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川満 寛弥(ロッテ)投手のルーキー回顧へ






川満 寛弥(九州共立大)投手 186/71 左/左 (宮古総合出身) 
 





                  「全然球が来ていなかった・・・」





 今年の大学選手権、上位候補と期待される 川満 寛弥 投手の投球を楽しみにしていた。川満は、投球の基礎である外角でしっかりピッチング作れる投手として、個人的には高く評価していたから。左投手は、右打者の内角に食い込むクロスファイアーが生命線だと言われるが、私は右投手でも左投手でも、投球の基本は、外角でしっかり投球を組み立てられることだと思っている。

(投球内容)

 スラッとした投手体型からゆっくりと足を上げてきて、足を地面に着きそうなところまで降ろしてきてから、なかなかそこから着地しない。そのタイミングの取りにくいフォームこそが、彼の最大の持ち味。

ストレート 135キロ前後~MAX86マイル(137.2キロ)

 この日の川満は、過去何度か生で観た中でも一番球が走っていなかった。神宮のスピードガンでは、MAX139キロまで出ていたが、私のガンではMAXで86マイル(137.6キロ)がやっと。その投球の殆どは、135キロ出るか出ないか程度の球速しか出ていなかったのだ。

 ただその球速表示以上に気になったのが、ボールが全然手元まで来ていなかったこと。いくらピッチングが上手くて打ち難くくても、この球で1位指名では何とも物足りない。まして立ち上がりは、ボールもバラツキ自慢の制球力も冴えなかった。イニングが進むにつれ、制球力とテンポの良さは徐々に回復。しかし大会期間中、調子が悪かったのだろう。続く2戦目・3戦目は、下級生の 大瀬良大地 が先発して、この試合以外川満は登板することなく大会を終えた。

変化球 カーブ・スライダー・スクリュー

 変化球は、左腕らしい大きなカーブと、曲がりながら落ちてくるスラーブ的なスライダーとのコンビネーション。極稀にスクリュー的なボールも使って来るが、最近は殆ど観られない。

 大学選手権の投球を観ていても、この選手は意外にストライクゾーンの枠の中で勝負したがる傾向があり、ストライクゾーン~ボールゾーンに切れ込んで行くような球を、上手く活かせない。

その他

 牽制に関しては、ランナーに目配せしながら適度に混ぜてくる。フィールディングも大型の割には、素早くボールを処理できる。クィックは、1.2~1.3秒ぐらいと、さほど素早くはない。ただ左投手で常に一塁ランナーが見える状況であり、ランナーへの意識も怠っていないので遅いのは問題ではないだろう。むしろこの投手は、投球の「間」こそが生命線の投手なのだから。

(投球のまとめ)

 両サイドに投げ分けるコントロール、タイミングを取りにくいフォームは健在。しかし上位を意識するには、あまりにそのボールが物足りない。更にこの日は、自慢の制球力も、いつもよりも冴えなかった。初めて観る人が、これが今年のウチの1位候補と言われたら、ちょっと残念だと思ってしまう投球だったことは否めない。


(投球フォーム)

今度は、投球フォームの観点から考えてみたい。

<広がる可能性> ☆☆☆

 足を地面に向けて伸ばすフォームなので、元来緩急を利かしたカーブや縦の変化の習得には適していない。ただ多少腕が緩んでも、右打者からは陰になって腕の振りが見難い左投手。そのためカーブを多投していても、意外に見破られないで済んでいる。それでも縦に鋭く落ちる球種の習得は厳しいので、今後もスライダーやスクリュー系の球を磨くことで、投球を組み立ててくることになるだろう。

 「着地」までの粘りがあるので、縦の変化はともかく多彩な球種を上手く操ることは期待できる。この部分は、ほとんど昨秋と変わっていない。

<ボールの支配> ☆☆☆☆

 グラブを最後まで内に抱えることができており、両サイドへの制球は安定。足の甲の押しつけも、秋より押しつけられているのではないのだろうか。「球持ち」は結構よく、投球を見ていても指先の感覚は悪くなさそう。そういった意味では、将来的に高い制球力は期待できる。

<故障のリスク> ☆☆☆

 お尻が落とせない割にカーブを多投するだけに、その点では不安がある。しかしそれほど力投派でもないので、そう悲観するほどではないかもしれない。腕の振りには無理がないので、肩への負担は少ないだろう。いずれにしても、日頃から体の手入れには充分注意を払いたい。

<実戦的な術> ☆☆☆

 上げた足を下ろす時に、地面に着きそうなところから前に一伸び。これにより「着地」のタイミングを、遅らせることに成功。むしろ彼が優れているのは、柔らかい肩の可動域を生かした「開き」の遅さ。これにより、中々ボールが見えてこない。

 腕はあまり強く振れない傾向にあり、その辺が思ったほどボールにキレを生まない要因か。「体重移動」は悪くないように見えるものの、実際には手元までボールが来ないのは気になるところ。

(投球フォームのまとめ)

 殆ど秋と比べても、フォームを変えてきてはいないようだ。足の甲の押しつけが好くなったように見えるが、バックネット裏から見たので、ちょっとセンターカメラから観ないと確信が持てない。

 「着地」「球持ち」「開き」などに優れ、非常に実戦的で「体重移動」も悪くないように見える。投球フォームの観点からすれば、プロ向きだと言えよう。


(最後に)

 この大学選手権では、正直調子が良くなかったのだろう。元々球威・球速はない投手だったが、今回はキレもイマイチだった。そのことは、大事な試合をことごとく後輩である大瀬良に託したことからも伺える。

 逆に調子さえ取り戻せば、ある程度プロでもやれるのではないかという期待は抱く。ただ投げ込まれる球だけみると、1位指名では物足りないよなぁ。2位で獲ったら、思った以上に使えたそういう指名でこそ、妙味がある指名。上位24名には入ると思うが、12名の中には入れたくない、そんな感じの内容だった。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2012年 大学選手権)