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石川 慎吾(日ハム)のルーキー回顧へ




石川 慎吾(東大阪大柏原)中堅手 178/72 右/右 





              「平田良介(中日)を彷彿とさせる。」





 なんとなく、その体格・雰囲気は、大阪桐蔭時代の平田良介に近いものを、この 石川 慎吾 からは感じる。ただ平田の方が、もっと個性が強く、プレー一つ一つに気迫みたいな訴えかけて来るものが強かった気がするのだ。その分石川は、平田ほどプレーにアクが強くないという良さもある。今回は、そんな大阪屈指の強打者を、ご紹介してみたい。





(プレースタイル)

まだまだ粗さは感じさせるものの、全国屈指のレベルを誇る大阪において、高校通算55本塁打を叩き込んだ長打力に、アスリート系の高い身体能力が、この選手の魅力。

(守備・走力)

大阪予選の途中までは、背番号2をつけてマスクを被っていたが、予選後半からはセンターを守るようになり、甲子園でもそのまま中堅手として出場。ただこの選手、打球への反応・判断力はそれほどでもないが、落下点への入りは早く、球際での強さなど中堅手としてのポテンシャルは低くない。地肩も結構強いので、鍛えようによっては守備でもアピールできる強肩外野手になれる可能性を秘めている。けして急造外野手でもなく、経験もそれなりにあったのではないのだろうか。

走力に関しては、残念ながら正確なタイムは計測できなかった。ただその身のこなしをなどを観ていると、それなりに走力はありそうで全く動けないタイプではないはず。現に大阪予選の8試合でも2盗塁を決めているように、足を売りにするほどではないかもしれないが、基準を満たすだけの走力はあると観て良いだろう。

売りにするほどの走守があるかは微妙だが、持っている身体能力は、充分プロの基準を満たしていそうだ。



(打撃内容)

正直、ボールを捉えるセンスは、それほど高いとは思いません。その辺が、彼の粗く見える要因なのでしょう。ただ思いっきりの良さがあるので、投手が萎縮して甘い球を投げれば、それを逃さず引っ張ったく気持ちの強さは感じられます。また甲子園緒戦では、変則投手の緩い球を待ちきれず苦労していましたが、2打席目には打席の立ち位置を変えたりして、同じことを繰り返さない工夫が観られ、見事甘い高めのカーブをレフト前にはじき返し結果を残しました。一見ただの荒削りな強打者だと思いきや、意外に考えてプレーをしているなと言う印象は受けます。

また打球も、レフト方向に強引に引っ張るだけでなく、ライト方向にもはじき返すなど、意外に幅の広さがあります。だてに大阪予選の厳しいマークの中、打率.571厘の数字を残したわけではないようです。技術は粗いのですが、ボールを捉える嗅覚には優れたものを感じます。

<構え> ☆☆☆☆

スクエアスタンスで、グリップを高めに添える強打者スタイル。腰の据わり・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢も悪くありません。少し構えが硬いかなとも思えるのですが、強打者らしく雰囲気があります。

<仕掛け> 遅めの仕掛け

投手の重心が沈んで、前に移動する段階で始動する「遅めの仕掛け」を採用。これは、典型的な長距離打者が採用する仕掛けであり、将来的にも長距離打者になり得る可能性を秘めている言えるでしょう。この点は、長打力を売りにする彼にとっても、高く評価できるポイントです。

<足の運び> ☆☆☆☆

始動が遅い割に、足を回し込んでから踏み込んで来るので、どうしても動作全体が忙しくなり遅れがちになるのが、彼の一つの欠点です。もしこれだけの足の回し込みをするのであれば、幾分始動を早める必要性を感じますし、それをしないであれば、動作をもう少しシンプルすることが求められます。ようは対応力を取るか、長打力を重視するかの差だと言えるでしょう。

足を回し込んで踏み込んで来るのを観ていると、ベース側にインステップさせたり、真っ直ぐ踏み出したり、アウトステップさせたりと、結構自在に行っています。そのため意外に、いろいろなコースの球に対応できるタイプなのではないのでしょうか。また踏み込んだ足下がブレないので、外角の球でもカベを崩さず捌くことができています。意識さえすれば、ボールを手元まで引きつけて、右方向への打撃も行います。

<リストワーク> ☆☆☆

打撃の準備である「トップ」を作るのは、早めに作りしっかり形を作れています。ただ少しバットが遠回りに振り出されるので、ドアスイングと言うほどではないにしろ、内角の球をスムーズに捌くことができず窮屈に見えます。それでもしっかり振り切ったスイングの最後は、フォロースルーの段階でグリップが高い位置に引き上げられており、ボールを遠くに運ぶことができます。

けしてヘッドスピードが図抜けているとか、筋力が桁外れと言う感じは致しませんが、ボールを遠くに運ぶ資質を、すでに兼ね備えていると言えるでしょう。ただスイング軌道の粗さから、まだ打ち損じも少なくないようです。

<軸> ☆☆☆☆

足を上げ降ろすスタイルの割には、頭の動きは小さめで目線は安定しています。体の開きも我慢できていますし、軸足にも大きな崩れは感じません。見た目以上に安定した打撃が、期待できるのではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

ボールを捉えるセンスが、根本的に少し悪いのが気になります。しかしながら、打てないならば、次の工夫を行い、なんとか対処しようとする柔軟な思考は、長く野球に携わって行くには最も大切な要素です。

現時点では、驚くようなスイングはしませんが、仕掛けでの適正・フォロースルーの形などを観てみても、将来的に長打を売りにして行ける、非常に貴重な候補者だと言えるでしょう。高校時代スラッガーでも、上のレベルではそうなり得ない強打者が多い中、彼は、正真正銘の長距離候補です。





(最後に)

投手に向かって行く姿勢も良いですし、それでいて工夫を試みたり、状況に応じて打ち方を変えるなど柔軟な思考が打席でも観られます。

守備・走塁力でも基準を満たすだけのものがありそうですし、何より将来長距離砲になり得る貴重な素材であることがわかりました。少々プロの球への対応に時間がかかるかもしれませんが、ぜひプロで育てて欲しい素材です。なかなか面白い選手ではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆


(2011年 夏)