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西川 健太郎(中日)投手のルーキー回顧へ



西川 健太郎(星稜)投手 183/74 右/右 
 




               「上位指名候補と評判!」





関係者の間では、140キロ台後半の球速を連発し、ドラフト上位候補と位置づけられる 西川 健太郎。私もライバル・釜田 佳直(金沢)投手と投げ合った、石川県大会の模様を確認した。果たして、話題の西川は、一体どんな投手なのだろうか?今回は、その全容を考察してみたい。





(この日の投球)

夏の大会前には、140キロ台後半の球をバシバシ投げ込んでいたと言う話だったが、私が観戦した金沢高校戦では、連投の疲れからか3回から登場。球速の殆どは、135~130キロ台後半(MAX143キロ)で、物凄い球威・球速で押すというタイプではなく、変化球を交えた総合力で勝負する投手といった感じだった。それでもピンチはあったものの、この西川に交代してからは、一失点もされることなくチームは敗れることになる。

(投球内容)

ランナーがいなくてもセットポジションから投げ込み、両サイドにボールを散らし、変化球を交えて的を絞らせる投球をしてきます。特に右打者への外角クロスへの球筋が、この投手の最大の武器。

ストレート 135~MAX143キロ

この日の投球を見る限り、物凄くストレートに迫力があるとか、伸びやキレが素晴らしいという感じは致しません。あくまでも両サイドに丁寧に集めようという意識が、むしろ強かったようです。マウンドでも結構辛そうな表情を見せており、先発も回避したところをみると、やはり張りなり疲れが溜まっていたことが伺えます。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブ・フォークなど

球種は一通りある感じで、右打者にはスライダー、左打者にはチェンジアップを主な球種として投げ込んできます。たまにカーブなり、フォークなどを織り交ぜて来る感じです。ただこれらの球種を低めに集められるのは良いのですが、空振りを誘うという絶対的なキレは感じません。そのため球種は多彩でも、投球の主体はあくまでもストレートであることがわかります。

その他

ランナーを背負っても、牽制などを特に交えたりはしてきません。クィックは、1.2秒前後と平均的で、フィールディングも、それほど上手いようには見えませんでした。こと投球以外の部分に関しては、大きな欠点はなくても、際だつほどのものも感じられませんでした。

(投球のまとめ)

両サイドにボールを散らせる安定した制球力と変化球が浮かないところなどを観ると、適度にまとまっているなあといった感じです。

特にマウンド捌きにが洗練されているとか、間の取り方が上手いとか、そういった印象は受けませんでした。どちらかと言うと淡々と同じリズムを刻んで来るタイプですが、要所では力を入れて討ち取ろうという時があります。ただ余分な力が入ると、ボールが上吊りコントロールを乱すケースが目立ちます。力を入れれば、良い結果を生むというよりは、むしろ逆のタイプではないのでしょうか。あえて冷静に常に投げようと、自分に言い聞かせていたのかもしれません。

そのため巨人の西村 健太朗のように、速い球を安定して投げて抑え込むタイプであり、メリハリをつけたりして、投球の抑揚で抑えるタイプではないように思えます。そのせいか、あまりピッチングに訴えかけるものは感じられませんでした。これが普段からこうなのか?調子が悪かったからなのかはわかりませんが、私の経験からみるに前者であるように思えます。





(投球フォーム)

この試合の投球だけではわからない部分もあるので、実際のピッチングフォームを分析して考えてみようと思います。

<広がる可能性>

引き上げた足を伸縮させてピンと伸ばす時に、比較的高い位置でのばせています。そのためお尻は一塁側に落とせるフォームになっています。腕の振りの緩まないカーブを投げたり、縦に鋭く落ちるフォークのような球種の修得も可能であり、着地までの足の逃がし方も平均レベルはあります。将来的にも、いろいろな球種を増やしピッチングの幅を広げて行ける可能性を秘めています。

<ボールの支配>

最後まで、グラブを内に抱えられています。そのためボールを、両サイドに投げ別けられます。足の甲の押しつけもよく、ボールもそれほど上吊りません。ただ力むとフォームがバラツイて、ボールが高めに浮く欠点があります。「球持ち」も悪くないので、将来的にも安定した制球力が期待できる投手だと考えられます。

<故障のリスク>

お尻も一塁側に落とせるので、カーブやフォークのような球を投げても、無理がありません。現状シュート系の球を多投するわけでもないので、肘への負担も少ないように思えます。ただ気になるのは、テイクバックをした際に、両肩のラインよりも肘が下がってしまい、そこから引き上げて投げるので、どうしても肩への負担は大きくなります。無理な腕の角度は作っていないので良いのですが、この欠点は改善したいところです。

<実戦的な術>

「着地」までの粘りが平均的で、体の「開き」も早すぎることはありません。特に球が見難いとか粘りを感じられるフォームではないので、これから体ができて行く段階で、徐々にその辺が更に良くなることを期待したいところ。

腕の振りも投げ終わった体に絡んでいますので、変化球の見分けもつきにくいはず。まだ「体重移動」が発展途上なので、もう少し上手く体重が乗せられるようになると、打者の手元まで勢いと球威が衰えない球が投げられるでしょう。そうなると打者にも自己主張するような、存在感のある球が投げられそう。

(投球フォームのまとめ)

「着地」の粘りや体の「開き」は平均的なので、これから更に打ちにくいフォームを模索して行って欲しいですね。ただ「球持ち」が良いので、将来的にも安定した制球が期待でき、「体重移動」は発展途上なものの、今後の改善が期待できるフォームです。まだまだ成長途中ですが、これからの改善が期待できる土台の良さがあります。





(最後に)

金沢高校戦でも魅せたように、悪いなら悪いなりに試合をまとめられる投手。制球力、ピッチングも安定しており、凄い球を投げるスケール感は感じませんでしたが、投手としての総合力が感じられました。

またこれから素直に伸びて行ける、土台の好いフォームも確認。そういった意味では、実際の投球以上に、いろいろ調べてみて好感が持てる内容でした。

ただ何か心に響くような存在感、体の底から沸き上がって来るような馬力は感じられず、そういった部分で面白味に欠けるといった印象を受けたのも確かですし、何か物凄く投手としてのセンスや素材としての奥行きを感じたわけではありません。まあ絶好調時の投球を観れば、少し印象も違ったのかもしれませんが、個人的には悪い投手ではないけど、特別インパクトのある内容ではありませんでした。ぜひ良いところを、プロ入り後に確認してみたいですね。いずれにしても、高校からプロに入る、そういった力は充分あると思います。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2011年 夏)