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松冨 倫 (別府大)遊撃 172/70 右/右 (楊志館出身) 
 



                    「残念ながら・・・」



 巨人から育成枠で指名されたこの選手、何処かで名前を聞いたことがあるなと思ったら、高校時代にレポートを書いていた。しかし当時は短めの短評だったため、彼が甲子園に出場した2年時の映像を探すことに。しかしその夏の甲子園の映像は半分近くまだ残っていたのだが、彼が在籍した楊志館高校の試合は一試合も残っておらず。ちなみにこの年の楊志館は、初出場ながら甲子園でベスト8まで勝ち上がっている。

 また彼が進んだ別府大は、昨年の九州神宮大会代表決定戦でも決勝まで進んでいた。私はドラフト後この大会の準決勝に足を運んだが、お目当てのカードは日本文理大の試合で、その対戦相手は九州共立大。翌日に行われたもう一つの準決勝の試合で、別府大は試合をしていたのだ。そういった観戦運がないまま、彼は今年ジャイアンツの入団テストに合格し、晴れて育成枠で指名される運びとなった。

 そこで今回は、彼の楊志館時代のレポートと、彼の別府大でのスイングは確認できたので、その僅かなサンプルを元にしながら、この選手の実情に少しでも近づけたらと思う。

(守備・走塁面)

 高校時代のレポートを見ると、一塁までの塁間は4.4秒台と記載されている。これを左打者に換算すると4.15~4.25秒ぐらいということになり、ドラフト候補としては平均的なタイムとなっている。小柄で俊足・好守型のイメージがあるのだが、走力はそれほど際立たない。実際に高2時の大分予選では、6試合で1盗塁。甲子園での3試合では、盗塁は0個ということからも、走力を全面に出すプレーヤーではないのではないか。

 遊撃手としては、あくまでも2年夏時点のものだが、文章を引用してみたい。「地肩に関しては結構強い。ただキャッチング等はあまり上手くない。小柄な俊敏タイプだけに、ピボットターンを活かした二塁手向きではないかと思うのだが。もう少し一冬越えて、安定感が出てくると良いのだが」 と記載されている。あれから5年近い月日が流れているので、守備はだいぶ向上しているとは考えられる。

 こうやって見てみると、走力は平均的。守備は肩は強いが、安定感ではどうだろうか? という不安が残る。ただこの手のタイプで指名されたのだから、守備がある程度上手いと判断されているのではないのだろうか。



(打撃内容)

 「小柄ながら、重心を沈めた構えから、鋭いヘッドスピードを活かした打球が印象的な選手。ボールを自体をミートする能力はあるのだが、打球の多くを無理に引っ張る印象が強い。そのため外角の厳しい球を引っかけるケースが多い。もう少しセンターから右方向への意識を持ちたいところだ。」 と高校時代の印象が書かれている。

ここからは、別府大でのスイングを検証してみたい。

<構え> ☆☆☆☆

高校時代同様に、かなり重心を深く沈めて構えます。グリップを高めに添えて、全体のバランス・両目で前を見据える姿勢なども良く、ヒトクセありそうな嫌らしさを感じさせてます。

<仕掛け> 遅すぎる仕掛け

 投手の重心が下がりきって前に行く段階で、ベース側につま先立ちします。そこから投手がリリースを迎える前後に再度始動するという「遅すぎる仕掛け」を採用しています。これだとプロレベルのスピードに対応するのには、時間がかかりそう。

<足の運び> ☆☆

 始動~着地までの「間」がないので、打てるタイミングは限られます。そのためあらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さない「鋭さ」が求められます。

 踏み込んだ足元が、早く地面から離れます。高校時代のレポートにもあるように、基本的にセンターからレフト方向中心の引っ張り中心の打撃は変わっていないのではないかと思います。外の球を強引に引っ張って、引っ掛けるという悪癖も改善されていない可能性があります。

<リストワーク> ☆☆

 バットを短く持っているのですが、振り出しは結構肘が下がって遠回りにバットが出てきます。もっとコンパクトに振り切るかと思っていたら、遠回りもバットを短くスイング自体が小さいので、それほどロスは気にならないのでしょう。

<軸> ☆☆☆

 足の上げ下げは小さいので、目線は大きくブレません。ただ身体の「開き」は我慢できず、早く足が地面から離れてしまいます。軸足は比較的地面から真っ直ぐ伸びており、軸回転では振れています。

(打撃のまとめ)

 こうやってみてみると、緩急への変化だけでなく、打てるコースも限定されているように見えます。そのため打てる球は限られているのでは。打球は、高校時代のレポートを見る限り鋭いようですが、ボールを遠くに飛ばすタイプではないでしょう。ボールを当てるセンスは悪くなくても、技術がまだ伴っていないのではないかと推測されます。

(余談ですが)

 彼は、癌に侵されながらもチームを支えた女子マネージャーの実話である「あっこと僕らが生きた夏」の舞台の楊志館高校で、主人公の あっこ と同級生だったはずの世代です。そういった選手が、彼女に見守られながらプロの世界に飛び込んできたというのは、非常に感慨深いものがあります。

(最後に)

 育成枠での入団ということで、課題が多い選手であるように思います。元々走力に関しては平均的、打撃に関しては高校時代の課題を、まだ充分に改善出来ていないのではないかという不安がよぎります。身体能力がありながらも、安定感に欠けた守備は改善されたのか? ただ恐らく彼の一番のアピールポイントは、守備なのではないのでしょうか。まず三軍で試合を作るためには、シッカリ守れる内野手が欲しかった そんな感じの指名ではないのでしょうか。

 勿論、このサンプルだけでは評価づけは出来ません。ただかなり厳しい状況であるのは、間違いないように思います。この逆境をぜひ打破して、這い上がって来ることを期待してやみません。









松冨 倫(大分・楊子館2年)遊撃 168/68 右/右
 
 小柄ながら、重心を沈めた構えから、鋭いヘッドスピードを活かした打球が印象的な選手。ボールを自体をミートする能力はあるのだが、打球の多くを無理に引っ張る印象が強い。そのため外角の厳しい球を引っかけるケースが多い。もう少しセンターから右方向への意識を持ちたいところだ。

 遊撃手としては、地肩に関しては結構強い。ただキャッチング等はあまり上手くない。小柄な俊敏タイプだけに、ピボットターンを活かした二塁手向きではないかと思うのだが。もう少し一冬越えて、安定感が出てくると良いのだが。一塁までの塁間は、4.4秒前後(左打者に換算して4.1秒前後)基準以上の脚力。三拍子の総合力を更に引き上げられると、上のレベルでも曲者としての活躍も期待出来そうだ。