変化球の精度に課題があり、これを開幕までに改善できるのかが一つ大きなポイント。 更に年間を通じて活躍できるだけの基礎体力や故障しない体の持ち主かと言われると、かなり不安は残ります。その辺の問題が出ないで過ごせれば、一年目からローテーションに入って、7,8勝ぐらいまで勝てても不思議ではない実力はあると評価。 ただそれを何年も続けて行けるのかは、現状半信半疑であり、計算できそうで実はリスクを伴う選手だと評価します。特にフォームにイヤラシさがないので、ボールが走らないと苦しいタイプ。あくまでもハズレ1位から2位指名が妥当な選手ではないのでしょうか。まぁこういった何気ない選手が、意外に1年目は活躍してしまうことはよくあること。今年の候補の中でも開幕ローテーション入りが期待できる、数少ない候補であることは間違いありません。 蔵の評価:☆☆☆ (2013年・秋季リーグ戦) |
杉浦 稔大(国学院大学3年)投手 188/82 右/右 (帯広大谷出身) |
「パッと見、普通の投手だけれども」 非常にオーソドックスなフォームの持ち主であり、普段の球速は140キロ前後。一見、普通の投手にしか見えない 杉浦 稔大 。しかし今秋は東浜巨(亜大)と並ぶ4勝をあげ、一躍東都リーグで存在感を高めた。何故この投手が、戦国東都で勝てるのか、今回は考えてみた。 (投球内容) とても188センチもあるような体格には見えないほど、体格や投げ方に威圧感はありません。 ストレート 常時130キロ台後半~MAX147キロ 普段は、低めに丹念にボールを集めてくる投球ですが、勝負どころになると力を入れて145キロ前後のボールを投げ込みます。そういった投球にメリハリをつけられるところが、この選手の勝てる投手の一つの条件ではないのでしょうか。ストレート自体に、それほど伸びやキレなどの存在感はなく、打者の空振りを誘ったり、球威・球速で詰まらせるほどのものはありません。あくまでもコンビネーションを彩る、一つの球種という感じが致します。 変化球 カーブ・スライダー・スピリット 普段は、カーブ・スライダーでカウントを整えます。この秋ぐらいから、スプリットで三振を奪う場面が増えてきました。この球の精度が更に上るようだと、ピッチングスタイルもこの球から逆算して組み立てられます。 (投球のまとめ) 元々試合を壊さない好投手タイプが、徐々にパワーアップして球速を伸ばしてきた選手。更にスピリットという決め手を身につけつつあります。そのためマウンド捌きもよく大崩れしませんし、勝負どころでのメリハリもつけられます。派手さはありませんが、失点をしてもK.Oはされ難い、そんなタイプの投手ではないのでしょうか。 (成績から考える) 投手として本格化したのは、一部に昇格した今秋のリーグ戦からではないのでしょうか。そこで秋の成績から考えてみたいと思います。 8試合 4勝2敗 48回2/3 41安打 7四死球 37奪三振 防御率 1.85(8位) 1,被安打は、イニングの70%以下 ✕ 被安打率は、84.4%。中央のリーグ戦の選手なので、基準は70%以下に設定してみましたが、80%の基準も満たせていない。この辺が、実際の投球を観ていても凄みを感じない理由であり、普段のボールそのものの威力が物足りないことに、最大の原因があるような。 2,四死球は、イニングの1/3以下 ◎ 四死球率は、僅かに14.4%。ヒットは打たれるものの、四死球で余計なランナーを出さないところに、この選手の最大の良さがあるのではないのだろうか。 3,奪三振は、1イニングあたり 0.8個以上 ◎ 奪三振率は、1イニングあたり0.90個。先発投手の基準だけでなく、リリーフ投手の基準である0.9個を記録している。普段のボールは物足りないのに、追い込むと力を入れた145キロ級のストレートを投げたり、フォークで空振りを誘えるなどメリハリが効いているので、これだけの決め手があるのだろう。 4,防御率は、1点台以内 △ 中央のリーグ戦選手なので、1.85の防御率でも悪くはない。ただプロを目指すのならば、今年は0点台~せめて1点台前半ぐらいの圧倒的な数字は期待したいところ。少なくても、いまよりワンランク上の投球を求めたい。 (データからわかること) 実際の投球を見てもわかるように、普段のボールの物足りなさが、被安打の多さに。まだ絶対的なものを感じない投球が、防御率の成績に現れている。四死球の少なさと奪三振の多さには目を見張るものがあり、アベレージでの能力の引き上げが、一つ大きな課題ではないのだろうか。 (フォームから考える) では今の彼に何が足りないのか、実際の投球フォームから考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆ 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、更に前に倒れこむようなフォームのため、お尻は一塁側に落とせません。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークといった球種は適しません。彼の落ちる球はフォークではなく、スピリットという話もありますが、無理があるのは確かでしょう。 「着地」までの粘りもイマイチで、身体を捻り出すスペースは確保できません。そう考えると、キレのある変化球や曲がりの大きな変化球は望みづらく、球速があって小さく変化する球で投球を組み立てることになりそう。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 足の甲で深く地面を押し付けることができており、ボール全般は低めに集まります。グラブも内に最後まで抱えられており、低めへの制球も安定。「球持ち」は平均的ですが、コントロールに苦しんだりするケースは、かなり少ないタイプだと言えるでしょう。 <故障のリスク> ☆☆☆ 負担が少ないように浅い握りしているのかもしれませんが、お尻が落とせない割に縦の変化を武器にしているので、肘への負担は少なくないでしょう。ただ振り下ろす腕の角度には無理がないので、肩への負担は少なそう。日頃から、アフターケアには十分気をつけて欲しいですね。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りがないので、打者としては合わせるのに苦になりません。ただ「開き」自体は早くないので、コースを突いていれば痛手はくい難いのではないかと思います。 腕は身体に巻き付くように強く振れているので、速球と変化球の見極めは困難。この辺も、三振が取れる理由かもしれません。着地の粘りがないので、下半身が使えていないのかとおもいきや、意外にボールに上手く体重を乗せられており、フィニッシュの時の後ろ足の跳ね上がりは非常に良いです。フィニッシュの形としては、かなり理想的。 (フォームのまとめ) 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」までの粘りに大きな課題があり、「球持ち」は平均的。「開き」と「体重移動」は、良いと思います。投球にもう少し、嫌らしさや威圧感みたいな凄みが出て来ると、印象も随分変わると思うのですが。 (最後に) 3年秋の投球内容だと、まだドラフトボーダーレベルの投手かなという印象は否めません。やはり最終学年では、もうワンランク上の投球・インパクトを期待したいところ。まずは、投球やボールに、プロでやりたいのだ!という明確な自己主張を望みたいですね。 (2012年・秋) |