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川崎 貴弘(中日)投手のルーキー回顧へ







川崎 貴弘(津東)投手 187/85 右/右 
 




                  「技術よりも素材よりも意識がどうか?」





 残念ながら、この選手のプレーを実際に最後まで確認出来ないまま終わってしまった。その後、幾つかの動画を見ることで、おおよそのイメージはついてきた。ただ私には、技術よりも素材よりも、野球への意識の部分で、プロ入りには不安を感じてしまったのである。


(投球内容)

 6月に肩を痛めて、それから夏の大会までスロー調整が進んでいたと言う。そのため、普段と比べてどうだったのは定かではない。

ストレート 135~140キロ前半

 引き上げた足を地面に着きそうなところから、グィッと前に大きく伸ばす独特のフォーム。ちょっとフォームの上下動が激しい、独特のフォームが気になった。

 実際動画で見た印象はでは、135キロぐらいなのかなといった感じで、勝負どころで140キロ強の力強いストレートを投げ込んで来るといった感じ。そのため驚くような球の威力は感じず、投げ下ろしてくる角度みたいなものに特徴を感じる球だった。

変化球 スライダー・フォーク

 大きく横滑りスライダーとのコンビネーションが目立ち、それに縦に落ちるフォークのような球があるようだ。右打者には、外角に速球・スライダーで投球を組み立てつつ、最後に落とすといった感じの配球だった。

(投球のまとめ)

 細かい配球や繊細なコントロールがあるわけではないが、思ったよりはまとまっているかなという印象は受けた。現状はまだまだ素材型でこれからの投手といった感じだが、体格にも恵まれ、球威・球速は、これからまだまだ増して行ける奥行きは、素材からも感じられた。


(投球フォーム)

<広がる可能性>

 引き上げた足を地面に向けて伸ばし、お尻を一塁側に落とせるフォームではありません。そのため見分けの難しいカーブやフォークのような球を投げるのには、けして適したフォームではありません。その割にフォークを使ってくるということで、体への負担は少なくないように思えます。ただ「着地」までの時間は稼げているので、キレはともかく、いろいろな変化球を投げて投球の幅を広げて行ける下地はあると考えられます。

<ボールの支配>

 グラブを内に最後まで抱えられ、両サイドへの制球は安定。足の甲の押しつけでも、地面をしっかり捉えて投げられています。「球持ち」も結構よく、制球は意外に適度にまとまっているのではないかと思います。ただフォームが上下に大きく動くフォームなので、その辺で制球を乱す要因が考えられます。それが、どの程度ピッチングに影響しているのかは、もう少し実戦の投球を見てみないとわかりません。

<故障のリスク>

 お尻が落とせない割にフォークを投げているので、肘への負担は少なくなさそう。また腕の振りも、ボールの持っている腕が上がり、グラブを持っている腕がかなり下がっているので、肩への負担も少なくないでしょう。現に夏の予選前に肩を痛めるなど、その徴候が感じられます。故障には充分注意して、日頃から体の手入れに気をつけて欲しい。

<実戦的な術>

 「着地」までの粘りがあるので、体の「開き」も遅れ、ボールの出所は見やすくありません。また腕は結構振れており、体に絡んできます。また大型の割に下半身が使えており、ボールに体重を上手く乗せられている。


(投球フォームのまとめ)

 「着地」までの粘りがあり、「開き」も早くないので、けしてタイミングを合わせやすいフォームではありません。

 「球持ち」もよく、制球を司るフォームもしっかりできているので、上下動の激しいフォームでも、おおまかに制球をまとめることは出来るのではないのでしょうか。「体重移動」もしっかりできているので、将来的に速球に磨きがかけられる可能性を感じます。あとはそれを邪魔しない、故障しない体が作れればと思います。


(最後に)

 こうやって見ていると、独特のフォームの割に制球や技術も安定し、意外にまとまっているのかなと思える部分がある。技術的にも実戦的であり、素直に肉付けすれば、まだまだ資質を伸ばすことも期待できそう。

 ただ僅かな動画の中でも、何か動作が雑だったり、緩慢だったり、そこはボールを目で追わないでカバーリングに入る場面だろというような気になる場面が目立った選手。高いレベルの野球を体現できていないせいなのか、それとも元々そういった部分の意識が低いのか?私にはどちらかというと、後者の印象を受ける。ただこの選手、意外にプロは、投手よりも野手として評価しているのかな?という部分も感じられる。ただ今回、野手としての動画見られなかったので、その辺の詳細はわからなかったのだが。

 果たして、この有り余る才能を活かすことができるのか?今後の成り行きを注目してゆきたい。純粋に素材としては、なかなか興味深い選手であった。


(2011年 夏)