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中村 真崇(広島)外野手のルーキー回顧へ



中村 真崇(28歳・香川)左翼 183/87 右/右 
 




                  「特徴に欠けるけどなぁ」





 東筑高校時代から注目されていた強打者で、立命館時代はリーグ戦でベストナインを獲得。プロからも、注目されていた逸材だった。その後、JR東海に進むも3年で指名されなかったため、四国アイランドリーグに移籍。ここで09年度には、アイランドリーグの首位打者を獲得。本塁打も10本前後の長打力と勝負強い打撃で、リーグを代表する打者に成長。昨年は故障で充分な出場を果たせなかったが、28歳になる今年、ようやく悲願のプロ入りを実現した。私自身は、2月のアイランドリーグ選抜VS阪神戦で視察。この時、選抜チームの4番・左翼手として出場している。


(守備・走塁面)

 チームでも左翼手を任されているように、外野守備も平均的で際立つものは感じない。特に肩が物足りなく、プロならば左翼手に限定されそうだ。左翼手としてならば、平均的なレベルにはあるように思える。

 一塁までの塁間を、右打席から4.3秒強ぐらいで一塁に到達。これを左打者に換算すると、4.0秒強ぐらい。プロの基準が左打者換算で4.2秒であるから、俊足レベルであることがわかる。実際アイランドリーグでも、毎年5個前後の盗塁数は記録しており、全く走れないわけではない。ただNPBで、足を売りにするほどではないだろう。またアウトだとわかると勢いを緩めてしまうので、滅多に全力で走り抜けることはない。

 そう考えると守備・走力も平均的で肩も弱いなど、身体能力としては際立つものはない。むしろこの選手の売りは、リーグ屈指のパワフルな打撃だと言えよう。


(打撃内容)

 毎年アイランドリーグでは、10本前後のホームランを放っている。このリーグの本塁打王は、毎年15本未満であることが殆どなので、二桁本塁打を放つというのは、かなりの長打力である。この選手の特徴は、パンチ力と勝負強さを兼ね備えた打撃にある。特に広角に強い打球を飛ばせるのが、この選手の特徴だと言えよう。

<構え> 
☆☆☆

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは高めに添えられている。腰の据わり具合はそれほどでもないが、両目でしっかり前が見据えられていて、バランスの取れた構え。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 投手の重心が沈みきった時に始動する「平均的な仕掛け」を採用。典型的な中距離打者の仕掛けであり、勝負強さを売りにしているのがわかる。

<足の運び> 
☆☆☆

 足を大きく引き上げて、強く踏み込むのが特徴。足を上げている「間」が長いので、いろいろな球には対応できるタイプ。ベースから離れたアウトステップを採用しており、真ん中~内角よりの球を巻き込んで引っ張るのが、この選手の持ち味。

 ただ踏み込んだ足下が、地面から離れるのが早く、外角への対応は得意ではない。ただ打てないと思った外角低めの球は、非常にファールにして粘るのが上手い選手。時にはバットを放り投げてでもカットするなど、そういった食らいつく姿勢には、見るべきものがある。そして高めに甘く入って来る球を、逃さず長打に結びつける。そうやって、ボールを絞り込んで行くのが上手いのだ。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」を作るのは平均的。バットの振り出しは、腰が早く逃げてバットもやや遠回りにまわってくる。そのためボールを捉えるまでに、ロスのあるスイング軌道。

 それでもドアスイングにならないように、ヘッドを立てる意識は忘れない。更にフォロースルーを使って、ボールを遠くに運ぶ後押しをするなど、強打者らしい一面も忘れない。

<軸> 
☆☆

 足を大きく上げ下げするので、目線の動きは小さくない。ただ身体が開きが早く、我慢できない。軸足も前に崩れてしまうなど、好不調の波は激しい方ではないのだろうか。

(打撃のまとめ)

 アイランドリーグでも毎年3割以上を残すように、ボールに合わせる能力は悪くない。ただ外角への対応を苦手にしているが、そのコースをことごとくファールで粘る術を身につけている。そのぶん引っ張り込める球ならば、長打を呼び込むことができる。特にスイングの強さ・打球の強烈さは、アイランドリーグでも屈指のだろう。

 厳しい球に対しファール出来る術と、打てる球を逃さない「鋭さ」は持っている。またボールに食らいつく、貪欲さもプレーから感じられる。特にスイングは力強いので、NPBレベルの投手に力負けすることはないだろう。ただファームレベルまでは通用するが、一軍で活躍すると言うほどの抜けたものは感じられない。実際何処までチャンスをもらえるのかは、微妙だと言わざるえない。

(最後に)

 自慢の打撃も、ファームレベルならばともかく、一軍レベル相手だと正直どうだろうか。また守備・走力でのアピールが低いことを考えると、よほど持ち前の粘り強さと勝負強い打撃でアピールしない限り、一軍は厳しいのではないのだろうか。

 今年28歳の年齢で、わざわざ獲得するほどの選手なのか?と言う疑問は持つが、何だか見ていてチャンスは与えたくなくような気持ちが伝わって来るナイスガイ。かなり厳しいプロ生活が予想されるが、その壁を乗り越えて行ってくれるような精神的な逞しさは感じられる。指名リストには名前を載せないが、個人的にはどのぐらい頑張れるのか、ぜひ見てみたい衝動にかられている。


(2011年春 プロ野球交流戦)