11kp-18





北方 悠誠(DeNA)投手のルーキー回顧




北方 悠誠(唐津商)投手 180/80 右/右 
 




                「ここまで速くなるとは・・・」





昨夏の佐賀大会を観た時に、この選手は来年のドラフト候補になるのは間違いなと確信した投手、それがこの 北方 悠誠 だった。正統派の本格派右腕で、適度なまとまりを持ちながら、確かな球速を誇る投手とのイメージを持っていた。しかし秋にはMAX149キロを記録したとか、ちょっとそのイメージとはかけ離れ、破格な球速の話ばかりが先行する。実際の北方はどうなっているのか?、この夏私は、直に彼を見ようと佐賀大会に足を延ばす。延長15回引き分け再試合、北方はこの日の9回にMAXの球速を連発、驚異的なスタミナと馬力を私に魅せつけてくれた。





(投球内容)

甲子園緒戦の古川工業戦では、初球から152キロを記録し、観客の度肝を抜いた。足をゆっくり引き上げ、少しスリークオーター気味の腕の振りから投げ込んで来る。

ストレート 140キロ台中盤~MAX153キロ

コンスタントに150キロ前後を連発する馬力は、今年の高校球界でNO.1と言っても過言ではない。その球速、ボールの勢いは破格ではあるが、ボールにそれほど角度はなく、手元でグ~ンと伸びたり、ピュッと切れるようなことはないので、空振りを奪えるというほどではない。それでもテンポよく、ポンポンとストレート中心に投げ込んでくるのが、この投手の持ち味。

変化球 カットボール・スライダーなど

この選手の最大の武器は、小さく曲がる140キロ前後のカットボールにあります。彼が破格のスタミナを誇るのは、普段はこの球を多投することで、全力で投げ込むケースを減らしスタミナを温存できているから。ストレートが暴れるのに対し、この球は適度に力が抜けて安心してカウントを取れる球として、最も信頼できる球種。

また同じようにスライダーも多く投げ込みます。ただこの球は、日によっては曲がりが大きすぎて、上手く制御できないことがあります。打者の遠くから曲がり過ぎて、制球が定まらなかったり、打者に見極められてしまうことも少なくありません。私が生で観た試合では、スライダーが使えず、ほとんどがカットボールでカウントを稼ぎ、追い込むと渾身のストレートで仕留めるという投球パターンでした。

その他

牽制は、昨年からそれほど目立つものはありません。フィールディングは、最初の一歩目も早く、まずまずの部類だと思います。クィックは、1.0秒台と非常に素早いです。投球の間を上手く図り投げるとか、なんか相手との間合いが悪いと、パッとマウンドを外すような器用さはありません。テンポよく、ポンポンと自分のペースに、相手を引き込んでゆきます。

(投球のまとめ)

本当のコントロールがないので、四球が非常に多い投手。私が見に行った試合でも、9回に押し出しをして、そこからエンジンがかかりました。ただ四死球でガタガタということは意外に少なく、要所では集中力が高まり、逆に本気になるケースが目立ちます。追い込まれるまで本気になれない部分はありますが、いざ精神的に追い込まれると、逆に燃えて力を発揮するタイプではないかと考えます。





(投球フォーム)

それでは実際、技術的な観点ではどうなのでしょうか? フォームを少しずつ分析してみましょう。

<広がる可能性>

引き上げた足を、高い位置でピンと伸ばしています。これにより一塁側にお尻がしっかり落とすことができています。ただし「着地」までの粘りがもう一つで、充分身体を捻り出す時間が確保できておりません。そのため見分けの難しいようなカーブで緩急を効かせたり、縦に鋭く落ちるフォークのような球は投げられておらず、腕の振りもやや腕が下がって、スライダー・チェンジアップ系の投手のフォームになっています。現状は、お尻が一塁側に落とせるながらも、それを活かすことができていません。

<ボールの支配>

グラブを持っている腕は、最後少し身体から離れてしまっていて、フォームが暴れる要因を作っています。これにより、両サイドへの制球もアバウトになります。また足の爪先のみしか地面を押し付けられておらず、ボールが上吊る原因を作ります。ただ「球持ち」は、比較的前では離せております。ただその際も、少し身体から腕が遠回りに外旋して、指先まで力を伝えるような繊細な投球は期待できません。むしろ指先の感覚は、悪い部類だと考えられます。将来的にも細かいコントロールよりも、球の威力で圧倒するタイプになるのでしょう。

<故障のリスク>

シュート系の球や縦の変化を武器しているわけでもないので、それほど肘への負担は考えられません。馬力抜群の投球も、実はめい一杯全力で投げ込むのは勝負どころが多く、それほど無理はしていません。また腕の角度もにも無理はなく、肩への負担も少ないフォーム。そのため将来的にも、故障の可能性の少ないタイプで、プロとしては鍛えがいがあります。

<実戦的な術>

「着地」までの粘りはもう一つのため、「開き」は少し早いように見えます。そのため破格の球速の割に、そのストレートを充分生かしきれていないのが残念。

また腕も振りも良さそうなのですが、もう少し振り下ろした腕が身体に絡んできてもとも思います。「体重移動」は上手くできているので、ボールに上手く体重を乗せて球威のある球は投げられています。

(投球フォームのまとめ)

「着地」の粘りや「開き」の早さから、その球速の割に打者からは合わせやすい傾向にあります。そのため実戦的な部分では、まだまだ課題を抱えます。

「球持ち」も悪くは見えないのですが、実際の投球を見る限り、指先の感覚は悪いように思えます。すなわち将来的にも、制球では苦労するように思えます。

ただ「体重移動」は割合上手く行っているので、更に身体が出来上がって来るに従い、球威・球速を増す可能性はあると考えられます。そのため細かいこと抜きに、プロの世界でもそのスピードで圧倒して行けるような投球も、可能になるかもしれません。

(今後は)

今後は、伸び悩む不安要素は多々あるものの、実は要所は締めることができ試合を成り立たせるのではないのでしょうか。そういった追い込まれた時に、力を発揮できる資質のある選手だと評価します。現状は、やはりリリーフで持ち味が発揮される選手のように思えます。

またこの一年間で、ここまで球速を伸ばしてきたのは、それなりに野球への取り組みが間違っていなかったことの証だとも言えます。投球は荒削りではありますが、野球への意識も高く、いい加減な選手ではありません。

また彼ぐらいの破格なスピードを持つと、プロ相手でも将来的にそのスピードで圧倒するような速球を投げても不思議ではありません。そういったことが可能ならば、少々荒削りでも今のスタイルまま通用してしまうという、稀に見る可能性がを持った選手です。まだ球威・球速を伸ばして行ける可能性は充分あるように思えます。

いずれにしても、間違いなく高校からプロに入る素材。その評価は球団によって別れるとは思いますが、中位指名(3位、4位)以内までには消えることになると思います。必ずやモノになるかは微妙ですが、化けたときは球界を代表する投手に育つ。その可能性は、かなり高いのではないかと私は考えています。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2011年 AAA選手権)









北方 悠誠(唐津商) 下級生レポートへ(無料)!