12dy-11





古本 武尊(中日)のルーキー回顧へ








古本 武尊(龍谷大)右翼 175/77 右/左 (福岡大大濠出身) 
 





                      「膝が固いだよなぁ」





 今年の大学選手権・京都学園戦において、稲垣 将大(4年)投手のフォークボールを、ことごとく空振りしている姿をみて、この選手は膝が固いようなぁと強く実感した。膝が固くても、低めの球を見極められたり、カットできる術があればいいのだが、ことごとくその球を空振りしていたのだ。自分の打てるボールには、滅法強さを発揮する一方で、そういった脆さが私にはどうしても気になった。

 この選手の良さは、打席での集中力。今春のリーグ戦では、2本 9打点 打率.391厘 をマーク。大学選手権でも首位打者に輝くなど、最終学年において、確実性が高まった。ただプロの変化球を想定すると、まだまだ縦の変化には厳しいなぁという印象は否めない。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、4.45秒弱ぐらい。これは、左打者としてはかなり遅く、プロの基準である4.2秒とは差がある数字。そのため、上のレベルで足を売りにすることはないだろう。ちなみに、このタイムを2012年度のドラフトで指名された左打者の中で偏差値化すると、彼の走塁偏差値は 35 と極めて遅いことがわかる。

 そのため守備範囲は、広い選手ではない。ただ難しい前に落ちるような球に対し滑りこんで好捕したりと、球際でのキャッチングには見るべきものがある。また地肩も結構強いので、スローイングに関しては上のレベルでも充分通用するはず。プロならば右翼手というよりも、上手い部類の左翼手あたりで期待したい素材だろうか。


(打撃内容)

 ツボにはまれば、ホームランの長打力があります。ただ本質的には、野手の間を強烈に抜けて行く、中距離タイプの打者といった印象で、それほど打球が上に上がるタイプではないように思えます。タイプ的には、広島の 松山 竜平(九州国際大出身)外野手に近いものを感じます。

<構え> ☆☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。背筋をスッと伸ばし、両目で前を見据える姿勢や全体のバランスも平均的でしょうか。やや固さは感じられる構えなのですが、アゴをグッと引いて高い集中力を感じさせます。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 昨年は、足の上げがわかりづらく、恐らく「遅すぎる仕掛け」で打っていたように見えました。しかしこの大学選手権では、投手の重心が沈みきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の長打力と対応力を、バランスよく兼ね備えた中距離ヒッターの始動です。始動を早めたことで、対応力を大幅に改善したように思います。

<足の運び> ☆☆☆☆

 足を引き上げてから降ろすまでの「間」が取れるようになり、速球でも変化球でもタイミングを合わせられるようになりました。踏み込みは、真っ直ぐからややアウトステップ気味と、左打者らしい踏み込みです。

 アウトステップにより、少し外の球や低めの球に対する粘りが悪くなりますが、打てるゾーンの球を確実に叩くには好いのではないのでしょうか。それでも踏み込んだ足下はブレないので、ある程度は外角の甘い球なら対応できるはず。実際に大学選手権では、センターから右に左へと広角に打ち分ける打撃を披露してくれました。

<リストワーク> ☆☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは遅くなく、バットも上からミートポイントまでロスなく振り抜けます。またそれほどスイングの弧が大きかったり、フォロースルーを活かすようなスイングではないのですが、力強く最後まで振り抜けています。強打者ですが、ロスのないスイングが一つ大きな特徴にあげられます。

 逆にバットのしなりを活かした大きなスイングや、フォロースルーを活かしてボールを運ぶわけではないので、彼が長距離打者ではないことがこのスイングからも伺えます。

<軸> ☆☆☆☆

 足を上げ下ろしするスタイルになりましたが、頭はそれほど動かず目線はぶれません。身体の開きも我慢出来ていますし、空振りをしても軸足の形が崩れることなく、綺麗な回転でスイングできています。身体が突っ込まないので、調子の波は少ないタイプなのではないのでしょうか。

(打撃フォームのまとめ)

 遅すぎる始動や下半身の使い方を大幅に改良。リーグ戦でも打てても全国では通用しない、そんなイメージが強かった打撃が、見事なまでに払拭されました。


(今後は)

 素材としての膝の固さがネックになる可能性は否定できないが、それを度返しても、打席での集中力・問題意識を持って取り組んできた姿勢・それを可能にする器用さもあり、プロでやって行ける素材ではないかと評価します。

 大学時代の松山竜平には、恐らくを付けなかったと思いますが、彼がプロでも頑張っている姿を見ると、古本はワンランク彼の学生時代より上だと思いますし、いろいろな意味で評価できる部分は少なくありません。

 アマ球界では貴重な強打者だけに、大学からプロに入るべき素材ではないのでしょうか。それだけの基礎技術は、この一年で構築できたと評価します。あとはそれを、プロの世界で、いかに膨らませ発展させて行くかでしょう。


蔵の評価: (下位指名級)


(2012年 大学選手権)