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一岡 竜司(巨人)のルーキー回顧へ



 一岡 竜司(19歳・沖データコンピューター学院)投手 178/80 右/右
 




                 「全くノーマーク!」





 今行われている都市対抗野球大会において、優勝候補・JR九州の緒戦の先発が、全く無名の専門学校から補強選手だったことに驚かされた。しかしもっと驚かされたのは、その選手がオリックスのドラフト指名候補とあがっているという記事を読んだからだ。数時間後に行われるドラフト会議において、彼は本当に指名されるのだろうか?





(投球内容)

178/80 とそれほど大きな体格ではないが、常時145キロ前後ののストレートで、ガンガン押して来る速球派。まだまだ荒削りですが、素材としては確かにプロが魅了されるだけのものはあります。

ストレート 常時145キロ前後~MAX146キロ

 ストレート1球1球のバラツキは顕著で、かなり好い球と悪い球との差が見られます。特に左打者外角に投げ込む球は、大きくシュート回転して逃げてゆきます。これは、自然にそうなるものと思われます。たまにしっかり指にかかった時のストレートには、素晴らしいものがありますが。

変化球 スライダー・チェンジアップなど

 変化球は、チェンジアップような沈む球を多く織り交ぜ、右打者にはスライダーも使ってきます。あくまでもこれらは、カウントを稼ぐ・緩急を効かせるためのものであり、三振を奪うキレはありません。現状は、ストレートで押すのが、この選手のピッチングスタイルです。

その他

 牽制を入れて走者を威嚇はしますが、それほど鋭さはありません。むしろ打者との勝負前に、一呼吸入れるのに使っているフシがあります。その証にランナーには、完全にモーションを盗まれて進塁を許します。本人の中にも、打者に集中したいという意志が強いようです。

 フィールディングも、正直あまり上手くありません。クィックは、1.15~1.25秒ぐらいと、基準である1.2秒前後で投げられますが、その前にモーションを盗まれていては意味がありません。まだまだ打者に一所懸命投げ込む、それだけで精一杯といった感じです。

(投球のまとめ)

 立ち上がりこそ制球は乱れましたが、元来は打者の外角を中心にボールを集めるのが身上のようです。都市対抗のJR東海戦を見ていても、甘いゾーンへのボールは殆どありませんでした。むしろコースを突いた球を、踏み込んで打たれてしまう、ボールの見やすさに問題があるように思えます。

 現状は、大まかにストライクゾーンに投げ込んでくるだけ。走者に気を遣うことはできないなど、まだまだ素材型の域を脱しておりません。ストレートの素晴らしさはありますが、投手としての総合力は素材型高校生の域を出しっしていないと思って頂いて結構です。





(投球フォーム)

 では今度は、フォームの観点から将来像を検証してみましょう。ランナーがいなくても、制球を重視してセットポジションから投げ込みます。足をゆっくりと高い位置まで引き上げますが、その際に膝から上がピンと真上に伸びきることはなく、力みのない形では立てています。むしろ彼のフォームの力みは、下半身からではなく上半身からだと思われます。

<広がる可能性>

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻をあまり一塁側に落とせておりません。そのため腕の振りの緩まないカーブで緩急をつけたり、縦に鋭く落ちるフォークの修得は、将来的にも厳しいと考えられます。

 また「着地」は、大きく前にステップさせることで遅らせることはできています。これにより体を捻り出す時間は確保できているので、カーブやフォークの修得は厳しいのですが、それ以外の球種を覚え投球の幅を広げて行くことは可能です。すなわちスピードのある変化球を中心に、小さな変化を武器にしてゆくタイプに育つのではないのでしょうか。

<ボールの支配>

 グラブは最後まで内に抱えられているので、両サイドへの投げ分けは安定しています。ただ足の甲の押しつけがつま先のみで地面を捉えているので、ストレートを思いっきり投げると真ん中~高めに浮きがちになってしまいます。また「球持ち」も浅いので、指先の感覚は優れていません。恐らく将来的にも、制球がアバウトな課題を克服できるのかは微妙だと言わざるえません。

<故障のリスク>

 お尻が落とせないのですが、カーブやフォークなどを多投しないので、それほど問題はないと考えます。また振り下ろす腕の角度も極端に無理はないので、肩への負担もさほど大きくはないと思います。そのため多くの投げ込み可能であり、新しい球種にどんどん取り組んで行けるのではないのでしょうか。将来的には、タフなリリーフでの活躍を期待したいところ。

<実戦的な術>

 「着地」までのタイミングは、それなりに遅らせることができています。そのため極端にタイミングが合わせやすい淡白さは感じません。ただ体の「開き」は早いので、ボールの出所がわかってしまいます。そのためコースをきっちり突いても、踏み込まれて打たれるケースが目立ちます。このままだと、今後更に球威・球速を増しても、その効果は薄いと考えられます。

 振り下ろした腕は体に絡むので、速球と変化球の見分けは難しいはず。ただ「体重移動」は下手で、ボールにしっかり体重が乗せられていません。そのためイマイチ打者の手元まで、ボールが伸びて来ないのでしょう。その原因は、広すぎるステップのため、前に重心が乗らず後ろに残ってしまうからではないのでしょうか。

(投球フォームのまとめ)

 投球フォームの4大動作においては、「着地」までの粘りは作れておりますが、「開き」「球持ち」「体重移動」に課題を残し、まだまだ実戦的とは言えません。その「着地」の仕方も、「体重移動」を阻害しているので、改善の余地があります。すなわち実際の投球以外にも、フォームにも大きく修正が求められます。





(最後に)

 これらのことを総合的に見てみても、プロ入りには時期尚早であるように思えます。彼を見ていると、昔同じJR九州~オリックスに指名された 町 豪将 という素材型投手を思い出します。彼が一度も一軍のマウンドを経験することなく、3年で球界をさりました。そのことを考えると、できれば一度社会人に身を置き、じっくりと投手の基礎を身につけてから、プロ入りをした方が私は得策だと思いますね。オリックスは、また同じ過ちを繰り返そうとしているのではないかと、私は非常に心配になります。

(2011年 都市対抗)