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宇佐美 塁大(広島工業)三塁 177/82 右/右 



                     「打つだけじゃないんだぜ」



 高校通算45本塁打を放ち、打球の速さが際立つ 宇佐美 塁大 。甲子園ではよくわからなかった部分も、広島県大会の模様を見直すことで徐々にわかってきた。この選手、打撃だけでなく高い身体能力を兼ね備えた強打者だということを。

(守備・走塁面)

 一塁までの塁間を、4.25秒前後で右打者ながら駆け抜ける。これを左打者に換算すると 4.0秒前後。通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。実際広島県大会では、7試合で4盗塁を決めるなど積極的に走ってくる。図抜けて速いわけではないが、プロに混ぜても俊足レベルの脚力があり、環境に慣れれば足でもアピールする場面も増えて来るだろう。ちなみに彼の走力を、2012年度のドラフト指名された右打者のタイムを偏差値化した数字にあてはめてみると、彼の走塁偏差値は 53 となり平均を上回っていることがわかる。

 元々遊撃や二塁などを守っていた選手だけに、最初の一歩目の反応も素早く、軽快な動きを見せる。それほど強肩というほど送球に強さは感じられないが、基準レベルは満たしている。広島予選の7試合で2失策という数字からも、守備自体は悪くないが安定感があるかは微妙なところ。それでも上のレベルならば、三塁手としてやって行ける適正は感じられるし、上手くゆけば二塁あたりまで担えるかもしれない。

 守備・走力ともにプロで売りにできるほどではないにしろ、素材としては中の上レベルの身体能力を持っている。けして打つだけの選手ではなく、三拍子バランスの取れたプレーヤーだと言えよう。





(打撃内容)

 最後の夏は、広島大会で 3本 13打点 打率.571厘 と圧倒的な数字を残した。ただ予選終盤の試合や甲子園でのプレーを見る限り、打球は極めて強烈なものの、対応力は粗いのかなぁという印象を受けた。

<構え> ☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・全体のバランスとしては並だが、両目で前を見据える姿勢は悪くない。ただ構えとしては、可もなく不可もなしといった感じだろうか。

<仕掛け> 平均的な仕掛け 投手の重心が下がってきて底に到達したときに始動

 これが、最も平均的なタイミングでの始動となる。この仕掛けは、ある程度の対応力と長打力をバランス良く兼ね備える万能型。主に中距離打者や打点を多く稼ぎたいポイントゲッターが多く採用する。ただ一見完璧そうに見えるのだが、実はアベレージ打者なのか長距離打者なのか、どっちともつかずの特徴の見えにくいスタイルに陥りやすい。個性のない打者の多くが、この仕掛けを採用しているケースが多い。

<足の運び> ☆☆☆☆

 足を軽く浮かして、少しまわしこんで踏み込んできます。ある程度「間」が取れているので、速球でも変化球でも幅広く合わせることができるはず。真っ直ぐ踏み出して来ることからも、内角でも外角でも捌きたいという幅広い方向への打ち返しにも期待。

 特に踏み込んだ足元もインパクトの際にブレないので、体の開きも我慢でき外の球や低めの球にもついて行ける。一見ラフそうな打者だが、緩急・コースにも対応できる、幅の広い打撃が持ち味。

<リストワーク> ☆☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」の形を、無理なく作れている。けしてインサイド・アウトでボールを捉えるわけではないが、ボールを捉えるまでのスイングに大きなロスは感じられない。

 ボールを捉えてからも、大きな弧を描き何よりフォロースルーまでシッカリ取れたスイング。この辺が、彼の長打力につながっているのではないのだろうか。ヘッドスピードも鋭く打球の強烈であり、スイングに関してはひ弱さは感じられない。

<軸> ☆☆☆☆

 頭の動きが小さく、目線のブレは少ないはず。体の開きも我慢でき、軸足も大きくは崩れません。一見ラフそうなスイングをしますが、シッカリした技術に裏打ちされている。



(最後に)

 打撃は荒っぽさはあるものの、技術的にはシッカリしているし、肉体的にもプロの球にも力負けすることはないと思います。この打力に加え、守備・走力のポテンシャルもあることを考えると、実際に育成枠あたりならば指名されても不思議ではないように思います。

 少しプロのスピード・キレに対応するのには時間がかかるかもしれませんが、素材としては中々興味深い選手でした。個人的には指名リストに載せるか悩みましたが、高校からプロに入るほどかは正直迷います。確信が持てなかったので、 まではつけないことに致しました。ただ自分のご贔屓球団が、育成枠あたりで指名するならば、その将来を期待してみたい選手です。

(2012年・夏)