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江柄子 裕樹(巨人)のルーキー回顧へ



 江柄子 裕樹(25歳・東芝)投手 183/78 右/右 (明治大出身)





                  「今年一番観たかった社会人ピッチャー!」





 昨年、偶然観た関東選抜リーグで、素晴らしいストレートを投げ込んでいた 江波子 祐樹 。しかしその後の都市対抗予選・本戦とその勇姿を確認できず、結局ドラフト指名漏れすることに。しかし今年最初の公式戦・東京スポニチ大会では、素晴らしい投球をしたと再び耳にした。そこで多くのスカウトに注目され、一躍ドラフト候補へと浮上した。しかし私は、彼が先発したスポニチ大会観られなければ、関東選抜リーグでも先発した試合に遅れ、彼は一回を持たず降板し間に合わなかった。そんな観戦運の悪さもあり、ようやく彼が観られたのは、日米野球の全日本大学選抜と東芝の壮行試合だった。そこで先発した 江波子 をようやく確認できたのである。


(投球内容)

 昨年までは、かなり力任せに145キロを越えるような力強いストレートを連発していたが、今は常時140キロ台~MAX91マイル(145.6キロ)と、少し制球を重視して抑え気味に投げているようだった。それでも繰り出されるストレートの威力はドラフト級。ただフォームがタイミングが合わせやすいのか?球速ほど、打者が苦にしていないのが気になるところ。

 変化球は、スライダーとフォークだかチェンジアップのような球を投げ込んできます。ただこの球は、カウントを稼いだり、投球にアクセントはつけられますが、相手を仕留めるような威力はありません。基本は、速球も変化球も外角にしっかりコントロールし相手の打ち損じを誘います。時にインコースを突いて、相手の踏み込む封じるような制球力や度胸はあります。ただこの球もあくまでも見せ球であり、内角でズバッと突いて仕留めると言う大胆さはないように思えます。

 牽制は鋭く、クィックも1.05秒前後(基準は1.2秒)と素早く投球以外も悪くはありません。ただコンビネーションも単調ですし、間を活かすような投球センスは感じられず、球の威力で押すタイプのピッチングスタイル。そのためポテンシャルはあっても、投手としてのセンスはそれほど感じられません。現状は、ストレートが平均して速いという魅力はありますが、それ以外に絶対的な武器はありません。

 またコースを突いている甘くない球も打たれるケースが多いので、その原因が何処にあるのか?フォームを分析して考えてみたいと思います。





(投球フォーム)

<投球の広がり>

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばせるので、お尻を一塁側に落とせます。これにより体を捻り出すスペースが確保でき、見分けの難しいカーブやフォークのような落差のある縦の変化の修得も期待できます。ただ彼の場合、「着地」の粘りに欠けるので、体を捻り出すための時間が足りません。せっかくお尻を落とせるのですから、もう少し着地までのタイミングを遅らせるようになれると、もっと変化球にもキレが出てきそうです。

<制球>

 グラブは、最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ訳はできています。足の甲での押しつけが浅いので、ボールがやや上吊る傾向にあります。また「球持ち」は好くないので、指先までボールに力を伝えることができず、細かい制球は期待できません。もう少し、高低の制球を中心に繊細なコントロールを身につけたいところです。

<故障への可能性>

 ボールをリリースする際に、ボールを持っている腕が上がり、グラブを抱えている腕が下がり気味です。それだけ肩の引き上げに無理があり、故障の原因になりかねません。テイクバックした時に肘の位置をもう少し高めに添えるか、腕の角度を少し下げて回旋を緩和させるなどして故障へのリスクを減らして欲しいと思います。

<実戦的な投球>

 「着地」までの粘りがなく、打者からはタイミングが合わせやすいフォームです。具体的にいえば、「イチ・ニ・サン」のタイミングで投げ込んでしまっていて、「イチ・ニ~の サン」の「ニ~の」着地までの粘りがないので、打者から合わせやすいのです。それでもグラブを斜め前に突き出すことで、「体の開き」を隠すことができ、ボールの出所は早くわかりません。腕もあまり振れていないので、腕の振りで打者から速球と変化球の見分けがつく可能性があります。もう少し振り下ろした腕が、体にからみつくような鋭い振りが欲しいところ。「体重移動」は悪くないので、速い球を投げられるメカニズムには長けています。


(今後は)

 春のスポニチ大会での投球は素晴らしかったと言いますから、その頃に比べると調子が落ちていたのかもしれません。この日の内容だけ観れば、指名は厳しいかなと言うのが正直なところです。

 ストレートは悪くないのですが、決め手不足や、コンビネーション、投球術など、25歳の年齢も考えると、無理して取るほどの完成度・総合力ではないのかなと言う印象がありますし、タイミングの合わせやすいフォームの改善も求められます。

 都市対抗本戦での内容次第だと例年ならば言えるのですが、今年は都市対抗期間とドラフトの日程が重なり、そこでの活躍は、アピールの対象とはなりません。東芝は、前年度優勝チームであり、予選無しでの出場を決定。そう考えると、都市対抗予選前の練習試合等で、評価が決められることになりそうです。私は、現状指名リストからはハズしておりますが、最終的な評価は都市対抗を観て決めたいと思います。現状は、微妙な位置にいる投手なのかなと言う気が致します。


(2011年 日米野球壮行試合)