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高城 俊人(DeNA)捕手のルーキー回顧へ



 高城 俊人(福岡・九州国際大附)捕手 176/79 右/右





                「課題は、克服できたのか?」





 私は、選抜の時のレポートで、変化球ばかり打ち返す打撃と、高校からプロで飯を食って行こうと言う気構えが伝わってこないプレーはどうなのか?と二つの疑問を投げかけた。選抜から、その辺がどの程度変わったのかが、この選手の観戦ポイントだと考える。今回は、あえてこの二つのポイントを中心に、観て行きたい。

(ディフェンス面)

選抜のレポートでは、どっかり構え過ぎていて、次の動作にワンテンポ遅れることを指摘した。この夏でも、相変わらず、どっかりは構えていたものの、打球への反応も素早くなり、二塁までのスローイングも鋭くなっていた。春は、あれだけの地肩でありながら、塁間1.9秒台がやっとだったのだが、この夏では1.8秒台前半にまで到達。特にボールを持ち直すことが多かった癖も、かなり改善されている。そういった意味では、プレーへの意識が変わり、更に幅も出てきており、少しずつではあるが成長が感じられた。





(打撃内容)

一方打撃の方では、ドラフト候補として注目された 水原 浩登(関西)投手の外角のストレートを、見事ライト線にツーベースを放つなど、スピードボールへの対応にも問題がないことを証明。この試合では、終始・水原のストレートに狙い球を絞っていた。

この選手、この夏の福岡大会で見た試合では、変化球ばかりを打っている試合もあり、試合によって狙い球を変えて打席に入っているフシがある。打球も右に左にセンターへと、広角に打ち返しスタンドインできるパンチ力がある。この夏の福岡県大会では、0本 5打点 打率.261厘 と調子は良くはなかったが、4番の重責を見事果たして魅せた。


(打撃フォーム)

<構え> ☆☆☆

スクエアスタンスで足を揃え、グリップを高めに添える強打者スタイル。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスなども平均的。特に特筆べき点はないが、大きな欠点もないオーソドックスな構えだと言えよう。

<仕掛け> 早めの仕掛け  投手が足を降ろし初めて~一番底に到達する間に始動

これが、現在採用される仕掛けの中では、最も早い仕掛けとなる。打者が足を地面から浮かし~着地するまでの時間(間)が長いほど、打者はいろいろな変化に対応出来る可能性が広がる。そのためアベレージ打者は、この仕掛けを採用するケースが多い。

実際のプレースタイルをみていると、中距離タイプなのかな?と思っていたが、対応力を重視したアベレージ打者の傾向が強いことがわかった。ただ体が強いので、時にはスタンドインできるパンチ力も兼ね備えている。

<下半身> ☆☆

足を早めに引き上げて、まわし込んで踏み込んで来る。そのため「間」を作れており、いろいろな変化にも対応できる。変化球に合わせるのも上手ければ、ストレートを叩くこともできていた。

ただ残念なのは、足を引き上げている時に、膝を内側に入れてしまう癖があり、この膝の開閉が余計な動作となりタイミングを狂わす要因になっている。更にカカトを地面にめり込ませて足のブレを防ごうとするが、それが我慢できずにブレてしまっているケースが多い。すなわち体の開きが我慢できないで開きが早くなったり、インパクトのエネルギーを損なっていることが多いのだ。

ボールを捉えるセンスも悪くなければ、ヘッドスピードなども鋭いのに、こういった打ち損じが多いのは、なんとも惜しい選手。もちろんこの部分は、今後充分に修正可能だと考える。

<上半身> ☆☆☆

打撃の準備段階である「トップ」の形を作るのは、けして遅れていない。これにより、速い球に振り遅れる心配は少ない。バットを寝かせながら振り出す、レベルスイングを心がける。ボールに対し、広く対応しようと言う意識が感じられる。インパクトの際のボールの押し込みもよく、最後まで力強く振り切れている。

物凄く柔らかいとか、ロスがないとか言うミートセンスの非凡さも感じないし、抜群のヘッドスピードやパワーの凄みは感じられないものの、適度にバランスの取れた理に適ったスイングはできている。

<軸> ☆☆☆

足の上げ下げをするものの、静かなフォームなので目線のブレは小さい。残念なのは、体の開きが我慢できず、基本的に引っ張る打撃を得意としている点だ。勿論右方向への打撃もできるし、まるっきり外角の球が捌けないわけえではないのだが・・・。軸足には強さを感じさせ、打球の強さを裏付けている。

(打撃のまとめ)

足下のブレや膝の閉めなどを改善できれば、打ち損じも減り打率も上がって来るだろう。特にA級の打力の持ち主ではないが、九州屈指の強力打線である九州国際大附の4番を座ってきた経験と資質は、打撃の部分でも捕手として合格ラインだと評価できそうだ。





(最後に)

個人的には、捕手としてのセンスよりも、肉体の資質に勝ったタイプであり、あまり好みのタイプとは言えない。しかし春よりも意識の向上がみられ、欠点の改善にも努めてきた。

何よりプロでも武器になるであろう強肩の持ち主であり、打撃も一定レベルの能力がある選手。あとは、本人がいかに自分のプレーを膨らませて行こうと言う意識を持って取り組んで行けるのかだろう。攻守のバランスを考えると、全国の高校生でも屈指のレベルにあり、高校からプロに入るべき選手だと言う結論に至る。春からの成長は認めるが、評価はそのまま据え置きと言うことで、最終的な評価とさせて頂きたい。


蔵の評価:☆☆


(2011年夏 甲子園)



 








 高城 俊人(福岡・九州国際大附)捕手 177/79 右/右





「持っている男!」





 センバツ大会の前から、九州NO.1の強肩捕手として注目されていた 高城 俊人 。各校からも厳しくマークされる中、甲子園初打席で、いきなりライトスタンドに叩き込んで魅せた。 まさにこの「持っている男」の将来像について考えてみたい。


(何を持っているのか?)

 全国的にみても、九州の高校球児の肩の強さは、他の地域と比べても明らかに強肩揃い。そんな九州において「NO.1の強肩」と評される 高城 俊人は、プロでも自慢できるだけの強い肩の持ち主。まず「捕手は肩」と言われるプロの世界において、最大の武器を持っている。

 高城の昨秋までの課題は、全国レベルを意識した時の粗い打撃にあった。しかしセンバツ大会では、大会屈指の強力打線を誇る九州国際大附属の打線の中でも、4番と言う重責を担いながら結果を残し続けてきた。まさに一冬を越えて、全国レベルの打撃を身につけるまでに成長。守るだけでなく、打てる捕手と言う新たな魅力を見出した。






(守備面を考える)

  捕手に求められる資質は、打撃よりも守り。それならば、もう少し彼の捕手としての力量を考えてみたい。一球一球の投手への返球も、実に力強く投げ返す。この投手とのやりとりだけを見ていても、この選手の地肩は、相当強いのだろうと言う印象を周りに植えつける。常にランナーへの目配せも怠らず、常に相手を牽制。こういったことを繰り返すことで、対戦相手から盗塁と言う選択肢を奪い取る。

 最近の捕手にしては珍しく、どっしりと座り構える。ミットの存在を投手にしっかり示すことで、投手は目標に向け投げやすくなる。ボールを捕球する際にも、ボールの勢いに負けないようにミットを押しこみボールの存在を示すことができるので、審判からストライクのコールを導きやすい。そういった周りの人間がどう感じるか、常に意識してプレーできることが、彼の捕手としての可能性を強く実感させられる。

 好投手である三好匠の持ち味を存分に活かす配球も、高校生としては非常に考えられたリード。スローイングも地肩の強さに頼ることなく、しっかりした形で投げられる。そのため安定した球筋で送球され。受け取る野手も素早く滑り込んでくる野手にタッチしに行ける。類稀な強肩に加え、常に相手のことを察しながら、理にかなった技術でプレーする。そんな一見文句なしの逸材かと思いきや、不安要素が全くないわけではない。

 それは、どっしりと腰を落として構えるために、次の動作への動きがワンテンポ遅れる。これだけの地肩がありながら、二塁ままでのスローイングタイムは1.9秒台(プロのレギュラー捕手ならば1.8秒台)なのは、0.1秒を争うプロの世界では物足りない。ただこの傾向は、スローイングに限らず、ワンバウンドの際の打球処理や、打球への一歩目の反応など、瞬時の判断が求められるプレー全体に見られる傾向なのだ。まだまだプロと言う、最高峰の野球を考えると、改善点は少なくない。

 こういったことは、天性の才能に依存すると言うよりは、日頃の野球への意識や集中力によるところが大きい。彼のプレーには、何処かプロで飯を食うんだと言うギラギラした闘争心や切羽詰った緊張感に欠ける気がするのだ。けして野球への意識が低い選手だとは思わないが、こういった選手がプロに入っても活躍するまでには時間がかかる。特に覚えることが多い捕手と言うポジションであることを考えると、この部分は大いに気になる材料。






(打撃内容)

 今大会で一躍評価を上げたのは、打撃の部分。特に上手く変化球に対し、ボールを引きつけて叩くことができている。以前のような、変化球にタイミンが合わないと言う、脆さを感じさせることはなくなった。その一方で、ヒットを打っている球のほとんどは変化球ばかり。ストレートに関しては、ファールにしてカットしたり、最初から打つことを捨てている印象さえある。もし本当に、ストレートへの対応を苦手にしているのならば、打撃の評価も考えねばならない。


(打撃フォーム)

 それが本当なのか考えるには、打撃フォームを分析してみることが不可欠だ。足を早めに引き上げ回しこむタイプであり、いわゆる「間」が作れるフォーム。そのため様々な変化に対応しやすい動作であり、上手く変化球を捉えていることも頷ける。

 問題は、速い球を苦手としているのかと言う部分。しかし打撃の準備である「トップ」の形をいち早く作れており、スイング軌道にも大きな欠点は見あたらない。少なくても技術的な観点からすれば、けして速い球を苦手にする理由はないように思える。ただ本人の意識の中で、甘い変化球を逃さない、臭いコースのストレートはカットする、このボールの絞り込みを徹底しているのだろう。そういった割り切りができるからこそ、センバツでの活躍に結びついているのだ。



楽天


(プロでの将来像を考える!)

 細かい部分にまで気を配らせ、常に他者を意識したプレーができる選手。そのため、考える力やプレーへの意識が低い選手ではない。非凡な才能だけに頼ったプレーヤーとは、けして言えない。

 ただ文中でも触れたように、野球で飯を食って行こうと言うようなギラギラしたものは感じられず、そういった意識が変わるまでには、プロでも少し時間がかかるタイプなのではないのだろうか。また打撃でも、プロのスピードに何処まで対応できるのかと言う疑問は、けして拭い去ることはできなかった。

 素材としては、非常に攻守にバランスの取れた稀な存在だと評価する。すでに選抜の時点で、ドラフト指名確定的な評価を下しても好いのではないのか?ただ更に夏までに評価を高めるためには、先にもあげたプレーでの執着、スピードへの対応などに改善が見られることが、一つ条件になると考える。それを成し遂げることができた時、彼は高い評価でのプロ入りを実現するだろう。いずれは「持っている男」として、プロの世界でも多くの勝利に貢献して行く、そんなプレーヤーに育つのではないかという期待を抱かせてくれる男だった



この記事が参考になったという方は、ぜひ!


蔵の評価:☆☆



(2010年 選抜)