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白根 尚貴(ソフトバンク)内野手の藁をも掴むへ







白根 尚貴(ソフトバンク)内野手のルーキー回顧へ



白根 尚貴(島根・開星)投手 186/98 右/右 (野手編) 
 




                      「ジャイアンはね」





 見た目のごつさや風貌から想像できないような、きめ細やかさと器用さがある選手。そんな印象を投打から受けた。今回は、投打に非凡な才能を持つ彼の才能において、野手としての可能性について考察してみたい。


(打撃内容)

 その巨体から繰り出されるパワーは、規格外。昨夏の甲子園でもホームランを叩き込みました。この夏の島根予選でも3本塁打、場外へ越えていった打球は圧巻の一言。ただパワーがあるだけでなく、右方向にも上手く合わせたり、変化球について行ける柔らかさも兼ね備えます。規格外のパワーに、上手さも兼ね備えた超高校級の打者であることは間違いありません。では今度は、技術的な側面からも観てみましょう。

<構え> 
☆☆☆

 両足を揃えた、スクエアスタンスで構えます。腰の据わり具合はよく、全体のバランスも悪くありません。ただ、両目で前を見据える姿勢はもう一つ。昨年もそう思ったのですが、柔らかいハンドリングを魅せるものの、この選手、体自体は硬い気が致します。打席では力みこそ感じませんが、自分のリズムで立っていると言う感じは致しません。意外に強打者にしては、受け身の性格なんだなと思います。

 体が固いと、低めへの対応も厳しいですし、故障の可能性も高くなりますね。そのことを強く認識して、試合前から入念なストレッチなどをする習慣を身につけたいところです。

<仕掛け> 遅すぎる仕掛け 投手のリリース前後に始動

 多くの欧米人やキューバ人などは、このタイミングで始動する。狙い球を絞って、打てる球を引っぱたく、そんなスタイル。ただこのようなスタイルは、非常に脆く打てる球は限られる。

 また始動~インパクトまでの時間が極端に短いので、スイングに不可欠な動作を端折ることで、インパクトを間に合わせようとすることになる。それでも打ててしまう欧米人のヘッドスピードと筋力の強靱さは、残念ながら日本人には真似出来ない。日本人の場合このタイミングでは、プロレベルの投手を相手には通用しないと私は考えてている。ただし、もしこのタイミングの始動を使いこなす日本人が現れた時、パワーで世界のスラッガーと対峙出来る存在になっているだろう。

 白根の場合、規格外のパワーがあるので、これでも高校生レベルならば対応できた。ただプロを想定するのならば、根本的にこの始動の遅さを改善しないと苦しいだろう。一回戦の柳井学園戦では、ストレートに狙いを絞ったものの、結果が伴わなかった。2回戦の日大三戦では、ことごとく吉永の変化球に合わせ結果を残した。これは、単なる偶然ではなく、全国レベルのスピードに対しては、今の仕掛けだと遅すぎて苦しいからだ。

<足の運び> 
☆☆☆

 始動が遅すぎるために、足を軽く浮かし踏み込むだけ。そのため「間」がないので、その打撃は「点」のスイングになる。打てるポイントが限られるために、あらかじめ狙い球を絞って、その球を逃さない鋭さが求められる。そういった甘い球を逃さない「鋭さ」は、この選手に備わっている。

 アウトステップするので、元来は引っ張って巻き込む打撃を好むタイプ。上手く引っ張り込めた時は、桁違いなパワーを発揮する。それでも踏み込んだ足下がブレないので、外角でも真ん中~高めの球ならば対処できる。日大三戦では、バットに当てただけの打撃が目立ったが、あれは彼のミートポイントの高さも光ったものの、金属バットだからこそ、当てただけでも抜けていったと言えるであろう。そう打てるポイントが限られ、外角低めの変化球に対しては、しっかり振り切るスイングができない。あの打撃をみると、それがハッキリわかるのだ。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備段階である「トップ」の形を作るのは、少し遅れている。ただこの選手、トップ自体を深く取ってスイングする選手ではないので、中途半端な形から振っても、そのパワーでヒットにしてしまう。ただこれは、木製バットでできる芸当ではない。ちゃんと形を作らないまま振り出しても、間に合わせるという中途半端な器用さがこの選手にはある。

 また腰の逃げが早く、体から少し遠回りするスイングは相変わらずで、昨年からフォームは変わっていない。スイングの弧は大きくはないのだが、強引なまでフォーロスルーを活かし、上手く巻き込めた時は特大のホームランを放つ。

 甲子園優勝投手である、吉永レベルの投手相手でも、臆することなく対応していたように、技術云々を越えてボール捉える能力には優れたものがある。ヘッドスピードは際だたないが、圧倒的なパワーで細かい欠点を凌駕できるポテンシャルはまさに規格外だと言えよう。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げが小さいので、目線のブレは小さいはず。腰の逃げ早いのは気になるが、足下が盤石なので、ある程度のところで開きを我慢できる。軸足にも大きな崩れはなく、波の少ない打撃ができるタイプなのだろう。

(打撃のまとめ)

 遅すぎる仕掛け、腰の逃げの速さ、やや遠回りなスイング軌道など、打撃に関しては、昨夏と全く変わっていなかった。少なくても本人の中では、それ程打撃を高めて行こうと言う意識は、この一年の中で無かったのだろう。

 甲子園では、金属バットの恩恵もあって、中途半端な当てただけのスイングでも結果が伴った。それを可能にしたのは、彼の芯で捉えられるセンスと非凡なパワーがあったからだろう。ただこれが、木製バットでプロの投手相手にできるものではないことも、また覚えておきたい。


(守備・走塁面)

 この選手、まず本気で走り抜ける場面にも出くわさないで、正直どの程度の脚力があるかはわからない。ただ観る限り、本気如何に関わらず、足が速いようには見えないし、走塁への意欲も全く感じない。プロで足を売りにするということはまずないだろう。

 フィールディングなどでの動きや、身のこなし、クィック動作などを観ていると、全く動けない選手ではない。ただプロでの守備位置は、一塁かDHに限定されてしまう。それでも和製大砲が欲しいと言う球団が、評価することになるのではないのだろうか。


(野球への意識)

 この選手、見た目の豪快さはあるが、かなりきめ細やかで、受け身な性格との印象を受けます。圧倒的なパワーから、和製大砲としてのニーズの方が高いと思いますが、性格的には典型的な投手タイプだと評価します。

 更にウエートコントロールだけでなく、技術的にも、この一年間全く改善のあとが観られなかったことを考えると、野球への意識が高い選手には思えません。これから本気で野手に専念すれば、大きな変化も望めるかもしれませんが、高校からプロに行く選手にしては、あまりに欲がありません。そういう部分では、よほど周りが上手く導いて行かないと、物凄く時間がかかるか、その才能が開花する前に球界を去ることになるのではないのでしょうか。


(最後に)

 持っている才能は、投打共に間違いなくプロ級だと思います。しかし「心技体」のバランスで考えれば、技術や精神的な部分では、正直どうかな?と思います。少なくても現時点では、野手と言うふうには私には捉えられません。投手として目が出なかった時に、本人がどのぐらい野手で「飯を食っていってやろう」そういった気構えにならない限りは、野手として才能が開花することもないのではないのでしょうか。

 現時点では、野手・白根 で観た場合は、私は指名リストに載せることはありません。次回は、投手・白根としてのレポートを作成したいと思います。



(2011年・夏)











白根 尚貴(島根・開星)投手 186/98 右/右 (投手編)
 




                      「とっても繊細!」





野手編に引き続き、今回は、投手・白根 尚貴 を考えてみたい。野手編にも書いた通り、この選手は、見た目の豪快さとは違い、きめ細やかや一面がある。そのためタイプ的には、典型的な投手の性格だと言えよう。


(投球内容)

 ワインドアップから、足の横幅をしっかり取り、ゆっくりと静かに足を引き上げて大人しく入ってくる。巨体を生かして投げ込んで来るが、少し肘の下がったスリークオーター。

ストレート 常時140キロ台~MAX147キロ

 重い剛速球を投げ込んでくるイメージがあるが、意外にその球質は、キレ型の快速球。少し肘が下がるので、微妙にシュート回転したり、横の変化が加わることが多い。確かに球速能力は高いのだが、それほど打者としては苦にならないタイプの球ではないかと思うのだ。

変化球 スライダー・フォーク・ツーシーム

 少し曲がりながら落ちるそのスライダーは、曲がりが速すぎて精度が高いとは言い切れない。またフォークと言っている球も、腕が下がって投げるのでストンとは落ちずチェンジアップのよう。2回戦からは、意識的にツーシームを交えてきたが、まだこの球も充分コントロール仕切れているとは言い難い。まだどの変化球も、狙って空振りが取れるほどのキレやコントロールには欠け完成度は低い。

その他

 その巨体でも、フィールディングや牽制技術は、けして低くない。またクィックも1.0秒台を切るような超高速クィックで投げ込んで来る。大型だが、動作が緩慢な選手ではない。

 時々甘い球もあるが、大まかにコースに散らす制球力がある。パッとマウンドをハズしてみたり、その所作は投手らしい一面を覗かせることが多い。ただそれでも微妙な出し入れができたり、間合いを意識した投球に心がけるとか、そういったハイレベルなレベルまでには、現在はまだ至っていない。

(投球のまとめ)

 コンスタントに145キロ前後を刻めるエンジンの大きさは、まさにドラフトレベル。しかし変化球の生かし方、速球の質、総合力と言う意味では、現時点では図抜けているとは言い難い。それだけに、今後いかに自分の資質を膨らませて行けるのかが、彼の大成の大きなポイントになりそうだ。

 ただ気になるのは、自分の投球が思い通りにならなかった時に、やや集中力を欠く一面が見られること。また勝負に賭ける気迫も物足りなく、精神面に不安が残る投球内容だった。



(投球フォーム)

彼の将来性を推し測る意味でも、投球フォームについて考えてみる必要がありそうだ。

<広がる可能性>

 やや二塁側に足を送りつつ、一瞬ではあるが足を高い位置でピンと伸ばしている。少し甘さは残るものの、一塁側にお尻を落とすことはできている。そのため見分けの難しいカーブで緩急を利かしたり、縦に鋭く落ちるフォークのような球の修得は、けして不可能ではない。

 しかしそのためには、「着地」までの粘りを作り、もっと体を捻り出す時間が必要になる。現在は、その粘りがないので、どうしてもスリークオーター気味のフォームにならざる得ない。そのため腕を高い位置から振り下ろすのも難しい。この腕の角度がないと、カーブを抜くことも、フォークをストンと落とすことも難しいと言えよう。そのため現状の腕の振りでは、スライダー・チェンジアップなどを中心に、球速のある変化球で投球を組み立てるしかなくなっている。フォームを変えて行かないと、投球の幅を広げて行くことは難しそうだ。

<ボールの支配>

 グラブは最後まで内に抱えられているので、両サイドへの投げ別けはできている。ただ足の甲での押しつけができず、上体が浮いてしまいストレートが上吊ったりと安定しない。それでも「球持ち」が結構いいので、指先まで力を伝えることでボールをコントロールできるタイプ。更に指先の感覚を磨けば、将来的には高い精度の制球力は期待できよう。ただ不安定な下半身を安定させ、足の甲で押しつけられるぐらいの重心の沈みは身につけたい。

<故障のリスク> 

 体の捻り出す時間が確保できないまま、フォークやツーシームを多投する投球になると、恐らく肘を故障する大きな要因になるだろう。腕を振り下ろす角度には無理がないので、現状は肩への負担は考えにくい。下半身で投げるフォームではなく、上半身を振ることで投げているため、体への負担はけして少なくないはず。充分なアフターケアに注意しないと、大きな故障に見舞われる可能性は否定できない。

<実戦的な術>

 「着地」までの粘りに欠けるので、どうしても打者からはタイミングが合わせやすく淡泊な印象を受ける。またその弊害で、体の「開き」も早くボールの出所が見やすい。そのため甘くないコースを突いた球でも、打たれてしまうことが多いのだ。

 腕も体に巻き付くほどは強く振れていないので、速球と変化球の見分けもされるかもしれない。更に下半身の重心移動が上手くできていないので、投げ終わったあと大きく一塁側へ倒れ込む。彼が巨体の割に、球威のある球が投げられないのは、上手く重心を乗せられていないからだ。あくまでも上半身や腕を振って、キレを生み出すことしかできていない。

(投球フォームのまとめ)

 「着地」「開き」「体重移動」と言う、実戦的なフォームを司る上で大切な技術に課題を残す。足の甲の押さえができないのは気になるが、「球持ち」が良いので将来的にもっと制球力を高めることは可能だろう。

 ただ足の甲の押しつけによる下半身のエネルギー伝達から始まり、下半身の弱さや「体重移動」の未熟さなどで、思いの外速い球が投げられる可能性が低いのが気になる要素。見た目の豪快さの割に、それを支える下半身が極めて未熟であることに気づく。恐らく走り込みなどのトレーニングを、あまり行ってきていないのではないかと言う疑問を持つ。


(今後は)

 結論からすると、打者としての資質よりも、現時点では投手の方の可能性を評価します。しかし投手らしい一面がある一方で、忍耐力・集中力などの部分では、かなり欠如している可能性を感じます。

 そのため最初の一年ぐらいは、徹底的に下半身をイジメ抜く必要性があると思うのですが、それに本人がついてこられるのか?と言う不安を覚えます。そういったプロ的な性格なのか?と言われると疑問が残るわけです。特に昨年からの課題を技術的には殆ど改善してきてはおらず、貪欲に自分の資質を伸ばそうとか、欠点に向き合おうと言う意識が感じられません。この点では、大いにプロと言う世界を前提とすると不安材料です。

 「心技体」のバランスで考えると、「体」の持っている天性の資質は素晴らしいです。「技」の部分でも、けして改善が不可能なほど、大きな破綻はありません。本人が貪欲に新たなものを身につけて行こうとするならば、この問題も解決できる範疇だと思います。

 問題は「心」の部分。しかし彼ほどの圧倒的なポテンシャルを持ってしまうと、アマでは中途半端になるか、持て余してしまう可能性が高いことも確かです。人間教育も含めて、上手く導いてあげられる大人の環境が用意できるプロ球団に、ぜひ進んで欲しいと言うのが私の率直な願いでもあります。かなりリスキーな選手ではありますが、プロが責任を持って育てないと行けない選手なのではないかと思います。野球で活躍することで、人格的にも磨かれることを期待して、指名リストに名前を記してみたいと思います。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2011年 夏)





白根 尚貴(島根・開星)投手 185/87 右/右


(どんな選手?)

 選抜でも、その非凡な才能を全国に示した選手です。むしろ今大会は、その圧倒的なパワーを生かした打撃の方でした。今回は、野手としてどうなのか?来年の上位候補を考えてみたいと思います。


(守備・走塁面)

 一塁までの到達タイムは、投手と言うこともあり、全力で駆け抜けないのでわかりません。ただその所作・プレースタイルからも、足を売りにすることはないと思います。当然の如く、島根予選の5試合では、盗塁はありませんでした。

 ただ太めの選手ではありますが、フィーディングは基準レベルありますし、クィックも1.05秒弱で放れるなど、かなり動きは悪くありません。実際体を絞れば、結構動ける選手なのかもしれません。ただ走力はないので、恐らく野手にコンバートしても、一塁など守備位置は限定されてしまうのではないのでしょうか。


(打撃内容)

 その巨体を生かした、圧倒的なパワーが自慢です。前足を軽く引いて、全体のバランスは平均的です。ただ前足を引いている割に、顔が正面に向かないところを見ると、体はあまり柔らかくないのかもしれません。それでもリラックスして構えられており、打席では固さは感じられません。

 仕掛けは「遅すぎる仕掛け」を採用するなど、一定レベル以上の球速・キレのある投手には苦労しそうです。そのため打てる球は、限られたタイプではないのでしょうか。ただ真っ直ぐ踏み込んだ足下が、インパクトの際にブレないなど、右にも左にも打ち返す幅広さは打撃から感じます。

 早めに打撃の準備段階であるトップの位置にグリップを持ってきますが、少しボールを捉えるまでのスイングにはロスを感じます。それでもスイングの弧は大きくはないのですが、最後にフォロースルーが高い位置に引き上がるほどの、強引なアッパースイングでボールを遠くに運びます。島根県予選の5試合でも、2本塁打を放ち、甲子園でも一発をブチ込みました。

 目線もブレず安定し、体も開きも我慢。軸足が少しもてあそび気味なのは、体重移動が不十分だからでしょう。始動を早め動作に余裕を持ち、もう少し下半身を使ってスイングができるようになると楽しみです。


(今後は)

 仕掛けの遅さ、体重移動の不十分さは感じますが、打者としての資質は高いものがありそうです。個人的にはこの夏、投手ながら野手として高く評価された又野知弥よりも、打者としての資質は高く評価致します。今のところ、投打のどちらが優れているとは決めかねますが、来年の上位候補として、両方の可能性を検証して行きたいと思います。


(2010年・夏)







白根 尚貴(島根・開星)投手 185/87 右/右





               「柳田二世ですか、あなたは?」





 左右の違いこそあれ、かなり太めの体型から投げ込む姿を見ると、柳田 将利(青森山田-元ロッテ)投手とダブらないわけには行かない。それでも新2年生になったばかりの投手が、甲子園でMAX144キロを記録するその姿は、2011年度のドラフト上位候補を意識しないわけには行かないだろう。





(投球内容)

 バリバリの本格派に見えますが、かなり肘の下がったスリークオーター。初回こそ甲子園で150キロ越えを狙ったのか、力みが感じられる投球であったが、2イニング目からは、制球力も安定し、冷静を取り戻した投球だった。上記の動画は、その冷静さを欠いた1ニング目の内容なのだが、彼の良さが発揮されはじめたのは、続く2イニング目からだったのである。

ストレート 136~MAX144キロ

 太めの体格からは想像できない、ビシッと手元で切れる快速球を投げ込んで来る。特に左打者の外角高めに抜けることが多いのだが、球がキレるので打者の空振りを誘うことも多い。

スライダー 120キロ前後

 主な変化球は、このスライダー。この球で、カウントを稼いだり、投球に変化を付けている。この球単体では、それほど空振りを誘うようなキレはないが、速球を生かすのにカウントを稼げる変化球を持っているのは大きい。

チェンジアップ・フォーク? 120キロ前後

 チェンジアップなのかフォークなのか、はたまた両方使い分けているのかわからないが、どうも縦に落ちる変化球を持っているようだ。左打者の外角に決めることも多いので、チェンジアップではなかろうかと思うが、縦に鋭く落ちて空振りを誘うこともある。別々の球種と考えた方が、無難だろうか。

カーブ? 100キロ弱

 滅多に投げないのだが、投球に余裕が出てくると、こういった遅い球も投げ込んで来る。

(その他)

 牽制に関しては、結構素早いモーションで投げられまずまず。ただこの試合では、フィールディングに関してはよくわからなかった。クィック自体は、1.15秒前後できるなど、けして動作が緩慢な選手ではない。

<右打者に対しては> 
☆☆☆

 速球に関しては、アウトコース真ん中~高めのゾーンに、きっちり集められる。ただスライダーに関しては、結構制球はアバウトで、この辺の球が打力のある相手だとどうだろうか?ただ投球のほとんどは、このスライダーとの単調なコンビネーションであり、カーブのような緩急・フォークのような縦の変化は、ほとんど見られない。ただこれらの球種は持っており、全く投げられないわけではない。

<左打者に対して> 
☆☆☆

 アウトコース高めに抜け気味に行くストレートと外角に決まるスライダー・外に逃げるチェンジアップを織り交ぜる。たまにインハイを速球やスライダーで突くが、基本は外角で投球を組み立ててくる。

 投球に余裕が出てくると、カーブやフォーク系の球もあるようだが、速球・スライダー・チェンジアップなどで、投球を組み立ててくる。やや球が高めに浮くのは気になるが、けして制球力が悪い投手ではない。

(投球のまとめ)

 1イニング目こそ、速い球を投げようと力んで、上体も突っ込みがちだった。しかし2イニング目からは、冷静さを取り戻し、制球・変化球レベルも安定し、そういった投球もできるところを示してくれた。むしろスカウティング的には、単に速い球を投げ込むだけの投手との印象が薄れ、力でも技でも勝負できる素材としての奥行きを感じさせてくれた。

 また勝負どこでは、集中した投球ができるなど、良い投手としての資質を兼ね備えている。セルフコントロールはできる選手なので、後は常日頃のウエートコントロールなど、意識・集中力を長く持続できる精神的な成長を期待したい。


楽天


(データから考える)

 新チーム結成以来の秋の成績は

25試合 170回1/3 102安打 199奪三振 52四死球 防御率 1.22

1,被安打は、イニングの70%以下に

 
高校生レベルでの球の威力や、コンビネーションに課題がないかと探るには、被安打が70%以下であることが望ましい。彼の場合、被安打率は60.0%であり、充分に球の威力で相手を圧倒してきたことが伺われる。選抜でも8回を投げて3安打しか打たれていないことからも、その力は充分発揮できたものと思われる。

2,四死球は、イニングの1/3以下に

 四死球率は、1/3以下が望ましい。彼の場合、四死球率30.3%と、この基準もすでに満たしている。ただ選抜の向陽高戦では、四死球は6つ。このことからも、球の威力は普段どおりであったが、細かい制球力は普段よりも悪かったと考える方が自然ではないのだろうか。それとも、投球自体が粗くなったのかもしれないが、サンプルはこの試合しかないので、その辺は今後観る時のチェックポイントにしたい。

3,奪三振率は、1イニング1個前後

 1イニングあたり、1.17個の奪三振を奪うなど、出場選手中3位の記録だったらしい。実際にこの向陽戦でも、イニング数を上回る9個の三振を奪っており、持ち味を発揮できたことがわかる。

4,防御率は、1点台が基準。0点台が望ましい

 1年秋の時点で、防御率は1点台前半と、中々優秀な成績を残している。この試合でも自責点は1失点であり、持ち味を発揮できた試合ではなかったのだろうか。先にも書いたように、勝負どころでの集中力も素晴らしいことを裏付ける数字となっている。

<データからわかること>

 すでに1年秋の時点で、制球・球の威力・踏ん張りなど、各ファクターを高いレベルで満たしていることがわかる。このことからもこの選手は、単に球が速いだけの素材型ではなく、確かな実戦力を兼ね備えた実力者なのだ。更に課題を克服して行けば、来年上位指名候補に成り得る才能を、すでに示している。





(投球フォームから考える)

 大きく足の横幅をとって、ノーワインドアップからゆったり投げ込んで来るフォームです。けして足を高い位置でピンと素早く伸ばすフォームなので、お尻の一塁側への落としができないフォームではないのですが、かなり二塁側に足を送り込みすぎることで、お尻の落としは甘くなりがちです。将来的に、緩急の効いたカーブや縦に鋭いフォークをものにできるかは、微妙なフォームだと言えるでしょう。

 グラブをしっかり胸元で抱えられているので、左右の制球は安定しやすいと思います。ただ足のつま先で地面を押しつけることができず上体が浮いてしまっているので、どうしても高めにボールが抜けてしまいます。

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きく前にステップすることで「着地」が速すぎるのはを防いでおりますが、上体が突っ込んでしまいタメが作れておらず粘りは感じません。「球持ち」も、強い上体を強く振ることでキレは生まれますが、ボールを長く持ってスピンを効かせられるタイプではないので、手元での伸び、微妙な指先の感覚に頼った投球は微妙な感じです。

 ただ問題なのは、むしろ「開き」と「体重移動」です。身体の「開き」が速いので、いくら速い球を投げ込んでも、その効果は薄いタイプ。本当にレベルの高い相手だと、今のフォームでは厳しいと言えます。更に足の甲の押しつけができない投手なので、前半で作り出したエネルギーをフォームの後半に伝えられませんので、ボールがグ~ンと前に乗って来にくいフォームです。ただこの点に関しては、上体を強く振ることでキレを出しているので、球質と言う面では悲観するほど悪くはありません。

 ただウエートの割に、球威が生まれないので、その恩恵は投球に活かすことができないタイプです。投球フォームの観点で言えば、高校レベルで通用しても、プロで活躍するだけの下地は、まだまだといった感じです。彼がプロに相応しい素材かどうかは、最終学年までに実戦的なフォームの土台を身につけつつ、今のようなピッチングを披露できるかにかかっております。





(今後に向けて)

 こうやってみてみると、実際の投球内容は、高校生レベルではかなり高いレベルの投球が、すでになされている。ただ、それじゃプロで通用する素材なのか?と言われると、投球フォームには大きな課題が残り、またウエートコントロールなどの意識の面でも、プロ向きなのかどうかも含めて、最終学年に向けて検証してみる必要がありそうだ。残り1年半の間に、どのぐらいの進化が観られるのか?それ次第で、この選手の評価も大きく変わって来るだろう。現状は、上位指名される才能は充分秘めている素材だが・・・といった印象に留まっている。これから先は、彼の野球への愛着と貪欲さが、求められることになるだろう。


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(2010年 選抜)