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嘉弥真 新也(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ








 嘉弥真 新也(JX-ENEOS)投手 172/65 左/左 (八重山農林-ビック開発BC)
 




                   「特徴がなくなったのでは?」





 春の関東選抜リーグで、この投手を初めて観た。ソフトバンクの 森福 允彦 のような、左スリクオーターから投げ込む独特の球筋を武器にしている。ただ春観た時は、もっと腕が下がって出てきており、左打者の背中越しから来るようなイヤラシさがあったように思うが、都市対抗の時は球速こそ上がっていたが、かなり普通のサウスポーに変わって、打ちやすくなっていたように思える。実際に都市対抗では、制球が定まらず、早々降板することとなった。


(投球内容)

ストレート 130~MAX136キロ

 春観た時は、常時120キロ台後半~130キロ台前半ぐらいだったが、都市対抗では常時135キロ近い球速を連発していた。恐らく腕を上げることで球威・球速を増したものの、独特の球筋と制球力が損なわれているのではないかと考えられる。

変化球 スライダー・カーブ・スクリュー

 春観た時は、ストレートが遅い分、変化球を上手くコンビネーションに織りまぜていた。しかし都市対抗では、変化球はスライダーばかりで、コンビネーションも単調だった。そのスライダーの精度・キレともイマイチだった。

その他

 牽制は左投手らしく、かなり自信を持っているよう。またクィックも1.05秒前後でまとめられるなど、素早く投げ込むことができる。このことからも、走者を容易に進塁させない技術を持っている。フィールディングの動きもよく、投球以外の技術はしっかりしている。

(投球のまとめ)

 都市対抗の本戦では、緊張のためだったのか?単に調子が悪かったのかわからないが、制球が定まらなかった。ただ春観た時は、ストライクを取るのに苦労するタイプではなく、けして四球で自滅するような投手には見えなかった。

 実際フォームをいじっているのか、私の記憶違いなのかは確信が持てない。ただ半年足らずで球速が5キロ近く上がっていることを考えると、腕の角度を変えたのかなと思える。それゆえに元々あった制球力などが損なわれ、悪化したのではないかと考える。

 彼が評価されたのは、秋季神奈川大会で、前年日本一の東芝相手に、9回を僅か1安打に抑えた投球だったと言われる。ただこの試合は、むしろ出来すぎで上手くハマッタのかな?という印象が強い。実際には、球威・球速・制球力など、まだまだといった印象は否めない。



(投球フォーム)

では実際のフォームを分析して、どのぐらい実戦的なのか考えてみたい。

<広がる可能性>

 引き上げた足を地面に伸ばすため、お尻は三塁側(左投手は)に落とせないため、見分けの難しいカーブやフォークのような縦の変化の習得は厳しいフォーム。また「着地」までの粘りもイマイチで、今のままだと変化球のキレもイマイチになる可能性が高い。腕の振りもスリークオーターなので、カーブやフォークを武器にするのは厳しいだろう。あくまでもスライダーやスクリューなどの球種で、勝負して行くタイプ。

<ボールの支配>

 グラブは最後まで内に抱えられているので、元来両サイドへの投げ分けは安定しやすいはず。ただ足の甲の押しつけは、爪先のみなのでボールが上吊りやすい。また「球持ち」も浅いので、意外に指先の感覚が悪いように思える。そういった意味では、将来的にも細かい制球力を身につけるのは厳しいかもしれない。

<故障のリスク>

 現状はお尻は落とせないのですが、シュートやフォーク系の球を投げないので、肘への負担は考えにくい。また振り下ろす腕の角度にも無理がないので、肩への負担も少なそう。けして力投派でもないので、故障の可能性は低いのではないのでしょうか。

<実戦的な術>

 「着地」までの粘りがないので、けしてタイミングが合わせにくいわけではなさそうです。しかし体の「開き」は遅いので、ボールの出所が見難いのが特徴です。

 ただ残念なのは都市対抗では腕が振れず、投げ終わった後も体に絡むような腕の振りができませんでした。また「体重移動」も充分ではないので、ボールに上手く体重が乗せられません。あくまでも上半身を鋭く振ることでキレを生み出すタイプなのですが、都市対抗ではピュッと切れるキレを生み出せませんでした。

(投球フォームのまとめ)

 「開き」の遅さから来る出所の見難さがあるので、「着地」の粘りの無さを補うことはできていると思います。ただボールを置きに来るような腕の振りでは、変化球は生きませんしストレートもキレません。「球持ち」も意外に悪いので、将来的に制球力も不安です。現状は、「開き」以外の部分では、けして実戦的とは言えませんでした。


(最後に)

 腕を上げることで球威・球速を増しましたが、プロの投手としては相当遅い部類です。それを補うだけのキレや打ち難さがあればいいのですが、現状そういったものも期待できません。

 制球力・変化球レベルもまだまだで、プロでモノになるのには数年の時間が必要でしょう。まだ社会人4年目の選手なので、その若さに期待しての投手。現在「旬」とは言えませんが、2,3年後に何か特徴を見いだせるといいですね。個人的には、もう少しチームに残った方が正解だと思いますが、同タイプの森福がチームにいるので、彼からいろいろ学べるといいですね。


(2011年 都市対抗)