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河野 秀数(25歳・新日鉄広畑)投手 173/77 右/右 
 



               「なんとなく鹿取を彷彿とさせる」



なんとなく 河野 秀数 を見ていると、巨人などで活躍した名リリーバー 鹿取 義隆 を彷彿とさせる。身体付きといい、身体を丸めて投げるあたりはソックリだ。

(投球内容)

 河野の素晴らしかったのは、社会人1年目の投球。都市対抗予選の6試合・15回2/3イニングで、22奪三振 防御率 0.00 の好成績。その年の都市対抗のJFE東日本戦でもリリーフで活躍。しかし今年の都市対抗では、NTT西日本の補強選手として登板。伯和ビクトリーズ戦でリリーフするも、僅か1アウトしか取れず、2本のヒットを打たれて降板している。入社2年目は、怪我で出遅れ。勝負をかけた3年目の投球は、私自身この都市対抗での登板しか確認出来ていない。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台前半

 ルーキー時代のほうが、コンスタントに140キロ台を記録し、低めやコースによくコントロールされていた。更にそのボールも、手元まで伸びていたように見えた。力投派のリリーフ投手とのイメージが強いが、ルーキーイヤーはかなり繊細なコントロールがあり、ボールの勢いだけでなくコントロールの観点からも、連打を許さないボールを投げていた。

 しかし今年は、ボールの勢い・コントロールも薄れており、この投球を見る限り指名されるほどの内容ではなかった。ただ補強される程の選手なので、予選ではこのような内容ではなかったのかもしれない。

変化球 スライダー・シンカー

 130キロぐらいで横滑りスライダーを、右打者の外角に集めてきます。特にルーキーイヤーは、このスライダーも低めに集まっていました。しかし今年は、ボールが真ん中近辺に上がってきています。その他にも、シンカー系のボールを持っています。ただ変化球では、そこまで空振りを誘えるほどの切れ・威力があるのかは疑問。あくまでも、投球の軸はストレートではないかと思います。

その他 

 短いイニングでの登板だったので、牽制は交えず。またフィールディングに関しても、正直よくわかりません。ただクィックは、1.1秒前後で投げ込めており、基準を満たすだけのものがありました。

(投球のまとめ)

 ルーキーイヤーは、ボールの切れ・球速、コントロール共に、今年の内容よりも優れたものがありました。都市対抗の投球が論外な内容で、普段はルーキーイヤーのような投球が出来ているのならば、短いイニングでならプロでもソコソコやれるのではないかと思います。けしてボールの威力や気持ちで押すだけでなく、微妙なコースをついてボール球を振らせる微妙な投球ができる投手。

(投球フォーム)

<広がる可能性> ☆☆

 前に身体を折るサイドハンドなので、お尻は一塁側に落とせません。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる変化球は望めません。

 ただ着地までは足を前に大きくステップして遅らせているので、こういった変化球以外ならば、上手く扱うことが期待できます。実際にスライダー・シンカーなどを、上手く投球に織り交ぜます。

<ボールの支配> ☆☆☆

 抱えたグラブは最後後ろに抜けてしまいますが、前に身体を折るようなタイプのフォームの選手の場合、あまりグラブの抱えは両サイドへの制球には影響しません。また足の甲では深く地面を捉えているので、ボールは真ん中~低めに集まりやすい。ルーキーイヤーの頃は、特に低めギリギリにボールを集めることが出来ていました。少なくてもポンポンとストライクを先行させ、自分のペースに相手を引きづり込みます。

<故障のリスク> ☆☆☆☆

 お尻は一塁側に落とせませんが、カーブやフォークなどの球種も扱わないので肘への負担は考え難い。更に腕を下げて投げるので、肩への負担も少ないはず。力投派ですが、身体への負担は少なくタフな活躍が期待できそう。

<実戦的な術> ☆☆☆

 「着地」までの粘りは悪いように見えませんが、身体の「開き」は早く甘くない球でも合わされてしまうサイド特有の傾向が見られます。

 また思ったほど身体に巻き付くような腕の振りがないので、フォームに粘っこさ・嫌らしさは感じられません。しかしボールへの体重の乗せは悪くないので、調子が良ければ勢いで押せる球が投げられます。

(投球フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「体重移動」は好いのですが、「球持ち」「開き」に課題を残します。コースを突く丹念な制球力とボールの勢いで押す躍動感はあるのですが、意外にフォームに嫌らしさ・粘っこさがないところが課題ではないのでしょうか。その勢いとコントロールを失うと、何の変哲もない投手になりかねません。

(最後に)

 今年唯一確認できた都市対抗では、正直プロは厳しいだろうという内容でした。逆にルーキーイヤーの勢いのある投球ならば、短いイニングならば面白いだろうと投球でありました。現在そのどちらが本当の姿かは、残念ながらわかりません。

 ただ今年唯一確認した内容が悪かっただけに、指名リストに載せることはできません。果たしてどう転ぶのか、プロでの投球が楽しみです。

(2012年 都市対抗)







 河野 秀数(24歳・新日鉄広畑)投手 173/75 右/右(佛教大出身


(どんな選手?)

 右サイドから繰り出す勢いのあるボールで、都市対抗予選6試合で、防御率0.00の文句なしの活躍を魅せ、チームを東京ドームに導きました。佛教大時代は、1学年の下の大野雄大の陰に隠れがちでしたが、ルーキーイヤーから素晴らしい存在感を示しました。

(投球内容)

 小柄右サイドハンドですが、コンスタントに140キロ以上の勢いのあるボールを放ります。変化球も125キロ強のスライダーと130キロ台のシンカーなど、かなり速い球速帯の変化球を投げ込みます。

 それほど細かい制球力はないのですが、15回2/3イニングで、四死球は2個と、ストライクを先行できるタイプ。何より奪三振22個と、リリーフで出てきて三振が奪えるのが魅力です。特に胸元を突くような、強気のピッチングが身上。

(投球フォーム)

 ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込みます。足を引きあげた時の、軸足への体重の乗せ方と全体のバランスが、お手本のような選手です。

 グラブを最後まで内に抱えられているので、両サイドへの制球も安定しやすいです。足の甲の押しつけも、粘り強くはありませんが、押しつけられています。そういった意味では、球もそれほど上吊ることもないようです。

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、やはりサイド故の「開き」の早さに課題を残します。そうった意味では、左打者への投球がやはり課題になるのではないのでしょうか。

(今後は)

 ドラフト対象年となる今年、一年間同様の内容を示せれば、プロと言う可能性も充分秘めた選手です。投球に勢いがありますし、制球・安定感もあります。左打者への投球など細かい課題は少なくないのですが、順調に勢いに乗っていって欲しい選手です。

(2010年・都市対抗)