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  下水流 昂(24歳・HONDA)右翼 178/82 右/右 (青学大出身)
 



                「全く記憶にございません」



 青学時代通算で9本の本塁打を打っているという、下水流 昂 。ホンダに進みドラフト指名されるまでの選手であっても、横浜高校以来全く注目した記憶がない。その通り調べてみると、彼のレポートを最後に作成したのは、横浜高校時代であり、青学の4年間・HONDAの2年間も私の記憶の中では空白となっている。

(プレースタイル)

 しいて記憶をたどれば守備は結構上手いが、打撃が物足りない選手。そのため野手はまず打撃からといった判断をする私のフィルターには、これまで全く引っかかることはなかった。それだけ対応力に課題がある選手なのだが、そこまで長打力がある選手だとは正直知らなかった。今年の都市対抗でも、初戦では出場無し。2回戦の東芝戦で、ようやく7番・右翼手として出場していた。他に今年HONDAを観戦した試合でも、彼は出場していなかった。

(守備・走塁面)

 東芝戦ではセンター前に落ちそうな打球を好捕するなど、球際に強いプレーを見せている。元々守備には定評があり、地肩も結構強い。ただ捕球からスローイングまでの時間に少し戸惑い、捕ってから素早い送球ができるのかは気になるところ。

 一塁までの塁間を、4.5秒台で走り抜ける。これを左打者に換算すると、4.25秒前後ということで、プロレベルでは中の下レベル。ただ東都では、毎シーズン2,3個の盗塁はしていたように、動けない選手ではない。ただこのタイムを2012年度のドラフト指名された右打者で偏差値化すると、彼の走塁偏差値は 40 となる。これは、かなり低い。

 守備に関しては、中の上以上のレベルはあり、走力は中の下レベル。ただこれで、打撃の粗さを補うだけの魅力があるかと言われると個人的には疑問が残る。





(打撃内容)

 三振かホームランかという感じの打者で、東都通算は.225厘。3割を超えるシーズンも何度かあったが、3割5分を超えるようなハイアベレージは残せていない。今年の都市対抗・東芝戦でも、新垣勇人投手の外角に決まるストレートを二打席連続で見逃している。追い込まれているのだから、読みが外れてもカットするなり出来る術がないと正直厳しい。

<構え> ☆☆☆

 前足引いた、右オープンスタンス。グリップは高めに添え腰の座りは悪くないが、全体のバランスとしてはイマイチ。両目で前を見据える姿勢は、平均的。高校時代と比べるとかなり構え自体変わっているが、バランスがイマイチという点では共通している。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 高校時代は始動が「遅すぎる仕掛け」だったのに比べると、今は投手の重心が下がる時に動き出す「早めの仕掛け」を採用。典型的なアベレージヒッターの採用する仕掛けになっており、対応力を重視しょうとする意図が感じられる。

<足の運び> ☆☆☆☆

 足を引き上げてから降ろすまでの「間」は取れているので、速球でも変化球で対応しやすい打ち方。踏み出しも右の強打者らしく、ベース側にインステップして踏み込んで来る。そのため外の球を強く意識しているのがわかるし、踏み込んだ足元もインパクトの際にブレない。

<リストワーク> ☆☆

 せっかく始動が早いのに、バットを引くのが遅れ気味で、打撃の準備である「トップ」の形を作るのが遅れている。バットの振り出しは少し遠回り出てくるところを、無理にバットの先端であるヘッドを立てようとする。それでいて引っぱりにかかるので、バットが波打って引っ掛けてしまうケースが目立つ。スイングの弧自体は大きく、フォロースルーまで使い遠くに運べるのに、強引に外の球でも引っかけてゴロを打ってしまうのは残念。引っ張り中心のスイングを見ていると、打てるコースは限定されているのではないのだろうか。

<軸> ☆☆☆☆

 高校時代のフォームと比べると、まるで別人のように殆どの箇所が変わっている。しかし目線があまり動かず、身体の開きも我慢でき、軸足を起点に綺麗に回転できる部分は変わらず好いところ。この選手が長打を放つ時は、上手くボールを捉えて巻き込めた時にあるのだろう。ただ統一球で長打を放つには、こういったツボを持っている選手の方が強い。

(打撃フォームのまとめ)

 緩急への対応には強いが、巻き込み型のスイングのため、捌けるコースが限定されているのではないのだろうか。彼の粗さは、強引なまでの引っぱりにあり、右方向への打撃ができないからだろう。ただ下半身はブレないので、意識次第では開きを我慢した右方向への打撃も期待できるはず。



(最後に)

 HONDAでもレギュラーというほど出場しているわけではないだけに、正直どうしてここまで高い評価で獲得したのかはわからない。

 アマでは育て切れなかった選手を、プロの指導で開花させようという、そんな意図が感じられる。守備・走力は悪くはないが、売りにできるほどのものかは微妙。彼を獲得した背景には、この長打力をプロの指導でなら開花させられるという、自信からではないのだろうか。かつて新井良太(現阪神)を4番打者に仕立てたような、そんな手応えを感じているのかもしれない。

 伝統的に広島は、こういった選手をモノにするのが上手い球団。即戦力とは言いがたいが、数年かけてプロでも使える選手に仕立てられるのか注目したい。右打ちもままならない状態だけに、個人的には「旬」ではないと判断するが・・・、今後プロの指導でどのように変わってゆくのか期待したい。


(2012年 都市対抗)









 下水流 昴(神奈川・横浜高)外野 175/74 右/右


 選抜では6番・中堅手として出場。強肩を活かした中堅守備と基準満たす脚力、鋭いヘッドスピードを活かした打撃と三拍子バランスの取れたプレーが売りの好選手。

(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、4.5秒前後。左打者に換算すれば、プロの基準を満たす4.2秒前後に相当するタイムだ。秋の成績は、12試合で10盗塁をマーク。これは一番打者・白井の14盗塁に次ぐ成績になる。上のレベルでは、際だつ程の脚力ではないが、破綻のないレベルで隙があれば盗塁を決められるだけのものはあるだろう。

 中堅守備は、安定している。特に地肩も中々ものがあり、守備範囲・地肩など含めて守備でも、それなりの評価ができそうだ。走・守に関しては、上のレベルの充分通用するレベルにあるだろう。

(打撃スタイル)

<対応> 初球から3球目あたりにスイングを仕掛けて来る平均的な打者。

<狙い球> 速球でも返球でも打ちに来る。アウトコース高めの球を特に好む傾向がある。

<打球> 右にも左にも打てる幅広い打撃が目立つ。ツボにはまるとスタンドインの長打も。

 基本的には、コンパクトに鋭くはじき返す打撃が目立つ。ただツボにはまると大きな打球を打つこともある。

(打撃フォーム)

<構え> 
☆☆☆

やや前に傾いているのに意味はあるのか?

 スクエアスタンスで構え、グリップの高さは平均的で横浜高校の多くの選手が似たような構えをしている。腰の据わりは好いが、やや前に傾いた立ち方をしておりバランスが好くない。前の見据え方は悪くない。もう少しバランスを整えて構えられると良いのではないのか。

<仕掛け> 「遅すぎる仕掛け」

 投手がリリースを迎える直前ぐらいに始動するので、どうしても始動が遅すぎる。これだと打撃に必要な動作が不充分なまま、スイングをしなければならず、中途半端なスイングか一定レベル以上の球威・球速の投手に対応するのは厳しくなるだろう。誤魔化しのきかなく木製バットではそういったスイングがはっきりわかってくる。もう少し始動を早め、余裕を持ったスイングをするのが望ましいのでは。

<足の運び> 
☆☆☆

動作は小さいが、バランスの好いスイング

 始動が遅い分、足の引きあげを小さくして対応しようとする。着地は、スクエアから軽いアウトステップ気味な感じだ。踏み込み自体は強くないのだが、ステップの位置が的確で、インパクトの際に足元がブレないのが好い。アウトコースの球にも、カベを残しながら、きっちりはじき返せるのではないのだろうか。

<リストワーク> 
☆☆☆

トップの形成が不充分で、動作が忙しい

 始動が遅すぎるせいだろうか。トップをしっかり作れずにスイングに入ってしまっている。これだと打撃の準備不足で打てる球が限定される可能性が高い。当然トップは浅めで、グリップこそ奥に入らないのだが消化不良のスイングだ。それでもなんとか上から叩く意識で、ミートポイントまでコンパクトに持って来るが、動作が忙しく過ぎて余裕がない。スイングの弧自体はそれほど大きくないのだが、横浜高校の打者に共通するフォロースルーを高くしっかり取るスイングはできている。これによりボールを遠くに運ぶ術を兼ね備える。ツボにはまればボールが飛ばせるのは、この辺が影響しているのではないのだろうか。

<軸> 
☆☆☆☆ 体軸の安定感もまずまず。

 頭の動きが小さい、身体の開きも我慢できている。軸足の形も安定しているが、少し軸足が身体の方向に入り込んで行く。右方向に打つのは上手い選手なのだろう。

(最後に)

 始動の遅さが、打撃の動作を忙しくさせている。もう少し余裕を持ってスイングができれば、もっと幅が広がるのではないのだろうか。この選手の場合、それほど打撃での印象は薄いのだが、守備・走力が安定しているので、首脳陣としては安心して使える選手だろう。打撃に特徴が出て来ると大学・社会人でもチャンスを掴める選手ではないのだろうか。
 

(2006年 4月13日更新)




 俊足・強肩に飛ばす能力抜群。7番打者です。鋭いスイングで、軸が崩れてもしっかりとセンター中心にはじき返せる柔らかさも持っています。

 守備には破綻がなく、足がなかなか速いので、走・攻・守全てが1ランクアップすれば、非常に面白い選手になると思います。