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松本 剛(日ハム)内野手のルーキー回顧へ




 松本 剛(東京・帝京)遊撃 180/80 右/右
 




                「プロ確定だね!」





 春季東京都大会では、怪我のため不出場。彼を今年ようやく確認できたのは、6月のアメリカ代表チームと東京都選抜が対戦した試合だった。その時の動きを見て、この選手はプロ確定であることを確信した。


(どんな選手?)

名門・帝京高校で、1年春からレギュラーを任されてきた。その高い野球センスに加え、鋭い打球が際だつ強打者。しかし2年時には、7番で出場することも多く、やや伸び悩んでいた感は否めない。しかし最終学年を迎え意識が変わったのか?完全にその殻を破ることができた。





(守備・走塁面)

この選手の守備は、滅法グラブ捌きが柔らかいとか、守備にスピード感があるとか、打球への判断が人並み外れているとか、そういった類ではない。しかしゲーム勘がいいと言うのか、試合に入って行くのが上手い。

脚の運びなどは堅実で、滅法守備範囲が広いわけではないが、球際では強さを発揮するタイプ。驚くような肩ではないが、プロに混ぜても地肩は基準以上だろう。プロのレギュラー遊撃手としては少し物足りないが、二遊間を期待されるだけの守備力は持っている。二塁あたりで堅実にプレーするのが、彼本来の目指すべき姿ではないのだろうか。

一塁までの塁間は、4.25~4.45秒前後。これを左打者に換算すると、3.95~4.15秒前後ぐらいに相当する。プロの基準が、左打者換算で4.2秒であるから、これを上回りプロに混ぜても俊足レベルの選手。それでもプロレベルでは、脚を売りにできるかどうかは微妙なレベル。最後の夏の予選では、8試合で5盗塁を決めるなど、以前よりも積極的な走塁が目についた。隙があれば次の塁を狙おうと言う意識は、下級生の時より増してきた。そういった意識で取り組んできたこの一年は、彼の今後には大きな財産にはなりそうだ。





(打撃内容)

6月に観た時から、もう手がつけられないぐらいに一皮むけた打撃を見せていた。その好調を維持して挑んだ東東京大会では、3本塁打 12打点 打率.593厘と打棒爆発。右に左にセンターへ、時にはスタンドインのパンチ力を秘めている。そういった意味では、打撃でも高校時代の森本稀哲と比べても、遜色のないレベルにあるだろう。

<構え> ☆☆☆

両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを高めに添えて構えます。腰の据わり・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢なども悪くはないが、少し構えに固いかなと言う気もする。

<仕掛け> 遅すぎる仕掛け

一度ベース側に足を持って行き、本格的に始動するのはリリース直前と言う「遅すぎる仕掛け」を採用。これだと一定レベル以上の球速やキレに対応するのは厳しい。そのためプロ入り後は、この始動を変えることから、始めることになるのではないのだろうか。

<足の運び> ☆☆

足を小さくステップさせるだけなので、足を上げて降ろす「間」が短く、極めて打てる球は限られている。完全に線でボールを捉えるのではなく、点で狙い澄ましその球を叩くタイプ。

真っ直ぐ踏み込むことからも、内角の球でも外角の球でも捌きたいと言う彼の意志が感じられる。ただ踏み込んだ足下が地面から離れるのが早いため、カベを長くキープして捌くタイプではない。すなわち外角の真ん中~低めに決まる球を捌くのは、基本的に厳しいタイプ。引っ張って巻き込むスイングを元来は好むタイプなのだろう。

<リストワーク> ☆☆☆

始動が遅い分、打撃の準備の形である「トップ」を作るのは遅れ気味。またそのトップ自体も、しっかり作らないまま振り出すと言う、やや消化不良な打ち方をしている。特にスイング軌道に大きな欠点はなく、それを補って余りあるヘッドスピードの鋭さが、この選手の一番の魅力。このスイングこそが、彼のポテンシャルの高さを示している。

<軸> ☆☆☆

足の上げ下げが小さい分、目線の狂いは少ないはず。体の開きを我慢するというよりは、いち早くからだを開いて素早く捌く。軸足が大きく崩れることは少ないので、突っ込むことなく安定した打撃は期待できそうだ。

(打撃のまとめ)

守備でも走塁でも打撃でも、技術云々というよりも試合感覚の良さでこなしてしまうタイプ。そのためプロ入り後は、やや苦労しそうな粗さはあるものの、ポテンシャルの高さで克服して行けそうな感じはしている。プロでレギュラーを掴むまでには少し時間がかかるかもしれないが、それでもいずれは出てくるだろうなと言う高い資質の持ち主。守備・走塁・打撃の中で、現在一番粗いのは打撃だが、将来一番存在感を示すのは、やはり打撃ではないのだろうか。



(最後に)

寸評を作成していても、上手く良さを説明できないのだが、ちまちまアマで実績を積んでと言うタイプではなく、できるだけ早くプロの世界に飛び込んで欲しい。

打てる二遊間候補は貴重だし、その点ではプロでも存在感を示してくれるはず。プロでもスターになれる資質を持った選手ではないのだろうか。そういった華が、この選手にはある。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2011年 夏)










松本 剛(東京・帝京)遊撃 180/70 右/右

(どんな選手?)

 1年からレギュラーの選手で、球際に強い守備・積極的な走塁など、持っているポテンシャルの高さ、センスの良さはピカイチの選手でした。そしてこの夏には、かなり打球の強さが増し、打撃面での成長が目につきました。



(守備・走塁面)

 大型ですが、基本に忠実に丁寧にプレーしようと言う意識が感じられます。特に広い守備範囲を誇ると言うよりは、球際でのグラブ捌きやバウンドに合わせに対応するのが上手いタイプ。また高校生にして、中々の強肩と言うポテンシャルの高さは、名門・帝京高校で1年から遊撃を任されるだけのものがある選手です。上のレベルでも、二遊間を担える素材だと言えるでしょう。

 一塁までの塁間を、4.25~4.45秒ぐらいで走り抜ける脚力の持ち主で、これは左打者換算で計算すると3.95秒~4.15秒ぐらいに相当し、プロでも俊足の部類です。ただ盗塁数は、19試合で3盗塁と、秋は怪我でもしていたのか?走力でのアピールが薄かったのは残念でした。元々は、走塁でも、スタートの良く盗塁が試みられるなど、ただ速いだけでなく、判断力にもセンスがあるかもしれません。秋からは、守備でも、走力でも積極的にアピールして欲しいと思います。

(打撃内容)

 7番・遊撃と言うポジションは、秋から変わりませんでした。また肘が下がって、ヘッドが下から出る傾向も観られ、それほど技術的には変わっていないのではないかと思います。ただ肉体的な成長はあったのでしょう。以前もシャープだったスイングが、更に強い打球でボールを射貫くことができております。この選手の良さは、打撃でも非力感のない三拍子バランスの取れた身体能力と、そのセンスにあります。

(夏に向けて)

 新チーム結成前に、ぜひ自ら7番・遊撃手と言うポジションから脱却できる成長・積極性を身につけて欲しいところです。秋からは、関東を代表する遊撃手としてプロからも注目されるでしょうし、またチームでも重要な役割を任されて行くことになると思います。そんな中で、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか、これからも追い続けたい逸材です。


(2010年・選抜)



楽天



(どんな選手?)

 1年春からレギュラーを任されている大型遊撃手です。特に球際に強い守備とスタートの良い走塁が目を惹きます。

(守備・走塁面)

 大型ですが、基本に忠実に丁寧にプレーしようと言う意識が感じられます。特に広い守備範囲を誇ると言うよりは、球際でのグラブ捌きやバウンドに合わせに対応するのが上手いタイプ。また高校生にして、中々の強肩と言うポテンシャルの高さは、名門・帝京高校で1年から遊撃を任されるだけのものがある選手です。鍛えようによっては、まだまだ上手くなるのではないのでしょうか。

 一塁までの走破タイムは、引っ張った打球でも4.45秒前後(左打者換算で4.15秒前後)。実際には、もっと速く駆け抜けられる能力はありそうで、プロレベルでも俊足に位置づけられそうな脚力がありそうです。走塁でも、スタートの良く盗塁が試みられるなど、ただ速いだけでなく、判断力にもセンスがあるかもしれません。まだ攻守に図抜けたものはありませんが、後2年間の間に真摯に取り組めば、走・守に関しては、かなり期待出来る素材ではないかと思います。

(打撃内容)

 チームの7番打者のように、まだ対応力と言う意味では課題が多いように思えます。前足を少しだけ引きますが、スクエアスタンス。グリップを高い位置で、あらかじめ捕手側に添えて構える選手です。あらかじめ少し外側に腰が流れた立ち方で、顔もあまり正面を向いていないなど、まだまだ構えから改善の余地がありそうです。

 仕掛けも、投手の重心が沈む時に動き出し、ベース側につま先してから再度リリース直後にステップする「遅すぎる仕掛け」を採用。それだけに、一定レベル以上の球速・キレに立ち後れやすいスタイルです。

 小さくステップした足を、少しベース側にインステップさせるのですが、その足下が早く地面を離れてしまう、いわゆる「巻き込み型」スイングになっているので、センターからレフト方向に打球が集中いたします。もう少し足下を長く地面にキープさせる意識を持ち、センターから右方向への打球も意識したいところです。

 バットを上から出す意識はあるのですが、肘が下がって出てくるので、動作が無理がありスイングが波打つことがあります。ヘッドスピードなどは中々鋭いものがあるのですが、技術的に大きな欠陥があります。この辺の課題を、後1年半でどの程度改善されるのか注目して観て行きたいです。

(今後は)

 守備・走力に関しては、将来的に中々面白いものを持っていると思います。ただ打撃に関しては、かなり癖のあるフォームをしており、ポテンシャル・センスは悪いとは思わないのですが、何処まで改善出来るのか疑問な部分があります。打撃の欠点を改善出来るようになると、まさに三拍子揃った大型内野手として、最終学年では全国的に注目されるドラフト候補になるのではないのでしょうか。今後の成長が、楽しみな選手ではないのでしょうか。

(2009年・神宮大会)