11kp-16


 




武田 翔太(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ






武田 翔太(宮崎日大)投手 187/77 右/右 
 




                「意外なまとまり!」





 昨年夏の模様を観た時は、150キロ級の球威のある球で詰まらせる豪速球投手に育つのではないかと思っていた。しかしこの夏試合を観た時は、低めに丹念に速球と変化球を集める、実戦的な投手になっていて驚きだった。私が観戦したのは、夏の宮崎大会・鵬翔戦。彼の高校生活最後となった試合である。



(投球内容)

 長身だが、それほど骨太の力感溢れる投手といった感じではなかった。ただ腕の振りもしなやかで、指先まで力を伝えられるリリースは、ただものではないことを伺わせる。

ストレート 140キロ前後~MAX92マイル(147.2キロ)

夏の連戦と言うこともあったのだろうし、この日のサンマリン球場は大変蒸し暑い日でもあった。武田は、初回から常時140キロ前後のストレートを刻み、けして力で相手をねじ伏せるようとはしなかった。あくまでも低めや両コーナーを丹念に突く、そんな投球に徹していた。それでも勝負どころになると、少し力を入れたストレートには、指先まで力が伝えられ観るべきものがある。

変化球 カーブ・スライダー

変化球は、110キロ前後のカーブと、120キロ台の横滑りするスライダー。この三つの球で構成されている。特に縦に割れるカーブを低めに集め、相手を討ち取るケースが目立つ。また右打者の外角には、小さく横滑りスライダーで、空振りを誘う。実際この日の投球を観ていると、この二つの変化球で三振を奪っていることが多い。変化球も、ストレート同様に低めや両サイドにしっかり投げ別けられていた。

その他

フィールディングなどは、落ち着いているが機敏と言う感じはしてこない。また牽制も、相手を目で威嚇したり、動作も下手には見えないが、それほど鋭い牽制を混ぜてこない。クィックは、1.1秒台で収まっており、プロの基準である1.2秒以内ではまとめられている。ただ投球以外の部分は、それほど優れているといったタイプではない。そのため野球センスに優れているというよりは、やはり身体能力に秀でたタイプなのだろう。

(投球のまとめ)

球の力で押す剛球投手のイメージがあった下級生時代に比べると、低めやコーナーに丹念に球を集めようとする精神力・制球力は高く評価できる。この負けた試合でも、最後足が痙攣しての一失点のみ。ランナーが出ても、パッとマウンドをハズしたりと、投球センスなどは想像以上に実戦的。ただ過去宮崎にいた寺原隼人(日南学園)や同じ九州の山口俊(柳ヶ浦)などの投手たちに比べると、そこまでの迫力も完成度も持ち得ていない。



[高画質で再生]

武田 翔太(宮崎日大)投手 [ネットショップ開業] 


(投球フォーム)

<広がる可能性>

引き上げた足を地面に向けて伸ばすフォームなので、基本的に見分けの難しいカーブや縦に鋭く落ちるフォークなどの修得は将来的にも難しいと考えられます。実際にはカーブを武器にしているのですが、このカーブは腕が緩むので、上のレベルで使える代物なのかは微妙だと感じました。また「着地」までの粘りもイマイチで、将来的には球速の速い変化球を中心に、投球の幅を広げて行くことになりそうです。

<ボールの支配>

グラブは、しっかり最後まで内に抱えられているので、両コーナーへの投げ別けには問題ありません。ただ足の甲での地面の押しつけは、地面を押しつけていますがそれほど長くはありません。あれだけ低めに集めていたのは、相当本人としてはキャパを抑えていたのに違いありません。リリースは、結構ボールによってまだバラツキがあるように思えますが、上手く行っている時は指先まで力が伝えられています。そのときの球には、非凡なものを感じます。現状、上手くボールをコントロールするのには、10キロ程度球速を抑えないと難しいのではないのでしょうか。

<怪我へのリスク>

テイクバックした時に、少し背中のラインよりも後ろに肩が入り込みます。またリリースの時も、ボールを持っている肩は上がり、グラブを持っている肩は下がって負担の大きなフォームに見えます。将来的には充分気をつけないと、故障の可能性が高いフォームと言えるのではないのでしょうか。

<実戦的な術>

「着地」までの粘りがないので、打者はそれほどタイミングを合わせるのは難しくないはずです。ただその割には「球の出所」は見難く球種を読み取るのは難しいタイプ。これよりプロの打者相手に、腕のゆるみを誤魔化せるのかは微妙です。腕の振り下ろしは好いので、振り終わったあと体に絡みます。まだ前への「体重移動」は、上手くできていないので、グッと体重がの乗ったような勢いのある球は、なかなか行かないのが現状のようです。

(投球フォームのまとめ)

「着地」「体重移動」などに課題を抱え、「開き」は我慢できているものの、「球持ち」は投げるたびに違って安定しないように思えます。少なくてもまだ実戦的は言えず、発展途上の投手であると言えるのではないのでしょうか。これらを改善できるのか?改善した場合に、持ち味を失わないのか?などのリスクは、感じます。

(意識づけ)

試合前に、入念にスパイクのくつひもをしめるなどして、慎重な一面が感じられるます。そのため投手によくいる、オレがオレがというタイプでは、けしてありません。慎重できめ細やかさは感じられるのですが、その分、大胆さや積極性に欠けます。そういった意味では、才能が開花するのには、時間がかかるのではないのでしょうか。





(最後に)

この日の球を観ると、世代のトップと言うほどの迫力・凄み正直感じられませんでした。ただ間違いなくキャパを抑えているなあとか、時々垣間見られる素質の片鱗は感じられますし、まだまだ伸びるだろうなと言う確信的なものは持てます。ただ全国大会で活躍するような投手の完成度も無ければ、伸び悩む要素も多くガンガン行くような性格でもないのも気になります。

しかも腕のゆるみから、得意のカーブが使えなかった時。実戦力に欠けるフォームなども考えますと、結構リスクのある素材ではないかなと思うわけです。持ち得るポテンシャルは高そうですが、必ずや大成する!そういった確信は、最後まで持てませんでした。最上位12名の中には入ってくると思いますが、どう転ぶかは、正直難しい素材です。その素材の良さは認めますが、いろいろな観点から見てみますと少し割り引いて考えた方が妥当かなと思うようになりました。文句なしの一位指名というよりは、一位指名もありかなという感じの選手です。それでも今年の高校生の中では、屈指の素材ではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2011年 宮崎大会)








武田 翔太(宮崎日大)下級生寸評(無料)