11sp-13





森内 寿春(日本ハム)投手のルーキー回顧へ



 森内 寿春(JR東日本東北)投手 180/80 右/右 (青森大出身)
 




                      「1試合で人生を変えた男!」





 ドラフト直前に行われた都市対抗・三菱重工横浜戦。ここで 森内 寿春 は、完全試合を達成。この好投が認められ、26歳にして祈願のプロ入りを果たすことになる。ドラフト適齢期を過ぎた26歳、彼には何か余計な力みが消え、投球のコツを掴んだ感がある。


(投球内容)

 驚くような球威・球速はないのですが、キレのある球が打者の外角一杯に決まります。特に完全試合を果たした試合では、ほとんどコントロールミスがありませんでした。力みのないフォームから、完璧なコントロール。この投球で彼は、悲願のプロ入りを決定づけたのです。

ストレート 135~MAX142キロ

 以前もっと力で押すタイプに見えたのですが、この試合では力みなく135~142キロのストレートを、コーナーに丹念に集める投球に徹しました。いかにも東北人らしい、粘っこい投球が身上。その球も驚くような球威・球速はありませんが、キレの好い実践的な球質です。実は森内は、この試合に限らず予選でも13イニングで6安打・自責点0の完璧な投球を魅せておりました。この投手は、けしてこの試合だけが良かったわけではありません。

変化球 スライダー・チェンジアップ

 ストレート以外の変化球は、右打者の外角に決めるスライダーと左打者の外角低めに落とすチェンジアップとのコンビネーションと、実に球種は少ないことに驚かされます。しかもその配球は、ほとんど外角に集中し、驚くほどシンプルな配球。それでもしっかりコントロールすれば、投球が組み立てられることを実証してくれました。

その他

 緒戦では完全試合で確認出来ませんでしたが、ランナーに対する警戒はしっかりできる選手です。牽制もまずまず鋭いですし、クィックも1.05秒前後で投げ込めるなど素早いです。フィールディングも落ち着いてボールを処理できていますし、投球以外の部分も即戦力級です。

 ランナーを背負っても、「間」をそれほど取って投げ込む投手ではありません。しかし落ち着いて投球できており、セットだから制球が乱れるとか、リズムが悪くなる心配はありませんでした。

(投球のまとめ)

 とくに間合いを意識したピッチングスタイルではありませんが、黙々と粘っこくボールをコーナーに集めてきます。その高い精神力・忍耐力は、東北人らしい気質が感じられます。

 緒戦の重工横浜戦では、ほとんど外角球中心にボールを組み立てていましたが、2戦目の西濃運輸戦では意識的に内角をおりまぜた投球でした。そういった意味では、両コーナーを駆使しした幅広いピッチングが持ち味だと言えるでしょう。

 すでに年齢的にも完成された投手であり、プロ入り後大きく伸びることを期待するタイプではありません。今の投球レベルで、何処までプロで通用するかが見極めの大きなポイントになります。


(投球フォーム)

<広がる可能性>

 お尻は、しっかり一塁側に落とすフォームではありませんが、前に大きくステップして着地するタイミングが早くなるのを防ぎます。実際球種もスライダー・チェンジアップであり、今のフォームでも問題はありません。将来的に緩急をきかしたカーブや縦に鋭く落ちるフォークの習得は厳しいのですが、球速豊かな変化球などなら、問題なく習得できる下地はあります。すでにスライダーとチェンジアップの生かし方・制球力は確かなので、もう一つ球種を増やしても問題ないと思います。

<ボールの支配>

 グラブをしっかり内に抱えられないのですが、実際は両サイドへの制球は素晴らしいです。足の甲でしっかり地面を捉えており、低めにボールを集めることができます。彼の制球力の高さを支えるのは、「球持ち」の良さではないのでしょうか。これによりボールを上手くコントロールできています。

<故障のリスク>

 お尻を上手く落とせていませんが、スライダー・チェンジアップ系の投手なので、負担は大きくないはず。更に腕の角度にも無理がないので、肩への負担も少なそうです。故障の可能性も低く、プロでも力を素直に発揮できる可能性が広がります。

<球の行方>

 「着地」までの粘りがあるので、体の「開き」も早すぎることはありません。そのため打者からタイミングが合わしやすくないですし、ボール出所もけして見やすくありません。

 振り下ろした腕も体に絡んで、腕の振りがゆるみません。これなら、速球と変化球の区別も難しいでしょう。「体重移動」も悪くないので、球速は並ですが打者の手元までボールが来ている印象を受けます。

(フォームのまとめ)

 「着地」「開き」も悪くないので、打ちやすい淡白なフォームではありません。むしろコースを丹念に突きつつ、粘っこいフォームで打たれ強い投球が期待できます。

 グラブは内に抱えられませんが、高い制球力があります。また「体重移動」も好いので、球速以上に球の質も良い実践的な投球。実際の投球だけでなくフォームの観点でも、プロで即戦力級の技術の持ち主でした。


(最後に)

 完全試合の投球は出来過ぎだったと思いますが、完全に何か投球のコツを掴んだ感じは致します。けして凄みのあるピッチングではありませんが、プロでも試合を作れるタイプの投手として、先発での活躍も期待されます。

ファームレベルだけでなく、一軍でも一年目からやれる力をすでに養っていると思います。ただこれから、何処まで自分のピッチングを広げて行けるのかが、活躍ポイントでしょうね。ただ年々自分の資質を伸ばし、社会人で活躍できる能力を身につけました。そういった意味では、プロでも長く活躍してくれるのではないかと期待します。まさに一年目から、勝負の一年になるのではないのでししょうか。開幕一軍入りの活躍を期待してみたいと思います。



蔵の評価:
☆ (下位指名級)


(2011年 都市対抗)