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谷内 亮太(国学院大)遊撃 178/78 右/右 (金沢西出身) 
 



                  「悪くないはないのだが・・・」



 三拍子バランスの取れた好選手で、けして悪い選手ではない。ただプロに混ぜてしまうと、何か突き抜けた特徴がないのではないか、そんな気がするのが 谷内 亮太 。今回は、改めてこの選手の特徴について考えてみた。

(守備・走塁面)

 この選手の一番の売りは、プロでも二遊間を期待できる守備力にある。図抜けて身のこなしやキャッチング上手いわけでも、打球への反応が鋭いわけではありません。しかしキャッチング~スローイングの流れに違和感は感じませんし、安定したプレーを魅せてくれます。地肩も中の上レベルはあり、結構深いところからでも正確なスローイングができます。群を抜いて上手いとは思いませんが、プロでも二遊間を担うだけの技量はあるように思えます。

 走力に関しては、一塁までの塁間を4.2秒台~4.35秒前後で走り抜けます。これを左打者に換算すると4.0秒台~4.1秒ぐらいで走り抜けますから、中の上レベルの俊足であることがわかります。

通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。上記の数字は、左打者の目安であり、通常右打者の場合、タイムから、0.25秒を引くと、同等の走力が計測することが出来る。ただし、セーフティバントや左打者が一二塁間に引っ張ったような、最初から一歩目のスタートをきっているような場合は、参考資料とはならない。

 谷内の場合、チームの核弾頭として活躍している選手。ただリーグ戦では、3年春の5盗塁が最高で、あとは0個~2個程度と、それほど多く盗塁を決めているわけではありません。そういった意味では、足でガンガンアピールするような快速選手とは違います。ちなみに彼のタイムを、2012年度のドラフト指名された左打者で偏差値を求めると、彼の走塁偏差値は 56 と、中の上レベルであることがわかります。

 こうやって見てみると現状はドラフト候補の中で、守備が上の下ぐらい、走力は中の上ぐらい。そのぐらいの感覚で考えてもらえると宜しいのではないのでしょうか。



(打撃スタイル)

 基本的には、野手の間や内野手の頭の上を越えて行くような、はじきかえす打撃を得意としています。東都二部時代の二シーズンで5本塁打のパンチ力はありますが、それほど長打でアピールするタイプではありません。打席での集中力が高く、甘い球を逃さない「鋭さ」が持ち味。ただ春までは一部通算で.259厘ぐらいでしたが、最後の秋には、一部リーグで .364厘 と好成績を残し、プロ入りへの大きな弾みとなりました。

<構え> ☆☆☆☆

 前足を引いた、右オープンスタンス。グリップを高めに添え、バット立てて構えます。腰の据わりは浅いのですが、背筋をピンと伸ばします。両目で前を見据える姿勢もよく、適度にバランスの取れた構えではないのでしょうか。

 特に打席では高い集中力を感じさせ、それでいて自分でリズムを刻みリラックスも出来ている好い構えだと思います。

<仕掛け> 遅めの仕掛け

 投手の重心が下る段階で、開いていた足をベース側につま先立ちします。しかし投手の重心が前に移動する段階で次の動作に入ることができ、始動が遅すぎることを防いでいます。そのため仕掛けとしては「遅めの仕掛け」に属し、狙い球を絞りその球を逃さない「鋭さ」が求められます。長距離打者と生粋の二番打者が多く採用する仕掛けですが、彼の場合は完全に後者だと言えるでしょう。

<足の運び> ☆☆☆

 始動が遅い分「間」は取れていないので、打てる球をあらかじめ絞っておかないと対応できません。そのため緩急への対応には脆い部分がありますが、彼は狙い球を逃さず叩く「鋭さ」を持っているので、この打撃でも結果が残せるのだと考えられます。

 足を軽くあげて回し込み、ベースから離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。アウトステップするということは、内角を強く意識したスタイル。また打球も三遊間方向に、引っ張る打球が目立ちます。

 それでも踏み込んだ足元はインパクトの際にブレないので、外角の球にもある程度対応できそう。あとは、センターから右方向への意識も持てると、広角に幅の広い打撃が期待できます。

<リストワーク> ☆☆☆

 あらかじめグリップを、トップに近い位置に添えられています。そのため、速い球に振り遅れる心配は少ないでしょう。バットの振り出しも、上から綺麗に振り出されています。ただバットの先端であるヘッドが下がったり、けしてインサイドアウトの最短距離で射抜くタイプではありません。ある程度のしなりを生かしたスイングであり、ボールを遠くに運べるパンチ力があるのも頷けますし、ある程度プロ仕様のスイングであるように思います。

 あとは、もう少しヘッドスピードの鋭さや打球の強さに磨きがかかれば好いのですが。とは言っても、ひ弱さは感じません。

<軸> ☆☆☆☆

 足の上げが静かなので、目線は上下にブレません。身体の開きも我慢できているので、アウトステップでもある程度外角へ対応できるはず(真ん中~高めなら)。更に軸足も地面から真っ直ぐ伸びており、身体が突っ込まずに安定した打撃が期待できます。

(打撃のまとめ)

 技術的には、緩急への対応が一つポイントになりそう。特にボールを捉えるセンスやスイングの強さなどに際立つものは感じませんが、甘い球を逃さない「鋭さ」とバットのしなりを使えるスイングは、プロでも通用する打者になりえる可能性を感じます。

 ただプロの一軍投手に対応するのには、1,2年はファームでの漬け込みも必要ではないのでしょうか。あとは、自分の打撃を膨らませて行ける「感性」を持っているのか、この辺が大きく影響しそうです。



(最後に)

 三拍子適度にまとまって、現状突き抜けたものがないのが気になります。そんな中では、守備が一番の売りになることでしょう。

 打撃は、ある程度の技術には達しているので、何処までそれを土台を元に、自分なりの打撃を構築して行けるかでしょうね。意識も低い選手ではないですし、まだ伸び代も感じさせます。プロでレギュラーを取るほどの選手になるかは微妙ですが、一軍控え~一軍半レベルの選手には最低なれるのではないのでしょうか。大学時代最高の成績を残した今が「旬」なのかもしれませんが、個人的には最後までピンと来るほどの確信には至りませんでした。そのため、指名リストに名前を載せる評価は致しません。ただ、プロで全く通用しないで終わるということはなさそうです。

(2012年 秋季リーグ戦)