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富永 一(広島)投手のルーキー回顧へ



 富永 一(徳島 22歳) 179/80 右/右
 




               「アイランドリーグで、一番プロに近い男?」





 7月に関東に遠征してきた、独立リーグ・四国アイランドリーグの選抜チームの中でも、最もNPBのドラフトに指名される可能性が高いのではないか?と思わせてくれたのが、この 富永 一。滅法球が速いとか、凄みのある素材ではないが、高いレベルでまとまっていると言う意味では、総合力NO.1の投手だった。


(投球内容)

 それほど体は大きくないが、オーソドックスなフォームから投げ込んできます。球速は、コンスタントに130キロ台後半~MAX90マイル(144キロ)。ボールを外角中心に、速球・スライダー・それにフォークなどの球を投げ込んできます。

 時にはインハイに投げ込む度胸もあり、制球、マウンド捌き、テンポなど、各総合力がバランスよく兼ね備えています。過去にアイランドリーグからNPB入りした選手達に較べてもヒケは取りませんし、今すぐファームに混ぜても、数字を残すだけの実戦力があります。まだ若いですし、ファームで1年ぐらい漬け込めば、一軍で通用するだけの力を身につけられると判断されても、全然不思議ではありません。


(成績から考える)

今シーズンの成績は、
22試合 0勝0敗 14S 防御率 1.64

1,四死球は、イニングの1/3以下 △

 今シーズンは、22イニングを投げて、四死球は8個。四死球率は、1/3を少し上回る 36.4%。若干ではあるが、このファクターを満たしていない。悲観するほどではないが、やはりNPBの一軍というレベルを考えると、もうワンランク上の制球力は欲しいところだろう。

2,奪三振は、イニング数の1.0前後 ◎

 22イニングで、奪三振は40個。なんと1イニングあたり、奪三振は1.82個と言う驚異的な奪三振率を誇っている。恐らく縦の変化球を武器に、実際には三振を奪っているのだろう。NPBレベルでも、アウトの多くを三振で奪えるのではないのだろうか。

3、防御率は、1点台以下が望ましい △

 今シーズンの防御率は、1.64。彼の場合、リリーフが主な登板だろうから、できれば0点台の絶対的な数字をできれば望みたい。勿論1.64と言う数字は、それなりに評価はできるのだが。

<成績からわかること>

 アイランドリーグの成績表には、被安打と言う項目がないのが残念。ただ他の項目をみると、絶対的な数字ではないことがわかる。この成績と実際の投球を加味して考えると、下位指名~育成枠あたりが妥当かなと言う気はしてくる。年齢的にも若いので、指名の可能性は高いと踏んでいる。


(投球フォームから考える)

<広がる可能性>

 引き上げた足を曲げ伸ばしして、少し二塁側に送り込んで投げ込みます。足を伸ばす時に、地面の方に伸ばすので、お尻の落としはやや甘くなっています。それでも縦の変化がある程度投げられるのは、足を地面に着きそうな高さから、なかなか地面を捉えずに前にグッと逃がし着地を遅らせることができているからです。これにより、お尻が一塁側に落とせない割に、縦の変化を投げることができるのでしょう。ただ試合を観る限り、それほど縦の変化が図抜けているようには見えませんでした。しかし公式戦では、驚異的な奪三振を奪っているのですから、普段はもっと切れているのかもしれません。いずれにしても、絶対的なキレを身につけられるかは疑問ですが、どんな変化球でも、ある程度は投げられる下地があります。

<ボールの支配>

 グラブは内にしっかり抱えれており、両サイド制球は安定。足の甲での押しつけもできており、ボールが上吊るのも防ぎます。ただ実際の投球には、ややボールが高めに集まっていたように思えます。「球持ち」も前で放せており、指先まで力を伝えられるリリースでありました。もう少しリリースが安定してくれば、もっときめ細やかな制球力を身につけ、自分の意図をボールに反映できそうです。

<故障のリスク>

 お尻がしっかり落とせないのに、縦の変化を多く投げるという部分では、肘への負担は少なくはありません。角度をつけて投げておりますが、無理な感じはしていないので、肩への負担は大きくないのではないのでしょうか。いずれにしても、アフターケアには充分注意しておいて、損はないはず。

<実戦的な術>

 「着地」までの粘りは充分ですので、体の「開き」も遅くなり、球の出所は見やすくありません。ただ残念なのは、振り下ろした腕が体に絡まないなど、腕の振りに鋭さがない点。そのため球種によって、腕の振りが変わり見破られる危険性もはらみます。また前への大きなステップが、逆に「体重移動」を阻害して、それほどボールが手元まで来ていませんから、ボールに凄みがないのも、その辺に大きな理由がありそうです。

(投球フォームのまとめ)

 「着地」「球持ち」「開き」と、打ちにくさを司る技術は、実にしっかりしています。コントロールを司る動作もしっかりしていますが、あとは速いボールを投げるメカニズムに課題を感じます。投球の核になるストレートに特徴がないのが、この投手の将来に暗い陰を落とします。彼の課題を探れば、まさにそこに行き着くでしょう。

(今後は)

 ストレートには、やや物足りないものがありますが、制球力・投球術・変化球などの総合力は、NPBの二軍レベル級の能力はすでにあると評価します。ただそこから一軍に定着するためには、もう一歩ストレートに磨きをかけたり、更にワンランク上の制球力・変化球などが必要になって来るでしょう。そういった意味では、ファームで1,2年は育成するものだと言う覚悟で指名して欲しいかなと思います。ただ年齢は若いですし、ある程度「形」ができている投手なので、素直に肉付けできれば、戦力になる可能性は充分あるのではないかと評価します。NPBの本ドラフトで、指名される可能性は充分あるのではないのでしょうか。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2011年 四国アイランドリーグ選抜 NPB交流戦)





富永は、4分過ぎから