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高橋 洸(巨人)内野手のルーキー回顧へ



高橋 洸 (日本文理)三塁 183/75 右/右 
 




                  「荒削りだが、身体能力は高い。」





 荒削りでも、この選手の場合、強肩・俊足の身体能力を秘めており、その辺も指名された大きな要因だと考えられます。元々意外に動ける身体能力と基準以上の地肩があるのは春のレポートで書いたのですが、正直ここまでとは思ってもみませんでした。


(守備・走塁面)

彼の場合、ボールを引っ掛けて三遊間に飛ぶ打球が多いのです。したがって最初の一歩目を早くスタートを切ることは少ないはずなのですが、塁間4.25前後~4.20弱で走り抜けることが多く、これは左打者に換算すると、4.0秒~3.95秒前後に相当します。通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

 実際に2年秋の秋季大会でも、126打席で11盗塁を記録。これをプロの規定打席である446打席に換算すると、年間39盗塁ペースで走る計算になります。見た目はあまり足を使うプレースタイルには見えないのですが、隙を見せれば盗塁をしてきますし、かなり動ける選手だということは確かなようです。プロで売りにするほどではないにしろ、将来的には年間10盗塁ぐらいは、期待できるぐらいの脚力はありそうです。ちなみに、彼の走力を塁間4.2秒だと設定した場合、2011年度のドラフト指名された右打者の走力を偏差値に直しますと、走塁偏差値は60。上位15%以内に入るスピードがあり、その見た目以上に早い選手であることがわかります。

 守備に関しては、三塁手に一番必要なボールに喰らいつくガッツがあります。けしてフットワークやキャッチングが上手いわけではないのですが、打球に向かって行きます。そうかといって雑なプレーをしないので、その動き以上に安定しているのも大きな特徴。地肩も基準以上のものがありますし、プロでも三塁手として期待できる素材でしょう。

 少なくても走力は中の上以上から、守備力は平均レベル。それだけの能力は現時点であるので、今後もレベルアップを励めば、まだまだ高い身体能力を活かしたプレーが期待できます。強打者ですが、そういった部分の不安がないのは大きいかと思います。


(打撃内容)

 ただ肝心の打撃の方は、正直ピンと来たことがありません。打球を無理に引っ張りにかかりますし、タイミングのとり方も悪く「パワフルでも脆い」そんな印象は、最後まで拭えませんでした。

 夏の甲子園では、日大三高の吉永相手に4打数1安打。夏の新潟予選では、打率.400厘を残すも、決勝戦では引っ張りにかかり、ことごとくボールを引っ掛ける打撃が目につきました。特に外角のスライダーの見極めが全くできないだけに、プロでも相当苦労することが予想されます。

<構え> 
☆☆☆

 スクエアスタンスで両足を揃え、前の足のカカトを浮かして構えます。グリップの高さは平均的で、腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のババランスは好いと思います。ただその割に固く見えて、何処か脆そうな感じは否めませんでした。

<仕掛け> 遅すぎる仕掛け

 投手の重心が下がりきったあたりでつま先立ちし、投手がボールをリリースした後に動き出す「遅すぎる仕掛け」を採用。これでは、プロレベルのスピード・キレには立ち遅れる可能性が極めて高いです。日本人のヘッドスピードや筋力を考えると、もう少し始動を早めることが求められます。

<足の運び> 
☆☆☆

 ギリギリまでボールを引きつけて、小さく真っ直ぐ踏み出します。始動~着地までの「間」が短いですから、打てるボールは限られます。よほどボールを絞り込んで狙い球を決めて打たないと、この打撃で成功するのは難しいはず。外角の見極めが悪くなんでも振って来る彼のスタイルでは、今の動作では結果を残せないでしょう。

 真っ直ぐ踏み出すので、内角の球でも外角の球でも打ちに行きたいという、彼の意志が感じられます。実際にいろいろなコースの球には手を出しますが、ボールを引っ張りにかかります。その殆どは、空振りか引っ掛けて三遊間にゴロで飛んでゆきます。せっかく踏み込んだ足元はブレないので、右方向への意識が持てれば、対応力は変わって来るとは思うのですが・・・。

<リストワーク> 
☆☆☆

 あらかじめ捕手方向に、グリップを強く引いて構えます。この辺が、リストワークが固くなる要因で、打撃の柔軟性を損ねます。それでも始動の遅さを、「トップ」をあらかじめ作っておくことで、補おうとはしています。これは、春から改善されたポイントです。

 腰がいち早く逃げて、体から離れてバットが振り出されます。それを抑えこもうと、バットの先端を下げないように振り切ろうとするので、スイング横切りになります。無理なスイングのために、バットが波打ちより引っ掛ける打球が多くなるのでしょう。

 基本的に体には力がありますが、ボールを遠くに運ぶタイプではありません。あくまでも強い打球で、野手の間を抜けて行くタイプの強打者であり、それほど打球は上がりません。それでも最後の夏は、その強引な引っ張りで、新潟予選で3本塁打を放ちました。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げは小さいので、目線のブレは少ないです。早く逃げる腰に対し足元のブレがないので、開きをあるところまで抑えることは出来ています。しかし軸足の形が崩れるほどバランスを崩しており、好不調の波が激しいタイプ打者だと考えられます。

(打撃のまとめ)

 始動の遅すぎや、引っ張り専門のスイングのため、極めて打てる球は限られています。しかしボールを見極め選球眼やボールを絞り込むセンスにも欠けるので、こういった打撃も上手く行きません。

 ヘッドスピードのキレはイマイチですが、体に力はあるのでスイング自体に物足りなさは感じません。肉体的にも固く、ボールを捉えるセンスにも欠けることを考えると、プロでは打撃がネックになって大成を阻むのではないかと考えます。


(今後は)

 守備・走力の資質は悪くないので、首脳陣には打てなくても我慢して使ってもらえる可能性が高いのは大きいと思います。しかし改善が難しいほどの癖のある打撃と柔軟性に欠ける資質は、正直どうなのかなと思います。個人的には貴重な強打者タイプだけに大成してもらいたいのですが、かなり厳しいプロ生活になると予想します。


(2011年夏 甲子園)






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