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西川 拓喜(25歳・BC福井)外野 171/68 右/左 (三島-白鴎大出身) 
 



                    「あの西川か」



育成枠でドラフト指名された直後は、今年福井の選手を観ていなかったので、どんな選手なのか全く思い出すことが出来なかった。しかし出身大学を見ると、見慣れた白鴎大の名前が。そう下級生の頃から、関甲新リーグで活躍していた 西川 拓喜 だったのである。そこで今回は、下級生のレポートとBCで残した成績や打撃フォームの映像を元に、この選手のレポートを作成してみたい。今回も、今年ちゃんと見られた選手ではないので、具体的な評価づけは行わないことをご了承願いたい。

(経歴と実績)

 三島高校時代は、全国大会の出場は無く無名の選手でした。白鴎大時代には、4度のベストナインを獲得。大学選手権にも出場したり、全日本候補合宿に呼ばれたりと、全国的に知られた選手になります。ただプロとなると総合力不足で指名されることなく、BC独立リーグに進み3年目の今年指名されました。BCでの成績は

10年 70試合 1本 16打点 18盗塁 打率.280厘
11年 72試合 1本 17打点 21盗塁 打率.296厘
12年 72試合 0本 24打点 23盗塁 打率.311厘

と少しずつですが、成績を伸ばしてきたことがわかります。特に際立つのは、盗塁の数。安定した出塁と足を武器にする選手であることが、成績の上からも伺えます。
(守備・走塁面)

 大学時代の記憶や見た時のメモを見る限り、右翼手としては可も不可も無しといった感じの選手で、際立って守備が目立っていた印象もありません。特に右翼手ですが、肩に関する記憶もなく、実際彼の紹介文を見ても肩について触れられたものはありません。大学で右翼手を務めていたことからも、極端に肩が弱いということはないとは思いますが。

 大学選手権の時のタイムは、塁間4.4秒前後と緩めたタイムしか計測できず、走力を充分計りかねていたことがわかります。ただ当時から、相手の隙を突く走塁は目を惹くものがありました。

 今シーズンは、270打席で23盗塁を決めておりますから、これをプロの規定打席である446打席で換算致しますと、1シーズンあたり38個 のペースで盗塁していることがわかります。独立系の選手が、一番プロで持ち味を発揮できるのは脚力の部分。そうプロと独立系のレベル差がもっとも開きがないのは走力だとわかってきました。そのことを考えると、プロのクィック・牽制・捕手のスローイング能力を考えても、年間20盗塁前後の盗塁は、充分期待できるだけの脚力はあるのではないのでしょうか。少なくても、走力ではある程度アピールできる可能性が高いと考えられます。

(打撃内容)

 大学時代は、グリップを下げながらバットを身近くに添えて、ボールをぶち当てるようにスイングするアベレージタイプの巧打者でした。基本的には、その辺は今も変わっていないように思います。

<構え> ☆☆☆☆

 左の巧打者らしく、前足を軽く引いてグリップは高めに添えられています。腰の据わり具合・全体のバランスも程よく、両目で前を見据える姿勢は並ぐらいでしょうか。適度に身体を動かし、自分のリズムで打席に入れているのは良いと思います。

<仕掛け> 遅めの仕掛け

 投手の重心が沈みきって、前に移動する段階で始動する「遅めの仕掛け」を採用。ボールを手元まで引きつけて、叩くタイプ。通常長距離打者が多く採用する仕掛けですが、生粋の二番打者も行います。彼は、完全に後者のタイプだと言えるでしょう。

<足の運び> ☆☆☆

 始動は遅めなので、足の引き上げは小さめ。始動~着地までの「間」は短く、あらかじめ狙い球を絞って叩くタイプだと考えられます。そのため、狙い球を逃さず叩く「鋭さ」が求められます。こういったタイプは、緩急の変化に弱い選手が多いのが特徴です。

 左打者ながら、強烈にベース側にインステップしてきます。外の球をキッチリ叩こうという意識が強いようです。踏み込んだ足元もブレないので、外の球や低めの球には粘り強くついて行けると考えられます。それでも内角よりの球は引っ張って魅せたり、左方向への打球も期待できそうで、コースの対応は幅広く出来るのではないのでしょうか。

 ただどうしても、左のアベレージヒッターがインステップしてしまうと、右投手の内角クロスへの球筋が窮屈になり、率が上がらない傾向になります。また足を生かしたいタイプなのに、キッチリ振り切ってから走りだすので、最初の一歩目が遅れがちになることも持ち味を考えるとどうなのかな? と思える部分も。ただボールに力負けしないスイングは、期待できるのではないかと思います。

 もう一つ気になったのは、足をあげる時に膝を内側に閉める動作が見られること。これは、せっかく作り出したタイミングが狂わせる可能性が高いので、いずれは修正したほうが良いと考えます。

<リストワーク> ☆☆☆☆

 早めに打撃の準備である、「トップ」の形は作れています。始動が遅い選手だけに、この辺の動作が出来ていることは好感が持てます。振り出しにも癖がないですし、ボールを捉えるときもヘッドを立てて、上手く外の球を拾えています。スイング軌道もコンパクトで、技術的にな問題は少ないかと。

<軸> ☆☆☆☆

 足の上げ下げは小さく、目線は比較的安定。身体の開きも我慢でき、軸足にも粘りが感じられます。体軸は、安定していると言えるのではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

 膝の閉めや、左の巧打者の割にインステップする・始動が遅いなど率を損なう要素が多い下半身の使い方がどうでるか? 上半身の使い方や軸・構えなどに至るその他の部分は、なるほど研究して良いものを身につけてきたことが伺えます。



(野球への意識)

 打席に入るときの映像があったので、ちょっと野球への姿勢の一端を垣間見ることができました。打席に入る前に、軽く素振りを入れています。この際にしっかり前の足のつま先が閉じられており、指先まで神経を通わせてスイングをしていることが伺えます。

 バッターボックスの前で、一度屈伸を入れます。これは、きっと日頃からのルーティンなのでしょう。そこで身体をほぐしたあと、足場をしっかり馴らして自分のスイングしやすい土壌を作っています。このことからも、日頃から野球に対して深く考え、こだわりを持ってプレーしていることが伺えます。野球への意識は、まさに大人の選手といった感じが致します。

(最後に)

 野球への意識・打撃技術などは、すでにある程度成熟した選手との印象を受けます。走力という武器もありますし、あとは守備・打撃でどのぐらいの総合力をアピールできるのか。

 ただ大学時代見た時は、プロという魅力を感じた選手ではないので、素材としてのポテンシャルは正直感じません。その辺を技術と意識の高さで、いかに補って行けるのかの選手でしょう。少なくても一年目からファームでは、レギュラー級の活躍は期待できるのではないのでしょうか。

 あとはそこから、本人がいかに感性を膨らませて行くことができるかでしょうね。まあ意識は高そうなのと考えてプレーしているのが感じられる選手なので、少しずつそういった成長は期待できると思います。問題は球団が、その成長を待ってくれるのか、その努力が通用するレベルにあるのかにかかっていそうです。個人的には好感が持てる選手なので、なんとか渋く長く生き残って欲しいと期待しています。育成枠で獲るのなら、悪い戦選手ではないと思いました。







 西川 拓喜(白鴎大)右翼 170/65 右/左 (三島高校出身)


(どんな選手?)

 昨秋のリーグ戦では、打率.404厘でリーグ2位の打撃成績。3度目のベストナインに輝いたリーグを代表する野手の1人です。今春のリーグ戦では、打率.314厘。大学選手権でも、一番・右翼手として出場致しました。

(守備・走塁面)

 一塁までの到達タイムは、多少緩めたことも影響して4.4秒前後と左打者としては遅いタイムしか計測出来ませんでした。しかし高岡法科大戦では、すかさず隙を突いて盗塁を決めるなど、動けるところを披露。右翼手としての守備は、平均的かなあと思いつつ観ておりましたし、肩も確認出来ず。これは、秋のリーグ戦で生で観戦する際のチェックポイントにしたいと思います。

(打撃内容)

 グリップを下げて、バットを身近く持って、バットにボールをぶち当てるようにスイングする、アベレージタイプの巧打者です。本来野手の間を抜けて行く当たりが観られるのですが、高岡法科大戦では、持ち味を充分発揮することは出来ませんでした。

 やはり打力に関しては、少々物足りないはあります。ただ社会人あたりで揉まれれば、そこで活躍出来る資質は充分あるのではないのでしょうか。

(今後は)

 大卒プロ云々と言うのは厳しいですが、社会人に進んで野球を続けて行く選手だと思います。更に巧打者ぶりを磨いて、存在感を高めて欲しいですね。志しを高く持って、再度2年後注目してみたいと思います。

(2009年・大学選手権)