12sy-6
八木 健史(BC群馬・22歳)捕手 184/81 右/右 (工学院大付出身) |
「鬼肩」
昨年のシーズン序盤、私はジャイアンツ球場でBC群馬の試合を見ている。その時に、試合の途中から出場した一人の強肩に驚かされた。そのプレーだけは、その後も私の脳裏に刻まれることに。そのため彼の名前が読まれた時に、あの時の「鬼肩」と瞬時に思い出すことができた。
しかし八木は、工学院大付で活躍後、杏林大に進むも中退。そこでクラブチームの、横浜ベイブルースを経てのBC群馬入り。かなり経歴としては、異色だと言えよう。私が観戦した2年目の始めでは、まだ正捕手とはいえず群馬は3人の捕手を併用。この年は52試合に出場も、スタメンは25試合に留まっている。ちなみに観戦した時のコメントが残っているので、引用してみたい。
「8回あたりからマスクを被った選手です。年齢的にも若いので、まだまだ捕手としての総合力に欠けるかもしれません。しかし地肩に関しては、素晴らしいものがあり、スローイング能力はアマでもトップ級だと思います。この肩に捕手としての総合力が兼ね備えられれば、凄いことになりそうです。ぜひ覚えておいて損はない、スローイングの持ち主。今シーズンの出番が増えることを期待したいですね。」
正捕手になったのは、BC3年目の今年から。残念ながらその成長ぶりは確認出来ていないが、59試合 1本 15打点 盗塁0 打率.216厘 と、まだまだ打撃の弱さを改善出来ていないことがわかる。ブロッキングの未熟さは監督に指摘されつつも、広神 聖哉(阪神入団)が抜けて正捕手に抜擢。今年に入り、リード面・キャッチングの成長が見られたという。
(打撃フォーム)
今回は、打撃フォームの映像だけは確認できたので、フォーム分析は行なってみたい。
<構え> ☆☆☆☆
前足を引いた左オープンスタンスで、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・全体のバランスは良いように思えます。足を結構引いている割に、やや両目で前を見据える姿勢がもう一つなのは、身体が固い可能性があります。
<仕掛け> 平均的な仕掛け
投手の重心が下がりきったあたりで始動する、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の対応力と長打力をバランスよく兼ね備えた中距離タイプの打者。
<足の運び> ☆☆☆☆
足を引き上げて回しこんで来るなど、始動~着地までの「間」はある程度取れています。このことからも、速球や変化球などの緩急による対応は悪くないと考えられます。
足を真っ直ぐ踏み出してきます。真っ直ぐ踏み出すということは、内角でも外角でも捌きたいという意志の現れ。踏み込んだ足元も、インパクトの際にブレません。そのため外角球を、無理なく右方向に飛ばせます。そういったコースによる捌きにも大きな欠点がないように見えますが、ひょっとすると身体が固く逆に引っ張りキレない可能性も否定できません。緩急への対応が出来て、どのコースへの対応もできたら、ここまで率が低いことはないでしょう。
<リストワーク> ☆☆☆☆
打撃の準備である「トップ」の形は遅れずに、バットの振り出しもミートポイントまで大きなロスが感じられません。少しバットの先端が下がりながら出てくるのが気になりますが、最後までキッチリ振り切れています。
<軸> ☆☆☆☆
足の上げ下ろしをしますが、目線は大きく動きません。踏み込んだ足元もブレませんし、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて綺麗に回転できています。軸を起点に、綺麗な回転で打てています。
(打撃のまとめ)
こうやって見てみると、技術的にはシッカリしたものを持っています。昨年はBCでも2割8分の打撃成績を残しており、全く打てないわけではないはず。
ただ技術的にシッカリしていて打てないというのは、むしろボールを追いかける動体視力や瞬時の反応など、プロに必要な根本的な能力に欠けるのか、打撃の感性が乏しく自分の打撃を広げて行けないなどの応用力に乏しいなど、別の理由が考えられます。
(最後に)
ことスローイングという意味では、入団しても即チームでもトップクラスとして存在感を示せると考えられます。BCリーグで正捕手を任されていたわけですから、それなりのキャッチングやリードなどの最低限の総合力は身につけてきたのでしょう。そういった意味では、ファームレベルならば試合にすんなり入れるのではないのでしょうか。
打撃も、上のレベルに通用するだけの技術はあるように思います。ただ逆にこれだけの技術がありながら、この程度の数字しか残せなかったことへの疑問と、今後の伸び代が何処まで残されているのかの方が気になりました。
肩という一芸を武器にする、育成枠らしい指名だと思います。果たして彼のような選手が、プロの世界でどのようなプレーを魅せてくれるのか、個人的には大変興味深いものがあります。
|