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田村 龍弘(光星学院)捕手 173/77 右/右 
 



                   「打撃の感性はピカ一」



 U-18のカナダ戦を見ていて驚いた。田村 龍弘 は、状況に応じて、打ち方を全然変えていたのだ。普段は、早めに始動して、足を大きく引き上げて踏み込んで来る。しかし続く打席では、ランナーを進塁させようと右打ちを意識。そこで始動を極めて遅くして、打つポイントを後ろにし、わざと少し振り遅れるぐらいのタイミングで打ち始めたのだ。ただそれができるのも、彼が下級生の時にはこういったタイミングで打っていたからだろう。

 もう一つ興味深いのが、軸足の使い方。通常打撃のおいての軸足は、地面から真っ直ぐ伸びることで、綺麗な軸回転のスイングができる。しかし彼は、打球の方向によってこの軸足の位置をズラし、身体の抜けをよくさせ打球をアシストさせているのだ。これを状況に応じて使いわけるなど、彼の打撃の感性・発想力は、高校生としては図抜けている。高校球界で最も高い対応力の持ち主、そう強く実感させるのには、こういった技術と発想力に裏打ちされていた。

(ディフェンス面)

 この夏、捕手としてもだいぶプレーが板についてきた。ミットを軽く示しますが、グラブを下げずに構える。投手としては、的がつけやすいはず。ボール一球、一球の押し込みも悪くありません。ワンバウンド処理なども上手くなってきていますし、二塁へのスローイングも時間がかかっていたのが、2秒を切るような送球も見られるようになっています。元々投手としても140キロを投げ込めるように、地肩自体は強い。上のレベルで捕手かと言われると疑問ですが、捕手もこなせる野球センスがあるんだぞということは、充分アピールできたのではないのでしょうか。

 三塁手としても、驚くほど動きが素晴らしいわけではありません。無難というか、それなりといった感じで中の上レベル。もう少しプレーの切り返しなどに鋭さがあれば、二塁あたりを担えると評価も高まると思います。ただプロの二遊間を担う程の、スピード感・鋭さには欠ける気が致します。この選手の一番のネックは、将来何処を守らせることができるのか、イメージがつきにくいことではないのでしょうか。

(走力)

 一塁までの塁間を、大体4.4秒前後で走り抜けます。これを左打者に換算すると、4.15秒前後。ドラフト候補としての基準である4.2秒は満たしており、平均以上の走力もあります。ただこの夏の青森予選でも6試合で1盗塁と、足を活かすプレースタイルでは、けしてありません。ちなみに2012年度のドラフト指名された右打者の走力を偏差値化すると、彼の走塁偏差値は 46 程度。そのため、走力でのアピールは厳しいかもしれません。

 走力・地肩共に、プロでやって行ける身体能力はありますが、実戦で売りにできるほどのものはありません。そういった部分でのアドバンテージはなし。あくまでも、打撃が最大の売りと言えるのでしょう。

(打撃内容)

 この夏は、徹底的にセンターから右方向への打撃を強く意識したスタイル。U-18の世界選手権でも、その打撃を貫き木製バットでも高い対応力を魅せてました。何か物凄いヘッドスピードがあるとか、飛距離が非凡とかいうことはなく、やはりどんな投手にも対応できる対応力こそが、この選手の魅力なのだと思います。

<構え> ☆☆☆

 前の足を軽く引いて、つま先立ちで構えます。グリップを高めに添えながら、背筋を伸ばし立ちます。全体のバランス・両目で前を見据える姿勢などは平均的で、それほど構え自体に非凡なものは感じません。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 冒頭にも述べたように、普段は早めに始動するアベレージ打者の傾向が強い仕掛けです。ただ状況に応じて始動を遅らせるなど、いろいろなバリエーションを使い分けます。こういった選手は、中々高校生ではいません。

<足の運び> ☆☆☆☆

 早めに足を大きく引き上げますが、これはタイミングを図るためというよりは強く踏み込むため。そのため「着地」のタイミングを、上手く下半身で図っているわけではありません。ただ彼の場合早く着地しても、上半身でタイミングを取り直す、特殊な感覚を持っています。

 素晴らしいのは、けして踏み込んだ足元がブレないということ。これにより外角の厳しい球、低めへ落ちて行く球にも、前捌きでボールを拾うことを可能にします。真っ直ぐ踏み込むことで、内角の球でも外角の球でも、幅広く捉えることができます。ある程度の緩急・コースについて、幅広く対応できます。

<リストワーク> ☆☆☆

 意外に打撃の準備である「トップ」を作るのに、立ち遅れていることが少なくありません。逆に手元まで引きつけて、あえてそれをやることで右方向への打撃を可能にしているとも言えるでしょう。

 またバットの振り出しも、かなり身体から離れて遠回りに軌道します。そのためボールを捉えるポイントも、かなり後ろであり、打球はセンターからライト方向へと集中します。ただ遠回りにバットがでる分、バットのしなりを生かした遠心力を利かしたスイングはできます。だから彼は、あの体格でもスタンドインできる打球が多いのだと考えられます。

 ただこのまま行くとドアスイングにもなってしまい、打ち損じも多くなってしまいます。それを防ぐためにバットの先端であるヘッドを立てて、上手くボールを拾えています。そういった打撃のメカニズムをすべてわかっていて、この選手はあえてこういったスイングを行なっているフシがあります。

<軸> ☆☆☆☆

 足を大きく上げ降ろすのに、全く頭が動かないのは驚きです。これにより目線は常に安定し、ボールを的確に捉えます。また踏み込んだ足元は、けして動きません。これもイチローばりに、彼の絶対的な能力です。

 また冒頭にも書いたように、軸足を自在に動かすことで、右方向への打撃を上手くアシストしています。軸足を起点にそのまま綺麗に軸回転で振り切ることは、スイングの一つの理想型。しかし彼は、あえて軸足を動かすことで自分の打撃を実現するという、特殊能力の持ち主です。

(打撃のまとめ)

 あえて教科書どうりのスイングをせずに、自分の感性と発想力でスイングをしています。それは、彼がすでに基礎の段階をものにし、アレンジする領域に達しているからこそできる打撃であり、並の高校生が真似してはいけないレベルでプレーをしてからです。こういった柔軟な姿勢こそ、プロで生き残って行くためには最も必要な資質であり、彼はどんなレベルの球界でも対応して行けると評価します。スカウト達が、何故彼のような特徴に欠ける選手にここまで入れ込む理由が、この夏ようやくわかることができました。

(最後に)

 彼の将来像をどのようにイメージすれば良いのか? ポジションこそ違えど、私は 谷 佳知(オリックス-巨人)外野手のような選手になるのではないかと期待します。非常に頭の良い選手ですし、どんな状況でもしぶとく自分の仕事を果たす、そんなプレーヤーになってくれそう。体格やポジションの問題などもあり、極めて高い評価はできませんが、プロの一軍で活躍できる男だと評価致します。

蔵の評価:☆☆☆

(2012年 夏)









田村 龍弘(光星学院 3年)捕手 173/78 右/右 





                   「何処で使うんだ?」





神宮大会に比べると、かなりバッティング内容がよくなってきた選抜大会。チームメイトの北條史也が、引っ張りにかかりバッティングを崩しているのと比べると、田村まだセンターから右方向への打撃も意識でき、元来の広角に打ち返す打撃ができつつある。しかし将来的に、この選手をどのポジションで使えばいいのか?私には、中々判断しかねるものがある。

(ディフェンス面)

 元々捕手をやっていた選手ということで、秋から捕手に戻ってもプレーに違和感はなかった。ミットを示し、グラブを下げないまま捕球。そのためワンバウンド処理にも素早く対応できるなど、思いのほか打球への反応やフットワークは悪くない。

 ミットのハンドリングやボールの押し込みもそれなり。それでもキャッチングとしては、ドラフト候補としては平均レベル。投手へ軽く返球するが、気遣いやリードといった面では、特別なものは感じられなかった。

 元々投手としても140キロ台の球速を記録していたように、地肩自体は悪くない。ただ送球は、スローイングによりバラツキが目立つ。大体2秒~2.1秒ぐらいで投げられているが、ドラフト候補としては、やや物足りないのも確か。プロ入り後は打撃を生かして、他のポジションにコンバートされることになりそうだ。

(打撃内容)

 元々広角に打ち返す強打者といった感じでしたが、神宮大会ではバットが下から出るなど、荒っぽさが目立ちました。ただその頃に比べると、今大会は好いように思えます。

<構え> 
☆☆☆☆

 前足を引いて、グリップを高めに添える強打者スタイル。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスなども取れ、秋よりも打席でリラックスして構えられて好くなっている。

<仕掛け> 早めの仕掛け

秋より少し始動が早くなり、アベレージヒッターが多く採用する「早めの仕掛け」を採用致しました。これにより、破壊力は薄れても対応力が増した可能性はあります。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 足を引き上げて、ベースから離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。足を上げてから降ろすまでの「間」が長いので、いろいろな変化に対応できる打ち方です。

 アウトステップするということは、基本的に真ん中~内角よりの球を強く意識したスタイル。特に引っ張りを重視したスイングです。しかし踏み込んだ足下はブレないので、ボールよ~く手元まで引きつけて、外角でも高めの球ならば、充分にセンターから右方向にはじき返すことができます。ただ腰の逃げは早いので、外角低めのストレートや外に逃げて行くスライダーの対処は苦手としているはず。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」を作るのは平均的。始動も早いので、特に速い球に立ち後れる心配はありませんが、むしろ変化球に合わせる方が上手い気がします。

 秋は、バットが身体から離れて下から出てくるようなスイングでした。しかし今回の先発では、上からミートポイントもロス少なく振り下ろし、バットの先端であるヘッドを立てるようにスイングして、スイングが大回りになるのを防げています。またヘッドの出がスムーズになり、最後までキッチリ振り切れています。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げが激しいフォームなので、目線はそれなり。身体の開きは我慢でき、軸足も大きくは崩れません。

(打撃フォームのまとめ)

 秋との違いは、スイング軌道がしっかり修正してこられたこと。これにより甘い球を、打ち損じ少なく捉える確率が増えました。元々ボールを捉えるセンスは好かったので、素直に結果となって現れているいます。打撃の内容も今大会に関しては、4番の北條よりも良い形で打てています。これならば、打撃でアピールできるのも頷けます。

(最後に)

 プロへの需要を考えると、打てる捕手としてのアピールが一番かと思いましたが、捕手としての将来性はあまり感じません。とてもプロでレギュラーを担えるような素材ではないでしょう。

 そのため将来的には、やはり内野手としてプレーすることになると思います。三塁手としては、少々長打力がもの足りませんので、二塁手あたりが担える付加価値が出てくると好いですね。

 ただ塁間は、4.6秒前後(左打者換算で4.35秒に相当)程度、プロに混ぜてしまうと、足でアピールできるわけではありません。意外に融通が効かないタイプかなと思うのですが、夏までの更なる進化を期待したいと思います。個人的には、スカウト達が評価するほど、彼の良さが未だにわかりません。


蔵の印象;



(2012年 選抜)



 








田村 龍弘(光星学院・2年)捕手 173/78 右/右 
 




              「捕手が一番プロ入りに近いのでは?」





1年生の頃から、光星学院の中心打者として活躍してきた 田村 龍弘。そのポジションも、セカンド・サード、そしてこの秋は捕手として出場。セカンドとしてはイマイチで、サードとしては体格から来るスケール不足。そう考えると、打てる捕手としてアピールすることが、私には高卒でプロ入りするのには一番の近道であるように思える。

(ディフェンス面)

 その捕手としてのプレーだが、元々捕手だったこともあり、思いの他悪くなかった。元々小柄なためフットワークや打球への反応が素早く、動ける捕手との印象を受ける。そのため神宮大会ではキャッチングミスなどもしていたが、ハンドリングも良く、ボールの押し込みも悪くなかった。ミットを投手が投げやすいように示し、そのグラブを下げないで捕球するので、ワンバウンド処理にも立ち後れない。

 性格的に捕手タイプなのか、リードセンスはどうなのか?などの疑問は多少残るが、現時点では合格ラインだろう。ただスローイングは、かなり送球に波があり、タイムにもバラツキが目立つ。ただ地肩自体は、投手としても140キロ台の球を投げ込める選手でありまずまず。スローイングに安定感出てくれば、上のレベルでも捕手としてやって行けるポテンシャルは秘めている。この一冬での成長に、期待してみたい。

(打撃内容)

 これまでは、広角に打ち返す完成度の高い打者とのイメージがありました。しかしこの秋は、少しバットが下から出てきており、粗っぽい印象を受けます。

<構え> 
☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップを高めに添えた強打者スタイル。腰の据わり具合や、両目で前を見据える姿勢は悪くない。全体のバランスとしては平均だが、少し力み過ぎかなという印象を受けた。もう少し打席では、リラックスを心がけたい。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 投手の重心が沈みきったあたりで始動する、「平均的な仕掛け」を採用。勝負強さを売りにする、中距離打者が採用する仕掛けとなっている。実際彼のプレースタイルも、そういった選手だと言えよう。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 足を引き上げ回しこむなど、始動~着地までの「間」が取れている。そのため、いろいろなボールに対し合わせられる幅は持っている。軽くベースから離れた方向に踏み出す、アウトステップを採用。元来は、真ん中~内角よりの球を引っ張って巻き込む打撃を得意としているのかもしれないが、右方向にもはじき返すことができる。それは、踏み込んだ足元がインパクト際にブレず、地面を捉えて離さないから。これにより体の開きを我慢して、外角の球を捌けるのだろう。

<リストワーク> 
☆☆

 打撃の準備である、「トップ」を作るのは平均的。ただ昨年に見られた傾向ですが、バットの振り出しが体から離れて遠回りに出てくるので、どうしてもボールを捉えるまでにロスが感じられます。スイング軌道も、バットが下から出てくるような感じです。それを開きを我慢した下半身と強烈なヘッドスピードが、ドアスイングになるのを防いでいる。最後まで力強く振れるスイングは魅力ですが、かなり荒っぽく見えます。この辺を改善して行かないと、上のレベルでは率を残すのは厳しいかと思います。またアウトステップはしているのですが、スムーズにヘッドが出てこない分、内角の捌きもきついのかもしれません。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下ろしが激しいフォームなので、ボールを呼び込むまでは目線が動いています。ただ完全にスイングに入ってからは、頭の動きは小さいです。体も開きも我慢出来ていますし、軸足にも強さを感じます。もう少し無駄な動きがなくなれば、もっと安定した打撃が期待出来そう。

(打撃のまとめ)

 元々ボールを捉えるセンスは悪くないのですが、それを粗っぽい技術が邪魔をしています。結果を求めるばかりに、どんどん打撃が雑になっている感じが致します。強く広角に打てる打撃は魅力ですが、今の荒っぽさのままだと、上のレベルでは正直厳しい。潜在能力の高さはあるので、打てる捕手としてのアピールが、雑な面を目立たなくさせてくれています。

(最後に)

 捕手という難しく大変なポジションを担うことで、打撃の魅力は薄れる可能性があります。それでも結果を残してゆかなければ、プロへの道は厳しいでしょう。ただ幸い捕手としての秘めたるポテンシャル、現時点での能力も悪くないので、打てる捕手としてのアピールは、高卒プロを目指すには悪くないと思います。

 隙を突く積極的な走塁や打球への素早い反応などを見ていると、プレーに集中力や意識の高さを感じます。攻守に課題は山積みですが、それを乗り越えて行ける人間的なタフさは、プレーの端々から感じられます。あとは、しっかり足元を見据えて、結果よりも内容を重視して基本を見つめ直して欲しいと思います。

 それが、この冬間に出来たならば、高卒でのプロ入りも期待できます。ただドラフト候補として、図抜けている印象はなく、もし指名されるとしても中位~下位指名だと私は考えます。むしろ彼には、スケールよりも実戦力を、今は養って欲しいと願うばかり。選抜までの成長ぶりを、期待して待ちたいと思います。


(2011年 神宮大会)









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