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土田 瑞起(巨人)のルーキー回顧へ




土田 瑞起(愛媛 21歳)投手  181/91 右/右 
 




                      「見違えるほど成長!」





 7月の終わりに、毎年恒例の四国アイランドリーグが、選抜チームを作って関東に遠征してきた。今回は、3試合を私の地元である横須賀スタジアムで試合を行った。そこで私も、3日間に渡って選抜チームを観戦。その中で光っていた1人が、この 土田 瑞起 。確か2年前の長崎セインツ時代に、彼の投球を観戦。そのときは、若さこそあれど、135キロ程度の球速に、癖のあるフォームをしている若手投手との印象しか残らなかった。しかし今回観て、驚くほど球速を増しているのに驚かされた。

(投球内容)

 135キロぐらいがやっとだった投手が、常時140キロ台を記録し、MAX92マイル(147.2キロ)まで到達。ボールにも勢い・キレがあり、球質も球速に見合うだけのものが出てきた。初日には、まさに速い球を投げてスピードボールをアピールと言う形であったが、二度目の登板となった試合では、少し球速を落として、丁寧に投げようと言う意識が感じれた。変化球は、横滑りするスライダーとのコンビネーション。変化球は、この球しかないが、スライダー自体はキレがあり悪くなかった。

 ただボール全体が高く、制球がアバウトな点。そしてこの2種類の球しかなく、コンビネーション極めて単調な点が課題ある。そのため追い込んでから仕留めきれなかったり、甘い球をヒットされたり。逆にこのあとで触れるが、リーグ戦の実績はないのに選ばれたのは、彼の持つ球自体がリーグトップクラスであり、その若さも加味すると、指名の可能性は充分秘めていると評価され、この選抜チームに選ばれたのだと考えられる。まだまだ素材型の域を脱しておらず、球に勢いがあるので素材としての面白味は感じさる。

(成績から考える)

ではここからは、今年のアイランドリーグでの成績を観て、考えて行きたい。今シーズンは

21試合 4勝4敗1S 防御率 5.07

1,被安打は、イニング数の70%以下 ?

 昔からそうなのだが、アイランドリーグの成績表には被安打という項目がないので、この部分はよくわからない。

2,四死球は、イニングの1/3以下 ×

 65回2/3イニングを投げて、四死球は33個。四死球率は、50.3%と、かなり悪いことがわかる。2イニングに1個はフォアボールを出していると言うことは、かなり細かいコントロールや狙ってストライクが取れないことを示している。実際の投球を観ていても、その傾向は見られた。

3,奪三振は、イニングの1.0個前後 △

 65回2/3イニングで、奪三振は53個。1イニングあたり、0.81個。通常0.8個以上三振を奪っていると、かなり三振が取れる投手との判断になるが、彼のようなリリーフでの登板が期待される投手の場合、0.9個以上は奪っておきたいところ。確かにアイランドリーグ屈指のストレートを投げ込むものの、打者を仕留めるほどの球がなく、フューチャーズの打者達に粘れている場面をみると、この数字も頷きたくなる。

4,防御率は、1点台以内が望ましい ×

 現在の防御率が、5.07。これを考えると、まだまだアイランドリーグにおいても、期待込みの素材型であることが伺われる。逆にこの成績でも、選抜メンバーに選ばれている潜在能力の高さを評価して欲しい。

<成績からわかること>

 実際の投球も、球の勢いの素晴らしさはあるものの微妙だったのだが、成績の観点から見るとNPB入りは厳しいだろうと言うことになる。ただ持ち得る球の勢いと、高卒3年目の21歳という年齢を加味すると、育成枠あたりならと言う期待は確かに広がって来るのではないのだろうか。次ぎは投球フォームから、今後の可能性について模索してみたい。


(投球フォーム)

 荒れ荒れの力投派かと思いきや、ランナーがいなくてもセットポジションから投げ込み、足の引き上げやその高さも小さく、静かな感じで入って行く大人しいフォームです。

<広がる可能性>

 引き上げた足を二塁側にかなり送りこんで、捻りを加えてから投げ込みます。その際に、足を地面に向かって伸ばすので、お尻の一塁側への落としは少し甘くなります。そのため将来的に見分けの難しいカーブで緩急を効かしたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種を修得して、投球の幅を広げて行くのは厳しいかもしれません。ただ「着地」までの時間は稼げているので、ある程度のキレならば、いろいろな球種は投げられる下地はあります。基本は、スライダーやチェンジアップなどの変化球を中心に、スピードのある変化球を中心に修得して行くことになるのではないのでしょうか。

<ボールの支配>

 彼の最大の課題は、コントロールにあります。グラブを内に抱えられているのですが、最後に後ろに抜け気味なってしまい、両サイドの制球がアバウトになりがちです。足の甲の押しつけも素晴らしいのですが、もし膝小僧に土が着くほど重心が沈んでいるのならば、返ってスパイクのエッジが使えずにボールが上吊る可能性もあります。いろいろな意味で、少し重心の沈みを緩和させた方がいいかもしれません。ただ「球持ち」は、思ったほど悪くありません。ここからの映像だと、ハッキリした技術的に不安定な理由が掴めませんが、かなり体に捻りを加えたり、制球を乱す理由があるはずです。この問題を解決して行かないと、せっかくのスピードボールも活かせません。

<故障への可能性>

 かなり体を捻って投げることからも、腰への負担は少なくなさそうです。またリリースの際に、グラブを抱える方の肩が下がり、ボールを持っている肩が上がっており、腕の振り下ろしには無理が感じられます。肩への負担も少なくないので、アフターケアには充分注意してもらいたいところ。スライダーを武器にするのであれば、若干肘を下げた方が、腕の回旋はスムーズになるかもしれませんね。

<実戦的な術>

 「着地」までの粘りはアル程度あり、体の「開き」も胸もよく張れて、ボールの見所は早くありません。腕の振りも鋭く、投げ終わったあとも体に絡んできます。また前への「体重移動」にも優れるので、速いボールが投げられます。

(フォームのまとめ)

 「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」と、実戦を司る動作は、思いの外しっかりできていますし、速いボールを投げるメカニズムも見事に実現できています。唯一の欠点は、制球を司る動作。グラブの抱え、足の甲での地面の押しつけ、安定したリリース・体の捻りなどに注意しながら、理想のフォームを固めて行って欲しいものです。技術的には、想像以上にしっかりしているのに驚きました。


(最後に)

 実際の投球、残した実績を観ると、NPB入りにはリスクが大きく、育成枠でも指名は微妙かもしれません。ただ投げ込まれる球は、アイランドリーグ随一ではないかと思える速球の勢いがありますし、21歳の若さは魅力です。ちょっとここさえ直せばと言う、確信が持てれば指名の話が出てきても全然不思議ではありません。個人的には、課題の制球力に改善がみられれば、指名にGO!サインだと思いますが、もう一年ぐらい待った方がいいかなと思います。ただ今年のアイランドリーグの中では、NPBに近い存在だと言うことは覚えていて損はなさそうです。


(2011年 四国アイランドリーグ選抜・プロアマ交流戦)