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伊藤 祐介(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ






 伊藤 祐介(東北学院大)投手 175/70 左/左 (聖和学園出身)
 





                    「意外にムラッ気があるのか?」





 洗練されたピッチング内容を見ていると 伊藤 祐介 は、とても安定感抜群の投手に見えて来る。しかしマウンドから離れたところでの所作などを見ていると、俺様タイプ。好い時は良いが、自分の思い通り行かないと、意外に能力を発揮できないことがあるのではないのか? そんな印象を、今年のオープン戦を見ていて思ったりした。私が観た試合は素晴らしい内容だった一方で、同じ関東遠征中の別の試合では、からっきしの内容だったと聞いて、その思いは確信めいたものになった。


(投球内容)

 以前寸評を作成した時と比べても、特に大きく成長した印象は受けない。それはまだシーズン開幕までは一ヶ月ぐらいある、3月中旬のオープン戦だったのもあるのだろう。

ストレート 常時135~MAX87マイル(139.2キロ)ぐらい

 前に寸評を作成したときは、MAX143キロまで記録していたから、もう少し温かくなれば更に球速も期待できたのだろう。それでも対戦相手の打者達は、そのキレのあるストレートに完全に差し込まれていた。やや高めに抜けることはあったが、返ってキレがあるので打者の空振りを誘える代物。大方両サイドに、ボールを投げ分けるコントロールもある。

変化球 二種類のスライダー・カーブ・フォークなど

 カウントを稼ぐスライダーと、ストライクゾーンからボールゾーンに逃げて行くスライダーを上手く織り交ぜる。更にこの日は、カーブのような緩い球を混ぜたり、フォーク(縦スラ?)のような縦の変化で空振りを誘うなど、投球の幅を広げようという意識が感じられる。

その他

 左腕らしく見分けの難しい牽制などは織り交ぜるが、クィックが1.2秒台後半と投げ込むまでが遅い。これは、自分の投球のバランスを崩してまで、クィックを行おうとは思わないのもあるのだろう。牽制が上手い分、相手に盗塁という選択を無くさないようにして、ランナーを誘い出している部分もあるのではないのだろうか。

(投球のまとめ)

 以前寸評を作成した際に、投球回数の1/3以下に四死球が抑えられていないと、リーグ戦の数字から述べたのだが、その辺のアバウトさはこの日も垣間見られた。この選手はポンポンとカウント稼いで有利な状況は作るが、ピンポイントでコースを突くほどの精度の高い制球力はない。

 またこれだけの投球をしていたら「東北福祉大以外には打たれないじゃねぇ?」とか思えるだが、実際には防御率は2点台前後(3年秋は1.35だが)と、それほど図抜けた数字は残していない。これは、好い時と悪い時の差が激しかったり、アバウトな制球力のためポカを喰らうことが多いのではないかと考える。


(最後に)

 私の観戦した内容だけみれば「上位指名確実じゃないか」と思わせる程の快投だったが、「3位以内ぐらいじゃないの」と少し割り引いて知り合いなどに話したのは、どうも思ったほど、いつも安定しているわけではないんじゃないか?そういった疑問を感じていたから。それから数日後の登板では、案の定散々な出来だったという話しを訊いて、なるほどなと思った。

 彼の投球を過去3度ぐらい見ているが、いずれも好く似た内容の投球で、好くも悪くもまとまった投手との印象をそれまで持っていた。しかし安定感抜群の実戦派左腕というのは、ちょっと疑問を持った方が良さそう。社会人時代、圧倒的な安定感を示していた 森福允彦(シダックス-ソフトバンク)左腕が、プロで頭角を現すまでに4年間ぐらいかかった。彼の立ち振る舞いなどを見ていると、アマ時代の森福に、この 伊藤祐介 は、よく似ている気がするのだ。

 左腕で実戦的な投球ができる存在だから、プロ側からも高い評価はされそう。ただその目の前の、好い時だけの投球を信じていいのか?というのを頭に置きながら、今後の成績や投球をチェックして行きたいです。ただこの日の投球が素晴らしかったのと、そういった能力は身につけていることを考えると、今の時点から指名リストには名前を連ねる存在ではないのだろう。あとは、大学選手権や代表合宿あたりで最終チェックをし、その内容次第で  の数は上下することになりそうだ。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2012年 春季オープン戦)