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田原 誠次(巨人)投手のルーキー回顧へ



田原 誠次(倉敷オーシャンズ)投手 178/65 右/左 (聖心ウルスラ学園出身) 
 




                      「都市対抗の掘り出しもの!」





 今年の都市対抗で、伯和ビクトリーズに補強され好投を魅せた 田原 誠次 。高卒4年目ながら、抜群の制球力と洗練されたマウンド捌きで、見事にドラフトでは巨人から指名された。すでにファームでも成績をあげられそうなぐらいの、高い投球レベルに達している。


(投球内容)

 彼の良さは、サイドから繰り出す速球も変化球も、見事にコーナーに集められる高い制球力にあります。それだけでなく、しっかり「間」を意識して投球できており、まだ22歳という若さながら、ほぼ完成されたピッチングが魅力です。

ストレート 130キロ台後半~MAX141キロ

 逆に言えば、球威・球速と言う意味では、少々プロではモノ足りません。そのため、甘く入ると痛打を浴びやすい怖さがあります。それを絶妙なコントロールと的を絞らせないマウンド捌きで、上手く交わすのが彼の持ち味。

変化球 スライダー・カーブ・シンカー

 上手くコンビネーション中に、緩いカーブを織りまぜてアクセントを付けています。また右打者には、外角一杯にスライダーを、左打者には外角低めにシンカーを投げ分けます。時には内角を突くコントロールもあり、打者に的を絞らせない工夫が見られます。

その他

 牽制も鋭いですし、クィックも1.15秒前後で投げ込んで来るなど、ランナーに対する警戒にも余念がありません。サイドハンドですが、モーションが大きく盗まれるといったタイプではないでしょう。セーフティバントで揺さぶって来るような相手にも、冷静にボールを処理できていました。そういった投球以外の技術にまで神経を配ることができる、投手らしい投手です。

(投球のまとめ)

 制球・コンビネーション・マウンド捌きなど、実に完成されていました。投げ込まれる球やフォームに威圧感はありませんが、そのぶん針の穴を通すような精度の高いピッチングは称賛に値します。甘く入ると怖いなあという部分はありますが、こういったタイプでは最近、加賀 繁(ベイスターズ)がプロでも活躍しております。ドラフト7位での入団ですが、アマ時代の完成度ではヒケをとらないだけに、意外な掘り出しものになるかもしれません。

(投球フォーム)

<広がる可能性>

 サイドハンドなのですが、お尻を一塁側に落とせます。また「着地」までの粘りも悪くないので、カーブで緩急をつけたり、縦の変化の落差も悪くありません。これからも、好い変化球をいろいろ覚えて、ピッチングの幅を広げて行けそうです。

<ボールの支配>

 グラブを最後まで抱えられますので、両サイドへの投げ分けも安定。足の甲の押しつけもできており、ボールが高めに上吊りません。「球持ち」もサイドにしては素晴らしく、プロの世界でも高い制球力の持ち主として活躍できそうです。

<故障のリスク>

 お尻が落とせておりますので、変化球を捻り出すのにも無理がありません。当然横手なので、腕の振りにも負担が少ないはず。それほど力投派でもないので、故障への可能性は低いのではないかと思います。頑強なタイプではありませんが、無理しなければ故障の可能性は低そうです。

<実践的な術>

 どうしてもサイドなんで、肩の開きは早めです。しかしその前に「着地」までの粘りがありますし、「球持ち」も好いので粘っこい投球が期待できそうです。

 腕も適度に絡む程度に振れていますし、「体重移動」もサイドにしては悪く有りません。自らのキャパを上手く引き出すことができています。

(投球フォームのまとめ)

 「着地」までの粘りと「球持ち」の良さが、サイド特有の「開き」の早さを補って、打ちやすさを打ち消しています。また「球持ち」の良さとグラブの抱えや足の甲の抑えもしっかりできており、高い制球力を支えます。球速はありませんが、「体重移動」の良さからも球質は悪く有りません。そういった意味では、実際の投球もフォーム技術も、極めて完成度の高い投手だと言えるでしょう。


(今後は)

 センスだけでなく、指先まで神経を通わせるほどの意識の高さが魅力です。高校時代は、さほど名前の知られていた投手ではありませんが、僅か4年の間にプロでも通用するだけの投球を身につけました。これは、この選手の野球に対する意識の高さを感じます。

 ただ、けして見栄えがして首脳陣受けするタイプではないので、何処までチャンスをもらえるのかは心配です。ただ与えられた仕事を、きっちり一つ一つこなしてゆけば、徐々に首脳陣の信頼を勝ち取れるのではないのでしょうか。個人的には、加賀繁(ベイスターズ)があれだけやれているのだから、彼も同様の、いやそれ以上の活躍すら期待したいところです。プロでもこのピッチングを維持できるのであれば、思わぬ掘り出しものとして活躍してくれそうです。個人的には、かなり期待して今後の活躍を見守ってみたいですね。けしてスケール・凄みはありませんが、完成度の高さでは今年の指名選手の中でも屈指ではないのでしょうか。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2011年 都市対抗)