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 辻 空(岐阜城北)投手 184/77 右/右
 



                  「体幹が弱そうだなぁ」



 彼の投球フォームを見ていると、まだまだ身体の芯が入っていなく、弱々しく感じる。逆にこの身体でも、コンスタントに135~140キロぐらいの球は投げられていそうで、体に身が入ってきたら、ボールも一変するかもしれない。そんな期待を、抱きたくなる。



(投球内容)

 右の本格派で、ボールに球威・勢いはあまり感じさせないが、常時135~後半ぐらいは出ているのではないのだろうか。夏の初戦・大垣工業戦では、MAX144キロを記録。彼の球はまだ球威に欠け、ボリューム感はなくキレで勝負するタイプ。

 カットボールやシュート系もあるようだが、目に見えてわかるのは、横滑りするスライダー。この球と速球のコンビネーションが投球の基本。比較的右打者には、外角中心に集められているように見えるが、球筋は真ん中~高めに集まりやすい。思ったよりは、荒れ荒れの素材というわけではなく、肉体の未熟な部分が投球内容に現れている。またその所作をを観ていても、マウンドでの集中力はあまり感じられない。

(投球フォーム考える)

 足の横幅を大きく取り、ワインドアップから振りかぶります。足を引き上げる、勢いや高さはそれなり。足を引き上げて軸足一本で立った時に、膝から上がピンと伸びて余裕がありません。それでも高く引き上げた足との関係で、大きくバランスを崩すことなく立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆☆

 引き上げた足を、比較的高い位置でピンと伸ばします。そのため、お尻の一塁側への落とせます。見分けの難しい腕の振りでカーブを投げることや、縦に鋭く落ちるようなフォークを習得することは、将来的にも期待できます。

 また「着地」までの粘りも悪くないので、身体を捻り出す時間も確保出来ています。そのためカーブやフォークのみならず、多彩な変化球を身につけられる下地はあります。将来的には、かなり球種を増やしピッチングの幅を広げて行けるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆

 投げ終わったあとでも、グラブは比較的身体の近くにあります。そのためボールを両サイドに投げ分けるのは、それほど苦にしないはず。むしろ課題があるとすれば、足の甲での地面の押しつけが浅いので、ボールが高めに浮きやすい腰高なフォーム。実際球筋も真ん中~高めに集まっており、この辺が今後の大きな課題ではないのでしょうか。「球持ち」自体も平均的で、指先の感覚が優れているかどうかまでは、今回の映像を見る限りよくわかりませんでした。

<故障のリスク> ☆☆☆☆

 お尻を落とせるので、身体を捻り出すスペースを確保出来ています。そのため、それほど肘への負担は少ないフォームだと考えられます。

 腕の振り下ろす角度にも無理は感じませんので、肩への負担も少ないのでは。そういった意味では、身体のへの負担も小さめで、故障の可能性は低いのではないかと考えます。

<実戦的な術> ☆☆☆

 「着地」までの粘りが悪くないので、身体の「開き」も早くはありません。特にテイクバックした時に、前の肩と後ろの肩を結ぶラインが斜めになり、打者に正対するのが遅れているので、ボールの出所は見やすくはないでしょう。

 振り下ろした腕も身体に絡んで来るように、腕の振りも悪くはありません。まだ下半身が充分生かしきれず、「体重移動」は発展途上ですが、これも下半身の強化や股関節の柔軟性を広げることで、改善できる可能性を感じます。

(投球フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の中でも、大きな欠点はありません。その変わり現時点で得に優れた部分もなく、これからの成長次第といったところでしょうか。

 明らかな筋力不足は感じますが、土台となるフォームが悪いわけではないので、今後の改善が期待できます。筋力がつけば、見違えるようになれる可能性はあるでしょう。



(最後に)

 恵まれた体格、土台となる投球フォームの良さなどもあり、上手く肉付けすれば素晴らしい投手になれる可能性は秘めています。とは言っても、現時点ではまだまだであり、筋力がついても本当に期待どおり伸びるかどうかは、なんとも言えません。ただ、そうなる可能性は高いといった感じ。

 そういった意味では、完全に「旬」の時期ではありませんし、実際に変化が起きなかった時は、それを誤魔化しきれるだけの、投球術・変化球・コントロールがあるわけではありません。個人的には、どう転ぶのかの判断は難しく、かなりギャンブル的な要素が大きな指名だと評価します。まずは最初の1,2年は基礎体力作り中心のメニューになると思うので、実戦の登板が増えるのは3年目以降ではないのでしょうか。その時に、どんな球が投げられるようになっているかで、彼の高校からのプロ入りが正しかったのかどうかが、ハッキリすることになるでしょう。