12ky-10






鈴木 誠也(二松学舎大付)投手 181/83 右/右 
 




                  「全く感性を感じない」





昨年から「身体能力はドラフト1位級」と評してきた 鈴木 誠也 昨年から、ずっと彼のプレーを見てきたが、あくまでもポテンシャルはドラフト1位級だが、そのプレーからは、工夫やインテリジェンスが全く感じられない。こういうプレーヤーが、プロの環境や指導で、どのような科学反応が起きるのか、個人的には大変興味深い。

(守備・走塁面)

一塁までの塁間を 4.2~4.0秒を切るぐらいのタイムを叩きだす選手で、これを左打者に換算すると3.95~3.75秒ぐらいと、破格のタイムに相当する。

通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

実際ベースランニングの走る姿やスピード感は、相当なものを感じる。ただ投手というポジション柄、それほど盗塁はやってこなかった。そのため盗塁をバシバシ決められる技術があるのかは別だし、またそういったセンスを兼ね備えているのかは、プロの指導を受けてみないと、どうなるかはわからない。ただ純粋に走力という意味では、プロでもトップクラスの能力を持っている。

 守備としては、ピッチャー返しに鋭く反応してボールを捌き、二塁に送球してアウトにするなど、その身のこなしは中々のもの。ただ大型故に、あまり細かい動きはどうだろうか? プロでは、外野手として適正が高そう。

 投手としては、常時130~Maxで140キロ超えるか超えないかぐらい。どうも一年生の時に147キロを記録してしまったことがあるのか? そのイメージが先行してしまう。しかし私自身彼を、何度となく見てきたが、140キロ台後半などのボールを見たことがない。また外野手として守っていても、その返球は、驚く程ではなかった。あくまでも中の上ぐらいの地肩であり、これから更に肩が強化されれば、プロでも強肩として売りにして行ける、現状はそんなところだろう。

 こうやってみると、抜群の身体能力を持っていても、まだそれを活かす術は身についていない。あくまでも、プロの指導と本人の努力で、その素材を何処まで磨いて行けるのか。こればかりは本当にプロに混ぜてみないとわからない部分だが、彼のプレーを見ていると心配になる。


(打撃内容)

 下級生までは、どの方向に打球が飛ぶタイプでした。ただ最後の夏の打撃をみると、踏み込んだ足のつま先が開いており、明らかに引っ張りを強く意識した打撃になっています。この選手の凄いのは、投手ならではの体幹の強さで、ビックリするような飛距離を飛ばせるということ。快速・強肩・飛距離 とその素材の凄さは全国屈指です。

<構え> 
☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップを高めに添えます。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスは平均的。12月の東京都選抜の時に見たフォームと、殆ど変わっていないように思います。打席では適度に身体をゆらぎ、リラックスして構えられています。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 投手の重心が下がりきった時に始動する「平均的な仕掛け」を採用。これは、ある程度の対応力と長打力を兼ね備える中距離ヒッターの仕掛けです。これを見ると、彼は生粋のスラッガーというよりは、中距離タイプである可能性が高まります。始動のタイミングも、昨年から変わっていません。

<足の運び> 
☆☆☆

 足を引き上げて、真っ直ぐ踏み込んできます。始動~着地までの「間」はある程度あるので、速球でも変化球でも、スピードへの変化はそれなりに対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角も外角も同じように対応したいという意志が感じられます。

 最大の変化は踏み込んだ足のつま先が、あらかじめ開いて踏み込まれているということ。これは、ボールを引っ張って巻き込みたいという彼の意志の現れです。そのため、インパクトの際には当然足元がブレがちなので、逃げて行く外角球(スライダーのような球種)や外角低めの球を、打ち返すことは難しくなります。その分、真ん中~内角よりの球を、長打することに主眼が置かれています。そのため、打てるコースは限られていたでしょう。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」の形は、早めに作れており振り遅れる心配はありません。また昨年からの成長は、バットが少し遠回りに出るスイング軌道を、ミートポイントまでロスなく振り下ろせるようになっていました。

 ただ昨年もそうだったのですが、スイングの弧は小さめで、フォロースルーでボールを運ぶスイングでもありません。そのため彼のホームランは、現状上手く巻き込んだ時で、そう多くは望めないスイングになっています。ただインパクトの際の、ボールの押し込みは悪くありません。

<軸> 
☆☆☆

 昨年に比べると、目線は少し動く感じが致しました。身体の開きも我慢できなくなっています。ただ軸足には強さが感じられ、内ももの筋肉が発達しビックリする飛距離の本塁打を放てるのも頷けます。

(打撃のまとめ)

 昨年に比べると、長打を意識して打てるコースは限られるようになりました。ただ昨年からの成長は、スイング軌道に無駄がなくなり、綺麗に振り下ろせるようになったこと。この点は、評価できます。

 ただ問題は、彼の打撃をいつも見ていると、ボールを捉えるミートポイントが微妙にズレた外野フライが多いですね。また同じような内容の打撃を、繰り返す学習能力の無さが気になります。

 元々打者らしい性格の持ち主で、イケイケで打てている時は好いのですが、ちょっと相手の攻めが上手いと同じように討ち取られます。非常に感覚だけで野球をやっている選手なので、深く物事を考えるという習慣が感じられないのは、いつも気になっていました。


(最後に)

 これからプロという、格段にレベルの違う世界に入ります。その時に、考える習慣をしてこなかった これがどうでるのか? また同じ過ちを繰り返さないという、相違工夫ができる選手なのか そういった不安はつきまといます。

 またプロの指導者が、そういったことを教えた場合に、それを上手く自分なり消化し、その後につなげて行けるのか?これは、中々現状では不安です。私がプレーに感性を感じられないと述べたのは、彼が自分の打撃を、これから自分なり工夫して広げて行けるのか。プロの世界では、教わったこと以外のものを、自分なりに広げて行ける能力がないと、長く活躍することはできません。この破格の身体能力を活かすだけの能力があるのか、この辺は大いに不安です。ただ素材は秋山幸二(ソフトバンク監督)級。果たして、この天才的な才能を開花させることができるでしょうか?


蔵の評価:
☆☆


(2012年 夏)









 鈴木 誠也(二松学舎大附2年)投手&一塁 181/81 右/右





                  「身体能力はドラ1級」





打ってはビックリするようなホームランを放ち、走っては右打者ながら塁間を4.0秒前後で走れる破格の脚力を誇り、投げては140キロを記録する地肩を持つ 鈴木 誠也 。投手としては平凡な選手だが、野手としての可能性は無限大の男である。身体能力だけで言えば、ドラフト1位で指名されるぐらいの文句なしのものがある。


(プレースタイル)


 彼ほどの逸材が、何故それほど注目されないのだろうか?すでに2年春の時点から140キロ台を記録していたように、彼は投手としても高いスピード能力を持っており、投手としての素材と見る向きも少なくない。投げない時のポジションはファーストと、守備的負担の少ないポジションを担っており、彼の破格の身体能力が生かされる場面は極めて少ない。当たった時の飛距離は抜群だが、本質的にスラッガーのように、オーバーフェンス連発というタイプではないところも、大きな要因としてあげられる。ただ彼の潜在能力の高さは、東京都の関係者ならば周知の事実。東京都選抜の一員として出場した12月の東都選抜との試合では、投手登録ながらスタメンで4番・一塁手として起用されていた。それだけ彼の能力を、関係者もも高く買っていたからだろう。

(守備・走塁面)

 それじゃ投手としての、フィールディングなどの各動作が素晴らしいかといえば、それほど非凡なものは感じない。またそのピッチングからも、野球センスに優れているとか、クレバーさを感じさせるわけではない。彼は、頭で考えてプレーをすると言うよりは、自分の感覚に頼ってプレーをする。そういった意味では、彼の良さを活かすには内野よりも外野なのだろうと考える。

右打者ながら、塁間4.0秒前後(左打者換算で3.7秒前後に相当)という、破格の走力の持ち主。通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。ただ彼の場合、アウトだとわかると勢いを緩めてしまうことが殆どで、なかなか本当の走力を図れる機会は少ない。ただ出塁すると、果敢に盗塁を仕掛けなど、まるっきり走る気がないわけではない。ある意味、気分屋というか、イケイケの時しか力を発揮しないムラッ気のあるタイプのようだ。

(打撃内容)

 実際試合中の所作を見ていても、極め細やかさは感じられず、完全にイケイケの野手的な考えの持ち主。打席でも来た球を打つだけ、そのため同じ球に同じように、次の打席でも討ち取られることも少なくない。

そこでもう少し詳しく見るために、彼の打撃フォームを分析してみたい。参考にしたのは、この夏の映像なので、今は若干の違いはあるかもしれない。

<構え> 
☆☆☆

 前の足を軽く引いて、カカトを浮かせて構えます。夏の頃は、グリップを少し下げ気味に構えていたように見えますが、12月の試合では高めにグリップが添えてあったように見えました。腰は深くは沈めずに、両目で前を見据える姿勢や全体のバランスは平均的。ただ打席では、非常にリラックスして構えられているのは好いと思います。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 投手の重心が沈みきったあたりで始動する、「平均的な仕掛け」を採用。これは、中距離打者や勝負強さを売りにする打者が採用する仕掛けであり、彼が生粋のスラッガーではないことがわかります。

<足の運び> 
☆☆☆

 足を上げて、真っ直ぐ踏み込んできます。「始動」~「着地」までの「間」があるので、ストレートでも変化球でも、ある程度対応できます。真っ直ぐ踏み出すように、内角の球でも外角の球でも捌きたいという彼の意志が感じられます。実際踏み込んだ足元は、インパクトの際にブレません。これにより体の「開き」を我慢して、外角の球にも対応してきます。特に打球は、右に左にセンターへと、どの方向にもはじき返します。特に春季大会の国士舘戦で放った、内角のストレートをレフトスタンドに運んだ打球は、文句なしの一発でした。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」は早めに作れており、速い球に立ち遅れる心配はありません。ただバットを振り出すときには、体が離れて出てきており、バットは遠回りに回ります。それでも踏み出した足元がブレないので、体の開きはある程度のところでストップ。更に高速のヘッドスピードが、スイングのロスを感じさせません。彼がそれでも長距離打者ではないと言うのは、スイングの孤がコンパクトで、フォロースルーを使って運ぶタイプではないからです。

<軸> 
☆☆☆☆

 彼が素晴らしいのは、足を適度に上げ下ろすものの、頭があまり動きません。そのため目線が、大きく狂いません。更に体の開きを我慢でき、軸足も大きく崩れません。体が突っ込まない分、調子の波は少ないタイプでしょう。また綺麗な回転で、ボールを打つことができています。

(打撃のまとめ)

 実際の打撃フォームを分析してみると、それほど細かい部分まで意識は行っていませんが、おさえるポイントはおさえたスイングができています。

 ボールを捉えるセンスや、ただ来た球を打つだけと頭の良さは正直感じません。ただそれでも、ボールをどの方向にはじき返すことができますし、感覚的にある程度のレベルの投手の球ならば苦になく対応できる絶対能力があります。天性の体の強さがあるせいなのか、芯でボールを捉えたときは、高校生では滅多に見られないような凄い打球を飛ばします。

(今後に向けて)

 実際深く野球を追求して考えられていませんし、野球への意識も高くは見えません。今は本当に、素質と感覚だけで、結果がついてきてしまうのでしょう。彼がもし本気になり、打って走って守ってを行ったら、どのぐらいの能力を発揮できるのか想像もできません。ただ本当に 本気になれる男なのかどうか?それを今年は見極めて行きたいと思っています。ひょっとしたら、3割・30本・40盗塁 の秋山幸二(現ソフトバンク)レベルの打者に化けるかもしれません。


(2011年 東京都選抜 VS 東都選抜)