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大塚 尚仁 (九州学院 3年)投手 174/70 左/左 
 




                  「この夏、評価急上昇」





選抜のあと、夏の大会にかけて大いにスカウト達の注目を浴びたのが、この 大塚 尚仁 。130キロ台中盤だった球速が、夏には140キロ台を記録するようになったと耳にした。しかし熊本大会の試合を確認できぬまま、予選で敗退。大きく成長した姿を、確認できずに終わってしまった。そんなおり、U-18の世界選手権に、甲子園不出場ながら選ばれた。ここで再び、大塚 の勇姿を確認することができた。

(投球内容)

 夏の甲子園不出場ながら、メンバーに選ばれたのは、高校球界指折りの実戦的な左腕だから。過去3度の甲子園に出場し、大舞台の経験も豊富。低めに集められる安定した制球力と度胸満点のピッチングで、初戦のカナダ戦から存在感を示した。

ストレート 常時130~中盤ぐらいではないのか?

 特に選抜の時と比べても、ストレートの球威・球速が大きく変わったようには見えない。一説には140キロ台を記録するようになったと聞いていたが、カナダ戦の投球を見る限り、球速は速い球で135キロ前後だろう。ただボールはキレ型なので、その球速表示よりは速く感じられるはず。ただ球威がないので、甘く入ると簡単に長打を浴びるボールの軽さも同居する。

 ただこのボールでも相手を抑えられるのは、両コーナーに投げ分けられる正確なコントロールがあるから。特に右打者外角への球筋は安定しており、内外角厳しいところを突いて来る。むしろストレートの球筋に関しては、左打者に対してよりも、右打者の方が安定していると言えよう。

変化球 カーブ・スライダー

 変化球は、殆どスライダーとのコンビネーション。特に左打者にとっては、左スリークオーターの球筋は、背中越し来る感覚に陥り、外角低めのボールゾーンに逃げて行くスライダー、ちょっと高校生で捌くのは厳しい球。

 彼の良さは、速球は高めに行っても、変化球は低めに集まるところ。特に左打者には、この逃げて行くスライダーが大変有効だった。カーブはたまに織り交ぜる程度で、スクリュー系のボールは、この試合を観る限り見られなかった。

(投球のまとめ)

ポンポンとストライクを先行させ、自分の優位な状況を作り出します。相手を精神的に追い込んでから、低めに切れ込むスライダーで空振りを奪います。更に両コーナーを突いて、相手の打ち損じを狙います。

ただボールがキレ型なので、甘く入ると長打を浴びる危険性が常につきまといます。どうしてもこの部分は、今後もつきまとう問題となるでしょう。

(投球フォーム)

ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込むスリークオーター。


<広がる可能性>

 引き上げた足を地面に向けて投げるので、お尻が三塁側(左投手の場合は)に落とせるフォームではありません。したがって体を捻りだすスペースは確保できないので、カーブで緩急をつけたり、縦に鋭く落ちるようなフォークの球種には適しません。実際に腕の角度もないので、横に曲がる変化球が中心のフォームです。

 また「着地」までの粘りに欠け、体を捻り出す時間も確保できません。こうなると球速のある変化球中心になり、投球の殆どはスライダーとの、単調なコンビネーションになってしまいます。せめてチェンジアップ系のボールを使えるようになると、投球の幅が広がるのですが。


<ボールの支配>

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも深く地面押し付けているので、低めへも集まりやすいはず。ただ「球持ち」はけして良くなく、指先の感覚はそれほどでもない。こうなると疲れて来ると、コントロールミスはしやすいフォームなので、失投は出てくるのではないのだろうか。

<故障のリスク>

 お尻を落とせないフォームですが、それほどカーブなどは多様しませんし、縦の変化も投げません。そういった意味では、悲観はすることはなさそう。腕の角度にも無理がないので、肩・肘への負担は少なく、故障の可能性低いフォームだと言えそう。

<実戦的な術>

 最大の課題は、「着地」までの粘りがそれほどないため、打者としてはタイミングが合わせやすいフォーム。これに加えカカトから着地するので、どうしても「開き」が早くなり、球筋が早めに見破られてします。

 腕の振りも、思ったほど体に絡むような粘っこさがないなど「球持ち」の浅さが目立つ。更にステップを広く取り過ぎなのか? 「体重」が後ろに残ってしまい、ボールに上手く体重が乗せられていない。そのため球威のある球が、打者の手元まで行かないのだ。


(投球フォームのまとめ)

 マウンド捌きは洗練され、とても実戦的な投手との印象を受けます。しかし投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」と、すべての分野に課題を残します。そういった意味では、投球フォームとしては非常に課題を残す投手だということを印象づけました。

(最後に)

マウンド度胸に優れ、ピッチングの上手さも光ります。そういった意味では、スカウト達が魅力を感じるのもわからなくはありません。しかし昨夏~ほとんど球威・球速は上がっていない成長力。更に実戦派と思いきや、フォームには多くの課題を持っています。こう考えると、高校からプロに行くのにはリスクが大きすぎる気が致します。今の球威・球速のままではプロでは苦しいですし、ぜひ大学や社会人で、球速UPと確かな技術とを身につけてからでも、プロ入りは遅くないと判断致します。


(2012年 夏)







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