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西森 将司(DeNA)捕手のルーキー回顧へ



 西森 将司(23歳・香川OG)捕手 182/80 右/右 (北照-HONDA)
 




                 「正直気に気にとめたことがない・・・」





 北照時代は、巨人に指名された加登脇卓真と同級生。高校卒業後は、社会人の名門・HONDAに進むも、四国アイランドリーグに合格して退社。今年アイランドリーグで、4年目を迎えるシーズンだった。香川の試合を何度も見ていて、そのつど主力捕手として出場していたような記憶があるが、正直あまり気にして観たことがない選手だった。23歳とまだ若いが、アイランドリーグでの経験も豊富で、ある程度完成されていると見てよいだろう。


(ディフェンス面)

 普段は、重心を深く屈め、投手にミットを示し構えます。投手への返球も軽く、叱咤激励してガンガン引っ張ると言うよりは、投手の気持ちを察しながらリードして行く配慮型か。投手としては、投げやすい環境を作ってくれる捕手だと言えよう。

 気になるのは、一度グラブを下に下げてしまう癖があり、ワンバウンド処理などが立ち遅れること。ただフットワーク自体の動きは好いので、それほど悲観するほどではないのかもしれない。ただキャッチングは、それほどボールを押し返すような力強いキャッチングではない。むしろ柔らかいタッチで、ハンドリング生かしたキャッチング。この選手のプレーは「剛」ではなく、完全に「柔」である。

 二塁までのスローイングは、安定して1.9秒台で投げ込んで来る。驚くような強肩と言うよりも、相手の滑り込んで来るところしっかり制球重視で送球。派手さはないが、実戦での捕殺率の高さと好リードには定評がある。

 ことディフェンス面に関しては、図抜けた資質があると言うよりは、考えて工夫したり、技術で補うタイプ。ディフェンスには破綻はなく、ある程度完成されている。昨年同じアイランドリーグから入団した鶴岡賢ニ朗と比べると彼は完全に「剛」のタイプ。彼と比べると実績・完成度は上で粗さはないが、地肩やパワーなどの肉体のポテンシャルでは劣る印象を受ける。すでにファームの試合ならば、違和感なく入って行けるレベルにはありそう。あとは、一軍を意識するのであれば、突き抜ける特徴が欲しい。


(打撃内容)

 アイランドリーグの4年間の成績をみると、平均して年間2,3本の本塁打・20~30点の打点、2割7,8分を残している。打席数から考えると、ほぼNPBの半分ぐらいの試合数だから、この数字を倍ぐらいしてみると、イメージが沸いて来るだろうか。そう考えると、年間4、5本の長打力はたいしたことはないが、40~60点の打点は、下位打線を打つ選手にしては勝負強い。打率も毎年安定しており、常に意識を集中していられる選手。これに結構盗塁も残していたのだが、年々足でのアピールは薄れつつある。

(打撃フォーム)

<構え> 
☆☆☆

 前足を引いて、グリップの高さは平均的。腰を深く屈め、両目で前を見据える姿勢も良い。全体にバランスも取れているし、適度にリズムも刻めていて構えとしては悪くない。

<仕掛け> 遅すぎる仕掛け

 ぺージの参考にさせて頂いている昨年の動画だと「早めの仕掛け」に属しているのだが、私の最近観た試合では、「遅すぎる仕掛け」を採用していた。そのため速い球に立ち後れ気味であったのが気になったが、今年は昨年よりも打撃成績が良かったのは確か。そう考えるとこの仕掛けの方が、彼の打撃には合っているのかもしれない。

<足の運び> 
☆☆

 昨年までは、軽く足を上げ回しこむことからも「間」を作れており、いろいろな球に対応できる。少しアウトステップに踏み込むので、真ん中~内角よりの球を引っ張るのが得意なのだろう。それでも踏み込んだ足元がブレないので、外角の球にも食らいついて行ける打撃だった。

 しかし今年は始動が遅くなり、投手の重心の沈みに合わせて開いていた足をベース側につま先立ち。小さくアウトステップ打撃フォームに変わっている。そのため打てるポイントは限られ、その球を逃さない「鋭さ」が求められる。

 昨年は、踏み込んだ足下がインパクトの際にブレなかったので、右方向への打球もきっちり打てていた。しかし今年は、踏み込んだ足下が早く地面から離れる巻き込み型のスイングになり、打球も圧倒的にセンターからレフト方向への当たりが多くなる。こうなると、外角への対応が心配になる。欠点をなくすよりも長所を優先した打撃フォームに変えたと言えるであろう。ただプロレベルの配球で、これが通用するのかは疑問ではある。

<リストワーク> 
☆☆

 特にに力強く振りぬくというよりは、体勢を崩してでも当てる柔らかさがある。体の芯に力強さがないのが気になるが、ミート力はあるので、箸にも棒にも引っかからないというほどの打力の弱さは感じない。むしろ変な当たりでも、なんとかフェアゾーンに落とすようなプレーに対する貪欲さを感じさせる。

 今年のフォームは、打撃の準備であるトップも少し立ち後れている。これでは、プロレベルのスピードには苦労するだろう。またスイングも、腰の逃げが早くバットも遠回りに出てくる巻き込み型。内角にはバットが出てこないし、外角の球には対応仕切れない、かなり厳しいスイングに変わっていた。今のままでは、プロでも厳しいかなと思えるフォーム。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げが小さいので、目線のブレは殆どありません。ただ身体の開きが我慢できないフォームになり、外角の捌きが心配。軸足の形は、大きくは崩れていませんでした。

(打撃のまとめ)

 即一軍でどうこうというレベルではないが、ファームレベルでも今のフォームだと厳しいのではないかと思える。ただ鶴岡はアイランド時代は一割台の粗い打者だったのだが、入団ばかりの頃から、けしてNPBの球に力負けするようなことはなく、打席でも違和感が感じられなかった。確かに西森も、今年は力強く引っ張る打球が多くなったので、ひ弱さが薄れたのは確か。しかし打てない穴が、確実に昨年より増えている。欠点である外角を突いてこられたら、かなり苦労するだろうなと言う印象は残る。ただ昨年までは、ちゃんとできていた部分でもあるので、プロの中で生き残るための選択肢は、いろいろ持っているのかなという気はする。何が必要か敏感に感じ取り、プロに適したものを見出して欲しい。


(最後に)

 同じアイランドリーグ出身でも、鶴岡のように肉体のポテンシャルは高くても攻守に荒削りなタイプとは明らかに違う。西森は、すでにディフェンスも打撃もある程度形のできている選手。そのためファームならば、全く通用しないとは考えづらい。ただNPBで一軍を意識するとなると、何か突き抜けた特徴があるのか?と言われる、鶴岡の方が、一軍を視野に入れられる素材ではあるような気がする。

 あえて高校生の高城俊人(九州国際大附)捕手を獲得したのに、育成で彼を獲得した意味は正直よくわからない。ただ現有戦力をトレードなどで出すという話が前提ならば、人数不足を補うためにも、すぐ使える捕手が欲しかったということなのだろうか。個人的には、無理してとるほどの選手かな?という気もするが、23歳の若さに期待して、更なる成長を期待してみたい。指名リストに入れるほどのインパクトは、残念ながらなかった。


(2011年 公式戦)









四国アイランドリーグ成績



 年度  本塁打 打点  盗塁 打率 
 2008年 22  16  .280
 2009年 39  15  .279
 2010年 16  9  .233
 2011年 25  6  .273