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吉本 祥ニ(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ



 吉本 祥二(足立学園 3年)投手 186/75 右/右
 




            「吉本 祥二 は 何処へ行く!」





「下町のダルビッシュ」と異名をとる 吉本 祥二 を、昨年から何度も見てきた。今年は、春季東京都大会、6月の東京都選抜での投球、そして最後の夏の東東京予選と3度の生観戦。それを元に、東日本NO.1の投手と言われる男の将来像に迫ってみた。


(投球内容)

スラッとした体型が目を惹く体型から、軸足にタメを作ることなく一気に投げ込んで来る投球フォーム。わかりやすくいえば、「イチ・ニ・サン」のタイミングで投げ込んで来るので、「イチ・ニ~の・サン」の「ニ~の」のタメがない投球フォームということになる。

ストレート 常時140キロ台~MAX91マイル(145.6キロ)

一番速かったのは、6月の東京都選抜代表として登板した、アメリカ代表・アーバンユース戦だった。この試合は2試合行われ、その第二戦の先発を任された。あらかじめ投げるイニングが決まっていたので、スタミナの温存を計らず前半から飛ばした。球速はコンスタントに90マイル(144キロ)前後を記録し、春季大会の時よりも球威・球速をワンランク増した印象を残した。もし神宮のスピードガンだったならばコンスタントに140キロ台後半を記録し、場合によっては150キロをも計測したかもしれない。

この選手のストレートは、手元で伸びるとか、ピュッと切れるとかいう、空振りを誘える球質ではない。あくまでもミットにバ~ンと勢いよく突き刺さる感じのストレートで、打者の空振りよりも詰まらせるタイプのストレート。春からの成長は、かなり右打者外角にきっちりボールを集めることができ、安定した制球力にあった。

ただ彼の球は、球速表示ほど、打者は合わせるには苦労しない。その証に春季大会では、創価高校に二巡目からは完全に捉えられ、MAX148キロも記録した(私のガンでは89マイル・142.4キロ止まり)と言われる、都立桜町戦でも、都立の打者達に苦になく合わされる場面が目立った。少なくても現時点では、強豪私立校ならば充分に対応できるレベルのストレートだったと言えよう。それでも甲子園に登場していれば、常時145キロ前後~140キロ台後半の球速で、大いに話題にはなっていただろう。

変化球 スライダー・カーブなど

2年生の夏には、チェンジアップのような球も投げていたように記憶する。しかし最終学年では、その殆どが横滑りするスライダーとのコンビネーションに変わり、ストレートを使う割合が増えてきた。たまにカーブを交えることはあるが、非常に単調なピッチング。そのスライダーも、それほど打者の空振りを誘うほどのキレもなく、あくまでもストレートとのアクセントやカウントを稼ぐレベルに留まっている。そのためストレートのコントロールが甘くなると、それを狙い打たれることになる。

その他

クィックなどは、1.1秒台と基準である1.2秒よりも素早く投げ込める。そのせいなのか?鋭い牽制をあまり見せることはなく、ランナーへの警戒は薄い。またフィールディングなども、けして上手い選手とは言えない。そういった投球以外の部分が、ドラフト候補としては物足りない。

下級生の時は、ランナーを背負って嫌な間合いになると、パッとマウンドを外したりできていた。また一つ一つの動作が、投手らしく決め細やかさが感じられた。しかし上級生になり、肉体の成長に伴い、そういった投手らしい細やかさが薄れ、非常に単調なプレースタイルに変わった。スピードの魔力にとりつかれ、投手として大事なものを蔑ろにしてきたのではないかと不安になる。

(投球のまとめ)

その投球を見ていても、あくまでも大雑把に内外角に投げ分け、相手を詰まらせて打ち取る投球スタイル。右打者の外角クロスへ投げ込む制球は確かだし、そこに行く球は素晴らしい。その反面、キャッチャーが内角に構えても、内角を攻めきることはできず、中に入ったり、大きく高めに抜けたりする。スライダーも抑えが効かないときは、スッポ抜けたり、早く曲がり過ぎて地面にワンバウンドしてしまったりと制御できなくなることがある。

また一番気になるのが、いつも投球のリズム・攻めのパターンが同じで、同じような形で相手打者に打たれるのだ。普通は、前の打席、前の打者が打たれたようなパターンは避けようとするのだが、機械のように同じリズムで淡々と投げ込み、同じ球を打たれる。この創意工夫の無さは、一体なんなのか?同じように打たれる姿は、最後の夏まで続いていた。

これはもう、持って生まれた資質なのではないか?これから指導しても、改善できないのではないか?そんな不安さえ、私には思えてしまった。技術的に未熟とかそういった以前に、そういったことを疑問と思わずプレーを続ける姿に、私は大いなる不安を覚える。





(明るい兆候)

ここまでは非常に厳しいコメントが続いたが、この選手の可能性を見いだせる部分もある。それは、試合の中でも、誰よりも早くグランドに入り、投球練習の体勢に入るという前向きなプレースタイルにある。また投球もそうなのだが、常に手を抜かないで全力でぶつかって来る。この選手のそういった野球への取り組みは、非常に評価できるポイントなのだ。だからプロ入り後も、どんどん伸びてゆくのではないかという期待は抱きたくなる。

(ただ・・・)

そんな彼が、何故同じ過ちを繰り返し、自分の投球を膨らませてこられないのか?という疑問にぶつかる。まだ味方のミスや打たれたりすると、明らかに表情が変化するなど、起伏の激しいところも垣間見られる。マウンドで一定のリズムを刻んで投げているようだが、実はまだまだ精神的に不安定な高校生なのだ。

そして気になったのが、この夏の大会の一場面。彼は試合前に、ベンチ前でキャッチボールをして肩慣らしをしていた。そんな時に、応援に来ていたクラスメイトか控え部員だかと、グランドと客席で話しているのである。そういった言葉が、一言二言あるのはいたし方ない。しかしそれが、長時間に渡ってず~と話しているのだ。

それを本人が疑問と思わないのもどうかと思うが、周りの部員や指導者達も咎めることなく試合前に行っているところに、彼のいる野球環境がどんなところか推し量れてしまうのだ。彼が、同じ過ちを繰り返し、その資質を膨らませてこられなかったのは、彼自身に何が悪いのか気がつく意識がないのに加え、その資質を膨らませるだけのヒントを与えられる周りの環境や指導者がいなかったことも大いに原因があるのではないのかと思うのだ。このことは、しっかり指導されている野球部では、けして起こりえない光景だった。

(最後に)

確かに彼は、東日本で最も速い球を投げる投手かもしれない。しかしその反面、そのストレートを活かすことができていない投手だとも言える。これは、これからしっかり指導して行けば、いくらでも改善できると考えるのか?それとも、そういった体に染み付いたものは根本的なものであり修正は難しいかと考えるかで、その評価は別れると私は考える。残念ながら私の考えるは、後者の方だと言わざる得ない。

ただ春~6月の短期間の間に、目に見えて球威・球速を増してきたことは確かであり、その点は評価してみたいポイント。今後もその成長力を続けることを期待して、春よりはワンランク上の評価はしてみようと思った。最後の夏が不甲斐なかっただけに、6月の東京都選抜の試合を見て確かな成長を確認できたことは、私には彼の将来を推し量る意味では大きかった。周り流されることなく、自分というものを持って頂きたい。そういったものしか、けして生き残ることができない世界。それがこれから、君が進もうとしているプロ野球なのだから。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2011年夏 東東京大会)






楽天



 
 「下町のダルビッシュ」と異名を取るプロ注目の大型右腕。春季東京都大会で観た時も、ほとんどのストレートが140キロを超えて、89マイル(142.4キロに到達。しかしこの試合では、更に球速を伸ばし、MAX91マイル(145.6キロ)まで記録するようになり、他のスカウトのガンでは148キロまで記録したものもあったと言う。確かに更にワンランク、春季の大会の時よりもボールの勢いが増しており、また外角へのコントロールも安定してきたように思える。

 右打者には、内外角を投げ別け、外角に横滑りするスライダーで討ち取るオーソドックスなパターン。それほどまだ有効ではないが、フォークを結構多く交えるなど、単調なコンビネーションの修正に取り組んでもいるようだった。その一方で左打者には、ストレートを両サイドに投げ別けるだけの内容。ただ制球に大きな乱れはなく痛打を浴びることはなかった。

 ただ単調なコンビネーションや「間」を意識すると言う概念はまだないが、今は力で相手を圧倒すると言う投球スタイル。その力で仕留められないであろう全国レベルの打線相手に対峙した時に、どのようなピッチングができるのかは微妙なところ。特に夏は消耗戦だけに、ここまでのパフォーマンスをいつも見せられるわけではない。やはり大会後半戦になると、勝ち上がるのは苦しいかなと言う印象は残る。それでも春先は、最下位指名あたり~育成枠ぐらいだろうといった内容だったのが、ワンランク評価を上げても良い内容になってきた。「東のNO.1」とは恐れ多いが、ドラフト指名をほぼ確実にした試合だったのではないのだろうか。

(2011年6月 東京都選抜VSアーバンユース戦)







 吉本 祥ニ(東東京・足立学園)投手 186/75 右/右
 




                 「スカウト集結!」





4月初旬・春季東京都大会。江戸川球場には、12球団30名以上のスカウトが集まる注目の選手がいた。その男の名前は、 吉本 祥ニ 。スカウトの誰もが注目する、関東を代表すドラフト候補だ。


(投球内容)

投球フォームにタメがなく、スラッとした長身から一気に投げ込んで来る投球フォーム。

ストレート 130キロ台後半~MAX89マイル(142.4キロ)

ビシッとミットに突き刺さるストレートの威力には、超高校級の片鱗が感じられる。球速は、常時140キロ前後を刻んでおり、私の厳しめのスピードガンでも89マイルをマーク。翌日の新聞には、MAX146キロまで記録したスカウトのガンもあったとか。ただ普段、大学生や社会人、ファームの選手たちの球を見られている人間からすれば、やはり高校生のストレートの域は脱していなかった。勢いは感じられても、手元までの伸びやキレと言うものに欠け、全国レベルの学校ならば打ち返せるレベルの代物。現にこの試合、対戦相手の創価高校は、この球を苦になく打ち返して行く。

変化球 スライダー

この試合を見る限り、変化球は、打者手元で横滑りするスライダーのみ。そのためストレートとスライダーと言う、非常に単調な投球に陥っていた。そのスライダーも、打者の空振りを誘うと言うよりは、ストレートとの緩急やカウントを稼ぐ程度の球で、決め球と言うほどの心つよさは感じない。

その他

クィックこそ基準である1.1秒台を安定して叩き出し投げ込むことができていたが、牽制などにさほど鋭さはなく、ランナーに対する目配せもイマイチ。それだけに、まだまだ走者に対する意識に甘さを残している。


(投球のまとめ)

ただ力のあるボールを、ストライクゾーンの枠の中に投げ込んでいるだけといった内容。投球フォーム・投球間隔が常に一定で、「間」と言うものを意識できていない。特にランナーを背負いセットポジションになると、身体がツッコミ、余計に開きが速くなる。そのためボールが一段と見やすくなり、打者としては的が絞りやすい。

また制球力がアバウトで、ボールのバラつきも目立つ。甘い球も少なくなく、全国レベルの相手ならば、それを捉えることは充分可能。そのため投球センス・制球力・変化球はまだまだで、コンスタントに140キロ台出せると言う素材としてのポテンシャルを評価するしかない。

ただこの単調なフォームや攻めを補うために、右打者のインハイ中心に厳しい投球ができるのが特徴。この部分は、素直に評価して好いのではないのだろうか。






(野球への意識)

この選手で関心させられるのは、ナインの誰よりも早くグランドに入り、投球練習に入ろうと言う姿勢が垣間見られること。そういった姿勢の良さは、あえて意識的に普段から行っているのだろうから、野球への姿勢の高さが伺われる。また最後まで手を抜かないプレースタイルにも好感。

ただ味方のミスや打たれたりすると、明らかに表情が変化するなど、起伏の激しいところも垣間見られる。マウンドで一定のリズムを刻んで投げているようだが、実はまだまだセルフコントロールには課題を残す。

この試合を見る限り、起伏の波は感じられても、けして手を抜かない生真面目な性格が伺える。ただ少し頭が固いと言うか工夫に欠けるため、いつも同じリズム・同じ投球パターンを繰り返すので、同じような形で打たれ続けている。そういった危険回避をする術に欠け、引き出しの少なさを広げて行けるのかが今後の課題だと言えよう。

(投球フォーム)

足をピンと伸ばした時に、比較的高い位置でピンとは伸ばせている。そのため、一塁側へのお尻の落としは悪くない。ただまだ着地までの粘りにも欠け、実に着地まであっさりとしてしまっている。そのためお尻を一塁側へ落とせていても、将来的に見分けの難しいカーブや縦に鋭く落ちるフォークが修得できるとは限らない。もう少し引き上げた足を突っ込まないように、二塁側に軽く送りバランスを取るべきだろう。

グラブをしっかり内で抱えられていないので、外に逃げようとする遠心力を抑えきれず、ボールが暴れて球筋が安定しない。足の甲での地面の押し付けも浅いので、どうしてもボールは上吊りやすい。

体の「開き」自体は早くはないが、「着地」「球持ち」には課題があり、「体重移動」も充分とは言えない。フォーム全体に言えるのは、粘りがないと言うこと。股関節の鍛錬や下半身の強化でもっと粘れるようになれば、グッと実戦的な投球も期待できそうだ。


(最後に)

現状は、ただ速い球を投げることができる高校生と言った印象しかない。実際その投球には、タメだとか粘りとかいう時間的概念が全くなく、速い球を投げ込むことだけに終始している。

投球のバリーエーションも不足しているだけでなく、制球力などにも大きな課題がある。こういった欠点を、長い目でみて払拭して行けるのかが評価のポイント。

ただ実際にその所作を見ていると、野球への姿勢の前向きさからも、まだまだ野球が球が速くなって行く可能性は大いに秘めているだろう。ただ意外に若い割に、少し頑固と言うか頭が固いところがあり、そういった新しいものを吸収して行ける素養があるかと言われると、個人的には少し疑問に思えてくる。そのため球速を上げてのスケールアップは期待できても、投球を組み立てたり、試合をまとめたり出来る投手になれるのかには疑問が残る。

正直昨夏と比べてどうなのか?と言われれば、球の威力は増すことは出来ているものの、根本的には大きくは変わっていないかなと思えて来る。個人的には、ドラフト順位でも最下位での指名~育成枠ぐらいの評価が妥当、そんな印象をうけている。夏までに、どこまで引き出しを増やしてこられるのか?そのあたりで、最終評価は定まって来ることになりそうだ。春の時点では、多大な評価をできるだけの内容では、けしてなかった気がする。


蔵の評価:


(2011年 春季東京都大会)






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吉本 祥ニ(東東京・足立学園)投手 186/75 右/右

 手足の長い投手体型。軽く投げている感じでも(実際には体幹が弱いのだろう)、コンスタントに140キロ近い球速を連発。中盤以降も135~MAX88マイル(140.8キロ)を記録するなど、その潜在能力の片鱗を魅せてくれた。

 まだ身体の芯ができておらず、球速はあっても球威に欠けるのは残念。それでもカーブ・スライダー・チェンジアップなどを織り交ぜる多彩な球種の持ち主。両コーナーに投げ分ける制球力もあるが、球威のない速球が高めに浮いたところを、修徳打線は見逃さなかった。またフィールディングがいただけないので、その辺が改善して来ると好いのだが・・・。

 ピンチでも冷静にパッとマウンドを外せる投球センス・いち早くマウンドに向かう野球への姿勢・きめ細かい動作に、投手らしさを感じさせるなど、まだまだ伸びて行ける可能性を感じさせてくれる選手。秋以降は、東京都を代表する投手として、益々注目される素材ではないのでしょうか。身体がビシッとしてきたら、来年のドラフト候補として面白い投手だと思います。

(2010年・夏)