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  水口 大地(香川OG)内野 168/65 右/左 (大村工-長崎セインツ) 
 



                    「よく覚えていないが」



長崎の大村工業から、四国アイランドリーグ・長崎セインツに入団。しかしチーム解散に伴い、香川オリーブガイナーズに移籍。以後、チームでは足を売りに活躍してきた選手。過去何度も実際に見てきた選手だと思うのですが、正直気に留めたことはありません。ただ今年関東に遠征してきたアイランドリーグ選抜の時には、盗塁数がチームで図抜けた存在だということは当時から把握していました。ただ打撃の弱さが、いかんともし難い印象が残っています。

(今シーズンの成績)

今シーズンのアイランドリーグでの成績は

75試合 0本 24打点 37盗塁 打率.275厘(出塁率.315厘)

 毎年アイランドリーグで 2割7、8分残していた 西森 将司(ベイスターズ)が、今年イースタンで.248厘だったことを考えると、現時点での水口の打力は、イースタンで2割5分前後ではないかと考えられます。ただ私が観戦したフューチャーズとの交流戦では、途中から出場して二打席連続スライダーを三振するなど、三軍レベルの投手への対応も充分ではありませんでした。

(守備・走塁面)

 今年はアイランドリーグの302打席で、盗塁は37個。これをプロの規定打席である446打席にあてはめますと、年間55個ペースで盗塁していることになります。一塁までの駆け抜けタイムは、3.9秒前後。通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える


となる。ちなみにこのタイムを、2012年度のドラフト指名された左打者の駆け抜けタイムで偏差値化すると、彼の走塁偏差値は 63 となります。この数字は、指名された左打者の中では、加藤 翔平(上武大-ロッテ)外野手と共にトップのタイムでした。プロに混ぜても、その走力は充分売りにできることでしょう。

 二塁手としては、フライなどの落下点の入りが早く、自分から率先して取りに行きます。周りの野手も任しているのをみると、信頼もされていることがわかります。

 打球に対するキャッチングは、少し危なっかしくは見えます。しかし動きは軽快で、上のレベルでもニ遊間を守ってナンボの選手という感じが致します。安定感は微妙ですが、中の上レベルの守備力はあると見て好いでしょう。打球の判断も早いので、守備範囲は広そう。ただ地肩に関してはあまり強くなさそうなので、難しい体勢からの送球がひとつネックになりそうという不安は残ります。



(打撃内容)

 小技で揺さぶったり、ファールで粘ったりと一番打者としての嫌らしさが売り。ボールを当てるセンスは悪くないのですが、右投げ左打ちの弱さは感じます。それでも打球が弱々しいことはなく、箸にも棒にもかからないというほどの弱さは感じません。プロの1軍を想定するには少し時間がかかりそうですが、ファームレベルならばレギュラーも意識できるのではないのしょうか。

<構え> ☆☆☆

 BCリーグとの独立リーグチャンピオンシップの映像を見ました。スクエアスタンスで足を揃え、グリップは下げて構えます。腰の据わり・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスは平均的。特に嫌らしさや隙なしの鋭さは感じませんが、打席ではリラックスして構えられています。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 投手の重心が沈み込んだ底のあたりで始動する、「平均的な仕掛け」を採用しています。ある程度の対応力と長打力をバランス良く兼ね備えた中距離・ポイントゲッタータイプ。ただ彼のアベレージヒッターとしてのプレースタイルからすると、もう少し早い始動の方が好いように思います。

<足の運び> ☆☆☆

 足を引き上げてから着地するまでに、ある程度の「間」は取れています。そのため、速球でも変化球でも、スピードの変化には対応しやすいはず。

 真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいタイプ。ただ踏み込んだ足元は早く地面から離れるために、外の球を左方向に強く打ち返すという打撃はどうでしょうか?どちらかというと、センター~セカンド方向に打ち返す打撃が持ち味だと考えられます。

 外に逃げてゆくボールや低めのボールに対しては、踏ん張りが効かず弱い印象があります。それでも自慢の足を生かすために、いち早くスタートが切れる打ち方です。

<リストワーク> ☆☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」に近い位置にグリップを添えているので、速い球に振り遅れる心配はありません。バットの振り出しにも癖はなく、ミートポイントまでロスなく捉えられます。高めの球に対しても、上から被せるようにヘッドを立てて捌けます。スイング軌道もよく、上半身の使い方は上手いと思います。

 あとは、力のある球に力負けしない、強く鋭いスイングを追求して欲しいところ。

<軸> ☆☆☆

 足の上げ下げはあり、目線の動きは平均的。下半身の粘りがもう一つなのが気になりますが、軸足には粘りが感じられ、ある程度は外角や低めの球にも対応することができます。

(打撃のまとめ)

 ボールを捉えるセンスは悪くないのですが、踏み込んだ足元が地面から離れるのが早いのが、どうなのかな?という疑問は残ります。ファームレベルならともかく、1軍の投手を想定すると、まだ打撃が弱い印象は否めません。



(野球への意識)

 臭い球を徹底的にカットして粘ったり、自分の足を生かすために三遊間方向に転がそうという強い意志が感じられる点は高く評価致します。

 しかし素振りをしている様子などをみると、何かただバットを振っているだけで、明確な意図を持っててスイングをしているようには見えませんし、打席に入るときの足場の馴らしも簡単なもので、打撃のこだわりはあまり感じられません。この辺の部分からも、彼が入団すぐに結果を残せるのかどうかには疑問が残ります。育成枠での指名だけに、その存在感を示さないと、2,3年の内に解雇されてしまうような立場なので、もう一歩深いところまでプレーを追求して欲しいところ。

(最後に)

 足という、絶対的な武器があるのは強味。あとは、プロで通用するだけのスイングを、短期間の間に身につけられるのかだと思います。ただこれに関しては、野球への取り組みなどを見ていると、個人的には不安を覚えます。一芸に秀でた育成枠らしい指名ではありますが、プロで大成するのは厳しいのではないのでしょうか。同じ独立リーグの快速内野手、内村 賢介(現ベイスターズ)を見た時のような鋭さは、残念ながら感じられませんでした。

(2012年 アイランド選抜 VS フューチャーズ)