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佐藤 勇(光南)投手 181/77 左/左 
 



                   「ドラフトにかかるかもね」





今年の東北を代表する左腕として、多くのスカウトから注目された 佐藤 勇 。プロ志望届けを提出した今、ドラフトへの可能性も現実味を帯びてきた。惜しくも甲子園行きは逃したが、この全国では無名の男を取り上げてみた。





(投球内容)


 左のスリークオーターから投げ込む投手で、MAX143キロと言われるが、実際はコース・低めを丹念に突く技巧派です。けして三振をバシバシ奪うという本格派ではありません。この夏の福島予選では、2回戦~4回戦にかけて3試合連続二桁三振。しかし全国レベルの強豪・聖光学院と対戦した準決勝では、9回を投げて僅か2つの三振しか奪えませんでした。


ストレート 常時135~MAX143キロ


 敗れた聖光学院戦の模様を見る限り、球速は常時135キロ~後半ぐらいではないかと思います。県大会も終盤の試合だったので、元来のボールの勢い・キレは鈍っていたのかもしれませんが。むしろこの投手は、ス~と伸びてくる球筋の良さが魅力であり、けして球威・球速で圧倒するタイプではありません。その質の良いストレートを、打者の外角中心に集めます。


変化球 カーブ・スライダー・スクリュー


 横曲がりするスライダー、曲がりながら落ちるカーブ・右打者の外に小さく逃げるスクリューボール。この三つのボールを使って、ボールをコーナーに集めます。特にこれはと言うほどの絶対的な球はないのですが、高めに甘く浮く球が少ないのがこの投手の持ち味。基本的には、コースや低めに突いた球を引っ掛けさせて打ち取ります。そういった東北人らしい、粘っこい投球が身上です。


その他


 けして牽制が下手には見えないのですが、基本的にランナーを出しても牽制は入れてきません。しかし目で威嚇はするので、盗塁をフリーパスといった状態にはしません。クィックも1.05~1.15秒ぐらいと、まずまずのタイミングで投げ込めます。ただどうでしょう、その所作を見ていると運動能力にそれほど優れたタイプではないのでは。


(投球のまとめ)


 少しアウトステップして開いて投げるので、左投手ながら右打者の内角クロスを厳しく突くよりも、外角一杯でカウントを整えて来る投球。これは、左打者に対しても同様で、外角一杯で投球を組み立ててきます。

 基本的にコントロールは安定しており、試合を作ることができる先発タイプ。ただ関心したのは、ランナーを背負った場面。聖光学院の4番・園部 聡(2年)と対峙した時などは、特に低めの臭いところを丹念に突くなど、緊迫した場面でも高い集中力を発揮しコントロールをミスを抑えていました。そういった勝負どころでの踏ん張りには、見るべきものがあります。

 ボールに凄みがないので、結構ヒットは打たれると思います。それでも粘り強く自分のピッチングを貫き、相手を淡々と抑えて行きます。ヒットは許しても連打は喰らわない、そういった粘っこいピッチャーです。



(投球フォーム)


 結構上下にギッコンバッタンするフォームで、球筋が安定しなそうですが、実際はそんなことはありません。


<広がる可能性> ☆☆


 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化には適しません。「着地」までの粘りは平均的で、ある程度は身につけることは可能でしょう。ただ今後も絶対的なキレは、期待できないかもしれません。あくまでも低めなどに丹念に変化球を集めて、打たせて取るのが身上ということになりそうです。


<ボールの支配> ☆☆☆


 グラブは最後まで身体の近くにあるので、両サイドへの投げ分けは安定。ただ足の甲の押しつけは浮いてしまっているので、力を入れて投げるとボールが高めに浮いてしまうのでしょう。ある程度抑えて投げないと、ボールが上手くコントロールできないのかもしれません。それでも「球持ち」や指先の感覚はいいので、ボールはある程度思い通りコントロールできています。印象としては、全身で投げるというよりは小手先でボールを扱うタイプといったフォームになります。


<故障のリスク> ☆☆


 お尻が落とせない割に、結構カーブなどを使ってきます。腕を振り下ろす角度には無理がないのですが、テイクバックした時に肩が内に入り込んでいますし、肘が下がっているのでボールを押し出すような投げ方に。これだと、肩などを痛める可能性は否定できません。


<実戦的な術> ☆☆☆


 「着地までの粘りはさほどではありませんが、肩が奥に入るほど柔らかいので、ボールの出所は見難いタイプ。

 ただ振り下ろしたが絡んで来ないなど、腕の振り・躍動感はもうひとつ。また踏み込んだ足が突っ張って、体重移動を阻害しています。そのためボールに、イマイチ体重を乗せ切れていません。この辺がもう少し上手くできるようになると、もっと打者の手元まで球威の落ちない球がゆくのではないのでしょうか。


(投球フォームのまとめ)


 「着地」「体重移動」は、まだまだ発展途上。「開き」「球持ち」などは悪くありません。そういった意味では、打ち難さとコントロールの良さに特徴があります。もう少しフォームに躍動感、ボールに勢いが出てくると良いですね。


(最後に)


 まだまだプロとなると、球威・球速が物足りません。そういった意味では、速い球や武器になる変化球を投げるという資質では劣りますが、それをコントロールの良さや打ちにくさで補います。

 特に勝負どころでの集中力があり、ピンチでも踏ん張れる選手。普段からも、粘っこい投球ができる精神力の強さを感じます。大成できるかは微妙ですが、プロに混ぜても面白い投手かと思います。ドラフトでも、下位指名なら指名されるかもしれませんね。期待して、ドラフト会議当日を待ちたいと思います。


蔵の評価:

(2012年 夏)