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田原 啓吾(横浜高)投手 181/84 左/左 
 



                 「野手としても考えてみる」





 投手としての 田原 啓吾 は、名門横浜高校の投手とはいえ、テイクバックも小さく球速も120キロ台後半~130キロ前半ぐらいで、お世辞にも高校からプロに入るような投手には見えない。では野手としての可能性はないのだろうか? 今回は、野手という観点で、田原 啓吾 を考えてみた。


(プレースタイル)


 180センチ台の恵まれた体格と投手ならではの体幹の強さを生かし、長打力のある打撃が目立ちます。投げていない時は、一塁や右翼などのポジションを守り、最後の夏も背番号9をつけての大会となりました。


(守備・走塁面)


 フィールディングなどの動きは悪くないのですが、身のこなしなどを見ているとやはり外野手向きだと思います。特に左投げなのもあり、野手として考えた場合は外野手でしょう。投手としても130キロ前後ぐらいの選手なので、プロレベルに混ぜてしまう驚くような強肩ではないはず。特にテイクバックも小さめの選手なので、中継の野手に素早く返すのには向きますが、長く遠くに投げる返球に関してはどうでしょうか?

 一塁までの塁間は、少し緩めて4.3秒前後。もし全力で走り抜けていたら、4.2秒を切るぐらいの脚力はありそう。ただあくまでもこれは基準を満たすというレベルでしかなく、足を売りにするほどには見えません。

 そう考えると、守備・走力でのアピールは平均的であり、もし野手として評価としたのならば、それは長打力を秘めた打撃を評価したということになります。


(打撃内容)


 実際に彼の出ている試合を何試合か見ましたが、特別野手としてのセンスを感じたことはありません。


<構え> ☆☆☆☆


 前足を軽く引いて、グリップを高めに添えます。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢は平均的ですが、あごをグッと引いて集中力を感じますし、全体のバランスとしては好い構えだと思います。


<仕掛け> 遅めの仕掛け


 投手の重心が沈んだ時に、一度つま先立ちします。そこから再度踏み出すのですが、そのタイミングは「遅めの仕掛け」ぐらいと、長距離打者が多く採用するタイミング。彼の打球が遠くに飛ぶのは、ギリギリまでボールを引きつけ、そこから最大限のエネルギーをボールにぶつけられるから。ただ打撃スタイルから見ると、そこまでの長距離打者タイプには見えません。


<足の運び> ☆☆☆


 足を軽く浮かし、回しこんで真っ直ぐ踏み込んできます。始動~着地までの「間」は短いので、狙い球をあらかじめ絞り、その球を逃さないで叩くことが求められます。そういった意味では、緩急への対応には課題を残します。ただ集中力がある選手ですから、甘い球を逃さない打撃には適しているように思います。

 真っ直ぐ踏み出すことからも、内角でも外角の球でも捌きたいという広角の打撃をしてきます。右にも左にも打ち返す中距離打者。そんな感じを、スイングからは感じられます。踏み込んだ足元も、カカトをめり込ませ粘ります。コースへの対応は、幅広くできるタイプなのではないのでしょうか。


<リストワーク> ☆☆☆☆


 打撃の準備である「トップ」の作りは、自然体で平均的。バットの振り出しは上から綺麗にミートポイントも振りぬかれています。このことからも、スイングにロスは感じられません。

 ボールを捉えてからは、大きな弧を描き、フォロースルーまでシッカリ振り切れています。けして長距離砲のスイングではありませんが、ボール強く遠くに飛ばすスイングは出来ています。二塁打・三塁打などの、そういった長打は生まれやすいタイプかと。

 ただボールに合わせる対応力・抜群のヘッドスピードというものは特に特別ものはなく、特別打者として非凡なものは感じられません。技術的に、素直に振り抜ける選手だなという印象。


<軸> ☆☆☆☆


 足の上げ下げが静かなので、目線は大きく動きません。身体の開きも、それなりに対応。内角球での、身体の抜き方も上手いと思います。軸足も地面から真っ直ぐ伸びており、内ももにも強さを感じます。


(打撃のまとめ)


 特別ボールを捉えるセンスや肉体的な資質に特別ものは感じられません。ただ始動の遅さ・スイングの弧の大きさ・軸足の内ももの強さなどを考えると、想像以上にボールを飛ばせる才能は秘めているのかなとも思います。


(最後に)


 巨人は、ひょっとして野手の才能を評価して指名したのかなと思いましたが、どうもそうではない気が致します。左腕投手としてのセンスや、秘めたるポテンシャルを評価し、その可能性を期待しているのではないのでしょうか。

 いずれにしても個人的には、野手でも投手でも、高校からプロに入るような魅力のある素材とまでは思いませんでした。プロの指導でどのような化学反応が起こるのか、個人的には非常に興味はありますが・・・。


(2012年 夏)








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