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大累 進(道都大)遊撃 176/70 右/右 (駒大苫小牧出身) 





                   「知る人ぞ知るドラフト候補」





 今年の春のオープン戦のことである。道都大は、春関東に遠征してきていた。スカウト達のお目当ては、ドラフト上位候補と呼び声高い 佐藤 峻一 。その投球を一目見ようと、私もその場に居合わせた。その投球を一通りみたあと、気さくなスカウトが私の近くにいる部員に話しかけている声が耳に入った。どうも話のやりとりを訊く限り、部員に他にお勧めの選手はいないかと訊いていたようで、その時にこの 大累 進 がお薦めだと応えたようだった。その時から私も、密かにこの 大累 進 のプレーを気にするようになる。あれから3ヶ月経った大学選手権の舞台、彼は、多くのスカウト達から注目される存在へとなっていた。


(守備・走塁面)


 大累の最大の自慢は、抜群の脚力にある。一塁までの塁間を 4.0~4.1秒ぐらいで走り抜ける。これを左打者に換算すると3.75~3.85秒ぐらいに相当し、プロでもトップクラスの脚力に相当する。実際試合を観ていても、走り出してからトップスピードに乗るのが速く、実に野球向きの快足選手。そのあめ塁に出れば、すかさず盗塁を決められる脚力を併せ持つ。この走力ならば、プロでも足を売りにできるレベルだと評価できる。ちなみに、彼の走力を2012年度にドラフト指名された右打者のタイムで偏差値化すると、走塁偏差値は 64 とトップクラスであることがわかる。

 遊撃手としても、上のレベルの二遊間を担うだけのスピード感とダイナミックさを感じさせる。深いところからも刺せる肩もあるし、動きも実に機敏。それほど柔らかいグラブ捌きをする選手ではないので、堅実な遊撃手というよりは、ファインプレーで魅了するタイプの遊撃手だろうか。1年間ぐらいファームで鍛えれば、プロでも充分二遊間を担える資質を持っている。

こと守備・走力に関しては、プロの一軍を想定できる才能がある。





(打撃内容)

 春のオープン戦で観た時は、走力はともかく、打撃が弱いかなという印象を受けていた。しかし6月の大学選手権のプレーを観てみると、スイングは鋭く、しっかり捉えた打球は実に鋭い。ひ弱いということではなく確実性の問題で、まだ少し物足りないそういった印象を受けた。それでもリーグ戦では首位打者経験もあり、実際の打席でも甘い球は逃さない「鋭さ」を兼ね備えている。


<構え> ☆☆☆☆

 スクエアスタンスで足を揃え、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスも程よい感じ。特に打席では、高い集中力を感じさせる。


<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下がる途中で、静かに足を引き上げて来る。仕掛けとしては、「早めの仕掛け」に属するタイミングで、典型的なアベレージヒッターといった印象を受ける。


<足の運び> ☆☆☆☆

「始動」~「着地」までの「間」が取れており、速球でも変化球でも合わせられるタイミングの取り方。真っ直ぐ踏み出すことで、内角の球でも外角の球でも捌きたいタイプ。踏み込んだ足下もインパクトの際にもブレないので、外角や低めの球にも「開き」を我慢して右方向に鋭く叩けていた。


<リストワーク> ☆☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは平均的。バットの振り出しも、上からミートポイントまで最短距離でボールを捉えられている。更にバットの先端であるヘッドを立てる意識があり、コンパクトかつ鋭いスイング軌道を実現。けして、スイング自体に弱々しさは感じられない。


<軸> ☆☆☆☆

足の上げ下げも静かで、目線は安定。身体の開きも我慢できており、軸足にも粘りが感じられる。軸も大きくブレず、調子の波の少ない打者だと考えられる。


(打撃のまとめ)


 打撃がネックかなぁとそれまで思っていたが、スイングは鋭く、甘く高めに浮いた球は逃さずレフト前に引っ張り込んで来る。右方向にも追っつけられる選手であり、打撃の弱々しさは感じられなかった。

 また技術的には、かなり高いものを持っており、レベルの高い相手との経験を積んで行けば、いずれ対応できる可能性を持つ。プロで1,2年ファームで経験を積めば、それなりの打力は身につけられるのではないのだろうか。最大の課題が、外角への対応。ここがきっちりできるのかが、プロでの大成へのポイントになるだろう。


(最後に)


 春のオープン戦を見た時は、足は素晴らしいけど、打撃がなぁという思いが強かった。しかしこの大学選手権を観て、スイングも弱くはないし、技術的にもシッカリしたものがあることを確認。

 また想像以上に遊撃手としての守備レベルも高く、将来的にはプロでも二遊間候補としてマークできる資質があることもわかった。野球への意識・集中力も高く、この選手は大学からプロに行くべき素材ではないかと考える。今年はプロを意識できる二遊候補が不足しているが、この選手はお勧めの選手として、名前をあげたい。


蔵の評価:☆☆


(2012年 大学選手権)