12ky-12






柿沢 貴裕(神村学園)投手 179/80 右/左 



                「野手としては見たことがないが」




これまで、下級生の時から 柿沢 貴裕 を見てきたが、正直野手として見たことはなかった。しかし今回は、野手としての評価も高いとのことで、野手としての寸評を作成することにする。


(プレースタイル)


 この選手の良さは、ボールをジックリ見られる目の良さにあります。打席でも早打ちせずに、自分の狙い球が来るのを待ちます。低めの球に食らいつける柔らかさもありますが、ガッチリした体格から繰り出される打球は強烈。夏の鹿児島予選では、3本のホームランを放つなど、パンチ力も兼ね備えます


(守備・走塁面)


 打球への反応や次の動作への移行などは素早いので、内野手として鍛えてみたいと思わせる部分もあるのでしょうか?ただ動作が荒っぽく繊細さには欠けるタイプなので、個人的には野手としては外野手の方が向いている気が致します。当然投手としては、140キロ台連発の地肩の強さなので、肩を売りにできる資質は充分あると考えられます。

 一塁までの塁間は、少し緩めて4.4秒台。恐らく全力で駆け抜ければ、基準である4.2秒前後の脚力はあると考えれます。ただこれまでのプレーを見る限り、走塁への貪欲さは感じられず、足を売りにする意欲はないように思います。今後も走力に関しては、それほど期待できないのではないのでしょうか。

 現状外野手としてはソコソコ期待できますが、走塁に関しては正直あまり期待は持てません。本人の走塁への意識が変わらない限り厳しいでしょう。


(打撃内容)


<構え> ☆☆☆


 スクエアスタンスで、グリップの高さは平均的。腰の据わりも良く、両目での前の見据え、全体のバランスなども良く、好い構えではないのでしょうか。特に最後までボールを目で追っており、打席での集中力・目の良さが印象的。


<仕掛け> 早めの仕掛け


 投手の重心が下る時に始動する、早めの仕掛けを採用。これは、典型的なアベレージヒッターが採用するスタイル。パンチ力を秘めますが、基本的には対応力を重視したスイングになっています


<足の運び> ☆☆☆☆


 早めに足を引き上げて来るので、始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でも対応しやすい打ち方。すなわち、緩急への揺さぶりには強いタイプ。

 真っ直ぐ踏み出して来るように、内角でも外角でも対応したいという意志の現れ。踏み込んだ足元も、なんとか開かずに最後まで我慢。外角や低めの球にも、食らいついて行くことができます。


<リストワーク> ☆☆☆


 打撃の準備である「トップ」の形を作るまでは平均的。バットの振り出しは、けしてインサイド・アウトの最短距離で振りぬくタイプではなく、ある程度懐に余裕がないとボールが捌けない。そのため内角の厳しいところへの対応には、不安を感じます。その代わり、外角の球をしなりを生かして飛ばすことはできるので、ボールが想像以上に飛んで行くものと考えられます。

 ボールを捉えるセンスにそれほど非凡なものは感じられませんが、ヘッドスピードが鋭く・打球の速さには目を見張るものがあります。振り出しはそれほど良くありませんが、バットのヘッドを立てて、スイングが遠回りになるのを防ぎます。


<軸> ☆☆☆☆


 足を上げ降ろすタイプですが、それほど目線は動きません。身体の開きも我慢出来ていますし、軸足にも粘りが感じられます。体軸は、比較的安定しているのではないのでしょうか。


(打撃のまとめ)


 眼の良さと打席での集中力・体幹の強さを生かした打球の速さに非凡なものを感じます。ただ好打者にしては、内角への捌きが不安なのと、特別ボールを捉えるセンスに非凡なものは感じません。この辺が、打者として並のレベルで留まる可能性も否定できないかなという気も致します。


(野球への取り組みと感性)


 打席に入るときの足場の馴らしが淡白で、打者としてのこだわりが感じられません。本人も、自分は投手だからという意識が強い選手ではないかと思います。

 そうかといって、普段のプレーぶりや打席に入る時にラインに気にせず踏んで行くあたりは、バッテリー系の投手に必要な繊細さ・慎重さには欠ける性格なのかなと思います。こういった選手は、よほど投手でも馬力で圧倒できるリリーフか、野手の方が向いていると思います。

 智弁和歌山戦では、2打席連続低めのボールゾーンへ切れ込むスライダーを三振しました。しかし三打席目には、低めのスライダーを当て、ランナーを二塁に進塁させ最低限のバッティングを。四打席目には、捕手のサインとは違いましたが、内角低めに来たスライダーをショート横を突いてヒットを放つなど、徐々にスライダーに対応して行ったところは評価できます。

 打撃の感性を感じるかは別にしても、打席ごとに徐々に対応できる順応性と対処しようという思考は感じられ、そういった意味では、自分の打撃を改善・広げて行ける可能性は感じられます。


(最後に)


 楽天がどういう評価で彼を獲ったかはわかりませんが、本人の中では投手としてやりたいという意志が感じられます。また投手としても、150キロ級の球を連発できる球威・球速は感じられるので、ショートリリーフで活路を開ける可能性はありそう。

 ただ投手としてはある程度形が出来ている選手なので、今後爆発的にピッチングを広げて行けるのかには疑問が残ります。数年やって投手として目処が立たなければ、早く野手に切り替えた方が好いのではないのでしょうか。

 ただ野手としても、どうでしょうか? これまで散々見てきて、全くそう思ったことはないので、個人的には評価しておりません。いずれにしても、高校からプロに入るほどの選手なのかは疑問が残るところ。ただその答えは、比較的短期間で出るのではないかと思っています。


(2012年 夏)


 







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