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太田 裕哉(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ



太田 裕哉(21歳・日産自動車)投手 175/72 左/左 (一関学院出身


(どんな選手?)

高校時代は、センバツ大会で注目を集めた投手です。ただ夏の大会前に故障して、プロ入りを見送られた存在です。中背ですが、勢いのある球を投げ込む力投派の左腕投手です。

(ピッチングスタイル)

洗練されたマウンド捌きがありながら、全身を使って投げ込むダイナミックさも兼ね備える左腕です。球速は、135~後半ぐらいと球に勢いは感じます。ただ、まだ線が細いのか、球威に欠ける面が気になります。

変化球は、スライダーとのコンビネーション。しかし主な変化球は、この球ぐらいで、現状、攻めのバリエーションが不足し、コントロールも良くないです。クィックは、1.05秒と高速で、野球センス自体は悪くないと思います。

(素材としては)

まだまだ、身体に「強さ」・球の「速さ」など、肉体的には発展途上の選手です。投球にグイグイ押す勢いは感じますが、フォームに「イヤらしさ」があるわけではありません。

(今後は)

こういう投手は、球の切れ・勢いが身上なので、肉体の成長で、その投球内容がガラリと変わるタイプです。しかしながら、もう少し実戦的な術を磨きたいところです。まだまだ球にボリューム感が足りませんし、これからの投手だと思います。上手く化ければ、貴重なリリーフ左腕候補になりますが、昨年までの時点では、まだまだといった印象で、ドラフト候補となり得ないと思います。もう少し時間がかかると思いますが、今年は更に成長した姿を期待して、登板が増えるのを見守りたいと思います。

(2008年・都市対抗)

 










 1年時から岩手では評判の好投手で、実力示していた好投手。左腕から繰り出す常時135キロ級のキレのある速球とスライダー・シュートを織り交ぜた横の変化を揺さぶりを得意としている。

(右打者に対して) 
☆☆☆

 右打者に対しては、圧倒的にアウトコース高めに少々抜け気味に行く速球で投球を組み立てて行く。上手く押さえが効くとアウトースへ速球が決まることもある。またアウトコース真ん中近辺の微妙なゾーンに外に微妙に逃げるシュートボールを投げ込む。左投手の持ち味である、右打者の内角をえぐるようなクロスへの球筋が殆ど観られないところがどうか。左打者には、内に食い込みながら落ちるスライダーをたまに投げる程度。圧倒的に外角球で構成されている。ただ真ん中近辺の甘いゾーンに球が集まることがないのは評価したいポイントだ。

(左打者に対して) 
☆☆☆

 左打者に対しては、アウトコース一杯に速球とスライダーを決めて来る。やはりたまにインハイに速球とスライダーが決まることもあるが、投球の8割以上は、アウトコースで構成されている。右打者同様に、真ん中近辺に甘く入る球がないのは評価出来る。かなり右打者に対しても言えることだが、アウトコースに速球とスライダーと言う単調なコンビネーションだけに、上のレベルに行った時には、もう少しバリエーションが求められるだろう。ただし結構器用そうな投手なので、その気になれば、それなりに出来る可能性は高そうだ。

(投球フォーム)

<踏みだし> 
☆☆☆☆

エネルギー捻出が最初からしっかり出来ている。

 両足の横幅は、肩幅程度と並ぐらいだが、足をしっかり引いて立てているので、エネルギーの捻出がしやすい立ち方だ。足の引き上げの勢い・高さはまずまずで、エネルギーがしっかり最初から導かれている。

<軸足への乗せとバランス> 
☆☆☆

もう少し膝の力みが薄れると好い

 それほど軸足の膝に余裕は感じないが、背中を適度に傾けてバランスを保てており、軸足の股関節にある程度体重を乗せられている。

<お尻の落としと着地> 
☆☆☆

着地場所の研究を

 お尻の三塁側の落とし(左投手は)がしっかり出来ているのだが、着地までのスタンスが狭いのか?着地した足が突っ張って体重移動を阻害している。もう少し下半身や股関節を鍛錬して着地までのタイミングを遅らせ、しっかり体重移動出来る場所に足を降ろせるようにしたい。

<グラブの抱えと軸足の粘り> 
☆☆☆

足の甲で地面を押し付けたい

 グラブをしっかり身体の近くまで抱えられており、左右のコーナーワークは安定しやすい。ただ体重移動が不充分なため、足のつま先だけが地面を捉えて回転しているため、球が上吊りやすく作り出したエネルギーの伝達も不充分になってしまう。

<球の行方> 
☆☆☆

足の甲の押し付けをもっと意識を

 グラブを斜め前に付きだし、前肩と後ろ肩を結ぶラインが打者から観て斜めになり、球の出所を長く隠すことが出来ている。そのため球の出所は中々見えて来ないはずだ。殆どその動作は、左サイドハンドに近い状態から上を高い位置に引き上げて降ろしているので、少々動作に無理があるのかもしれない。アフターケアには充分に注意を払ってもらいたい。

 またリリースが、身体から離れた位置からブンと腕を振って投げ込むので、どうしても細かい制球力は付きにくい。球の切れが良いのは、状態を鋭く振ることで生まれてキレは生じやすいが、球にバックスピンがかかっているわけではないので、球威は軽いものになりやすい。もう少しリリースを身体の力で行えることが理想である。

<フィニッシュ> 
☆☆☆

全体のバランス・体重移動を如何に改善して行けるか

 この投手の良さは、上体を強く振れるところである。振りおろし腕も身体に絡んで来る。その一方で、体重移動が不充分なので、身体が三塁側(左投手は)に流れている。足が高く引き上がっているんは、地面を強く蹴り上げたのではなく、力の逃げ道がなくなり、足に逃げ道を求めたからに他ならない。

(最後に)

 小柄な力投派でありながら、ある程度試合をまとめられるセンスも併せ持つ。球の威力には観るべきものがあるのだが、身体の大きさからも、現時点でかなりキャパは使っている印象は受ける。そのため消耗が激しい印象は否めないし、将来的に故障の心配もある。

 これからは、スケールを増すこと以上に、下半身・股関節を重点的に鍛え、しっかりした体重移動を身につけることを中心に取り組んでもらいたい。そうすれば、いろいろな面の欠点も改善できるだろう。まずは、そこからと言った投手だろうか。上手く実戦力を磨いて行ければ、大学・社会人で頭角を現し、いずれはプロをも意識出来る投手に育つかもしれない。2006年度の東北を代表する左腕の一人だろう。

(2006年 3月26日更新)