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山中 浩史(27歳・HONDA熊本)投手 175/78 右/右 (九州東海大出身) 
 



                 「なんだか遅くなったよね」



今年の都市対抗の投球を見て、彼がピークだと思われた3年ぐらい前の投球に比べ、明らかにボールが遅くなっていたことに気がついた。実際ボールの勢いだけではなく球速も、常時3~5キロ程度遅くなっていたのだから、そう感じられたのは間違いではなかった。

(投球内容)

今では、アマでも希少価値となりつつあるサブマリン。牧田 和久(日通-西武)のように、山中投手の投球は、ストレート中心で押すピッチングスタイル。

ストレート 120~125キロ

 3年前の寸評では、常時125~130キロ投げていたと記載されているから、コンスタントに5キロ程度遅くなっている。実際ボールを観ていても、ボールの勢いが明らかに低下。それでも投球の殆どは、ストレートで押してくる強気のスタイル。以前のような浮き上がるような球筋も、今はあまり目立たない。

 渡辺俊介(ロッテ)のように、手元でピュッと来るような切れ味もなければ、牧田(西武)のような、バットをへし折るような球威・勢いも感じられない。それでは、絶妙なコントロールがあるのかと言えば、結構甘い球も少なくない。ちなみにアンダースローの球速は、実際の球速に +15キロぐらいすると上手投げの数字になる。そう考えると、135~140キロぐらいの球速となり、ドラフト候補としては物足りないことがわかる。

変化球 スライダー・シンカー

 横滑りする小さなスライダーを投げ込んできますが、打者の空振りを誘うような切れ味はありません。あくまでもストレートとの緩急、カウントを稼ぐ球。シンカーは、ストレートとあまり球速差のない110キロ台後半で投げ込んできますが、これまた曲がりが早く、打者からは見極めやすい代物。元々変化球の精度・威力はイマイチの投手だったのですが、3年経ってもその辺に大きな成長は感じられません。

その他

 牽制やフィールディングに関しては、正直よくわかりません。ただクィックに関しては、1.15秒前後で投げ込めるので、特に下手投げでもモーションの大きさから、フォームが盗まれやすいということはなさそう。

(投球のまとめ)

 球速が落ちた分、コントロールが繊細になったとか、変化球に磨きがかかったかと言われると、けしてそんな感じは致しません。特に左打者に関しては、かなり甘い球が多く、思い通りコースに散らせていないように思います。

そのため何か目に見えて成長した部分があるようには、私には感じられませんでした。

(データから考える)

 では都市対抗本戦だけの内容以外では、どんな投球をしていたのか、予選の数字を元に検証したいと思います。

3試合 20回2/3イニング 被安打18 四死球8 奪三振7 防御率 2.16

1、被安打は、イニングの80%以内 ✕

 20回2/3イニングで、被安打は18。被安打率は、87.4% と、かなり高い。これは、ストレート中心の配球で、的を絞られやすいのが最大の理由だろう。

2、四死球は、イニングの1/3以下 △

 四死球は8個で、四死球率は 38.8% 。大幅のオーバーではないが、左打者を中心とした制球のアバウトさを露呈している格好。あくまでもストライクゾーンに投げられても、細かくコースを投げ分けられるような制球力は左打者にはない。ただ3年前の予選の時は、イニングに対し半分以上だったことを考えると、以前よりはコントロールは良くなっているのかもしれない。

3、奪三振は、1イニングあたり 0.8個以上 ✕

 先発ならば、1イニングあたり0.8個以上。リリーフならば、0.9個以上三振が奪えているようだと、かなり決め手のある投手だと判断して好いだろう。しかし彼の場合は、0.34個 と極めて少ない。ストレートを低めに集めて、内野安打を打たせるのが、この投手の持ち味だとも言える。

4、防御率は、2点台以内が望ましい △

 社会人の場合は、大学や独立リーグよりも打力があるので、基準はプロの統一球ぐらいの基準で好いと考える。そういった意味では、予選で2.18という数字は、けして悪い数字ではない。

 ただプロで活躍することを考えるならば、1点台や0点台という突き抜けた安定感も欲しい気がする。特に3年前の彼の予選成績は、防御率 0.00 。この成績からも、投球の勢いは3年前の方が明らかにあったことがわかる。

(データからわかること)

 3年前の予選の時よりも、投球の勢い・内容は落ちていたことがわかる。ただ制球力に関しては、投球を見る限り改善されていないようには見えなかったが、データとしては良くなっていたことがわかった。ただ予選の場合3試合ぐらいなので、これがデータの信憑性としてはどうかという疑問も残るのだが・・・。

(最後に)

 投球を見る限り、3年前の都市対抗の時よりも明らかにボールの勢い・球速が落ちている。その割に、制球力・変化球、左打者への投球などの課題は改善されておらず、何故今年指名したのだろう? という疑問は拭えなかった。

 個人的には、3年前でも指名見送りにの評価をしていた投手だけに、内容が改善されていないのに指名リストに載せることは出来ない。下手投げという希少価値のある球筋だけに、短いイニングならとも思わなくはないが、パ・リーグには渡辺俊介や牧田などがいることからも比較的馴染みのある球筋。そう考えると、その有難味も薄いのではないのだろうか。年齢の割に課題も多く残され、即戦力の活躍は厳しいと評価する。

(2012年 都市対抗)







山中 浩史(26歳・HONDA熊本)投手 175/76 右/右(九州東海大出身) 


(どんな選手?)

 九州東海大でも、大学選手に出場し全国の舞台を経験してきた好投手。予選から都市対抗本戦を通じても、失点することなく活躍しました。まさに地面スレスレのところから腕が出てくる正当派サブマリンであり、速球で押せる貴重な本格派下手投手です。

(投球内容)

 球速は、125~130キロぐらいなのですが、これは下手投げと言う特徴からも+15キロぐらい上積み出来る希少価値のあるものです。アンダースローの投手を観る場合は、球速よりもキレ・球筋などに注目すべきかと思います。その点この投手は、ストレートの球筋はまさに浮き上がるような球筋で、社会人の打者達でも中々お見受けしたことのような角度からボールが浮いて来るので、目が慣れるまでは苦労いたします。

 アンダーハンドと言うと、やはり新日鐵君津時代の渡辺俊介(ロッテ)と比較したくなるのですが、彼と球速的には同レベルぐらいかと思います。俊介よりも速球派といった強気のストレートで押すピッチングスタイルですが、ボールのキレでは俊介の方に分があります。

 また俊介もそうでしたが、投球の安定感・マウンド度胸も良い割に、意外に左打者中心に制球はアバウトなのかなと思わせる部分があります。右打者には安定するのですが、左打者中心の打線の時には、少々苦労しそうな印象を受けました。予選でも防御率0.00と安定しながらも、四死球はイニングの半数以上に達するなど、コーナーをしっかり突くタイプとは違う気が致します。

 もう一つ気になったのは、この手のタイプにしては、変化球に魅力を感じない点。二種類のスライダーとシンカーがあるそうですが、それほど目立つ威力はありません。それが故に、速球で押す投球なのでしょうが。

(今後は)

 最初の一回りぐらいは、相手を翻弄出来る魅力はあります。特に投球を組み立てると言うよりは、力で押すタイプなので、リリーフを中心に上手く使うと、面白いかなと思える部分は感じました。

 ただ、球にアンダー・サイドハンドタイプらしいキレがない点・逃げて行くスライダーやシンカーの威力がイマイチな点、左打者を中心に制球がアバウトな点などが、どうなのかな?と言う疑問は拭えません。

 ただ今、アマにいる下手投げでは、屈指の存在だと思いますし、こういう選手がいないプロチームならば、面白い存在で活かし方次第ではと言う部分はありますので、ひょっとして指名もと言う気もなくはないです。ただ、面白いと言う部分はありますが、プロの世界で長く活躍するのか?必ずモノになるのかと言われると、現状バリエーション・投球の奥行きの部分で不安要素も隠せません。個人的には、面白いかもと言う部分はありますが、指名は可能性ではなく確信で行うべきだと言うスタンスなので、よほど本人がプロ志望が高くはない限り、推せないかなと言う印象は残ります。私が担当ならば、現時点では指名リストには名前を残さないと思います。来年までに、その辺の課題を改善してこられるようだと、その時が「旬」なのではないのでしょうか。

(2009年・都市対抗)