12ky-5






  北條 史也(光星学院)遊撃手 177/75 右/右 





             「山田哲人(ヤクルト)より劣るようにも見えるが」





 夏の甲子園で4本塁打を放ち、最後の集大成で最高の結果を残した 北條 史也 。その一方で、U-18の世界選手権では、絶不調だった。そういった意味では、木製バットへの対応にも不安を残した大会だと言えよう。高校生遊撃手となると比較したくなるのは、ヤクルトに入団した 山田 哲人(履正社)との比較。最後となる北條選手の寸評を、高校時代の山田哲人との比較で考えてみた。

(この夏の北條)

 センバツでは、強引なまでの引っ張りが目立っていた。しかしこの夏は、彼らしいセンター方向へ打ち返すという、基本に忠実な打撃が戻ってきた。雑な一面がなくなり、それが結果としても良い方に転ぶ。4本塁打という離れ業を甲子園で実現、それも強引に巻き込んだレフト方向への本塁打ではなく、センターバックスクリーン方向に、無理なく放り込んだものだった。夏の甲子園だけの内容ならば、北條は春より文句なし評価が上がる。

 しかし∪-18の世界選手権では、当初は5番を任されていたものの、試合が進むにつれ評価は落ち下位打線に。実際甲子園で見せたような、文句なしの打撃は観られないまま、大会を終えてしまった。

(守備面)

 センバツの頃に比べると、余分な動きが少なくなかったかなぁという印象があります。それと打球への一歩目に思いっきりの良さが出てきて、迷いのない動きが見られるようになりました。そういった意味では、キャッチングまでの動作~スローイングに至る流れまで、春よりワンランク守備に関しては成長しているように思います。

 その一方で、今までや甲子園でもあまりミスが目立なかったスローイングミスが、U-18の大会では目立ちました。先輩の 坂本 勇人(巨人)にも見られるのですが、スローイングが雑になる時があります。肩に関しては、充分プロの基準を満たしているのですから、丁寧にプレーすることを心がければ、もっと安定感が出てくるのではないのでしょうか。バッティングの不調が、そのまま守備にも影響しているように感じます。

 それでも、先輩の 坂本 勇人でもプロの遊撃手を担っているのですから、北條もある程度ファームで基礎を鍛えれば、二遊間を担えるだけの資質はあると思います。坂本のようなダイナミックなプレーを期待するよりも、北條の方が堅実で安定感のあるプレーが期待できます。ただ遊撃手としては、高校時代の山田哲人の方が、適正は高いはず。北條は、チーム事情によっては二塁あたりを担う可能性も高いのでは。

(走塁面)

 一塁までの塁間は、4.45秒前後とドラフト候補としては平均的。これを左打者に換算すると、まさにプロの基準である4.2秒に相当します。この夏の青森予選の6試合でも、2盗塁と平均的。けして動けない選手ではありませんが、足を売りにするほどの走力はないと考えられます。ちなみにこのタイムを2012年度のドラフト指名された右打者で偏差値化すると、彼の走塁偏差値は 43 と走力では物足りものであることがわかります。

 そういった意味では、プロでも遊撃手が担えるかもしれない守備力は、現状中の上レベル。走力は、中の下レベルとドラフト候補としては考えて良さそうです。

(打撃内容)

 北條を昨年見て非常に面白い選手だと言ってきたのは、センター方向に火の出るような打球ではじき返す、打撃のポテンシャルの高さにありました。正直ここまで長打力でアピールするというのは、私の想定外でもありましたが。この長打力を含めた打撃でのスケールに関しては、山田哲人よりも上であり、むしろ先輩の 坂本 勇人 を彷彿とさせます。

<構え> ☆☆☆

 スクエアスタンスで両足を揃え、前の足をつま先立ちして構えます。グリップを高めに添える強打者スタイルで、この辺は、春と変わりません。

 腰を沈めずに背筋を伸ばして構える選手であり、両目で前を見据える姿勢や全体のバランスは並ぐらい。何か全体としては、センバツの時の方が良かったように思います。本人は特に変えている意識はないのかもしれませんが、常に打撃フォームのバランスというのは状態によって微妙に変わってきてしまうものです。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 この辺は、昨秋からずっと変わっていません。幾ら本塁打を放っても、本質的にはアベレージ打者の傾向が強いと考えられます。少なくてもこの選手はスラッガーではなく、長打を増しても中距離ヒッターまででしょう。

<足の運び> ☆☆☆☆

 足を早めに引き上げて回しこんでくるので、ボールを捉えるまでの「間」は取れており、速球でも変化球でも合わしやすい打ち方です。春は大きく足を引き上げて、強く踏み込むということを重視していましたが、そういった意識はこの夏は薄れていたように思います。

 ベース側にインステップして踏み込むので、外角を強く意識したスタイル。踏み込んだ足元もインパクトの際にブレません。そのため外角の球や低めの球にも喰らいつくことができるのですが、基本右方向への打撃は魅せないので本当に厳しい外角球は厳しいと思いますし、インステップするぶん内角も窮屈だと考えれます。

 すなわち緩急などのスピードの変化には対応できますが、打てるコースの幅は意外に狭いのではないか? そういった疑問は残ります。ただこの辺の動作は以前と大きく変わりませんし、無理に引っ張ろうとしなくなった分センバツよりは良くなっていると言えるでしょう。

 北條の打撃がU-18で狂ったのは、この両サイドへの対応に敏感なだけに、ストライクゾーンの違いをモロに受けてしまったのかもしれません。

<リストワーク> ☆☆☆

 春はグリップを早めに動かし、一年の流れの中でボールを捉えるような打撃でした。しかしこの夏は、早めにトップの場所を決めて、そこから振り出すという流れに変わっています。

 特に打撃の準備である「トップ」を作るのは遅れないのですが、グリップが身体の奥に入り込んでしまい、素直にバットのヘッドが出てこないようなところから振り出されるのが気になります。

 またセンバツでは修正されつつあった、身体から離れて振り出されるスイングが、またU-18の試合では遠回り出ていたのは気になります。ここまで肘が下がってしまうと、腰の開きは早く逃げますしインパクトまで時間がかかり打ち損じが増えます。特に彼の場合、腰は逃げるのにインステップで抑えこむ。それでいてスイングは、センターからレフト方向への引っ張るので、ボールを引っ掛けてしまうことが多いのです。かなり特殊な形のスイングなので、この辺が上手く連動して行かないと結果が残せません。

 この部分は、プロではかなり修正されるのではないのでしょうか。それでもバットが遠回りにまわる分、遠心力を生かしたスイングになります。これが、この身体でもセンターバックスクリーンに叩きこむ大きな原動力になっていることも否定できません。木製バットである程度長打を打つには、こういったバットのしなりを活かすスイングも必要です。無駄ばかりを削ることで結果を残す金属バットとは、根本的にスイングの仕方が異なります。そうしないとボールが飛んで行かないからであり、より統一球ではそういった誤魔化しが効かなくなってきています。

<軸> ☆☆☆☆

 足を大きく上げ下げする割には、目線は大きくは動きません。身体の開きも我慢出来ていますし、軸足にも安定感を感じます。元来軸回転でスイングする、腰の回転を生かしたスイングができる選手。むしろ身体を残しての右方向への打撃の方が、彼のこれからの課題になりそう。

(打撃フォームのまとめ)

 それほど意識的に、フォームはいじってはいない感じが致します。むしろ状態の良し悪しで、自然と変化している部分が大きいのではないのでしょうか。ただ強引に引っ張ろうという意識から、センター方向にはじきかえす、その意識を徹底させて夏に挑んできました。

 元々打球の速さはピカ一ですし、スイングにひ弱さはありません。当てるの自体も下手ではないのですが、スイングのメカニズム上、捌けるコースの幅が限られています。特にバットの振り出しに課題があるので、この辺は大きく修正されるのではないのでしょうか。そういった意味では、守備含めて数年はファームでジックリという選手だと思います。坂本や山田のように、早くから一軍の試合でというタイプではなさそうです。

(今後は)

 チームメイトの 田村 龍弘 に比べると、木製バットやプロへの対応には時間がかかるかもしれません。しかし大成した時の役割は、彼よりも重要なポジションを担えるだけのスケールは感じます。

 恐らく3~5年程度は、一軍への定着には時間がかかるかもしれません。それでも攻守にスケールのある二遊間候補が欲しいという球団が、上位で指名して来るのではないのでしょうか。ドラフト会議では、ハズレ1位~2位ぐらいの間で指名されると思います。個人的には、山田 哲人 の方が大成する確率は高いと思いますが、坂本選手のような爆発力のある活躍を期待して、山田選手の高校時代と同等の評価を下したいと思います。

蔵の評価:☆☆☆

(2012年 夏)

 








北條 史也(光星学院・3年)遊撃手 177/73 右/右 
 




               「バッティングが雑になっている。」





神宮大会では、外角の球を強烈な打球でセンター前にはじき返していた 北條 史也 。しかしこの選抜では、レフトスタンド狙いの引っ張りにかかっているのが気になる。4番という打順にこだわり過ぎて、打撃が雑になっているのが、私にはどうにも気にいらない。特に彼は、けして長距離砲ではないのだから。

(プレースタイル)

 外角の球でも、強烈な打球でセンターにはじき返す基本に忠実な強打。安定した遊撃守備、相手の隙を突く走塁と三拍子バランスの取れたプレーヤー。久々に遊撃手で、私をドキドキさせてくれる素材だった。しかし選抜では、その打撃に狂いが生じている。

(守備・走塁面)

 ボールを捕球するまでに、ちょっと余計な動きが多いかなという印象はあります。そのためフットワークが、ボールに到達するまでにロスを感じます。キャッチング~スローイングまでの流れも、まだ無駄がないとは言えません。しかしスローイングは安定しており、送球が乱れる場面は少ない選手です。地肩も、中の上レベルのものがあり、プロでもやって行ける身体能力はあります。

 打球への一歩目、プレーのスピード感は平均的で、総合的に判断して、高校生遊撃手としては中の上レベルでしょうか。将来的にプロの遊撃手を任されるかは微妙なレベルで、いずれにしても少し時間がかかりそう。ただこの選手、二遊間などの守備的負担のあるポジションをこなしてなんぼの選手だと評価します。

 一塁までの塁間は、4.45秒前後。これを左打者に換算すると、4.2秒に相当します。これは、プロが左打者に求める基準レベルになります。秋季大会の114打席で9盗塁を記録、これをプロの1シーズンに置き換えると、1シーズン35個のペースで盗塁を決めている計算になります。そのためドラフト候補としては平均的な走力ですが、実際にはある程度走ることができる選手です。特に外野手がミスをしようものなら、次の塁を果敢に陥れるなど、相手の隙を突く走塁には意識の高さが感じられます。

 現時点では、ドラフト候補として、走力・守備力共に中の上レベルぐらいと考えて好いのではないのでしょうか。

(打撃内容)

 実際のところ、走力・守備では、プロで売りにするほどではありません。指名の有無を決定づけるのは、まさに打撃での評価ということになるでしょう。

 基本は、センターに強い打球ではじき返すのが持ち味なのですが、この選抜ではレフト方向に意識が行っています。

<構え> 
☆☆☆☆

 両足を揃え、ほぼスクエアスタンスで構えます。秋は、もう少し足を引いていたと思われます。グリップは高めに添え強打者スタイル。秋は、平均的な高さだったことを考えても、より自分は強打者だという意識が強くなったのでしょうか? 腰は沈めずに背筋を伸ばすタイプで、両目で前を見据える姿勢・全体のバランスなど、構えに関しては、悪くありません。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 この辺は、秋と変わっていません。早めに始動するのですが、これは大きなアクションによる予備動作が大きな選手なので、早めに動き出さないと間に合わないという事情もあります。ただ仕掛けの観点からすれば、未だにアベレージ打者の傾向を色濃く残しています。

<足の運び> 
☆☆☆

 足を大きく引き上げ、まわし込んできます。秋は、ここまで足の引き上げや回し込みが激しかったかなぁ?という疑問が残りますが、非常に予備動作を大きく取り、強く踏みだそうという意識が強いようです。始動~着地までの「間」が充分取れているので、打てるタイミングは多岐に渡り、いろいろな変化に対応できます。

 元々ベース側にインステップするのは、秋と変わりません。ただ秋は、外角の球は単打で鋭くセンターから右方向、真ん中~内角よりの球は巻き込んで長打というタイプでした。しかしこの選抜では、外角の球でも引っ張りにかかっており、この辺は相手投手の球速・キレのレベルが低いからできる芸当であり、水準以上のピッチャーが出てきたら、ことごとく引っかける可能性は高いのではないかと考えます。今は、自分の打撃を忘れているのかな?と思いますが、相手投手に合わせて使い分けているとするならば、それはそれで凄いと思います。しかし一回戦の内容からは、そういったことはないと考えます。

踏み込んだ足下が、早く地面から離れており、意識がすべてレフト方向にあることが伺えます。

<リストワーク> 
☆☆☆

 秋は、それほど打撃の準備である「トップ」の形を作るのは、遅れる印象はありませんでした。しかしこの春は、中村紀洋(ベイスターズ)のように、グリップも大きくまわし込んで来るので、トップ自体をしっかり作らず一連の流れの中でボールを捉えようというスタイルになっています。そのためどうしても、動作が忙しい印象を受けます。

 ただ秋よりも好くなったのは、以前よりもバットの振り出しが少し身体に近くを通り、ボールを捉えるまでのロスが減ったこと。ボールを捉える時も、バットの先端であるヘッドが下がらない意識は、最後まで持てています。

 特に彼が素晴らしいのは、インパクトの際にグッとボールを押し込めること。ただあまりにボールを運ぼうと、フォロースルーの際のグリップの引き上げが不自然な感じが致します。光星の選手の凡打の場面に多く観られる身体が上に伸び上がるような形は、フォロースルーを無理に引き上げによることが大きいように思えます。

<軸> 
☆☆☆

 動作が大きく動く選手なので、あまり目線は定まりません。身体の開きも、踏み込んだ足下が早く地面を離れるようになっており、秋よりも壁を長くキープできなくなりました。そのため外角の真ん中~低めのコースに投げれば、現状はことごとく引っかけることが予想されます。ただ軸足は、地面から真っ直ぐ伸びており、綺麗な下半身の回転で打てています。

(打撃フォームのまとめ)

 彼独特の感性があるので、大きな動きの中でボールを捉えるという打撃です。そのため流れが一致すれば素晴らしい破壊力を魅せますが、波長が合わないと凡退を繰り返します。投手としては、彼の波長に乗らない工夫が必要です。

 動作が大きい分、ロスも少なくありません。それでも秋よりも、スイング軌道自体はよくなっていると思います。ただ引っ張りにかかっている意識を変えないと、次戦は左の本格派・浜田達郎(愛工大名電)との対戦になります。彼の術中にハマル可能性は極めて高いと考えます。そういった投手に対峙した時に、どんな打撃をするのか興味深いものがあります。

(最後に)

 守備・走力に特別光るものはありませんが、基準を満たすレベルにはあります。また打撃も、素晴らしい資質はあるのですが、現状少し勘違いしているのかな?という印象は否めません。この辺が修正できれば、評価の対象となりますが、現在の内容をみると神宮大会の時に比べると、残念な印象は否めません。

 その辺を、今後の試合・あるいは最後の夏までに修正できれば、更に評価をあげる可能性はありますが、選抜の2試合をみる限り、高い評価を与えることは出来ないかなと。私をドキドキさせてくれた打撃は、けして今のプレースタイルではありませんので。ただそれでも、選抜の時点で☆を付けられる数少ない野手でした。


蔵の評価:
☆☆


(2012年 選抜)










北條 史也(光星学院・2年)遊撃 176/70 右/右 
 




                  「上位候補じゃないの?」





チームメイトの 田村 龍弘 が、高校生野手では抜けていると言われいる。しかし私には、チームメイトの 北條 史也 の方が、好い選手に見える。勿論ポジションが違うだけに、一概に比べることはないが、個人的には高校生遊撃手の中で、久々にドキドキする逸材だ。


(プレースタイル)

 身体はそれほど大きくはないのだが、外の球に対し強烈な打球ではじき返す打撃は全国でも屈指。隙を突く走塁や安定した遊撃守備など、高校生としては極めて高いレベルでまとまっている。特に打撃がしっかりしているところが、個人的には大変興味深い。


(守備・走塁面)

 残念ながら、中々ゴロの当たりが少ないので、正確なラップが計測できない。打球を引っ張って、完全に一歩目が遅れた当たりで、塁間4.8秒弱(左打者換算で4.55秒ぐらいに相当)。実際には、明らかにもっと早く駆け抜けられるはずだ。ただこの選手、基本的にボールを引っ張って巻き込むタイプ。そのため、最初の一歩目はどうしても遅れることになる。むしろこの選手の走力は、出塁してからの方が生かされる。出塁すれば、かなりの確率で盗塁を仕掛けて来るし、またその成功率も高い。また普段の走塁でも、守備の状況をよく見ており、外野手がもたついていれば、積極的に次の塁を貶める。そういった広い視野と状況判断の良さを、この選手は備えている。

 遊撃手としては、驚くほど身のこなしが柔らかいとか、スピード感があるわけではない。ただ堅実で、安定感のある守備が彼の魅力。地肩も驚くほどではないが、基準以上の強さがあり送球も乱れない。一冬超えた時に、どのぐらいのレベルに達しているのか楽しみだ。

 現状、守備・走力共に、ドラフト候補としては平均的。ただまだ2年秋ということを考えると、この一冬での成長が見込めるだけに楽しみ。プロレベルでも来夏までには、ぜひ中の上レベルぐらいの守備と走力は身につけたい。


(打撃内容)

 けして長距離砲でも、生粋のアベレージヒッターでもないが、強くはじき返せると言う意味では超高校級。特に打球の速さは、他の野手と比べ図抜けている。

(打撃フォーム)

<構え> 
☆☆☆

 前足を軽く引いて、つま先立ちして構えます。グリップの高さは平均的で、腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスなどにも大きな欠点は感じられない。まだ線の細さなどがあり、打席での威圧感やイヤラシさなどが感じられないが、この一冬の間に身体が大きくなれば、そういったものも出てくるだろう。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下がり始めるあたりから、大きく足を引き上げて始動して来る。これは、典型的なアベレージヒッターの仕掛けであり、彼は長打よりも対応力を重視してことが伺われる。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 足を早めに引き上げ、回し込んで踏み込んで来る。始動~着地までの「間」があるので、いろいろな変化について行ける。踏み込みも真っ直ぐから~ベース側にインステップして踏み込めるので、外の球でも喰らいついて行ける。特に踏み込んだ足元、なんとかブレずに我慢。これにより「開き」を我慢して、外のボールを捌くことができるのだ。ただ元来は、踏み込んだ足のつま先が開いて踏み込むように、ボールを引っ張って巻き込みたいタイプ。そのためレフト方向には長打、センターからライト方向には強く単打ではじき返すケースが多い。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」を、早めに作ることで速い球に振り遅れない。バットを降りだす時に、少し遠回りに出てくるのが気になるが、バットの先端を下げないようなレベルスイングを意識することで、ドアスイングになるのを防いでいる。この辺が、田村と北條の大きな差だと言えよう。更にボールを捉えてからは、大きな弧を描きフォロスルーまで思いっきり振り切る。フォロースルーの段階では、グリップが高い位置にあり、ボールを運ぶことができる。そのため意外に、ボールは遠くまで飛ばすことができるのだ。

<軸> 
☆☆☆

 ちょっと足の上げ下げが忙しくて、頭も動き過ぎかなという印象は受ける。それでも開きは我慢でき、軸足もそれなりといった安定感。もう少し動きにムラがなくなったら、もっと安定した打撃も期待できそうだ。

(打撃のまとめ)

 この選手の良さは、外の球をキッチリ強く叩けること。そして、ボールを見極める選球眼・動体視力・打席での集中力が高いことがあげられる。ボールを捉えるセンスも悪くないし、すでに打球も超高校級。現時点でその打撃能力は、ドラフト指名レベルに達していると言っても過言ではないだろう。

 更に凄みを増せば、上位指名も期待できる内容。先輩・坂本 勇人(巨人)のような、恵まれた体格、高い肉体のポテンシャルはないが、走攻守の完成度では上を行っているのではないのだろうか。

(今後は)

 今は、走攻守すべての部分で、スケールを増すような肉体の成長を望みたいですね。技術的にはしっかりしたものを持っているので、肉体的な成長が伴って行ければ全国屈指の内野手だと評価されるようになりそう。個人的には、2012年度の内野手の候補の中で最も注視して見守って行きたい。

(2011年 神宮大会)