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田川 賢吾(26歳・ヤクルト)投手の藁をも掴む へ







 田川 賢吾(高知中央)投手 187/87 右/左
 



                       「素晴らしい才能」



 昨秋の高知大会で、非常に楽しみな投手だと取り上げた選手です。しかしその当時は、まだMAXで136キロ程度でした。しかしこの夏には、最速で148キロまで球速を伸ばしてきました。彼の素晴らしいのは、そういったスピード能力以上に、身のこなしや持って生まれた投手としての筋の良さにあります。

(投球スタイル)

 手足の長い投手体型から、角度のあるボールを投げ込んできます。昨秋から本格手に投手に転向したということですが、そのキャリアの浅さを感じさせないマウンド捌きを魅せてくれます。

ストレート 常時140~MAX148キロ

 けして力一杯投げている感じではないのですが、コンスタントに140キロ台を刻んできます。夏の岡豊戦では、自己最速のMAX148キロまで到達。そのボールは、ス~と糸を引くような球筋を辿り、角度があるのが特徴です。現状、ストレートで空振りを誘うような凄みはありませんが、ストレートを見せ球にして投球を組み立てることができます。また状況次第では、135キロぐらいで力を抜いて、カウントを整えたりと強弱をつけることも出来ています。

変化球 カーブ・スライダー

 100キロ台のカーブで緩急をつけたり、カウントを整えたりします。そして三振を奪うのは、曲がりながら落ちるスライダー。実際140キロ台のストレートよりも、この球で三振を奪っていることが多いです。

その他

 「間」を取るために軽く返球したりすることもありますが、ランナーを刺そうと鋭い牽制も投げ込んできます。クィックも1.1秒前後(基準は1.2秒)で投げ込み、フィールディングも素早くマウンドを駆け下り二塁などで刺します。ベースカバーも遅れませんし、投球以外の部分からもセンスが感じられます。元々野手として長く活躍してきた選手でもあり、スカウトの中では野手としての才能を買う人も少なくありません。

(投球内容)

 まだボールにバラつきは見られますが、夏の岡豊戦では無四球完封したように、コントロールに不安がある荒々しいタイプではありません。

 身のこなしが柔らかく、パッと危険を感じるとマウンドを外すような投球センスの高さが光ります。どれか一つの球に頼るのではなく、速球を見せ球に使いつつ、変化球を交えて仕留めてきます。将来の先発ローテーションを期待させる、そんなゆったり感と素材としての奥行きが魅力。

(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、結構足を引き上げる勢い・高さがあります。軸足の膝から上がピンと伸びて余裕がありませんが、足を高く引き上げているので、それでもVの字になるようなバランスは取れています。

<広がる可能性> ☆☆☆☆

 少し甘さは残るものの、お尻を一塁側に落とせるフォーム。そのため無理なくカーブで緩急を効かせたり、将来的には縦の変化も期待できるフォーム。

 「着地」までの粘りは平均的ですので、これにもっと粘りが出てくると変化球のキレも増すのではないのでしょうか。将来的には投球の幅を、まだまだ広げて行ける投球フォームだと評価します。

<ボールの支配> ☆☆☆

 グラブを最後まで内に抱えきれていなかったり、足の甲の地面への押しつけが甘かったりと、制球を乱す動作が見られます。それでもそれなりにボールをコントロールできるのは「球持ち」の良さから来る、指先の感覚が優れているから。グラブの抱えや足の甲の押しつけなどもキッチリできるようになれば、更に精度の高いコントロールが期待できるでしょう。

<故障のリスク> ☆☆☆

 お尻を落とせるので、身体を捻り出すスペースが確保でき無理がありません。腕はかなり真上から振り下ろしてくるフォームなのですが、腕の振り下ろしに無理は感じられません。投手としてのキャリアも浅いので、肩の消耗が少ないのも魅力。ただその反面、肩のスタミナ・筋力の無さを監督さんは指摘していました。投手力に余裕があり、ジックリ育ててくれる環境に進むことを望みたいですね。

<実戦的な術> ☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的で、身体の「開き」も少し早いように見えます。そのため打者としては、それほど合わせるのには苦にしないのでは。

 ただ長い腕はシッカリ身体に絡み付いて来るように、速球と変化球の見極めは困難。ボールにもシッカリ体重が乗せられており、これにウエートなどがついて来ると打者の手元まで球威のある球が投げられそうです。

(投球フォームのまとめ)

 「球持ち」「体重移動」に優れており、「着地」は平均的。課題は、少し身体の「開き」が早くボールが見やすいところでしょうか。

 細かいコントロールの改善・球威・球速のアップは望める投手なので、あとはいかに相手に嫌がられる術を磨くかではないのでしょうか。ただ投手としてのセンスや危険回避の嗅覚に優れているので、経験を積むことでどんどん良くなりそう。

(最後に)

 まだまだ技術的にも、肉体的にも発展途上の選手です。そのため一軍で戦力になるのは、3年ぐらいはかかるでしょう。しかし伸びる余地も沢山残されているし、何より投手としての天性のセンスを感じます。そういった意味では、プロでもローテーション投手。あるいは、将来のエースレベルまで、その才能を開花させても不思議ではありません。個人的には、今年の地方敗退組の中では、一番のオススメ選手でもあります。会議当日には、意外な上位での指名もあるかもしれませんね。一昔前までは、こういった選手が外れ1位で指名されて、周りを驚かせる場面が少なくありませんでした。彼には、その資格が充分あると評価します。

蔵の評価:☆☆☆

(2012年 夏)







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