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比屋根 渉(ヤクルト)外野手のルーキー回顧へ




比屋根 渉(24歳・日本製紙石巻)外野 180/73 右/右 (城西大出身)





                   「評価急上昇!」





 2011年アマチュア野球最初の公式戦・社会人東京スポニチ大会において、打って走って決勝となるボテボテ打で試合を決める活躍を見せた 比屋根 渉 。この日の活躍で、スカウト達は一気に、今年のドラフト候補として、この比屋根をマークし始めたと言う。そこで今回は、2011年度新たなニュースター候補を考察してみたい。


(プレースタイル)

 この日の比屋根は、本塁打や盗塁を決めるなど、まさに打って走って守っての大活躍だっそうだ。試合では、4打数4安打。私は、その大活躍の翌日の試合を観戦したのだが、ノーヒットに終わっている。やはり前日の試合を観ているのと、そうでないのでは全然印象も違ったのだろう。三拍子バランスの取れたプレーヤーで、一番打者としてセーフティバントをするように見せかけるなど、足での揺さぶりも忘れない。


(守備・走塁面)

 城西大時代の比屋根は、それほど際だつ選手だったと言う記憶はない。昨年の都市対抗でも、一番・中堅手として出場。そのときに計測したタイムが、右打者ながら塁間を4.0秒前後で走り抜けていた脚力。これを左打者に換算すると、3.7秒前後。この数字は、まさに驚異だ。

通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。走塁技術云々を抜きにしても、このスピードは、プロでもトップクラスに相当。チームの核弾頭して、スポニチ大会でも盗塁を決めたように、走塁技術もある程度備わっていることは間違いない。

 スポニチ大会での試合前練習を観ていても、打球への勘・ボールの落下点に入るキャッチングなども悪くなかった。また地肩もまずまず強く、群を抜いた強肩とまで言わなくても、プロでも強肩の部類に入るでレベル。

 そう考えると、守備・走力に関しては、充分プロで通用するだけの技術・身体能力を秘めていると評価できる。スカウト達の鼻息が荒くなるのも、ある意味当然なのだ。





(打撃内容)

 昨夏の都市対抗では、4打数0安打2三振と、散々な結果で終わっている。その反省もあったのか?上記のスポニチ大会の動画では、打撃フォームをいじってきていることがわかる。ただ下記の打撃フォームに関しては、都市対抗のものをベースにしつつ、この動画でわかる範囲のみ修正してフォーム分析をしてみたい。

<構え> ☆☆☆☆

 
前の足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり、全体のバランス、両目で前を見据える姿勢は悪くない。身体を小刻みに動かし、自分のリズムで打席にも立てている。

<仕掛け> 
平均的な仕掛け 投手の重心が下がってきて底に到達したときに始動

 これが、最も平均的なタイミングでの始動となる。このスタイルは、ある程度の対応力と長打力をバランス良く兼ね備える万能型。主に中距離打者や打点を多く稼ぎたいポイントゲッターが多く採用するスタイルだ。ただ一見完璧そうに見えるこのスタイルも、実はアベレージ打者なのか、長距離打者なのか、どっちともつかずの特徴の見えにくいスタイルに陥りやすい。個性のない打者の多くが、このスタイルを採用しているケースが多い。

 ただ上記の動画をみると、小さくステップしてから始動しており、恐らくこれは「
遅すぎる仕掛け」を採用しているように観られる。動画には、投手のどの部分で動き出しているのかまでは映っていないので、確信的なことは言えない。ちなみに「遅すぎる仕掛け」とは、、多くの欧米人やキューバ人などが、このタイミングで始動する。狙い球を絞って、打てる球を引っぱたく、そんなスタイルを取る。ただこのようなスタイルは、非常に脆く打てる球は限られる。

 また始動~インパクトまでの時間が極端に短いので、スイングに不可欠な動作を端折ることで、インパクトを間に合わせようとすることになる。それでも打ててしまう欧米人のヘッドスピードと筋力の強靱さは、残念ながら日本人には真似出来ない。日本人の場合このタイミングでは、プロレベルの投手を相手には通用ないと私は考えてている。ただし、もしこのタイミングの始動を使いこなす日本人が現れた時、パワーで世界のスラッガーと対峙出来る存在になっているだろう。

<下半身> 
☆☆☆

 昨年との違いは、この部分だ。昨年までは、足をあげてから降ろすまでの「間」を作れており、それだけ様々な変化に対し、とっさに対応できる幅広いスタイルだった。しかし上記の動画をみると、足の引き上げはほとんど観られず、狙い球を完全に絞って叩く打撃になっている。よほど来た球を逃さない鋭さを身につけないと、この打撃では脆さを露呈するはずだ。ただこのタイミングの方がしっくり来ると言うのならば、この打撃を貫いてみれば好いと思う。

 この動画を見る限り、真っ直ぐ踏み出した足下がブレないでスイングができている。打ち損じや身体の開きが抑えられている点は、評価できるポイント。

<上半身> 
☆☆☆

 あまりしっかり打撃の準備段階である「トップ」を作って来るタイプではない。ただあらかじめトップに近い位置にグリップを持ってきており、速い球に立ち後れていると言う感じはしない。

 バットの振りだし角度も悪くなく、スイング軌道にロスは感じない。スイングの弧やフォローまでのスイングにも破綻はなく、無難にまとめられていると言った感じ。ただ個人的には、昨年のフォームの方が、一つ一つの動作が目的意識を持ってハッキリしていたように思える。今年のは、好く言えばコンパクトにまとめられているのかもしれないが・・・。

<軸> 
☆☆☆☆

 頭が上下に動かないので、目線の狂いは少なそう。身体の開きも我慢でき、軸足も打ち終わったあとに、真っ直ぐ地面から伸びておりバランスが取れている。体軸の安定感には、好感が持てるスイングだと言える。


(打撃フォームのまとめ)

 仕掛けの変更、一個一個の動作をきっちりしていた点など、個人的には昨年のフォームの方が、プロを想定するのならば好いフォームであったように思える。しかしそれでは結果がでなかったことから、今のフォームを模索し、辿りついたのかもしれない。それだけ本人にとってしっくり来るのであれば、今はこのフォームで好いのではないのか。またカベにぶつかった時に、修正して行けば好いと考える。ただ現状は、当たれば破壊力はあっても、確実性に乏しいスイングになったと言う印象は否めない。前日4の4と大当たりした試合の翌日に、ノーヒットに終わっているのは偶然だろうか?





(最後に)

 実際に生でスポニチ大会を観る限り、それほどピンと来るものは感じられなかった。しかし守備・走力・身体能力は間違いなくプロ級。あとは、都市対抗本番でいかにアピールできるのかにかかっているのではないのだろうか?とりあえずは評価保留と言うことで、都市対抗でのプレーぶりを確認してから判断したいと思う。ただ社会人では、貴重な野手のドラフト候補であることは間違い。


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2011年・スポニチ大会)




楽天


比屋根 渉(沖縄・沖縄尚学)中堅 178/67 右/右

 抜群の脚力が自慢だと聞いていたが、一塁までの塁間は、4.5秒前後(左打者に換算して4.3秒前後)と際だつ程の脚力ではないようだ。それでもチームの3番・中堅手を守るなど、攻守にチームの中心選手であることに変わりはない。

 ほぼスクエアから少しクローズ気味に構える選手で、投手の重心が前に移動する際に始動する「遅めの仕掛け」を実践する強打者スタイル。足を軽く上げベース側にインステップ気味に踏み込むので、外の球でもしっかり打てる体勢が出来ている。トップは深く取れ、それでいてグリップを身体の奥に引き込まないのは理想的だ。バットを寝かせ気味にスイングしてくるのが気になるところか。打撃ではセンターに、右に左にとコースに逆らわない打撃をする選手。

 ただこれからの課題としては、打撃が弱いだけに、その辺に強さと確実性を増して行きたいところだろう。元々の身体能力は高そうなので、三拍子揃った好選手に育ってもらいたいものだ。